ラギが帰ってきて、アナスターシャはようやくちょっと寂しさを紛らわすことができた。ラギは虎の国に行く前よりも
ちょっとたくましくなった感じで、陽に焼けてるし、まるで別人のようだ。
「カレー屋さんに行ったんだよ。繁盛してたよ。」
ラギは食事を食べながらいろいろ虎の国の話をしてくれた。アナスターシャは興味深げに聞いていたが、全くシスや
ゆりのことが話題に出ないのも変だなと感じていた。
「ラギって結構しっかりしてるのね。私二人がいなくなって結構泣いちゃったよ」
「僕だって心配してるけど、ここでいろいろ言っても仕方ないしさー」
「そうだけど心配じゃん。シスが泣いてないかとか」
「大丈夫だよ。結構にーはしっかりしてるよ」
「そうかなあ」
「真面目だから向こうでもいろいろ授業とか受けてるよ」
「いいなあ。すごい時代の授業ってどんなんだろ。」
「まあ、ねーはねーでがんばってよ」
とラギが言うと、アナスターシャはぶーと頬を膨らませていた。
きっと過去でいろいろ教えてもらってるんだろうな。
にーはすごく強くなりたいって言ってたから・・・
きっと僕の分も強くならなきゃって思ってるんだろうな。
がんばって、二人とも。元気で帰ってきてね。
ラギは遠い過去にいる母親と兄にエールを送ったのだった。
第8話
その夜、ゆりは久しぶりに城を抜け出してぶらぶらしていた。庭園にいっても人っ子一人いない。
リーンリーンと虫の音が聞こえてきた。
今夜も綺麗な星空だ。きっと明日も晴れに違いない。
もしかして、噴水の所にドルイドいたりして・・・・
ゆりはちょっと思ったものの、行こうかどうしようかためらった。
ちょっと行ってみようかな。
噴水の近くに移動すると、水の音と一緒に笛の音が聞こえてきた。噴水の所に座ってドルイドが横笛を吹いていた。
なんだか悲しげな旋律だ。
こっちの男って風流だねえ、みんな何か楽器ができるなんて・・・それだけゆとりがあるんだろうなあ・・・
笛の音が不意に止まった。ドルイドがこっちに気づいたようだ。ゆりは近づいて行き、ドルイドの横に座った。
「こんばんは。ドルイド」
「こんばんは」
「あなたは笛の名人なんだね」
ドルイドは手に木製の笛を持っていた。
「名人というほどのものではないですが・・・巫女様はまた散歩ですか？」
「そう。あのさ、私厳密に言うと巫女じゃなくて王妃だから、ゆりって名前で呼んでくれないかな？」
ゆりは巫女じゃない所を強調してみた。
「ゆり様」
「そう」
「すいません。この前は失礼な事を」
「まだ気にしてるんだ。もういいのに。ねえ、夜お勧めの場所ってどこかない？」
「お勧め？」
「向こうじゃあんまり夜出歩けないから。どこかいい所ないかなーって思って」
「・・・・ありますよ。夜で綺麗なところ」
ドルイドはちょっと考えて言った。
「本当？連れて行ってくれる？」
ゆりの目が輝いた。
「いいですよ」
意外にもドルイドはあっさり言ってくれた。二人は立ち上がり、ドルイドは軽くゆりの腕に触れて移動させた。
移動した場所は森の中の泉のほとりのようだった。泉の上空を、一杯光る物が浮いていた。
「わあ、きれい、これなあに？」
光る物はゆりの近くにも飛んできた。一杯あたりをふわふわ飛んでいる。
「虫の一種ですよ。メピカという虫です。光を発するんです。」
「へー・・初めてみた。すごく綺麗ね」
ゆりは喜んで虫を眺めていた。黒目のゆりならば、蛍みたいと言っただろう。まるで蛍のようにぴかぴかと光の強弱を
繰り返している。幻想的な光景だった。
ゆりは泉の上に白いぼんやりした人影のような物を見た。
「わっあれなに？」
ゆりが指指すと、ドルイドが目を向けた。
「泉の精か森の精かじゃないんでしょうか」
ドルイドは別に驚きもせずに言った。
「え？そういうのいるの？」
「たまに見かけますよ。はっきり見えることもありますし」
「へー・・・」
ゆりはしばらく景色を堪能した。ドルイドは何か考え込んでいるような顔つきだ。
「何考えてるの？」
ゆりは聞いてみた。
「え？」
「何か考えてるみたいだったから」
