その日、ゆりは元気なくぼけーとしていた。
「どうしたですかー？ゆり様？」
目の前にレイアスが座っていたのだが、ゆりは両肘をテーブルについて顔を支えたままだった。
「もーせっかく今日はくどこうと思ってきたのに〜」
レイアスはまたぶーぶー言っていた。
「今日は全然そんな気になれないよ」
「あれから町ではガーベラの絵画や彫刻品が飛ぶように売れてるんですよ。もう予約待ちで、」
「ふーん」
「本当に綺麗だったもんなー、うれしいな。女神に口付けされたなんて・・・」
その時のことを思い出すだけでぽやんとなってしまうレイアスだった。
「そういえば、ハインリヒ様も儀式に参加することにしたんですってね、さっき聞きましたよ」
ゆりのこめかみのあたりが引きつった。
「なんだかんだ言ってたけど、その気になったら素早くくどいたんですねー」
「うう・・・」
ゆりは朝、女王にその事を言っていた。それを聞いた女王はたいそう喜んでいた。どうもハインリヒを参加させた
がっていたようだ。
「いつの間にくどかれたんです？」
「さあね」
「男が６人もいたら蛇呼んでくれますかね、楽しみだな。儀式」
全然楽しみじゃないよ・・・くそっあの魔王め！
ゆりはそのまま机につっぷしてしまった。
第16話
「ゆり・・・どうしたの？すっかりおとなしくなってしまったね・・・」
一体あれからどれほどの時間が経ったのか。
ハインリヒに愛撫しまくられて、ゆりの体はすっかり興奮させらてまくっていた。
「可愛いからだですね。やはり普通の女よりは感じやすいんですね」
ハインリヒは優しくゆりの胸をなでまわして言った。
「も・・・もういいでしょ？蛇も見たんだから・・・」
「可愛い蛇ですね。フークスが気に入るわけだ・・・」
「もう離して・・・」
「そんな言葉聞きたくないな。あなたは感じやすいのに理性はすごいんですねえ。普通は、抱かれたくなりますよ
ここまでされたら」
「やだ・・・あ・・・」
ゆりの体がびくりとのけぞった。
体の中に指が入れられていた。
「や・・・」
「ゆり・・・私のこと、好きですか？」
「好きじゃない」
「そうですか・・・なら、私もあなたを好きにならなくてもいいですね？」
ハインリヒが冷ややかな口調でいい、ゆりはぞくりと身を震わせた。
「せっかく抱かないでおこうと思ったのに・・・あなたが私を好きになる気がないのなら、私もあなたを気遣う必要は
ないですねえ。もう」
「なんか好きになってきた」
あまりに怖かったのでゆりはそういった。
「本当ですか？」
「うん・・・」
「なら口づけしてください。熱烈なのを」
「う・・・・わかったから、指離してもう」
「気持ちいいくせに」
「・・・・・」
「わかりました」
ハインリヒはゆりの体から両手を離した。
「じゃあして、口付け」
ハインリヒが顔を寄せた。ゆりは軽く唇を合わせて離れた。
ハインリヒがゆりを睨んだ。
「今の熱烈だったじゃん。すごく」
「どこが？舌からめてくれないと」
「えー」
「じゃあ体からめますか？」
「・・・・」
ゆりはもう一度唇を寄せて、今度は舌をからめた。
うう・・・なんでこんなことにー・・・
「うれしいですよ。ゆり」
ハインリヒは優しく微笑んで、今度は自分からゆりに口付けた。
ああだめだ。まんざら嫌じゃなくなってる・・・
何で私はこう強引にされると弱いんだ・・・
ハインリヒの手がゆりの胸をまさぐった。
「ハインリヒってマザコンでしょ」
いやに胸ばかり触ってくるのでそうに違いないとゆりは思った。
「マザコンってなんですか？」
「お母さんがすごく恋しいってこと。」
「恋しいですよ。私の母は、幼い時になくなってしまったのでね」
「そう・・」
「あなたの胸は柔らかくて気持ちがいいですね。好きだな。この胸」
「そろそろ私眠いんですけど・・・」
「まだ私の蛇紋見てないですよ」
「いや・・別に・・・見たいな」
途中胸がぎゅっと握られたので、ゆりは思わず言った。
「そうでしょ？好きな男の蛇紋は見たいでしょう？」
「でも、暗くて出てもみえないから」
「灯りつけてあげますよ」
ハインリヒが右手をかざすと、ベッドわきの灯りがぼっとついた。ゆりははっきりと目の前の男の顔を見てしまった。
