その日の儀式は本当に久しぶりだったので、男たちは大喜びだった。ラギを孕んだ時には儀式は起こらなかったので、

本格的な蛇霊神を呼ぶ儀式というのは10年弱ぶりくらいに行われた事になる。

女蛇が降りたゆりは結構のりのりだったので、男たちもすぐに興奮し、ゆりの妖しい匂いにすっかり変化して

ゆりとからまった。ゆりはその日は４匹の蛇霊神を呼び出して体に取り込み、意識をなくした。

「ああ、生きててよかった・・・」

変化がとけたジュノーがうっとりした瞳で言った。二人っきりでひっつくのもいいのだが、やはり儀式となると、

高揚感が全然違う。

「じゃあ私が運びますよ」

フリットはゆりの体にタオルをかけて浴室に運んで行った。他の男たちは服を着た後しばらくぼんやりしていた。

「儀式の時の王妃は本当に美しいですね」

ジュノーが言った。

「ジュノー王妃のおしりにかじってた」

ミルキダスがボソッと言った。

「ん？そうだったかな？またかじってたか？つい・・・」

「久しぶりに変化した他の男を見ると、奇妙な感じですよ。」

ヴィラが言った。

「・・・なんだか王妃の蛇がかなり動いてるような気がしたんだが・・・」

イシュタールが言った。一族の男というものは女の肌に浮かんだ蛇を見るとそれだけで興奮してしまうものだ。

ゆりの肌に浮かぶ蛇は場所もその時によって違う上に二匹も浮かんでいたので、男たちは蛇をなでたり口付けたり

していとおしんだのだった。しかも今回は動いていた。なかなかこういう蛇紋にはお目にかかれない。

「動いてましたね。確かに、まるで生きてるみたいに」

「王妃の蛇は本当にかわいいなあ。」

ミカエルもうっとりして言っていた。


こうして一度目の儀式は終わったのだった。


第２５話

ゆりが目覚めたのは真夜中だった。儀式は早い時間に始まり夕方前には終わっていたので、早く目が覚めてしまった

らしい。ゆりは自分の髪に触れてみた。今回も結構のびてるようだ。


久しぶりだなあ・・・皆の変化した姿も・・・・


二人で引っ付いててもそう変化しないので、あれだけ変化した男に囲まれるのも久しぶりだった。


なんか結構のりのりだったな・・・私・・・・私って、やっぱり皆のこと好きなのね・・・


普通で考えたら異常な行為だが、お互い愛情があって信頼もあるから成り立ってる事だといえる。


体をもぞもぞ動かしてたら、「起きたのか？」と声が聞こえた。

横に寝ていたラクシュミが言ったのだった。

「うん」

「大丈夫か？」

「うん。王様、キスしてほしいな」

「いいぞ」

ゆりは体を寄せた。ラクシュミはゆりに口付けて、髪が伸びてるのに気づいた。

「もう伸びたのか。ならからだもすべすべだな」

ラクシュミはゆりの服を脱がした。

「王様・・・」

「すべすべのお前を抱きたい」

ゆりは「わーい」とラクシュミに抱きついてそのまま抱かれた。


ああ、やっぱり王様が一番！


うっとりしながらゆりは自分の手に金色の蛇が浮かんでいるのを見た。見ると今回は両方の手の甲に蛇が浮かんでいる。

ゆりはチャンスとばかりにラクシュミの胸に両手をべったりつけた。

「なんだ？」

「なんでもない。そのまま抱いて」

絶頂を感じた瞬間、ゆりの両手の蛇はいなくなっていた。二匹の蛇はそのままラクシュミの胸に移動していた。

「わーい！成功した！」

「あ・・・」

ラクシュミはぽかんとして自分の胸を見た。小さい可愛い蛇が二匹自分の胸にいる。


ラクシュミは呆然とそれを見つめながらも、強烈な意思を感じた。それは言葉ではなかったが、言葉にすると

こんな感じだった。

すき、すきすきすきすき・・・・すごくすき


「・・・・」

「すごいねー。今回は完全に移ったよ。しかも二匹」

ゆりは手をたたいて喜んでいる。蛇は薄れて消えてしまった。

ラクシュミはゆりから離れてしばらくぼんやりしていた。

「あれ？いやだった？」

ゆりが不安そうに聞いた。

「いや。お前は本当に面白い女だなあ・・・」

ラクシュミはゆりを見てしみじみと言った。

「女の魅力は外見だけじゃわからないもんだな」

「それどういう意味でしょう」

ゆりはちょっとひっかっかって聞いた。

「お前は飽きない女って事だ。ほめてるんだ」

「はあ・・」

気になるほめ方だけど・・・まあいいや。


「王様・・・おなかすいちゃった・・・・」

「ああ、お前夕食も食べてなかったからな。何かもってきてやろう」

ラクシュミは服を着て消えた。しばらくして皿に乗った大量のパンと牛乳を運んできてくれて、ゆりは

