８の月の10日になり、ようやくジュメは赤ん坊を出産した。女の子だった。ジュメは出産の疲れでげっそりしていたが、
体は大丈夫そうだった。赤ん坊は違う部屋で寝かされていたが、イシュタールは毎日うれしそうに赤ん坊の顔を見に
きている。自分の血を分けた娘だと思うと、なんとも不思議な気分だ。
「おー、大きな子供だなあ・・・」
その日はロナウド将軍もイシュタールの赤ん坊の子供を見にやってきていた。ロナウドはイシュタールの父親と兄弟
という間柄で血のつながりがある。その部屋には他に9人の赤ん坊が寝ていたが、イシュタールの子供がだんとつ
大きい。足も立派だった。赤ん坊は目を閉じて眠っていた。
「お前が産まれた時も大きかったからなあ。ジュメ産むの大変だったろう」
ロナウドは赤ん坊を見下ろして言った。横でイシュタールはちょっと恥ずかしげにしている。
「何にせよ。無事産まれてよかったよかった。」
「はい・・・」
一時は子供は無理だと思っていただけに、感慨もひとしおだった。
「ですが、女の子なのに自分似だと、将来ちょっとかわいそうな気も・・・・」
「いいじゃないか。大柄な美人も。たくましく育てよ〜ははは」
うーん、あんまりたくましくなりすぎても・・・女の子だし・・・
だが赤ん坊の立派な手足は、将来でかくなるであることを想像させるものだった。
まあいいか。丈夫なら。元気で丈夫が一番だもんな。
イシュタールは微笑んで緑の髪の我が子を見下ろしていた。
第37話
アナスターシャ、シス、ラギの3人は、その日、あちこちの病院や屋敷を飛び回って赤ちゃん巡りをしていた。
訪問先は、突然の事にびっくりしたが、3人とも気にせずに赤ん坊を見せてもらい、「かわいいねー」と言って
他に移動していた。アナスターシャとシスは、今では自分の身は自分で守れるようになっていたので、たまに
自由にあちこち行っている。フリットやミカエルの子供も当然見せてもらい、ジュメがいる病院にも行っていた。
「わーやっぱり大きいんだねー」
ラギがジュメがだっこしている赤ん坊を見て言った。
「やっぱり？」
ジュメが聞くと、
「ザクート様がね、大きい女の子だっておっしゃったんだって。」
とシスが言った。
「そうだったんですか。それで皆さんお祝いの赤ちゃん服がえらいでかいんですね」
ジュメが苦笑して言った。病室の中には様々な贈り物の箱が置かれている。
「だっこさせてー」
アナスターシャがいい、ジュメが赤ん坊を渡した。
「他の子より随分大きいねえ。産むの大変だった？」
「大変でしたよ。死ぬかと思いました。」
「綺麗な目してるねー。赤ちゃんの目ってほんときれいだねえ」
シスが言った。赤ん坊の瞳は緑色だ。
「名前は決まったの？」
「メリッサに決まりましたよ。」
「メリッサ。いい子いい子」
アナスターシャはジュメに赤ん坊を返した。
「じゃあ私達行くね」
「王妃によろしくお伝えください」
「はーい」
3人は病室を出て行った。
「えー！！！ひどいー私も見たかったのにー」
夕食の時間、子供らに皆の赤ん坊を見たと聞いて、ゆりは一人ぶーぶー言っていた。
「あんまり飛び回って疲れちゃだめだと思って言わなかったの」
アナスターシャに言われて、ゆりは子供のように唇を尖らせた。
「ジュメの赤ちゃん大きかった？」
「大きかったよ。他の子よりだいぶ」
「へー」
「その内連れてきてくれるよ。きっと」
「そうだね。それを待つことにしようかな」
「お母さんはまだおなか大きくならないね」
ラギが言った。ゆりにはまだその兆候はない。
「まあ、あせらなくても、いつかは大きくなるよ。」
「最近夜は暴れてないからいいけど・・・」
「心配しなくても産まれたら暴れるよ」
ゆりが何気に言うと、３人共しーんとなった。
その頃ユリウスとジェナサイトの二人はというと、最初の頃よりはだいぶ慣れたのか、二人きりでいるときは
ゆりに言われたとおりユリウスはジェナサイトに抱きついたり膝に乗ってみたりしていたが、ジェナサイト的には
女と男の関係というよりは、ペットを自分に懐かせているような状況に似ていた。
口付けしてくる時もえらく真剣な顔で唇を押し付けてくるので、口付けされている、という雰囲気には全然なれない。
