今日はゆりはルークと一緒に東の方にある町でデートしていた。昨日ハインリヒに邪魔されただけに今日は決めなければ

と思い、女王経由でルークの仕事も一日休みにさせて朝から一緒に外に出ていたのだ。

この町はそんなに大きな町ではないが、町の外に牧場が広がっていて、牧歌的風景が楽しめる所だった。


「このチーズおいしいね」

ゆりはおいしそうにパンにチーズを乗せて食べていた。

「本当にこういうところの食事でよかったんですか？」

ゆりの前にいたルークは恐縮している。ここは豪華な食堂でもないし、テーブルに乗っているものも、庶民が

食べるような感じのものだったからだ。

「うん。逆に楽しいよ。」

元庶民のゆりとしては、田舎に遊びに来たような感じで楽しかった。

「ここはのどかでいいね」

２人が食事をしていたのは店の外のテーブルだった。

「あ、水車が見える。あそこ行ってみたいなあ」

家々の隙間に、わずかにくるくるまわっている物が見えた。

「いいですよ。後でいきましょう」

ルークが微笑んだ。


うーん。ほのぼのしていい雰囲気ね。


食事をしてからゆりは水車の近くに移動してもらった。小さな川が流れていて、木でできた丸い水車がくるくる回って

いた。

しばらくそれを眺めていたゆりは、「楽しかったー、そろそろお城に戻ろう」と言った。

「はい、わかりました」

「・・・へ・・蛇の見せ合いっこする？」

ゆりがおずおずと聞くと、ルークの顔がぱっと赤くなった。

「でも・・・その・・・あの・・・・」

ルークは恥ずかしげに頭をかいていた。

「どうしたの？」

「女神が降りられた方と、そういうことをするのもなんだか・・・気がとがめて・・・」

「でも・・・儀式ではもっと過激だから・・・いきなり儀式ってのもなんだし・・・」

「か・・・過激？」

「もうちょっと仲良くなっといたほうがいいと思うんだ」

「あのう・・私本当に参加してもいいんでしょうか。儀式・・」

「嫌になっちゃった？」

「いえ、うれしい反面、他の方に悪いような気がして・・・」

「だって、私があなた気に入っちゃったんだもん。部屋に戻ろう」

「はい・・・」

ルークは軽くゆりに触れて城に移動した。


第15話

ゆりは寝室で、ルークの肌の赤い蛇を見て「わあ」と歓声をあげた。

「赤い蛇ちゃんがいるー！！！」

ルークは瞬いていた。ゆりはルークの横腹をなでなでした。

ミルキダスの赤い蛇よりも、かなり鮮やかで、きれいだった。

「赤い蛇好きなんですか？」

「好き」

「あんまり女の子に人気がある色ではないんですが・・」

「そうなの？私好き」

ルークはゆりの頬をなでて、頬にちゅっとキスした。ゆりはぺたっとルークに抱きついた。


もしかして、赤い蛇ちゃんに惹かれたのかな。やっぱりルークってミルキダスを思い出す。

もしかして、ミルキダスの遠い遠い先祖かも。


二人は優しく肌を寄せ合った。


なんだか、ルークって、こうしてても妙に安心できる人だなあ・・・

優しく口付けをされて胸にそっと触れられているだけで、ゆりは興奮してきた。

「ルーク・・・」

ゆりはルークの背中に腕を回して抱きついた。ルークもゆりの背中に腕を回して、ぎゅっと抱きしめた。

二人はしばし口付けをし、体を離したゆりは、ルークのおなかをみて首をかしげた。

「あれ？」

「わっ！」

ルークは自分のおなかを見下ろし、目を見開いた。赤い蛇の側に、金色の蛇が二匹いた。

「あれれ。遊びに行っちゃったみたい」

「え？」

二匹の蛇は、赤い蛇をじっと眺めていた。

「・・・」

うーん、手じゃなくても移動できるんだ。私ったらいつの間にこんな技を・・・

ルークはあまりの事にぼんやりしていた。フークスらが蛇をもらった話も、ルークの耳には届いていなかった。

ーすき？

ーすき？


「・・・なんか聞こえましたよ？」

ルークの顔は青くなっていた。

「なんかって？遊ぼうって言った？」

「好きって聞かれましたよ」

「好き？きっと赤い蛇ちゃんに好きになってほしいんだね」

ゆりはのんきに言った。

「・・・消えた・・・」

金色の二匹の蛇は消えてしまった。


ルークは蛇がいたおなかをなでた。


なんだかすごく切ない気分だ・・・どうしよう・・・・すごく抱きたくなってきた。


ルークはゆりを抱きしめた。


わ・・・・


ルークはズボンをはいていたが、服を通して興奮してる様子が伝わってきて、ゆりはどぎまぎした。

「あ・・あの・・」

「す、すいません・・・ちょっと押さえられない・・」

「あの・・・手でしても・・・？」

「本当にすいません・・・」

ルークはズボンのベルトを外して、下着ごとずりおろした。