「あなたはディランと仲良くなったんでしょう？なぜ私に頼むのかと思ったんですよ。私は一緒にいてもあまり
楽しくないでしょう」
「私が楽しくないんじゃなくて、あなたが嫌なんでしょ？」
「いえ、そんなことは」
「私は別にあなたの事嫌いじゃないよ。嫌いになるほど知り合ってないし、あなたは私が巫女ってだけで気にしすぎだよ。」
「・・・」
「あなた、儀式に参加するのは嫌だけど、一応気になってるんでしょ？上位の騎士だし、女王様の子供のために、参加して
おきたい気持ちもあるんでしょ？」
「それは・・・否定はしませんが・・・」
「候補はもう４人いるから、後椅子は一つしか残ってないよ。」
「４人？」
「ディラン、レイアス、フークスとルーク」
「え、ハインリヒは？」
「あの人は天邪鬼だからねー。どうかな。内心気にしてるだろうけどね。あなたはすごく誤解してるけど、あれって
いやいや女を抱くもんじゃないんだよね。好きーってお互い思い合って肌を引っ付けるもんなの。だからまずはいろいろ
お話して、仲良くならないといけないんだよ」
「はあ・・・」
「もしそういう気があったら、部屋を訪ねてきたら？」
「・・・・わかりました・・・」
ドルイドはそういったものの、顔つきは微妙だった。
ゆりはその後お城の側まで送ってもらった。
「じゃあおやすみ」
ゆりは手を振りドルイドと別れた。
さー、ドルイド来るかな？どうだろう。何度か向こうとも会えば、ちょっとは気持ちも変わると思うんだけどな・・・・
ゆりは寝室に行き、そのまま眠りについた。
ゆりがこちらの世界に来て一月が経過していた。
すっかりこのきらびやかな世界に慣れてしまったけれど、やはり寂しさは絶えず付きまとっている。
昨日は女王が演奏会を開いてくれて、いろんな楽器の演奏や歌を聴かせてもらった。
この時代に来て感じたことは、結構平和らしい、ということだ。女王もたまに城から出て庭園をぶらついたりしてるようだし
争いがどこかで起きているという気配すら見えない。それだけ一族の力が強く、他をけん制しているからのようだ。
ラクシュミが見ればさぞかしうらやましがることだろう。
逆にラクシュミが不憫に見えてきたゆりだった。
朝起きると雨がザーザー降っていた。こちらに来てこんな雨は初めてかもしれない。
「昨日は竪琴の人すごかったねえ」
朝食を食べながら、横にいたシスにゆりが言った。演奏会で、かなり竪琴の名人の女性がいたのだ。
竪琴もすごく立派なものだった。
「そうかなあ」
とシスが言った。
「そうかなあって、私は感動しちゃったよ。あのレベルには死んでもなれないと思ったよ」
「僕はガーベラ様の竪琴聴いたから別に・・・」
「あ、そう。私は聴いてないからねえ・・・」
ガーベラが降りてきた時の竪琴は、とってもすごいものだったらしいのだが、ゆりは自分で聞いてないのでさっぱり
わからない。
「でも、女神の竪琴って聴いちゃったのは不幸かもね。そこそこのが良いと思えなくなっちゃったんだから」
「別に不幸じゃないよ。」
「ならいいけどねえ、あんまり子供の内から耳が肥えちゃうのも困りものね」
あれがそうでもないっていうのなら、私の竪琴は一体どうなるんだろう・・・ひどい
朝っぱらからちょっと落ち込んでしまったゆりだった。
この日はディランが午後来てくれることになっていた。
そろそろ儀式の事も話さねばならない。それも結構気が重い。一体どういう説明をすればいいのやら。
今日は大雨だったので午前中は部屋で過ごし、午後、ディランがいつもの通り優しい微笑みと共にやってきた。
「今日はすごい雨ですね」
「そうだね。」
「今日は気いりますか？」
「うん。もらおうかな」
ゆりは長椅子でディランに引っ付いた。
「昨日の演奏会どうでしたか？」
「すごくよかったよ。そういえば昨日は女の子ばっかりだったもんね」
客席にいたのは女王様のほか、綺麗な女性ばかりだった。女の騎士はいたが男の騎士はいなかった。
女王様はたまにああやって女性達と楽しんでいるようだ。
「シスがすごく恥ずかしそうにしてたよ」
