「どうであろうか。ゆり殿、少しはこちらの生活も慣れたかと思うが・・」
「はい、だいぶ慣れました」
「そうであるか。それはよかった」
女王は微笑んで言った。ゆりが過去の世界にきて。10日目の昼、女王のお呼ばれで一緒に昼食を食べていた。
今まであまり呼ばれることはなかったが、それは多分ゆりを気遣ったのことだろうと、ゆり自身も感じていた。
相変わらず女王様は光り輝いていて、神々しいくらいだ。騎士達が女王様にぞっこんなのもそりゃ当然だろうと
思わざるを得ない。
「それで・・・こちらの男性はどうであろうか」
女王はちょっと聞きにくそうに聞いてきた。
「はあ・・・」
やっぱり聞かれるだろうな、と覚悟していたが、ゆりとしてもどう答えていいやらちょっと困った。
「素敵な騎士が多いですね」
「そうであろう。」
城の中で見かける騎士は皆、それなりに見かけもいいし、いかにも女王を守る騎士って感じなのだが、ゆりとしては
はたで眺めたいくらいで、その騎士たちと仲良くなりたいとまでは思えない。
声をかければ相手は嫌とは言わないだろうが、内心どう思われるやらわからないと思うとちょっと躊躇してしまう。
今のところ一番見込みがありそうな男はディランの弟レイアスだった。レイアスは結構ゆりに好意を示してくれていたし
あれがもしお世辞だとしても、女として悪い気はしない。
ディランはとっても優しくていい人なのだが、本当の所、自分に対してどう思っているのか、いまいち分からない所が
あった。
しかも儀式の相手ともなれば、それなりに練習めいたこともしないとならない。それがはっきり言って気が重い。
始めて儀式で肌を合わすってのもちょっと怖いしなあ・・・向こうでは結構なりゆきでうまく行ったけど、
こっちではどうなるか、わからないしなあ・・・
「まあ、ぼちぼちと・・・やってみます。私の場合はある程度男の人と仲良くならないと、儀式に参加してもらう
わけにもいきませんので」
「そうであるか。まあ、無理せずにがんばっておくれ」
女王は微笑んで言った。
あんまりがんばりたくないんですけどね・・・・
内心そうぼやいたゆりだった。
第５話
部屋に戻ると、扉を開けたとたんに竪琴の音が聞こえてきた。
竪琴を弾いていた主は、ゆりの顔を見ると手を止めた。
「来てたの。レイアス」
「はい。ゆり様に会いたくて」
レイアスは竪琴をテーブルの上に乗せた。こちらの騎士はたしなみとして、皆楽器が一つは弾けるそうだ。
レイアスとディランは竪琴の名手だった。レイアスがゆりの部屋にある竪琴を見てそういう話になったのだが、
実際に聴いてみると、二人ともそれは素晴らしい腕前だった。二人にもゆりの竪琴を聴かせてほしいと当然言われたの
だが、ゆりは下手だからと言って辞退し、この際竪琴を教えてもらうことにしたのだった。
昨日はちょっとディランが来て教えてくれた。
「男の人の竪琴っていいね。曲も力強くて」
「そうですか？」
「ねえ、ハザーク様ってどこで脱皮してるの？」
「国の中央にある城の近くにある塔ですよ」
「白い髪の侍女さん知ってる？５人くらいいて、皆同じ顔してて目は赤いの」
竪琴を弾いていたらどうしても侍女たちの事を思い出してしまう。ハザークに会えないまでも、せめて侍女たちに
会いたいなと思ったのだ。
レイアスは少し首をかしげた。
「そういう侍女は知りませんが。」
「知らない？」
「はい。」
うーん。この時代にはいないのかな？
「それにしてもハザーク様はかなり長生きされてるのですねえ」
「うん。でも見かけはまだ若いよ」
「ゆり様は、儀式の前はハザーク様と、その、そうなってるんでしょう？」
「え・・・」
ゆりの頬が赤くなった。
「ううん。私はそういうことしない」
「そうなんですか？じゃあゆり様は、本当に王以外とは交わっていないんですか？」
「いや・・・その・・・ハザーク様とはたまには・・」
ゆりはしどろもどろになって言った。別に白状する義務はないのだが、王だけだと言い張るのもハザークになんだか