何より色っぽい雰囲気は皆無だった。
そんなに真剣な表情で口付けしなくてもいいだろうと思うのだが・・・
ユリウス自身は大真面目なので、ジェナサイトとしてもあまり文句も言えない。時々笑いが込み上げてくるのでそれを押さえるのが
大変だった。
「ユリウス、お前もっと力を抜いて気楽にできないのか？」
ジェナサイトがとうとう聞いた。
「気楽？」
「そんなに必死に口付けしてこなくてもいいだろう。それとも相当嫌々やってるのか？」
「そういうわけじゃないが・・・なんで男と女はこういうことするんだ？という疑問は多々ある」
ユリウスはジェナサイトの膝にのったまま言った。
「まあ、普段はよっぽど仲良くないとこういう事はしないが・・・」
「そうなのか？」
「別に嫌ならやらなくてもいいんじゃないのか？俺だって嫌々されても別にうれしくないし・・・」
「別に吐き気がするほど嫌ってことはない」
「こら」
ジェナサイトの顔が引きつった。
「それに、お前にはちょっと慣れたからひっついてるのもそんなやじゃない」
「はあ・・・」
「この分だと来年は大丈夫じゃないか？」
ユリウスはちょっとうれしそうに言った。
本気で言ってるのか。お前は・・・
ジェナサイトはもうあえて突っ込まなかった。
「所でユリウス、お前にちょっと聞きたいことがあるんだがな・・・」
「なんだ？」
「お前が男嫌いになった原因は何かあるのか？」
ユリウスが瞬いた。
「一応は聞いておきたいと思ったんだ。お前が話したくないならいいが・・・」
「原因は父だ」
ユリウスは横を向いてそっけなく言った。
「父？」
「父に嫌なことをされたからだ。」
「・・・・」
ユリウスの父親はもうとっくに亡くなっていて、ジェナサイトも実際にあったことはない。ただ、すごく力が強い男
だという噂は聞いていた。大変魅力的な男でかなりの美形だったそうだ。
そこまで男嫌いって事は、尻を触られたとかそういう程度ではないだろう。
だから力が強い男は嫌なのか。その事を思い出すから・・・
「そうか、嫌な事を思い出させて悪かったな」
ジェナサイトはユリウスの髪をなでた。
「まあ、俺はお前に無理強い何かをしたりしないから安心しろ」
「ああ・・・」
ジェナサイトは軽くユリウスの体に両手を回してしばらくそうしていた。
それから一月ほどたった、９の月の下旬、ゆりはその日、朝からえらくおなかがむずむずするのを感じていた。
「うーん、そろそろなのかなーなんだかいらいらするー」
「そろそろですかねー」
侍女らはわくわくしている。
「いらいらいらいら〜」
部屋の中をせわしなく動き回っていたら、ユリウスがやってきた。
「あら、どう？どの後」
「はい・・・その、まあ仲良くはやってます」
「へー」
ゆりはにやにやした。
これはいい感じかも♪
「まあ、座って座って」
ゆりは二人で椅子に座り、侍女は出て行った。
「仲良くやってるのならよかった」
ユリウスはなにやら言いたそうな顔をしていた。
ゆりの左目がぱっと蛇の目に変わった。
「どこまで行った？」
「昨日お風呂に一緒に入りました」
「え！？」
ゆりは椅子から落ちそうになるほど驚いた。
「ず・・・随分早かったね。本当にお風呂一緒に入ったの？」
「ジェナサイトに目隠しをして」
「ぶ・・・」
ゆりは思わず笑いそうになり、手で口元を押さえた。
「それでこの後どうしたらいいでしょうか」
「・・・・」
うーん・・・普通、お風呂に一緒に入るってのは、もっと色っぽいもんだけど・・・
でもちゃんと付き合ってるジェナサイトはえらいなあ・・・
「ユリウス、感情的変化はちょっとあった？」
「え？感情的変化・・・」
「ただ男と交わりたいってわけじゃなくて、ジェナサイトともっと仲良くなりたいなっていう感情」
「はあ・・・」
「つまりさあ、男とそうなる以上は、相手の男にちょっと情を持って欲しいわけね。来年の赤い月が終わって、
それじゃさよならじゃジェナサイトもかわいそうだから」
「・・・・」
「ジェナサイトはユリウスと赤い月を過ごすためだけに付き合ってくれてるわけじゃないでしょ？」
「はい・・・・そう思います」
「お互いに情があった方がね、楽しいんだよ。あれは。」