ルークの息遣いが荒くなってきた。ゆりはルークの下半身へと手を伸ばした。

「ゆり様・・好きです・・・」

「私も、ルークのこと好きよ」

ルークはゆりの太ももをなでて、ゆりのショーツをずらし、足の付け根へ指をはわせた。

口付けも、先ほどよりも激しいものになっていた。


ゆりはルークの肩に赤い蛇がいるのを見た。

あれ？移動してる・・・


蛇は滑らかに動き、肩からルークの左腕へと移動していた。ゆりはそれを目で追っていた。蛇はやがて、

ルークの腕を降りて、手からゆりの胸へとおりてきた。

「わ・・・ルークの蛇がきた・・・」

「え・・・あ・・・本当ですね・・」

ルークは興奮状態にあったので、蛇に驚く心のゆとりがなかった。ルークの指はゆりの体の中にいれられて、動かされて

いた。

「あ・・・・」

「ゆり様、気持ちいいです？」

「うん・・・」

「私も・・すごく気持ちいいですよ・・・」

ゆりのおなかにもう一度蛇が浮かび、ルークの蛇は待ち構えていたのようにおなかに移動して、二匹の蛇の周りを

ぐるりと囲んだ。金色の蛇は逃げもせずに赤い蛇と寄り添ったり体をくねらせてひっついたりしている。

「あ・・・蛇が・・仲良くしてる・・」

「うう・・・」

ルークがうめくと同時に、体から絶頂をむかえた証が放たれていた。ゆりは手を離した。

「ゆり様・・・好きですよ・・・」

ルークはゆりの額にちゅっとキスした。

「ルーク、蛇、もっていってくれなきゃ」

「あ・・・」

ルークがぼんやりしていたので、ゆりはルークの右手を自分のおなかにぺったりつけた。すると、蛇は手をつたって

帰って行った。

ルークはしばらく、右腕にとどまった蛇をぼーっと眺めていた。

「位置かわっちゃったね」

「どうして動いたんでしょう？？？」

「私の蛇に会いに来てくれたのかな？」

「？？？」

「一緒に遊んでたみたい」

なんだか・・すごく満足した気分だ・・・最後まで抱いた気分・・・

もしかして・・・蛇が蛇を抱いた？？？？


異様な満足感だったので、ルークははっとそう思ったが、ゆりには黙っていた。

ゆりもまさか蛇同士がそこまで仲良くしているとは思っていない。

ルークと別れたゆりは、しばらく部屋でのんびりしていた。


こっちの人の蛇ってすごいなあ・・・あんなに動くなんて・・・

試したら向こうの人の蛇も動いたりして・・・


ああ、王様にすごーく抱かれたい気分・・・昼間男といちゃいちゃしちゃうと、夜はどうしても王様に抱かれたくなる

よう・・・


前みたいに幻でもいいから抱きに来てくれないかなあ・・・


長椅子でぼんやり寝そべっていたら、扉がノックされたので、ゆりは仕方なく自分で扉を開けた。

するとハインリヒが立っていたのでそのまま閉めた。

「どうして締め出すんです？」

ゆりが後ろを見ると、ハインリヒが立っていた。

「もー、勝手に入らないで」

「・・・」

ハインリヒはゆりの側に近づいた。

「・・・なんだか匂いが違いますね」

「え？」

「ルークに抱かれたでしょ。」

ゆりの顔が引きつった。

「勝手に妄想しないでくれる？」

「あなたの肌からすごく、そそられる匂いがする・・」

ハインリヒはジーとゆりを見て言った。


「あの・・出て行ってくれない？」

「あなたはまだ私が嫌いなんですか？」

「嫌いじゃないけど・・・」

っていうか、前の方がよかった気がするのはなぜだ・・・


「じゃあ避けないでくださいよ。」

「だって、ハインリヒが変な事ばっかり言うから・・」

「本当の事じゃないですか。昨日だってディランと行ってしまったし・・ひどいな。」

「そう言われても・・・」

「次に会った時は優しくしてくださいね」

そういい残してハインリヒは消えた。


あっさり行ったのでゆりはほっと胸をなでおろした。

あーやれやれ、ミカエル以上に危険な奴だ・・・全く・・・

急に誘惑モードに入られても困るよ・・・



その夜、ゆりが眠っていると、頬をそっとなでられた。

「ゆり・・ゆり・・・」

王様・・・王様がまた来てくれた・・・・


ゆりは寝ぼけつつもそう思った。頬にキスされて唇を覆われた。


王様・・・


ゆりは男に抱きつき、背中に腕を回したものの、長い髪はなかった。

「あれ？だれ？」

ゆりはばっと体を話した。部屋の中は真っ暗なので良く見えない。

「私です」

「・・・ハインリヒ？」

「あたり」

「な・・・何しにきたの？」

「あなたとお話しに」

「こんな夜に何話すの」

ゆりが睨んで聞いた。

「そんな怖い顔しないで、ゆり」

「なぜに呼び捨て」

「この方が、恋人らしくていいじゃないですか」

「あなた恋人じゃないでしょ」

「別に何もしないですよ」

「さっきキスしたでしょ！」