「そうですか。王子は女性騎士の人気者らしいですからね」
ディランが笑って言った。
「竪琴のすごい上手な人がいたよ」
「ああ、その女性はきっと国で一番の名人ですよ」
「そうなんだ。すごいねえ。よくあれだけ両手が動かせるよね。歌も歌ってたし」
「そうですね。私もあそこまではなかなか・・・」
ゆりはちらりと長椅子の後ろにある窓を見た。そこはテラスもある大きな窓なのだが、激しく雨があたっている。
「あのさ、ディラン、そろそろ儀式の話をしようと思うんだけど」
ゆりが突然話題を変えたので、ディランはちょっとぎょっとした表情をしていた。
「ディラン、参加してくれる？」
「儀式ですか・・・」
「うん・・」
ディランは何度も瞬いていた。
「嫌なら嫌だと言ってくれていいんだよ？その方がありがたいし」
ディランの顔がこわばっていたので、ゆりはありゃ、と思った。
もしかしなくても、いやなのかも・・・・
「嫌ではないんです。ただ、その・・・いろいろ心境は複雑でして・・・」
ディランはちょっと言いずらそうだった。
「それはどこら辺が？」
「その・・・」
ゆりのことはあまり好きになりたくない、と思っていたディランだったが、この前は弾みで興奮しまくってしまい、
自分としても今後どうしていいのやらわかっていなかった。
「その・・・あなたと仲良くなりたいという気は十分あるんですが、逆に別れが怖いというか・・・」
「そうだねえ。私はずっとこっちにいないもんね。だけど、仲良くない人と儀式はできないし、レイアスはどうかなあ」
「レイアスは参加したがると思いますよ」
「そう。じゃあレイアスとフークスは決まりでいいかな。」
「フークスはもう決まったんですか？」
「うん。」
ゆりがちょっと頬を染めて言ったのでディランはおや？と思った。
「実はさ、雨の日になると降りてくる水蛇さんの好みなんだよね。ディランって」
「水蛇さん？」
「儀式に降りてくる女蛇だよ。」
「はあ・・・」
「相性がいいのかわかんないけど結構降りてくるの、その女蛇」
「そうなんですか」
「うん」
ディランは何か気配を感じて上を見上げた。
ゆりも同じように上を見た。
そこには、水色っぽい大きな幻のような蛇がいた。
「あれ？また蛇霊神？」
ディランはぽかんと口を開けている。するとその蛇はするっと降りてきてゆりの中に入ってしまった。
「・・・ゆり様、大丈夫ですか？」
ディランは驚いて聞いた。
「・・・・どうしよう・・女蛇来た」
「・・・え？」
ディランが目を見開いた。
「こんなに早く来るとは参ったなあ・・・」
ゆりは頭をかきながら言った。
「え・・・来たって・・・どういうことですか？」
あまりに驚いていたのでディランの頭は働いてなかった。
「つまり、儀式の蛇が降りてきちゃった」
「ええ！？ってことは儀式起こるんですか？」
「そりゃ、やれば起こるけど・・・」
「え・・・あの・・・私はどうすれば・・・」
「もちろん参加してね。ディラン」
ゆりはにっこり笑って言った。
「は・・・はい・・」
というしかディランもなかった。
「で、私はどうすれば・・・」
「お水の中で遊ぼうよ」
ゆりはにこにこして言っている。
「え？遊ぶって？祭壇には行かないんですか？」
「私堅苦しいのいや。あーそーぼっ♪」
ゆりはぎゅっとディランに抱きついた。
あ・・遊ぶって？一体何の遊びを？
ディランはうろたえまくっている。まさかこんなに突然儀式となるとは思いも寄らなかった。
「あ。お風呂でいいから。お風呂。お風呂にぬるいお湯入れてもらって」
「はい、ちょ、ちょっと頼んできますから」
お風呂で一体何をするんだろう・・・
ディランは戸惑いつつも出て行った。
ルンルーン♪
ゆりの中の女蛇はえらく陽気だ。
来るの早いよ。男どうしよ！ルークはまだ儀式って風じゃないし・・・レイアスとフークス呼んで３人でやるしか
ないかな。
まだフークスしかそうなってないのにい！
でも考えようによっちゃ、これで儀式が成功すれば私はお役御免。一匹でも蛇を女王様の中にいれればいいんだし・・・