「楽しい」
「そうだよ。気持ちよくて楽しいもんだよ。だから、ユリウスにも楽しんでジェナサイトとそうなってほしい」
「・・・・」
「ちょっと待っててね。すぐ戻ってくるから」
ゆりは椅子から立ち上がり移動した。
ゆりが移動した先は、ハザークの塔だった。ゆりはハザークの部屋ではなく、その下の部屋の扉をノックした。
「あら、王妃様」
中から侍女が顔を出した。
「はーい、侍女さん」
「どうなさったんですか？」
「ちょっとお話があってさ」
ゆりは部屋に入って行った。
「なんでしょう」
「あっちの時時々何か入れてるでしょ。お茶に」
侍女は目を瞬いただけだった。
「何のことでしょう」
「しらばっくれてもわかってるんだから〜いくらハザーク様を喜ばせたいからって、もーしょうがないなー」
「・・・」
「あっちには黙ってるからさ、それわけてくれない？」
ゆりはにんまり笑って言った。
「何のことやら・・・」
「じゃああっちに言っちゃうよ？」
「・・・・どなたに使うんです？」
侍女に横目で睨まれた。
「私が男に使うんじゃないよ。他の女の子にあげるんだよ。それって、だれにでも効くの？」
「全く相手に好意がなければ効きませんよ。感情を増幅させてその気にさせるものですから」
侍女は棚の中から小さな小瓶をもってきた。
「ちょうだい」
ゆりが手を出した。
「本当に他の男の方に使われるんじゃないですね？」
「違うよ。」
「絶対ですよ〜」
「絶対だよ」
ゆりは小瓶を受け取って使用方法を聞き、侍女と別れて部屋に戻った。
部屋の中でユリウスは一人ぽつんと座っていた。
「お待たせ。はいよ、これ」
ゆりはユリウスに侍女からもらった小瓶を手渡した。
「なんですか？」
「その気になる薬。どうしてもその気になりたいのになれなかったら、ちょっと使ってみて、お酒に一滴入れる
だけでいいから」
「その気になるんですか？」
「何度も使っちゃだめだよ。これが全然効かなかったらまた相談して」
「わかりました」
「ユリウス、無理にしなくたっていいんだからね。あくまでそういう気になってからそうなるんだよ？」
「はい」
ユリウスは出て行った。
「お母さん」
その後ラギがひょっこりやってきた。
「おなか大きくなりそうって本当？」
「わかんないけどそうみたいよ」
ラギはゆりに近づいてきてゆりのおなかをなでた。
「ねえ、ラギ、あんたそういえば昔惚れ香水つくってたよねーあれどうしたの？まだあるの？」
ゆりはふと思い出して聞いた。
「あるよ、いろいろ改良したやつが。実は売ってる」
「え？売ってるの？」
「うん。研究所の人と相談して、効果が薄いもの作ったからあんまりすごくはならないって。赤い月の前には
結構売れてるよ。その気になる薬も作ったし」
「薬？」
「といってもこれもそんなにすごいもんじゃないよ。母さんがほどほどがいいっていったから、全部ほどほどに
なるようにしてる」
「・・・もしかして、ハザーク様の侍女さんにあげてないよね？」
「あげたよ。前に」
あれはラギが作ったものだったとは・・・なんてこった
「僕結構お金持ちになったんだよ〜」
ラギはのんきに言っていた。
その夜、ジェナサイトはまたユリウスに呼び出されて屋敷にやってきた。
「また風呂に入るとかいうんじゃないだろうな」
ジェナサイトは嫌そうな顔をしていた。昨日一緒に風呂に入ったが、しっかり目隠しされていたし体に触れたわけ
でもなかったので、全然楽しくなかったジェナサイトだった。
「今日は違う」
「そーか。なら何なんだ？」
ジェナサイトは椅子に座って聞いた。
「今日また王妃に聞いてきたんだが・・・」
「また王妃か・・・おかげで、俺はあれから恥ずかしくて王妃に会えないんだぞ・・・」
ジェナサイトはぶつぶつ言っていた。
どうせならかわいらしさを学んでほしいもんだが・・・
「今日はこれもらってきた」
ユリウスはテーブルの上に赤い小瓶を置いた。
「なんだ？」
「その気になる薬だ」
「え？」
「なかなか自分ではそういう所まで行きそうにないので、ちょっと使ってみたいんだが・・・」
「・・・やめといた方がいいじゃないのか？」
ジェナサイトは心配するように言った。