「誰だと思ったんです？」

「私の王様」

「そうですか。残念でしたね」

ハインリヒは布団の中に入ってきた。

「ちょっとお！」

ゆりは横に逃げた。

「前みたいに添い寝ならいいでしょ？何もしないから」

「・・・・」

ゆりは睨んでいる。

「本当に何もしませんよ」

「あなたって本当に困った人だね」

ゆりがあきれたように言った。

ゆりはハインリヒと離れた所に寝転んだ。ハインリヒは右ひじをついて顔を支えて、ゆりを見ていた。

「私って、あなたの好みじゃないでしょ？」

「違いますよ」

「なら迫ることないじゃん」

「知りたいんです・・・私があなたを抱いてあなたをどう思うか・・・」

「え」

「他の男達のように、あなたを好きになるのかどうか知りたい」

「あのさあ・・・私誰にも抱かれてないよ」

「・・・・」

「本当だよ」

「嘘だ。あなたはあの３人と儀式だってしたじゃないですか」

「私は儀式でも男に抱かれないの。向こうでもそうだよ。普段も男たちとそこまではしない」

「じゃあ何するんです？」

「男たちと手をつないで見つめ合ってる」

「・・・・」

ハインリヒは全然信じてないようだった。

「それなら別に、男が10人いようが20人いようが構わないじゃないですか」

「まあ、実は、それらしいことはするよ。多少は・・裸でいちゃいちゃは」

「それで抱かれないんですか？それって、よっぽどあなたに魅力がないってことにならないですか？」

「いや・・・だから・・・それらしいことはしてるよ。多少は」

「それなら私も入れてくれてもいいじゃないですか」

「んじゃ聞くけど、あなた私のこと好きなの？」

「好きですよ」

「真面目に好きなの？」

「真面目ですよ」

「あやしい・・・」

「人の感情というものは、とりとめのないものでしょう。疑えばきりもないし、」

「そーだけど・・・」

「じゃあ、あなたはあなたの王以外には抱かれてないって言うんですか？」

「いや・・・たまに他の人ともしたけど・・・王様のほかは２人だけだよ」

「だれなんです？」

「・・・ハザーク様とザクート様」

「・・・」

ハインリヒはしばし無言だった。

「じゃあ今日ルークと何してたんです？」

「蛇の見せあいっこ」

「私もしたいな。蛇の見せ合い」

「やだ」

「好きって言ったのに逃げるんですか？」

「う・・・」

「ひどいな・・・」

ちょっと傷ついたような声だったので、ゆりも困ってしまった。

「だって・・・あなたの言葉・・・なんかあやしいし・・・」

「あなたは短い間しかいないのに、男に完全な愛を望むんですか？」

「そういうわけじゃないよ。皆女王様を愛してるのは知ってるもの」

「私はあなたを好きって言ったんだから・・あなたも私を好きになる努力をしてください」

「ぐ・・・・」

「ね・・・」

「・・・わかりました。じゃあ検討して後日返事します」

ゆりの事務的な返答にハインリヒは笑った。

「何言ってるんです？」

「だから・・・続きは後日・・・」

「だめだめ。今蛇の見せ合いしましょう。そうすれば、あなたも私に情がわきますよ」

「え・・・今？」

「おいで、ゆり」

ハインリヒが手を出した。

「やだ！」

「ゆり・・・」

ハインリヒが近づいた。

「気安く呼び捨てにしないで。私一応王妃様なんだから」

「今からは私の恋人でしょ？」

「今から？！」

「捕まえた」

ハインリヒはゆりの体をぎゅっと抱きしめた。ゆりは逃げようにも体が固まって逃げられなかった。

「魔法はずるい」

「赤ちゃんは寝てるんだから、静かにしないとおきちゃいますよ？今からトーが一杯マーを可愛がってあげます

からね」

何いっとんじゃこいつはー！


「何もしないって言ったのに！」

「告白させたのあなたでしょ？好きって言わせて終わりはあまりにひどいですよ」

ハインリヒはゆりの体をベッドの真ん中に寝かせて上に乗った。

「何色の蛇かな？」

「私もうハインリヒの蛇見たからいい」

「せっかくだから蛇紋に変化した蛇も見せてあげますよ」

「見たくない！」

「抱かない代わりにあなたもいろいろがんばってくださいね」

「やだー！」

「じゃあ抱いてもいいんです？」

「や！」

「わがまま言わないで。マー」

「マー言うな！」

ハインリヒはゆりの服を脱がして、自分も服を脱いだ。

「お願いだからもう勘弁してー！」

「優しくしますからね」

えーん、なんでこうなっちゃったんだよー！

好きなんて聞くんじゃなかったー！



誰も助けにこないまま、刺激的過ぎる夜はそのまま過ぎて行ったのだった。


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