「ねえ、もう一人の母様」
シスの言葉にゆりの左目がぱっと変わった。
「なあに？」
今は朝食の時間だ。二人とも朝食を食べている最中だった。
「ハインリヒあんまりいじめちゃだめだよー」
「ああ、昨日の事？」
ゆりは思い出してちょっと笑った。
「あれだけ気を奪っても平然としてるなんて、こっちの人はすごいねえ。」
「ハインリヒいい人なんだからー、だめだよ。そういうことしちゃ」
「シスには良い人なんだ」
「皆親切だけど、ハインリヒが一番いろいろ教えてくれるんだよ。良い人だよ」
「ふーん・・・」
一番騎士が自らとは、気合入れて教えてくれてるんだねえ。
「ねえ、母様、儀式っていつ起こりそうなの？」
「さあねえ、わからないね。こればっかりは。もしかして長引いてほしいとか？」
ゆりが笑みを浮かべて聞くと、シスは微妙な顔をした。
「皆にはとても会いたいんだけど、僕、強くなりたいんだ。もっと」
「シスって王子様なんだねえ。えらいよ。でもまあそんなに長い間はいれないよ。向こうでみんな泣いてるかも
しれないでしょ」
「うん・・・」
「まあ3.4月もあれば儀式の一回も起きるんじゃないかなーと思うけどね」
「そうかあ・・・そうだね。あまり長い間は居れないよね。」
「まああんまり詰め込むのも大変だからほどほどにがんばりなさい」
「うん」
シスは大きくうなずいた。
第７話
朝食後黒目のゆりがまったりしていたら、侍女が伝言をもってきた。それはフークスからだった。
今日の午後、２時くらいに伺います、と書かれていた。
午後かあ、午前中空いたなあ。
「ねえ、シス今日は何の修行するの？」
ゆりは横で牛乳を飲んでいるシスに聞いた。
「今日はねえ、午前中は闘技場で力の訓練するんだって。闘技場もすごくでかくて立派なんだよ」
「私見学できないかなあ。一度見てみたいな」
「いいよ。見にきたら？」
ゆりは身支度をしてシスと一緒に闘技場に連れて行ってもらった。石作りの闘技場は屋根もない。中に入るとすごく
でかく感じた。
「ここでねえ、５年に一度騎士たちのトーナメントが開かれるんだって！それで様々な試合があって騎士の順番が決まるんだよ」
シスが教えてくれた。
「へー」
「向こうはぼろぼろだけど、もっと小さいから作り直したのかもしれないなあ」
「ふーん、そうなんだ。すごくでかいねえ。大運動会できそう」
「？」
「こっちの事」
一段高くなった客席には、ひときわ豪華な席があった。きっとあれが女王様が座る席に違いない。
トーナメントかあ。楽しそうだなあ・・・
周りをぐるぐる見ていたら、ハインリヒと３人の騎士がやってきた。
「おや、おはようございます。巫女様」
ハインリヒはゆりを見て言った。
「おはよう」
昨日、あんなことがあったのでゆりとしてはかなりきまずかった。
「母様がちょっと見学したいって」
「いいですよ。客席から見てますか？」
「うん」
「僕連れて行ってあげるね」
シスはゆりを上の客席まで瞬間移動させてくれた。
ゆりは一番前の席に座り、母親参観のような気分で下を見下ろした。
シスの周りに３人が立ち、ハインリヒは少し離れた所に立っていた。ハインリヒが何か言うたびに男たちが
シスに攻撃し、シスがそれをかわしているようだ。ハインリヒが言ってる言葉はよくわからなかった。
きっと古代語なのだろう。
シスもたくましくなったもんねえ・・・・さすが王様の息子♪
ゆりは我が子の成長を頼もしく思った。闘技場ではシスらから離れた場所でも他の騎士たちが訓練をしているよう
だった。普段は騎士らの訓練場にもなっているのだろう。
すごいもんだねえ・・・