ベッドの上でむしゃむしゃ食べた。そしておなかが一杯になった所でまた寝たのだった。



朝、食堂でゆりの長い髪を見た子供たちはびっくり仰天していた。

「すごーい。儀式したらそうなるのー？」

「うん。まあね」

ラギは興味深そうにゆりの髪を見ていた。

「僕も蛇霊神見たかったなあ・・・」

ゆりは思わず飲んでいたジュースを噴出した。

「何言ってるのよ。絶対だめよ」

「でも見たいよう」

「だめ！」

儀式が始まると、ラクシュミからすぐに子供たちにゆりの部屋に近づかないようにと思念が飛んでいる。

子供達に見られたら、それこそ立ち直れない。

「よかったネー赤ちゃんたち、蛇入って」

アナスターシャが近づいてきてゆりのおなかをなでた。

「母様髪すごく長いのもかわいいよー。ずっとそれでいればいいのにー」

シスが言った。

「邪魔だから切るよ。髪洗うのも大変なんだから」

「もったいないねえ」

「それより名前決めるのは進んでるの？」

ゆりは３人の顔を見回して聞いた。

「まだー。いろいろ迷ってるの」

アナスターシャが自分の席に戻って言った。

「まあゆっくり決めなさい」

ゆりは子供たちが食事を終わって出て行ったあとも、一人でまだ食べていた。

「昨日夜中にあんなに食べたのになー」

「食欲があるのは良いことですよ。逆になかったら困りますから」

侍女がそういいながらスープのおかわりをついでくれた。

「そうよね。そうだよね」

ゆりは自分に言い聞かせてしばらくご飯を食べ続けたのだった。


部屋に戻ったゆりは髪を切ってもらい、部屋で久々に大蛇を連れてきて一緒にバラクをして遊んでいた。

子供たちはそれぞれ勉強しているし、外はまだ雨だった。ゆり一人暇人だ。

「梅雨が早く終わらないかなあ」

「そうですねえ」

と言ったのはゆりの前にいる大蛇ではなく部屋にいた侍女だった。

「もう少しで終わりますよ」

「そうねー」

午前中はまったりと過ごし、午後誰か来ないかなーと思っていたら、ハザークの侍女がやってきた。

「ケーキ焼いたのでいらっしゃいませんか？」

侍女はなんだかにこにこしていた。

「本当？行こうかなあ」

数日前、侍女の様子がおかしかったが、今日はにこにこしているからやはりあれは何でもなかったようだ。

そうゆりは感じて、侍女にハザークの部屋まで飛ばしてもらった。

ハザークは長椅子に座っていた。

「こんにちは」

「ああ」

「では、ごゆっくり」

そう言って侍女は出て行った。

「あれ？ケーキは？」

「お前ケーキが好きなのか？」

ハザークが聞いてきた。なんだか今日のハザークはすっきりした表情をしているような気がする。

「だって、ケーキ食べにきたから・・・」

「まあいいだろ。そんなの後で」

「はあ・・・」

ゆりは頭をかきながらハザークの横に座った。するとハザークはゆりの体に腕を回してずりずり引き寄せた。

「昨日儀式があっただろう」

「はい・・・」

ゆりはちょっと頬を染めて言った。

「あの後儀式になったのか・・・」

「あの後？」

「いや、こっちの事だ」

ハザークは顔を近づけてゆりの首をなめたのでゆりが「うひゃ！」と言った。

「お前の蛇が見たい」

「え！」

「どーしても見たい。儀式のあとのすべすべの肌に触れたい」

「え・・・そんな王様みたいな事言われても・・・昨日王様といちゃいちゃしたとこだし」

「そうか、よかったな」

ハザークは微笑んであっさり言った。


よかったなって言われても・・・・


「お前やなのか？」

金色の瞳にじっと見つめられてゆりも困った。

「やってことはないですけど、いいってことも・・・・」

「抱きながら気もやるぞ。」

「え！？」

耳元でぼそっと言われてゆりの頬が真っ赤になった。

「気持ちいいんだろ？」

なぜそれを・・・・まさか王様が言ったってことはないよね・・・


ゆりはどぎまぎした。


「というわけで来い」

ハザークはさっさと立ち上がってゆりの腕を取って寝室に移動した。

「な、何がというわけ？」

「昨日は男たちと楽しく儀式したんだろ？だから今日は我と過ごしてもいいだろ？」

ハザークは笑みを浮かべて聞いてきた。

「え・・・」


どうでもいいけど・・・妙に機嫌がよさそうなのが気になる・・・・この前会った時とは違うなあ・・・


「ハザーク様、何かいいことありました？」

「別に」

「そうなんですか？機嫌よさそうですよ」

「悪いことはなかったぞ」

「そりゃよかったですけど・・」