「そこまでやっきにならなくても・・・使うなら来年の赤い月に使ったらどうだ？」
「今の内に自信がほしいんだ」
「自信・・・」
「だから協力してほしい」
「いいが・・・あんまり無理するんじゃないぞ？」
「ああ」
「じゃあ風呂に入って酒を飲もう」
「・・・」
大丈夫かな。本当に、なんだかやけに張り切ってるが・・・
二人はそれぞれ別に風呂に入り、ユリウスの寝室で酒を飲んだ。ユリウスはゆりにもらったものを一滴混ぜていた。
うーん・・・寝室に来るとちょっとどきどきだな・・・
ここに来るのは初めてだった。ユリウスも自分もガウン姿だし、いやでも緊張してくる。
「なあ、お前、なんでそんなに張り切ってるんだ？」
ジェナサイトは横にいるユリウスに聞いてみた。
「王妃があれは楽しいもんだといってた」
「え？」
「情があるもの同士が交わるのは気持ちよくて楽しいといってた。私はお前のこと前よりは慣れて情がわいてると
いえないこともないし、お前は私の事好きだろ？だからお前とそうなっても楽しいはずだ。そう思うと
ちょっと気が楽になった」
「・・・俺はお前の事まだ好きとは言ってないぞ」
「好きじゃないのか？」
「そりゃまあ、好きか嫌いかと聞かれれば好きだが・・・」
何度も膝に乗られて変な情も湧いてるし・・・いやその前に気になる事言ったな。
楽しいはずって・・・
そりゃ男がうまけりゃ女は楽しいだろうが・・・・じゃあなんだ？楽しくなかったら俺のせいってことか？
何気に圧力をかけられたジェナサイトは、正直帰りたくなってきた。
「俺、帰っていいか？」
「なんでだ」
「だってなあ・・・」
ユリウスはすでに酒を飲み干していた。
「・・・なんか変わってきたか？」
ジェナサイトはおずおずと聞いた。
「いや。別に・・・」
「そうか、ならもう今日はあきらめて帰ろう」
ジェナサイトが立ち上がったとき、ユリウスはジェナサイトのガウンをひっぱった。
「ちょっとその気になってきた」
「ええっ！？」
ジェナサイトはうれしいどころかびびっている。
「なんだかお前の子供を産んでもいい気になってきた」
ユリウスはジェナサイトをじっと見つめて言った。
「・・・本当か？」
「ああ、今だ、今今」
「どうせなら、もっと女らしく迫ってくれないか？」
その気になったといってる割にはたいしてユリウスの表情も変わってない。
というよりも気迫に満ちた表情でジェナサイトを見つめていた。
ジェナサイトとしては、ちょっと怖い。
「早く来い」
「全くしょうがないなあ・・」
ジェナサイトはベッドに上がってユリウスを抱きしめた。
口付けすると、ユリウスは嫌がらずに応じていた。
うーん、前よりは確かに自然でいい感じだな・・・
こりゃいけるかも・・・
ジェナサイトはユリウスのガウンの紐をほどいてベッドに横たわらせた。
ガウンをはだけさせると、胸の膨らみが見えた。
白い肌を見ていると、ジェナサイトもその気になってきた。ユリウスの上に覆いかぶさると、
ユリウスの足ががんとジェナサイトの腹を蹴飛ばした。
「お・・・お前なあ！」
ジェナサイトはげほっと言って腹を押さえた。
「すまん。上に乗られるのはいやだ。」
「え」
「なんだか怖い。どうにかならないか」
ユリウスがちょっと申し訳なさそうに言った。
「うーん・・・じゃあ膝の上に来い」
「ああ」
ユリウスはジェナサイトの膝の上に乗った。
ジェナサイトは自分のガウンを脱いでユリウスのガウンも脱がせた。
「お前、大丈夫か？本当に」
「大丈夫だ。多分・・」
「その多分が怖いな」
「攻撃したらすまん」
「・・・その前に言えよ？」
ジェナサイトは優しくユリウスの肌に触れて胸の膨らみに触れた。
「嫌じゃないか？」
「大丈夫だ」
「ユリウス、口付けしてくれ」
「ああ・・・」
ユリウスはジェナサイトの唇を覆った。
・・かなりその気になってきた・・
ジェナサイトはユリウスの肌を優しくなでながら、足の付け根の方に触れてみた。
ユリウスがちょっと怯えるように顔を離した。
「大丈夫だ。お前は俺に抱きついてろ」
「わかった・・・」
ユリウスはジェナサイトの首に腕を回した。
体を優しくまさぐり、指を少し体の入り口の方に挿入してみた。