両手から火の弾を出したり、氷の粒を出したり、雷が落ちたりと、まるでマジックショーでも見てるようだ。
ハインリヒは真面目な顔でいろいろ指令を送っていた。
嫌味なだけな男じゃないのね。何でああ私には嫌味言うんだろう・・・・
ほんとだまってりゃいい男なのに・・・
ゆりがぶつぶつ思っていると、遠くの騎士たちが、自分を指差していた。
巫女がいる、とでも言ってるのだろうか、とゆりはそう気にしなかったが、しばらくすると、一人がハインリヒに近づい
て何か言った。ハインリヒもこっちを見て、３人の騎士たちとシスもこっちを見上げた。
ん？みんな何見てるんだろう。
ゆりは左右をきょろきょろし、次に上を見て青ざめた。そこに白っぽい透明な蛇が浮いていて、顔が見えたからだった。
「ぎゃ！」
ゆりは驚いて椅子から落ちてしまった。
「母様！」
シスが飛んできた。
「大丈夫？」
「う・・・うん・・・」
透明な蛇はゆりをじーと見ていた。体長は３メートル以上はあるだろうか。青い瞳をしていた。
「何これ！」
「蛇霊神ですね」
側にきたハインリヒが言った。
「蛇霊神？これが！？」
それはゆりが今まで見た蛇とはまるで違っていた。こんなに白いきれいな蛇霊神は見たことがない。蛇霊神はゆりに
近づいてきてゆりの周りをぐるりと回った。
「え・・・ちょ、ちょっと・・・」
「さすがすごい巫女様ですねえ。蛇霊神が自分でよってくるなんて」
「えー・・・」
ゆりは手で蛇をどけようとしたが、やはり幻なのか触ることはできなかった。
「ちょうど男も一杯いるし、ここで儀式したらどうですか？」
ハインリヒはさらっと飛んでもないことを言い出した。
「冗談じゃないわよ！あ、そうだ！あんた！女王様の中に入りなさい、ほら」
ゆりはそうだと思いついて蛇に話しかけてみた。
「女王様のおなかに入りなさい」
「聞いてないよ。母様」
シスが言う。蛇はゆりの言葉に耳を貸す様子もなく、ゆりの周りをぐるりと回ったままじっとしている。
「ちょっとお、そうだ、古代語で言ってよ。ハインリヒ！」
ハインリヒが古代語で言った。だが蛇は知らん振りだ。
「だめですね」
「えーこのまま女王様のところ行ってもだめかなあ」
「儀式なさったら？」
「やだって言ってるでしょ。第一女蛇降りてこないとできないんだから。念のため女王様のところ連れて行ってよ」
「いいですよ」
ハインリヒがゆりを移動させた。
王の間にいた女王は、ゆりの周りの白い蛇を見て目を丸くしていた。
「蛇霊神ではないか。どうしたのじゃ？」
「女王様この子に命じてみてくれませんかね。体に入るように」
「命じる・・・やってみよう」
女王は白い蛇にいろいろ話しかけたが、だめだった。蛇はまるっきり無視している。
「だめじゃのう・・・なぜ降りてきたのじゃ？」
「さあ、わかりません。儀式になる様子はないんですけどねえ・・・」
その時、ちょっと遅れてきたシスが言った。
「母様の中に一杯蛇がいるから、それで仲間だと思ったんじゃないかな」
「仲間・・・」
「どっちみち、儀式が起こるのは間違いないようじゃのう。さすが良い巫女殿じゃ」
女王は満足げだった。
やれやれ・・・
ゆりは部屋に戻ったものの、蛇も一緒についてきた。中にいた侍女がゆりを見てぎょっとした。
「もーいい加減どっかに行ってくれないかな」
ゆりが文句を言うと、蛇はゆりに目を向けた。
「飛んでいきなさい。ね。」
蛇はつんと横を向いた。
「むかつく子ね・・・」
そういえば、前の時は蛇霊神が飛んでて、儀式起こったよね。でも今回はそういう気配はまだないし・・・
第一儀式は早すぎるよ。まだだれにも好きになられてないし・・・いきなり儀式はきついよ・・・