「こいこい」

笑顔で呼ばれてしまい、その笑顔があんまり綺麗だったのでゆりはそのままふらふらベッドに上がってしまった。


まあいいか、これも儀式の一環ってことで・・・・と説明付けようとしてる自分がいるなあ・・・


ハザークはベッドに上がったゆりを抱きしめて、口付けた。

唇が離されると、すでにハザークは裸になっていたのでゆりはぎょっとした。

「今日は脱がす方がいいか？」

「はあ・・・」

「そうか」

ハザークはゆりの頬をなでて服を脱がして行った。


やっぱりえらくご機嫌だなあ・・・

最近こんなに笑顔は見てなかった気がする。

大体ハザークは笑顔じたい少ない。

「ねえ、これ、何の痕？」

ゆりはハザークの左腕にある四角い痕を見て聞いた。腕の外側に、3センチ四方ほどの濃い肌色の痕があった。

「前から気になってたんですけど」

「これか？昔、自分で切ったんだ」

「え？なんで？」

「お前は我が傷作るのいやか？」

ハザークはゆりを見て聞いた。

「そりゃいやに決まってますよ」

「そうか」

ハザークはうれしそうに笑ったのだが、ゆりにはちんぷんかんぷんだった。

「何かしたいと思ったが、お前には快楽をやるな。一杯」

「へ？」

「お前たちがそういう女でよかったな。侍女が泣かずにすんだし、我も楽しいし」

「意味がさっぱりわかりません」

「こっちの事だ」

ハザークはゆりをすっかり裸にして抱きしめた。

「すべすべだな」

ハザークの手がゆりの肌をまさぐった。

その日はゆりが参るくらいの熱烈ぶりで、かなり長い時間体が離されることがなかった。


「私・・・ケーキ食べにきたはずなんですけど・・・」

しまいにはゆりはぜいぜい言っていた。

「そんなにケーキが好きなら、毎日侍女に焼かせてもって行かせるな」

「いや、そうじゃなくて・・・今日はケーキを・・・」

ゆりが逃げようとしたらハザークがゆりの腰を引いた。

「もう十分ですー！！」

「まだ抱きたい」

「どんだけするんですか！ザクート王じゃあるまいに！」

つい性欲がすごいザクート王を思い出して言った。

「実は、我はザクートの息子なんだ」

「はあ？」

「その気になったら結構できる。それで今すごいその気なんだ。お前の蛇があんまりかわいいんで止まらない」

「えええええええ！！！！」

「お前の高い体温もあんまり気にならなくなってきた」

「気にしてください。頼むから」

と言う間にも後ろに乗られて体は抱かれていた。衝撃の事実をじっくり考える余裕もなかった。


「気持ちいいか？王妃」

「・・・・」

「今度は背中に蛇が浮かんでるぞ。かわいいな」

「・・・上向かせて」

ゆりがあえぐように言った。

「いいぞ」

ハザークは体を離してゆりの体を上に向かせた。

「もういやか？」

「これが最後・・・抱いて・・・」

「ああ」

ハザークがもう一度ゆりを抱いた時、ゆりはハザークの左腕を握り締めていた。

ゆりの体がびくりとはねた瞬間、ゆりの手にいた蛇がハザークの腕に移り、ハザークはびっくりして腕をみた。

「それあげる」

「・・・・」

ハザークは右手で蛇をなでた。蛇はやがて消えてしまった。

「消えてしまったぞ」

「しょうがないよ。」

「お前器用な事をするな。また欲しいな」

「また今度ね」

「ああ。今日は楽しかった。すごく満足した」

ハザークはそういうと蛇に変わった。なんだか満足そうに舌をぺろりと出している。


やれやれ・・・


すぐに動くのもだるかったのでゆりは布団をかけてしばらく横になっていた。


そういえば、ハザーク様ってザクート王の子供だって言ってたっけ。

ってことは・・・・親子とやっちゃったってことに・・・ガーン・・・

衝撃の事実にショックを受けたゆりだったが、横にいた大きな蛇は、ゆりの気は知らず、幸せそうな顔で眠っていた。


つい笑顔につられてしまった・・・あんな笑顔で呼ばれたら、ついふらふらいっちゃうよねえ。

と自分で言い訳しつつも


明日から自重しなくちゃ・・・


と思うゆりだった。

強い自制心がなければ、これだけの男達との関係を続けていくのは不可能だ。


その後部屋に戻るとケーキが届けられていた。ケーキはかなり豪華で、なんと２段に重ねてあった。

生クリームと果物できれいに飾られている。


これって何かのお祝い？それともよっぽどいいことがあったのかなあ・・・

それは謎だったが、ゆりは夕食後に子供らとようやくハザークの侍女が作ったケーキを食べたのだった。



すすむ