悪い気がしていってしまった。
「そうなんですか？」
「その・・・儀式の男たちとは、ちょっと一線を引いた恋人っていうか・・・」
「恋人・・・」
レイアスの目が見開いた。
「ハザーク様って前の巫女とも仲良かった？」
ゆりは何気に聞いた。
「いいえ。仲が良いということはありませんでしたよ。そんなにあったこともないんじゃないでしょうかね」
「でも、巫女を選ぶ時はハザーク様が選んだんじゃないの？」
「前の巫女の時は、神官の家系で成人した女性が一人だけだったので、必然的に巫女になったんですよ」
「へーそうなんだ」
「それよりもゆり様って結構すごいんですねえ」
レイアスがまじまじとゆりを見つめて言った。
「何が？」
「恋人っていうからには、ハザーク様としょっちゅう会われてるんでしょう？」
「何もなければ月に一度は会ってたよ。ハザーク様は私の下手な竪琴が好きでさ」
「ハザーク様は、僕が知る限り、人間の女の恋人なんていませんよ。巫女を抱くのも儀式の時だけだし・・・
それだけゆり様に魅力があるってことなんですね」
レイアスの瞳が輝いていた。
「え・・・たまたまじゃない？ハザーク様に会いに行く女って私だけだったし・・・しょっちゅう会ってて愛着が
わいただけよ」
「いいえ、あの方は、興味が無い女と用もなく会ったりはしませんよ」
「それはほら、長い時を生きてたら、性格も変わるってもんだし」
「そうですかねえ・・・」
ああ・・・その魅力を確かめたい。ベッドの上で。
レイアスはそう思っていたが、また夜忍んできたいとも言い出せなかった。前回の事で、ゆりが思いの他純情だと
いうことがわかったからだ。仲良くなり、なんとか相手の方からそう言い出さないだろうか、とずっと
思っていたのだが、なかなかそうはならない。儀式がどういうものなのかも気になって仕方がない。
ああ、まさか勝手に忍んでくるわけにもいかないし、もっと仲良くならなきゃ無理かなあ・・
レイアスがそう思っていた時、ゆりの左目がぱっと変わったのだった。
「ねえ、レイアス、今夜ちょっと遊ばない？」
「遊びます」
レイアスは即座に言ったのでゆりが笑った。
「寝室に来てもいいですか？」
「私がそっち行きたいな。いきなりシスがきたりすると困るから」
「いいですよ。じゃあ迎えにきましょうか？」
「うん。９の時くらいには変わってるね。でも言っとくけど、抱けないからね」
「じゃあ口付けだけ？」
「私を気持ちよくさせてくれたら、私のかわいい蛇紋見せてあげる」
ゆりが顔を近づけて言った。
「それは楽しみですねえ。いくらでも気持ちよくさせます」
レイアスは興味津々だった。
「ああ、楽しみだなあ・・・」
「ディランには内緒よ」
「はい〜それじゃ僕帰りますね。後できます」
ゆりが手を振り、レイアスは消えた。
レイアスってほんとかわいいわね。
こっちの男の研究もしなくちゃ。
今夜が楽しみ。
向こうではできない夜のお遊びに、ゆりはわくわくしていた。
そして約束の時刻、ゆりがお風呂に入って部屋で待っていると、直接瞬間移動でレイアスが入ってきた。
「いいですか？」
「うん」
ゆりはレイアスに連れられて、レイアスの寝室に直行した。
ベッドの横の台の上に、淡い灯りがともされていた。
「布団も緑系なんだね。緑好きだね」
ゆりがちょっとおかしそうに言った。
「緑に縁がありますからね」
ゆりはベッドに腰を下ろした。
「お酒飲みます？」
「ううん。いい」
「ではさっそく」
レイアスはゆりの横に引っ付いて座り、ゆりに口付けた。
「ねえ、あなたの蛇見せて」
「いいですよ」
レイアスは上着を脱いで、上半身裸になった。ゆりはレイアスの体を見てぎょっとした。
な・・・何これ・・・
レイアスの左腕に、緑の蛇が巻きついていた。それは普通だったのだが、その色があまりに鮮やかだったために、
ゆりは驚いたのだ。
「・・・・・」
「どうしたんですか？」