向こうでも儀式をしたのは、男たちと知り合ってだいぶだってからだった。いくらなんでも知り合って一月にも
ならないのに儀式はないだろう・・・第一口付けさえしてもいないのだから。
向こうでは最初の儀式はヴィラがいたから結構安心してやれたが、こちらではまだ誰とも仲良くなっていないし、
せいぜい抱きついて気もらっただけで儀式というのも飛びすぎている。
「全く参ったなあ」
蛇は時々ゆりの体の周りをくるくる回り、後はじっとしていた。
「まだいたんだねえ」
昼食の時間部屋にきたシスが言った。
「うん。まあ害はないんだけどさあ。別に苦しくないし」
「でもきれいだね。蛇霊神ってきれいなんだねえ」
「向こうではこんなにきれいじゃなかったよ。黒っぽいの多かったし」
「へー」
シスは興味深そうに蛇霊神を眺めて触れてみたりした。
「面白い。手が透ける」
「やれやれ・・・」
ゆりは仕方なく蛇が巻きついたままご飯を食べた。侍女らはみんな怪訝な顔で見ている。
侍女らには「気にしないで」といい、侍女たちも「はい」と返事をしてきたが、内心、さすがすごい巫女
とでも思っているかもしれない。
約束の時刻になりフークスがやってきた。フークスはゆりを見て、思わず持っていた花束を落とした。
「どうしたんです？それ」
「いやーさっきから引っ付かれちゃって・・・」
「はあ」
フークスは花束を拾い上げ座っているゆりの周りをじろじろみた。
「きれいね。どうもありがとう」
「あ、はい」
ゆりは花束を受け取った。ピンク色のかわいらしい花束だった。
「これ、花瓶にさして」
「はい」
ゆりは侍女に花束を渡し、侍女は部屋を出て行った。
「フークス蛇霊神見たことある？」
「ありますよ。たまにそこらも飛んでますし、ですが、だれかに引っ付いてるのを見るのは初めてですよ」
フークスは向かい側に座って言った。
「どうして引っ付いてるか理由は分かりますか？」
「なんとなくは」
「なんです？」
「・・・ちょっと言いにくいな・・・」
ゆりは頬をかいた。
蛇霊神というのは、巫女の淫気というものが大好物らしいと聞いたことがある。もしかして、望みはそれかもしれない
とゆりは思っていた。
「言いにくいことですか？」
「うん」
その時二人の侍女が入ってきて、テーブルに花瓶を置き、お茶とお菓子を置いて去って行った。
白い上が少し広がった丸い陶器の花瓶に花が綺麗に活けられていた。
「いいにおいがするね」
「儀式をやってもらいたがってるってことではないんですか？」
フークスが聞いた。
「でも、女蛇降りてこないから、儀式できないし」
「準備をして祭壇に行って女蛇を呼ぶのではないんですか？」
「ううん、私の場合は突然降りてくるよ。いっつも行き当たりばったりだよ」
「そうなんですか・・・」
フークスといえば・・・昨日の女王様の言葉もちょっと気になるなあ・・・
肌を合わせれば気に入るってのはどういうことなんだろう・・・・
「儀式も今の形式とは違うんですねえ」
「違うよ。私、男の人と最後まで交わらないし」
「そうなんですか？」
「うん。」
「では何をするんですか？」
「いや・・・そう聞かれても返答に困るけど・・・」
ゆりは恥ずかしげに横を向いた。皆に同じセリフを言わなきゃならないのも恥ずかしい。
「あのー実はさ、昨日女王様が気になることいってたんだけど・・・あなたのことで」
「なんでしょう」
「私が、肌をあわせたら絶対あなたを気に入るって」
「え・・・」
そういう話題になったついでに聞いてみた。
いやー私は、女性を喜ばすのが得意です、とか言われたらどうしよう、とちょっとどきどきしていたら、