よし、やろう！
ゆりは心に決めた。
ディランが戻ってきた。
「あの、ちょっと時間かかりますけど」
ゆりはとことこ近づいて、ディランにべたっと抱きついた。
「あの・・・ゆり様なんですか？それとも、女蛇様のほうなんですか？」
「うーん。半々」
「半々・・・」
「ねえ、口付けして」
ゆりがじーとディランを見上げて言った。
なんだか・・・すごい目で見つめてるなあ・・・
黒い瞳は潤んでいて、いつもよりも目尻があがってるような気がした。
女蛇が降りると顔つきまでが変わるのだろうか。
ゆりがくいくいと腕を引っ張り、ディランは身をかがめて口付けた。
「私、あなたみたいな人好きなの」
「今日はどうして降りられたんですか？」
ディランは聞いてみた。
「ちょうどうろうろしてたら面白そうな女の子がいたから入っちゃった」
「はあ・・・」
「ねえ、お風呂行こうよ」
「まだお湯一杯じゃないですよ」
「いいの。その内入るよ」
「あの・・・男は他に・・・」
「とりあえず、あなたとしばらくいちゃいちゃしたいな。あなたが私のこと一杯好きになるように」
「え・・・」
ゆりはにこにこしていた。
ああだめだ・・・なんだかもう逃げられないような気がする・・・・
このまま行くところまで行ってみたい気も・・・・
前回よりもすごい事になりそうな予感に、ディランは恐れながらも好奇心を押さえられなくなっていた。
「女王様の次でいいから好きになってね」
「はい」
ディランはゆりを連れて浴室へと移動した。
しばらくして、呼ばれたレイアスとフークスが浴室に行った時には、丸い浴槽の中の端の方に一人、ぼんやりとした顔の
ディランが座っているだけだった。
「あれ？ゆり様は？」
「ディラン、どうしたの？ぼんやりして」
フークスがディランの顔をまじまじと見る。その時、湯船の中からざばっとゆりが顔を出して二人は驚いた。
「二人とも服脱いでおいでよー」
ゆりが手招きした。
「はーい」
レイアスはさっさと服を脱いでいたが、フークスはゆりの顔つきがちょっと違うな、と感じていた。
「あの、これって儀式なんですか？」
「さあ」
「さあって？」
「細かい事はいいから遊びましょ。」
「兄さんどうしたんですか？ぼーっとして」
レイアスが服を脱ぎながら聞いた。
「ディランは私にめろめろにされちゃってぼーとしてる」
ゆりがにこにこして言った。
「え・・いいなあ。僕もメロメロにしてほしいな」
「いいよ」
レイアスがお湯の中に入ると、ゆりはレイアスの腕をひっぱって、ちゅっと口付け、そのまま「えい！」と
お湯の中に沈めた。
「わ・・・・」
沈めたレイアスと共にゆりもお湯の中に沈んで、レイアスにそのまま口付けた。
「うわー強烈だ」
上からのぞいていたフークスが言った。
これが儀式？想像してたのとえらく違うなあ・・・・
一応伝わってる話では、清められた祭壇の上で巫女が男達と交わるものということになっているし、
皆そういうものだと思っていただけに、これが儀式、といわれてもぴんとこない。
レイアスはお湯から顔を出してぜいぜい言った。
「これ以上されたら死んでしまいますよ」
「死なないよーフークスも来てー」
「はーい」
フークスがお湯に入ると、ゆりは同じようにフークスも沈めた。
「沈めるのがすきなんですねえ」
レイアスがそれを見て笑って言った。そしてディランの所に近づいた。
「兄さん、大丈夫ですか？」
「ん？ああ」
「一体僕らが来るまで何してたんです？」
「え・・・いや・・・何も・・・」
といいつつ、ディランはぎこちなく横を向いていた。
「怪しいなあ・・・ずるいなあ。」
レイアスは横目でにらんでいる。
湯船の真ん中では、ゆりとフークスが熱烈に抱き合っていた。
「あ、いいなあ・・・僕も・・・」
レイアスがゆりの後ろから抱きついた。
ゆりはくるっとレイアスの方を向いてまたえいっとレイアスをお湯の中に沈めた。
「ぷはっひどい〜」
「ふふふ」
「ずっとここにいるんですか？」
フークスが聞いた。
「ううん。そろそろベッドに行っちゃおうかな」