「すごい色だね。まるで本物が貼り付いてるみたい」
「そうですか？普通ですよ」
「これが普通？」
向こうの男はたいてい蛇の色も薄く、こんなにすごい色の蛇は見たことはない。
これがこっちの男・・・力がすごいと蛇もすごいのかな・・・・
ゆりはしばらく蛇を見つめていた。緑の蛇だが、もちろんうろこの濃淡もあり、瞳は緑に黒い縦線だった。
ほんとすごいなあ・・・
ゆりがあんまり蛇をじっと見てるので、レイアスはしびれを切らしてゆりの頬をなでて、顔を寄せて口付けた。
「今度はあなたの蛇見せてください」
「いいよ」
ゆりはベッドに上がった。
レイアスはゆりを抱きしめて口付けた。
そして優しく服を脱がして裸にした。
「柔らかい肌ですね」
レイアスがゆりの胸をまさぐりながら言った。
レイアスは優しくゆりの肌に口付けして、愛撫した。
「柔らかくて気持ちいいですよ・・・」
レイアスの愛撫はとても優しいものだった。肌をすべる手の感触も優しく、舌の感触も気持ちがいい。
「気持ちいいですか？」
「うん。とっても気持ちいい」
「下にも口付けてもいいです？」
「うん・・・」
レイアスは身を沈めてゆりの足を広げて、足の付け根に顔をうずめた。
「あ・・・・あん・・・・」
下半身への愛撫で、ゆりはかなり興奮し、やがて、ゆりのおなかと太ももに、同時に金色の蛇が現れたのだった。
「うわっ！」
「わっ！」
レイアスも驚いたがゆりも驚いた。蛇がかなり鮮明だったからゆりは自分でびっくりしたのだ。
「かわいいなあ。すごいかわいい。二匹も出てるなんて・・」
レイアスはゆりのおなかをなでながら言った。
「ん？なんだかいいにおいがしますね。しかも・・・気が桃色になってる。かわいい」
レイアスはゆりを抱きしめて言った。
「すごくいいなあ。かわいいなあ・・・」
「ねえ、レイアス、ちょっと変化させてもいい？」
「変化？」
「うん。私にはそういう力があるの。こっちの変化した男が見てみたい」
変化したら一体からだの蛇はどうなるのか、好奇心が押さえられなかった。
「変化すると、ちょっと自分を抑える自信がないんですが・・・」
「そうなの？とりあえず、いい？」
「まあいいですけど、危なくなったら逃げてくださいね」
「うん」
ゆりの左目がわずかに輝き、それを見たレイアスの両方の瞳が変わった。
うわ・・・・
なんと鮮やかな緑の蛇が右腕にも現れていた。
レイアスはゆりを抱きしめて口付けた。
「うっ・・・」
先ほどよりも熱烈に舌をからめてきた。手もぎゅっと胸の形が変わるほどにつかんでいる。
「・・・・」
さっきとだいぶ違うな・・
レイアスはゆりに口付けたままゆりの左足をぐいっと広げて、しかも自分のズボンを脱いでいた。
「うう・・・・ぷはっちょっとレイアス・・・」
ゆりが顔を横に振り、あわてて言った。
「抱きたくてしょうがない」
「え・・・」
「我慢できない」
「え・・・」
レイアスはズボンを膝の所まで下ろしてゆりの上に乗ってきた。
「わっ待って！抱くのはなしって言ったでしょ？」
「我慢できない。気持ちよくするから。ね」
「だめ！手で我慢して、お願い」
レイアスの顔つきはすっかり変わっていた。先ほどの人懐っこい表情はどこへやらすっかり興奮しまくり性格まで
変わっている。
「手？だめ」
「えー」
「中に入りたい」
「じゃあ、他の事してあげるから。ね、」
「他？」
「そこに横になって」
「・・・」
レイアスはベッドの上に横になり、ゆりは興奮しているレイアスの下半身へと手を伸ばし、それを口に含んだ。
「・・・・ん・・・・」
「気持ちいい？」
「気持ちいい。とても・・・」
もうこれで我慢してもらおう・・・くそ・・・私は男に奉仕しないたちなのに・・・
そういえば前に王様が、変化したら性格まで変わる男がいるって言ってたな。こういうことなのか・・・
こうなってしまっては仕方がないと、ゆりは口での奉仕を続けた。
レイアスの吐息が荒くなってきた。