つやっぽい男の顔がそこにはあった。こんな状況じゃなければ、一目でうっとりしてしまいそうなほどだ。
くそお・・・良い男なだけに憎めないのが腹立たしい・・・
「ねえ、儀式では、本当の所何したんです？」
「何って？私が男たちに愛撫されて終わり」
「男は興奮して終わり？」
「うん」
「それで楽しいはずないですよ？」
「いや、男の気持ちはわかんないし・・・」
「どうせそのうちにわかるんですよ？私が儀式に参加すれば」
「え・・・いや・・・もう５人いるから・・・」
「５人がいいなら、ルーク外してください」
「今更そんなことできないよ」
「なら６人。」
「・・・」
「そんなに私が儀式に出るのいやなんですか？」
ハインリヒはゆりの髪を優しくなでて聞いた。
「だ・・だって・・・」
「何度好きって言ったらわかってくれるんです？」
「あの・・・」
「好きだよ。ゆり・・」
ハインリヒはゆりの体を抱きしめて言った。
うう・・だめだ・・もう逃げられそうにない。
ミカエルにも歯が立たないのにそれ以上の男をどうにかするのは私には無理だ。
ゆりはさっさとあきらめた。ごねてもさらに何かされるだけだ。
「わ、わかった、もう分かった。儀式に参加させりゃいいんでしょ？」
「明日女王に言ってくれます？」
「わかったよ」
「朝ね」
「わかったからもういいでしょ？」
「じゃあ私の蛇紋見せてあげますね」
ハインリヒはゆりの体を離して言った。
「げ・・・」
ゆりは驚いた。ハインリヒの瞳が、蛇の目に変わってきたのだ。
白目の所は黄色くなり濃い青に黒い縦線が入っている。
「な・・・なんで変化・・・」
「前の巫女に鍛えられたおかげで、普段でも変化できるんですよ」
「・・・・」
ゆりはハインリヒの体を見て絶句した。
な・・・なんじゃこりゃー！！！
胴体は一つなのに、黒い蛇の顔が二つに増えていた。しかも両方口を開いている。
「珍しいでしょ？二又の蛇なんですよ」
ゆりはしばらくぽかんとそれを眺めていた。
「気に入った？」
気に入るか！怖いわ！なんだこの魔王みたいな蛇は！
そう思ったが、変化している男にそういうほどゆりもばかじゃなかった。
「び・・・びっくりした・・・珍しい物見せてくれてありがとう。それじゃ」
ゆりはさっさとベッドから降りようとして、ハインリヒの腕がゆりの腰にからまった。
「あの・・何か・・・」
「せっかく変化したんだから・・・おいで」
「いや、もうわたくし十分です」
「もう一度ゆりの可愛い蛇がみたい。今度はゆりもいろいろして」
「い・・いろいろって？私よくわからない」
「じゃあ教えてあげる」
ひえええええええ！
結局再び愛撫しまくられ、今度は愛撫の要求までされてしまっていた。興奮させられまくれ、ゆりの理性は
どっかに行ってしまい、素直に応じてしまった。どうやらハインリヒはミカエル以上に女慣れしているようだ。どうすれば女が
喜ぶか良く分かっている。
そして気づいたら朝だった。ハインリヒの腕に抱かれて寝ていたので、ゆりはぎょっとした。
「おはよう、ゆり」
ハインリヒはゆりの髪をなでながら言った。
「・・・」
ゆりは複雑な表情で目をそらせた。
「ねえ、ゆりって、儀式でも口でするの？」
「・・・」
「どうして？体にされる方が気持ち良いと思うけど」
「・・あんまり興奮しすぎると、自分が制御できないから、だめなの」
「ふうん。そうなんだ。」
ハインリヒはゆりの頬をなでて頬にキスした。
「後でちゃんと陛下のところにいくんだよ？」
「何しに？」
「忘れたの？私を儀式に入れることにしたって報告に行くんだよ」
「・・・・」
「忘れてないよね？」
「忘れてないよ」
「いい子いい子」
ハインリヒはゆりの頬をまたなでて、ゆりのおなかもなでた。顔はひどく満足げだ。
そして服を着て、「じゃあまたね」と言って出て行った。
くそーいいようにされてしまった。
だめだ、ああいう男には太刀打ちできないー
私は王妃様なのに、なんでああ強気の男に従ってしまうんだー！
あの綺麗な顔が憎らしいー！！
こうなったら、すごい女蛇を降ろしてぎゃふんと言わせてやるー！！！
全くハインリヒにかなわなかったゆりは、懲りずにこんな事を考えていたのだった。
すすむ