薬が効いたのか、体の方はだいぶその気になってるようだった。
「痛くないか？」
「痛くない」
「からだの方はだいぶその気になってるようだから・・・このまま抱くぞ？」
「ああ・・・」
ジェナサイトはユリウスの腰を持ち上げて、少しづつ自分の体を挿入した。
それと同時にユリウスの腕がジェナサイトの肩をつかみ、力が込められた。
「おい・・・やめてもいいんだぞ？」
「大丈夫だ・・」
ユリウスはかなり辛そうに言った。
「大丈夫なのか？本当に」
「そのまま続けてくれ」
ジェナサイトはそのままユリウスの体の奥にまでつながった。
「ユリウス・・・」
完全に一つになったことで、ジェナサイトの気持ちも盛り上がっていた。
「綺麗だな・・・お前・・・」
ユリウスはどういう気分でいるのか分からなかったが、とりあえず体の方は平気そうだったので、そのまま抱き続けて
早めに体を離した。
ユリウスはベッドにごろんと横になった。
「大丈夫か？」
「・・・・」
ユリウスは顔を横にして片手で隠していた。
「・・・・」
怒ってることはないよな。攻撃もされなかったし・・・
「ジェナサイト・・・」
「なんだ？」
ユリウスはジェナサイトに顔を向けた。
「楽しいとまでは感じなかった」
「え・・・そりゃ最初から楽しくってのはちょっと無理だろう・・・」
「もう一回」
「え？」
「もう一回したい」
ユリウスはがばっと起き上がって言った。
「お前辛いだろ？」
「もう一回」
「・・・」
ユリウスはジェナサイトの膝に乗ってきた。
「お前・・・気持ちよかったのか？」
「よくわからんが・・・そんなやじゃなかったな。」
「そうなのか？なら遠慮するんじゃなかったな」
「遠慮？」
「んじゃもう一回な」
「ああ」
ユリウスは結構その気になってるようだったが、表情の方は相変わらず無反応で、本当に気持ちよくなってるのかは
謎だった。あえぎ声らしきものもあげない。ただ、体の中が潤ってるのでそうわかるくらいだ。
分かりにくい女だなあ・・・
でもまあユリウスらしいといえば、らしいかな。
ユリウスは抱かれながらジェナサイトの背中の上の方にいる子蛇を見ていた。それが、ゆっくりと移動している。
背中に腕を回してその蛇をなでた。
先ほどよりは長くつながって離れたが、ユリウスは平気そうだった。
「さっきよりはちょっと楽しかった」
「そうか、よかったな、俺も楽しかったぞ」
「もう一回したい」
「え？」
「もう一回」
ユリウスは真面目な表情で言った。
「・・・あのな、男ってのは、そんな立て続けに何回もできないもんなんだぞ」
「そうなのか？」
「だから今日はこれで終わり」
「じゃあ明日な」
「・・・」
「明日はもっと楽しいかな？」
なんか変な事に目覚めてしまったようだ・・・
その後、ユリウスはしょっちゅうジェナサイトを誘いまくり、最初の方は律儀に相手をしていたジェナサイトだったが
ついに悲鳴をあげていた。
「あのな・・今日は三日月なんだぞ。俺だってそうそうその気にはなれないんだぞ」
「情けない事言うな」
「次の満月まで待て、な」
ユリウスは唇を尖らせた。
「なんでそうしょっちゅうしたいんだ」
「楽しいからだ」
「・・・」
ならもっと楽しい顔をしたらどうなんだ・・・・しかも最近じゃいつの間にかユリウスの方が上になってるし・・・
たまには俺も上がいい・・・
「そうか、よかったな。そう思えるようになって、この際どうだ？他に男作るって手もあるぞ」
「嫌だ。他の男と最初からするのは面倒くさい」
「最初からしなくてもベッドに誘っちまえばいいだろ」
「い・や・だ」
ユリウスはジェナサイトを睨んで言った。
「お前の子蛇が時々動くのを見るのが好きなんだ」
どうも交わってる最中に、ジェナサイトの子蛇はちょろっと移動するらしく、ユリウスはそれを見るのも楽しい
のだった。
「じゃあ次の満月な」
「・・・そうだ。いいこと考えた。王妃に前にもらった薬を、今度はお前が飲め」
「え」
「そうしろ。じゃあ来い」
ジェナサイトは強引に引っ張っていかれた。
どっかにいい精力剤売ってないかな・・・・
なぜかいつの間にやら薬を逆にもられる立場になっていたジェナサイトだった。
すすむ