「・・・はあ・・ああ・・・いい・・ん・・」
ゆりが口を離して、レイアスの体から精液があふれてきた。
「はあ・・すごい気持ちよかった」
「そう、よかった」
「じゃあ次は体で」
「えー！」
レイアスはすぐに逃げようとしたゆりの体を捕まえて上に乗った。
「ちょっと！レイアス！」
「絶対気持ちいいから」
「だめ！」
ゆりは暴れていたのだが、すっかり上に乗られて両手を押さえられていたので、逃げるに逃げられなかった。
この状態では瞬間移動もできない。
「レイアス！だめだったら！」
「暴れないで」
ゆりの体が突然動かなくなった。
うげ・・・
レイアスが力で押さえつけていたのだ。
豹変するにもほどがあるよ！
レイアスはゆりの両手から手を離して、両足を広げさせた。
「大丈夫、優しくするからね」
レイアスは笑って言った。
ぎゃー！このままじゃやられる！
こうなったらしょうがない。
ーディランディラン！助けて！レイアスの部屋まで来て！ディラン〜！
ゆりは命一杯ディランに思念を飛ばした。
レイアスがゆりの上に乗ってきた時、部屋にガウン姿のディランが現れた。
ゆりは思念が通じてほっとした。
「レイアス！何してるんだ！」
ディランの声にレイアスははっと我に返り、瞳が普通の目に戻った。
「あ・・・」
レイアスはゆりの上からどいた。
「レイアスお前・・・」
ディランは二人の状況を見て、怒りの形相になっていた。
「待って、ディラン、私が自分で来たの。だから怒らないで」
ゆりがあわてて言った。
「え？」
「すいません。つい我を忘れてしまって・・・」
「びっくりした。あんなに性格まで変わる人初めてだったから」
「すいません。本当に・・・」
レイアスはしょんぼりした顔で言った。
「本当にあなたから来たんですか？」
ディランがベッドの側に近づいて聞いた。
「そう。私から誘ったの。まさか変化してああなるとは思わなかったから・・・」
ゆりは座って前を布団で隠していた。
ディランの指がさらっとゆりの首に触れて、ゆりはぎくりとした。ディランを見ると、瞳がゆらいでいる。
「ど、どうしたの？ディラン・・・」
「あなたは私よりも弟の方が気に入ったんですか？」
ディランはゆりを見下ろして聞いた。
「そういうわけじゃないけど・・・」
「私の方が先に知り合ったのに・・・どうして弟の方が先なんです」
「え・・・・だって・・・ディランは普段はあんまりこういうことしたくなさそうだったから・・・」
なんだかディランの様子が変だった。
「あまり儀式にも乗り気じゃなかったでしょ？」
「そんなことないですよ。今はすごく乗り気です」
「へ・・・」
ディランの右手がゆりの背中をなでていた。
「おや・・・ゆり様の匂いでちょっとおかしくなってるようですね」
すっかり普通に戻ったレイアスが言った。
「え？まだ匂ってる？」
「部屋の中に匂いが残ってますから」
「私そろそろ帰らなきゃ」
ゆりが逃げようとすると、ディランの両手がゆりの腕をつかんだ。
「私の部屋に行きましょう」
「え？だめ」
「どうして？」
「だって・・・目変わってるし・・・」
ディランの瞳はすっかり変化してしまっていた。緑の瞳に、黒い縦線がでている蛇の目がじっとゆりを見ている。
「さあ、行きましょう」
ディランは笑っていた。
その笑顔が怖い！
ゆりは救いを求めるようにレイアスを見た。
「すいません。僕としても兄に睨まれるのはちょっと・・・」
レイアスは申し訳なさそうに言った。
「ディラン言っておくけど、レイアスとは交わってないから。ただ裸でいちゃついてただけだよ」
「それでもいいですよ」
いや・・・なんかやばそう・・・
「じゃあここでならいいよ。二人きりはなんだか怖いから」
「いいですよ」
ディランはあっさり言った。
人前は嫌だって言うかと思ったのに・・・
ディランはガウンを脱いで、ベッドに乗った。すっかり裸だったのでゆりはぎょっとした。
しかも左腕と胸に二匹蛇が出ている。完全に変化状態らしい。