「祭壇には行かないんですか？」
「いかない。ああいうの嫌い。じゃあ私の寝室に行こう」
４人は体を拭いて、服をもってゆりの寝室へと移動した。
ー陛下にこの事言った？ディラン。
寝室に移動したところでフークスが思念で聞いた。
ーいいや。言ってない。とりあえず、本当に儀式なのかどうかよくわからないし・・・・
ーそうだねえ、まあいいか。
ー兄さん、僕が変化しておかしくなったら止めてくださいね。
レイアスがディランにあわてて思念を送った。
「・・・・」
ーフークス、変化して我々がおかしくなったら止めてくれ
ディランはフークスに思念を送った。
ーえ・・・もしかして二人とも性格変わるの？嘘だろー
顔が引きつるフークス。
「ディラン、きてー」
ゆりはディランの腕を引っ張った。
「兄さんからなんですか？ずるいですよー」
レイアスが口を尖らせて言った。
「だって、今の私のお気に入りはディランなんだもん」
ゆりはディランにぎゅっと抱きついた。
「ゆり様・・・」
ディランもゆりを抱きしめている。
「なんだ、兄さんもうすっかり参っちゃってるじゃん」
ディランのゆりを見つめる瞳を見て、レイアスが言った。
「なんだか恋人同士みたいになっちゃってるな。妬けるなあ・・」
とフークス。
二人は熱烈に口付けながら、お互いの体をまさぐっていた。
「あなたに触られるだけですごく気持ちいい」
「私も気持ちいいです・・・」
ジーと見てると照れるな・・・
フークスは恥ずかしげに横を向いた。
「じゃあそろそろ次の人に交代ね」
ゆりが言うと、ディランはゆりの腕をつかんだ。
「嫌です。もっと・・・」
「また後で、」
ゆりはちゅっと頬にキスして体を離した。
「レイアス来て」
「はーい」
レイアスが体を寄せた。
「ああ、すごくいい匂い」
「ねえ、レイアス私の事好き？」
「好きですよ」
「ほんと？」
「本当です」
「じゃあ女王様の次に愛してる？」
「陛下の次に愛してます」
「レイアスってかわゆい」
ゆりはレイアスの頬をなでなでした。レイアスはゆりを抱きしめて口付けた。
二人はたまに見つめあいながら何度も口付けを交わしていた。
うーん・・・なんだか・・・すごいな。驚いた・・・
フークスはゆりとレイアスを見ながら思った。レイアスはまあ女好きだから簡単にゆりと仲良くなるのもわかるのだが、
反対側では尋常ではない目つきでディランがじーとゆりを見つめている。すっかり好きになっちゃってる目だ。
やがてゆりはフークスを見た。
「来て、フークス」
フークスはゆりを抱きしめて口付けた。
「なんだかじーと見つめられると困ってしまいますよ」
フークスが苦笑気味に言った。
「私のこと好き？」
「好きですよ」
「うれしい。私も好きよ」
ゆりはフークスに抱きついた。
３人に愛撫されるうちに、ゆりの体からは、濃い淫気が立ち上り、男達の目が揺らいできた。ゆりのおなかには鮮やかな
二匹の金色の蛇がいる。
「じゃあこれからは、一杯興奮していいからね」
ゆりはディランに近づいて言った。
「ゆり様・・・」
「赤い月のように興奮して、ディラン」
ゆりはディランの胸にキスした。そして身をうずめて、ディランの下半身を手でなでさすり、口に入れた。
「う・・・ああ・・・」
フークスはまだここまではされてなかったので驚いていた。
もしかしてこれが抱く代わり？すごく興奮してきた・・・
ディランが達すると、レイアスが体を寄せた。
「ゆり様、次僕、僕」
「いいよ。そこに立って」
ゆりはレイアスに体を寄せて、ディランは後ろからゆりの胸をなでながら背中に口付けていた。
「ああ、気持ちがいい・・・」
レイアスはあえぐように言い、ゆりの体に放っていた。
ゆりはフークスに近づいて上に乗った。
「ゆり様・・・」
「二匹目の蛇、今日見せてね」
レイアスとディランはすでに変化し、体に二匹目の蛇が浮かんでいた。
そしてフークスの胸にも、鮮やかな金色の蛇が浮かび、瞳が蛇の瞳に変わってきた。
「すごい・・・フークス様の蛇・・・」
レイアスが思わずその蛇を見て言った。