フークスはぷっと笑った。
「ああ、それは、私の蛇が珍しいからそういったんでしょう」
「蛇？」
「ええ、私の肌にいる蛇は、かなり珍しいですよ。見たいですか？」
フークスがにんまり微笑んで聞いてきた。
「え・・・」
男の肌の蛇は、もう一人のゆりは目がないが、こちらのゆりも見るのは嫌いではない。
どう珍しいんだろう・・・
珍しいといわれれば見たくなってしまうもの。ちょっと興味をひかれてしまった。
「み・・・みたいなあ・・・ちょっとだけ・・・」
ゆりは恥ずかしげに言ってしまった。
「ふふ、お互いに見せあいっこしませんか？」
「えー無理だよ。私蛇いないから」
「そうなんですか。まあいいですよ。見せてあげましょう。じゃあちょっと失礼しますね」
そういうとフークスは服を脱ぎだした。上半身を全部脱いで、フークスはゆりに背中をむけた。
ゆりは思わず「きゃあ！」と声をあげてしまった。背中にいたのはうねった一匹の金色の蛇だった。
「お・・・お友達がいる・・・」
ゆりはうれしくなって言った。ゆりは今まで他人に金色の蛇が浮いているのは見たことがない。
蛇は結構でかく、背中一杯にいてゆりの蛇よりも４倍くらいの大きさだった。雄雄しい蛇だ。
「うわー素敵だねーお友達だ・・・」
同じ色の蛇がいることで、ゆりはかなり親近感を抱いてしまった。
「お友達？」
フークスが顔を向けた。
ああ・・・なんだか金色の蛇みたらその気になってきた・・・
ミニミニハザーク様ともいえるし・・・
うーん、女王様の言ってたのはこういうことかあ・・・
ゆりは一人で納得した。
「お友達ってどういうことです？」
「実は・・・私の蛇も金色だから・・・」
ゆりは真っ赤な顔で言った。ちょっとその気モードになっていたのでぽろっと口から出たのだ。
「え？さっきいないって・・・」
「肌にはいないの。その、興奮すると・・・」
「そうなんですか・・・それは、見たいな。私も同じ色の女の子は見たことないんですよ」
フークスもその気になっている。
二人はしばし見つめあった。
「寝室に行きましょう」
「え・・でも、あなたとこの前会ったばかりだし」
「関係ないですよ。１００回会ってもその気にならない人にはならないし」
「はあ・・・でも、私その・・・抱かれるのは困るんです」
「交わらなかったらいいんです？」
「はあ・・・」
「それでもいいですよ」
ああだめだ。あの金色の蛇に抱きつきたい！
ゆりは誘惑に負けてしまいフークスと寝室に行ってしまった。寝室に行くと蛇霊神はちょっと邪魔かなと思ったのか、
少し離れて床の上にいた。
うーん。なんだか、フークスって童顔だからあんまり危険って感じがしないな・・・
「蛇なでてもいい？」
「いいですよ」
ゆりはフークスの背中の蛇をなでた。
「すごいきれいね。鮮明で、輝いてる。きれー」
フークスはくるっと回ってゆりを抱きしめた。
「あなたの蛇も早くみたいな」
「うう・・・うん・・・」
優しく抱きしめられた。
いいのかなー。女王様の子供の父親とこんなことして・・・まあいいか、女王様いいって言ったし・・・
すでに頭の中はお気楽モードになっている。
裸にされて、口付けをされながら胸に触られているだけで、ゆりのおなかに二匹の蛇が浮かび上がった。
「おや、なんとかわいらしい・・」
フークスがゆりのおなかをなでて言った。
出るの早っ！あれ？なんかすごい色してるなあ・・・
鮮やかな金色の蛇にゆりはちょっと驚いた。
「可愛い女の子ですね」
蛇にちゅっとキスされた。
「あなたも、蛇紋は別に出るの？」
「出ますよ。もう一匹」