ディランはゆりを抱きしめてゆりの頬をなでた。
「あなたは蛇紋出るんですか？」
「え・・・いや・・・でないよ」
ゆりが思わずいうと、横でレイアスがふふふと笑った。
「本当ですか？」
ディランは怪しんでいる。
「えーと・・・」
「すごくかわいい蛇でしたよ。」
レイアスが言った。
「どうして嘘つくんです？」
「それ以上興奮して欲しくないから」
ディランはゆりの体を押し倒して上に乗り、ゆりに口付けた。そして熱烈に口付けた後、言った。
「本当に抱かれてないんですか？」
「抱かれてないよ。その前にディランが来たでしょ」
ディランがレイアスを見た。
「本当か？」
「抱いてないけど、すごく気持ちよかったです」
レイアスがにこやかにいい、ゆりの顔が引きつった。
「何が気持ちよかったんです？」
ディランがゆりに聞いた。
「もーなんでさっきから余計な事ばっかり言うの！」
ゆりがレイアスを睨んで言った。
「だって、すごくよかったんですもん。またしてほしいなあ・・」
「あのねえ・・・」
「私にもしてください」
ディランがゆりの上に乗ったまま言った。
「・・・・」
なんじゃこいつらはー！
ゆりは結局ディランにも口でする羽目になってしまった。その上途中から興奮したレイアスまで加わってきて、
二人がかりで愛撫されて蛇を見て興奮した男たちにまた口でさせられるはで大変だった。
しかも二人ともかなり強引で遠慮がない。レイアスの豹変っぷりにもびっくりだったが、ディランの変わりようにも
びっくりだった。あんた一体だれ？って感じだ。
くそーこの豹変兄弟め！！
「すごく楽しかったです〜ゆり様」
しばらくした後、レイアスがゆりに抱きついて言った。
「私も楽しかったですよ」
ディランは反対側でゆりの髪をなでている。
そりゃあれだけされりゃ楽しいでしょうよ。
ゆりはふくれっつらだった。
「あれだけしたんだから私の質問には綺麗に答えて」
ゆりはディランを見て言った。
「なんですか？」
「前の巫女との事。レイアスは前巫女の事どう思っていた？」
「好きでしたよ。綺麗な人でしたし。顔も体も。」
「ディランは？」
ゆりがディランを見ると、ディランはレイアスに「ちょっと外せ」といい、レイアスはそのまま消えた。
「どうしてそう巫女の事にこだわるんです？」
「あなたたちと巫女との関係が気になるから。ドルイドは巫女が嫌いだって言ってたし。あなたもそう好きじゃない
みたいだから気になってるの。城の中で出会う騎士たちも、なんだか微妙な目を向けて来る人もいるし・・・前に
儀式の練習みたいな事したって言ってたでしょ。それが気持ち悪かったって」
「・・・あまり死んだ女のことをとやかく言うのもなんですが・・・巫女は、綺麗な女で、多くの騎士からは好かれて
いたんですが・・我々上位の騎士からはあまり好かれてはいなかったんです。特に私とドルイドは巫女が好きではなか
った。」
「どうして？」
「騎士は大勢いるのに我々はしょっちゅう寝室に呼ばれて・・・最初の内は綺麗な女だしまあいいと思っていたんです
が、その内にえらそうに指図してくるようになって、それが度を越えていた。私もドルイドも巫女の求めを無視して
いたんですが、ある日、女王に子供ができた時のために、儀式の練習をしようと言い出して・・・完全な嫌がらせでし
た。そういわれれば行かないわけにもいかなかった。上位４人の者が呼ばれて巫女を抱いたんですが、本当に気分が悪
かった」
「ばかじゃないの？」
ゆりは思わず言った。
「もっとどうにかできたでしょ？男がこんだけ一杯いて、だれもなにもしなかったの？」
「巫女は、たいていの騎士には好かれていたんです。そういう顔を誰にでも見せていたわけではなかったので、
女王にも信頼されていたし、女王の前では完全に聖女を演じていたので、我々としても、女王の耳にそんなこと入れたく
なかった」