「本当、きれい・・・３人共素敵な蛇ね。うれしいわ」
ゆりはフークスの上からどいた。
「ゆり様、やっぱり抱きたい。あなたの中に入りたい」
レイアスがやっぱり我慢できなくなり、ゆりに抱きついて言った。
ゆりはにやっと笑って「だめー」と言った。
「どうしても抱きたい」
レイアスがゆりを押し倒そうとした時、ゆりは逆にレイアスの腕をつかんで押し倒した。かなりすごい力だったので
レイアスはびっくりした。
「それはルールだからだめなの。我慢しなさい。いい子だからね」
「うー・・・」
「いい子いい子」
ゆりに頭をなでられて、レイアスはしゅんとおとなしくなった。
目の前にいるのはやはりいつものゆりではなかった。なんだか逆らえない感じがする。
ディランも変化していたが、儀式の前にゆりにめろめろにされていたのでそう性格はかわっていなかった。ただぼんやり
している。
「じゃあ３人共きて、私をもっと可愛がって」
ゆりはレイアスの上からどいて言った。
男たちは一様にゆりに愛撫して、ゆりも男たちに愛撫し、快楽の時は過ぎて行った。
やがて、
「あー楽しかった。」
とゆりが言った。
「そろそろ行くね。じゃあね〜」
と陽気に言うゆりの顔がはっと変わった。
「じゃあねって、蛇は？蛇！」
まだ一匹も蛇呼んでないじゃない！呼んでよ蛇！
ーえーだって、３人は男少なすぎるよ。だから呼んであげない。
なんだとー！？
ー次はもっと男呼んでね♪
それを先に言わんかーい！
「じゅあまたね」
ゆりは男たちに手を振ってばたりと意識を失った。３人ともぼんやりしている。
これが何かの儀式、という事もすでに頭になかった。ただ快楽の余韻に浸っている。
やがてむくりと起きたゆりの顔はすごく不機嫌だった。
「ど、どうしたんですか？」
ディランが聞いた。
「ひどい！あの女蛇、遊ぶだけ遊んで蛇呼ばずに出て行った。」
「蛇？そういえば・・・」
「蛇霊神呼ぶ儀式でしたねえ。すっかり忘れてました」
ディランに続けてフークスが言った。
「どうして呼んでくれなかったんですか？」
フークスが聞いた。
「男が３人じゃ少ないって。終わってから言うなんてひどい！」
「そうなんですか・・・残念でしたね・・・」
「ぜんぜん残念そうじゃないね」
ゆりは３人の顔を見回して言った。
「すいません・・・かなり楽しかったです」
ディランが言った。
「私も、儀式がこんなに楽しいものだとは・・・」
とフークス。
「ということは、またあるんですね。やったあ」
レイアスもうれしそうだった。
こいつらは・・・・
ゆりは顔を引きつらせて寝転んだ。
「ぐすんぐすん。あんなにがんばったのにー！」
「そうですねえ。でも、ほら、練習と思えば・・」
レイアスがゆりの背中をなでた。
「おかげで儀式がどういうものかわかりましたしね」
とフークス。
「よしよし。めげないで。」
ディランはゆりの頭をなでた。
「なんだかお尻が痛い」
「ん？あ・・・」
フークスがゆりのおしりを見るとくっきりと歯型がついていた。
「あらら、だれかんだんだろう」
「だれって、フークス様ですよ」
レイアスが言った。
「え？私？本当？」
フークスは全く記憶がなかった。
「・・すごい事になってますね・・・」
ディランがゆりの肌を見て言った。首や胸の辺りも、あちこち赤くなってる。
「蛇が来ないと綺麗にならないのにい・・ううー」
「すいませんでしたね。つい興奮して、お風呂に行きます？」
「連れて行って」
「我々も行ってもいいです？」
レイアスに聞かれて、ふてくされたゆりは「好きにしてちょーだい」と言った。
今さら裸を見られて恥ずかしいも何もない。
結局儀式は蛇が一匹も来ず、ゆりはがっくりきてしまった。侍女に布団を変えてもらうのもかなり恥ずかしかった。
何をしていたかばればれだ。
くそーなんでこんな目に、最初の方は二人でできたのに。
やっぱり上の方の女蛇は人数多くないとだめなのかな。最低５人はいないと。
ルーク誘って、後一人はどうしよう・・・
かなり疲れたゆりは、その夜は早めにご飯を運んでもらい、さっさと眠りについたのだった。