「すごーい・・・」
フークスはにこにこしてゆりに口付けた。
なんだかフークスって、ひっついてると安心する人だな・・・
気質が王族の気に近いからなのか、見かけも体格も違うのに、ラクシュミと一緒にいるような感じさえしてしまう。
それとも同じ色の蛇を持つ者同士というものは、惹かれ合ってしまうものなのだろうか。
引っ付いてるのは全然やじゃない。
フークスはゆりの背中の方に蛇霊神が移動してきているのを見た。蛇はくねくね動いておなかを上にし、しばらくすると
ふらふらと上に上って行った。
「どうしたの？」
「あの蛇、あなたの匂いに酔っ払ってどこか行きましたよ」
「え？」
ゆりは後ろを見た。確かに部屋の中に蛇はもういない。
「ほんとだ」
「すごくいいにおいですね」
「あなたのもう一匹の蛇みたいな・・・」
「まあ、それは今度ね。」
「今度？」
「お楽しみがあるほうが面白いでしょう？」
「う・・・うん・・・背中に抱きついてもいい？」
「いいですよ」
フークスはうつぶせになり、ゆりはからだを寄せて蛇をなでなでした。
「まさか一番最初にあなたとこうなっちゃうとは思わなかったなあ」
「え？ディランやレイアスとは？」
「まだだよ。」
「そうなんですか」
フークスはてっきりゆりがディランと引っ付いたとばかり思っていたのでちょっと驚いた。
「なんだかあなたの蛇見てるとハザーク様にも会いたくなってきたなあ。脱皮ってのぞいちゃだめかな？」
「だめですよ。激怒されますから」
「そうなの。残念」
「うーん。ちょっと後ろめたい気分になってしまったなあ」
「え？」
「陛下にね。まさかあなたに金色の蛇がいるとは思わなかったから。かなりあなたを可愛く感じてしまいましたよ。本当
はこんなつもりじゃなかったのに参ったなあ。」
「本当はどんなつもり？」
「儀式に参加するだけの仲？ディランがあなたを気に入ってるようだったのでそういう気になったんですが、予想以上に
かわいいので心が動きそうです」
「はあ・・・」
「いやー参っちゃったな。ははは」
フークスは笑っていた。
それからしばらくゆりはフークスに抱きしめられてしばらくじっとしていた。
「なんだかあなたの事・・・す、好きになっちゃった」
ゆりがおずおずと言った。あまり激しいこともされなかったのも、好意を持った原因かもしれなかった。
肌を寄せてていても嫌ではないということは、好きになっちゃったということだろう。
「僕もあなたの事好きになっちゃいましたよ。またあなたの蛇見せてくださいね」
「うん・・・」
夕方、夕食を一緒に食べにきたシスがゆりの周りを見て蛇がいないのに気づいた。
「あれ？どっかいったの？」
「うん。いつの間にか行っちゃったよ」
「一体何しに来たんだろう」
「さあね」
ゆりはぎこちなく首をかしげた。
「母様顔真っ赤だよ？」
「え？」
ゆりは両手で頬を挟んだ。
「部屋が暑いからじゃない？」
「そうかな？そんなに暑くないけど」
「いやあ、暑いよ」
ゆりはぱたぱた手で仰いでいた。
なんだかシスに後ろめたいな。息子は一生懸命勉強してるのに、母親は父親以外の男と恋愛モードに入ってるし・・
金色の蛇みたらすっかりその気になっちゃったよ。
私があんなに金色の蛇に弱いとは・・・これも全部ハザーク様のせいかも。まあそういうことにしておこう。
ゆりは責任をハザークに何気になすりつけていた。
その頃未来では、ハザークがハクションとクシャミをして、侍女らに「風邪ですか？」と心配されていたのだった。
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