「わかんないわねえ。あれだけいい男が一杯いるんだから、他に自分を好きな男と過ごしたほうがいいだろうに・・・
そりゃまあ力が強い男と仲良くしたい気持ちは分かるけど、巫女はあなたとドルイドが好きだったから嫌がらせしたと
か？」
「巫女は上位の騎士にこだわっていたようですから。ただ巫女のプライドに触っただけじゃないんですか。」
「プライドねえ・・・・４人ってあなたとドルイドと、後だれ？」
「ハインリヒとフークスです。」
「ふーん。だからハインリヒはいっつも変な目で見てくるんだ。『このあばずれ』って目が言ってた」
「え・・・それは気のせいでは・・」
ディランがさすがに引きつった顔で言った。
「ううん。それに近いことは言ってた。」
「すいません・・ハインリヒは、本当はいい奴なんですが・・・一番巫女の被害をこうむっていたので・・」
「そうなの？」
「ハインリヒは一番騎士で、巫女の一番のお気に入りでもありまして、巫女はあいつが女王と巫女以外の女を抱くのを嫌がっ
て、赤い月で抱いた他の女に嫌がらせをするようになったんです。それで、ハインリヒはしばらく女王と巫女以外とは過ご
せなかった」
「あらら」
「それでもハインリヒは巫女には優しく接していました。」
「ふーん。なんだか巫女がいたらいたで大変なんだねえ・・・」
巫女っていうのは女王の次に位が高い。そうなるとやはり欲もでてくるものなのだろうか。
「全ての巫女がそうではないとわかってはいるんですがね。引退したその前の巫女は、優しいいい人でしたから」
「そう・・・」
ハインリヒ・・・・ちょっとかわいそうな奴。
ゆりはハインリヒに同情してしまった。
でもだからといってその恨みをこちらにぶつけるのはやめてほしいよ。全然関係ないんだから・・・
「儀式って、さっきみたいな感じなんですか？」
ディランが突然話題を変えて聞いた。
「まあ、ああいう感じ」
「私、参加したいな。赤い月以外であんなに興奮したの始めてですよ」
「・・・・」
「どうしたんですか？あなたはよくなかった？」
ゆりがじろりと睨んでいたのでディランはゆりの髪をなでて聞いた。
「ディラン性格変わりすぎだよ。何よ。普段は私はそんなにその気がないってな感じだったくせに」
「あなたの匂いが、赤い月の女王のようだったのでつい・・・」
「女王にはあんなことさせないくせに」
「どうもすいません・・・」
ゆりはため息をついた。
儀式の前に問題が一つある。それは、変化したらどっちも全然言うこと聞かないってことだ。
男たちにはいくら興奮しまくっても自制心をもってもらわないと困る。
あれじゃあ儀式ではやられちゃうじゃん。困ったなあ・・・
向こうの男は私が王妃だから言うこと聞くけど、こっちでは違うから難しい・・・
「自信喪失〜」
ゆりはぐったりして横を向いた。
次の日の午後、ディランは気になったのでゆりの部屋に行ってみた。ゆりは部屋にいて、座ってお茶を飲んでいた。
「あら、こんにちは」
「こんにちは・・・」
ゆりの目は両方黒い。今日は襟で首の周りが覆われている服を着ていた。
「なんかさ、今日起きたら、首が赤くなってて、寝てるうちに虫にかまれたみたい」
ゆりが笑顔でいい、ディランの顔が赤くなった。
「む・・・虫・・・？」
「肩もかまれたの。」
「・・・・」
「どうしたの？」
ディランの目がせわしなく動いていたのでゆりはディランの顔をのぞいて聞いた。
「い・・・いえ・・・」
それは虫ではなく自分かレイアスが付けた痕に違いない・・・そうディランは思い、恥ずかしくてたまらなかった。
今となれば、なんで昨晩あれだけ興奮しまくったのか、自分でもわからない。
ああ・・・すごく恥ずかしくなってきた・・・
「どうしたの？なんかすごく赤くなってるよ？」
「い・・・いえ・・今日はもう帰ります。それでは」
ディランは今日は優雅にお辞儀もせずに出て行った。
「？？？」
ゆりは不思議そうに首をかしげたが、まあいいやと思い、クッキーをつまんで食べたのだった。
すすむ