あ〜お水の中って気持ちいいなあ〜
ゴミ一つ浮いていない澄んだ泉だった。腰までの水の深さで、冷たすぎず、肌にちょうどいい。所々お花のようなものが
浮いていて、水の中を良く見ると、小さな魚が泳いでる。
しばらく狭いお風呂で我慢していたので、ガーベラ姿になったゆりは思いっきり広い水の中を満喫していた。
時々平泳ぎなどして他の女性にぎょっとされている。
水から出た後は、女性達が長い髪を丁寧に拭いてくれた。
皆優しいなあ・・・それにしても、ここってのぞきとかないのかな？
泉の周りは木々で覆われていた。誰もいる気配はない。
まあ、この体じゃ、見られても全然恥ずかしくないけど・・・
何せ抜群のプロポーションなだけに、どっかにカメラでもあるなら撮ってもらって部屋に飾りたいくらいだった。
女性達は優しく話しかけてくれているのだが、ゆりには全く理解できなかった。
どうもここの言葉はわからないようだ。
ゆりはそう思い、ただニコニコ笑っていた。女性達も、たいして気にしてない様子。
あーあ、面白い夢だなあ。超美女になるって、快感・・・
ゆりは完全に夢の世界での事だと思い、美女気分を満喫していた。
第５話
その頃寝室にいたゆりの身体の方でも異変が起きていた。
はっと目を覚まして起き上がり、きょろきょろとあたりを見回した。そして自分の手を見たり、髪を手にとってみたり
している。
「あ。あ。あ。あ〜♪」
声が出せる。声が出せる〜
「ラララ〜ンラ、ラ〜ン♪」
ああ、快感♪
ご機嫌で歌を歌っていたのはガーベラだった。なんとゆりがガーベラの身体に入った拍子にガーベラがこっちに来て
しまったのだ。
人間の女の子に入っちゃったのかあ。そういえば、クーリーフンがやたら私のこと呼んでる女の子がいるって言ってたなあ。
私に似てるって言ってたけど・・・この子が私の身体入ってるのかな。・・・まあいいや。悪い子ではなさそうだし・・・
ガーベラはあまり細かいことを気にする性格ではなかった。
「あ、あ、あ、あ、ラ〜ンララ〜ンララ〜ン♪」
とにかく声が出るのがうれしくてご機嫌で声を出していたら、ベッドにかかってる布ごしに誰かが現れた。
「ゆり、夜中に何歌ってるんだ？」
寝室に来たのはラクシュミだった。ラクシュミはベッドに上がり、ゆりの横に来た。
ゆりに入ったガーベラは、じーとラクシュミを見つめていた。
「どうしたんだ？」
「・・・・ラ、ラ、ラクシュミ・・・お、王様、王様」
「？」
ガーベラはゆりの記憶をのぞきながら言葉を引き出した。
この人見たことあるなあ・・・そうか、人間の女の子に降りた時に見たんだ。その時この子に降りたんだ。
ガーベラはようやくその事に思い当たった。
うーん。私と好みが似てるわね。
「ゆり？」
「王様、王様、好き。大好き。」
「そうか、もう寝よう」
「王様、歌、歌聞いて」
ガーベラはラクシュミにひっついて腕をゆすった。
「歌？もう夜中だぞ？」
「歌・・・歌・・」
悲しそうな声に、ラクシュミはそういえば・・・と子供らが言っていたことを思い出した。
今日の母様はちょっと変だから、何かあっても優しくしてあげてね。
そう子供らは言っていたのだった。
「わかったわかった。聞いてやる」
ラクシュミがそういうと、ゆりに入ったガーベラはにっこり笑って、ラクシュミに寄り添って歌いだした。
美しいあなたに見つめられるだけで私の心はどうにかなってしまいそう
あなたに出会ったことが私の最上の喜び
私の目にはもうあなたしか見えない
私の心を癒すのは、あなたのその微笑だけ
だから優しく微笑んで、愛しいあなた
ガーベラは優しい声で永遠と歌い続け、ラクシュミは途中からあっけにとられて聞いていた。
ゆりって案外歌うまかったんだな。全然知らなかった・・・
今まで子供達に歌ってるのしか聞いたことがなかったので、かなり驚いていた。
まさか、今横にいるのが自分が好きだと言ったガーベラだとは、ラクシュミは夢には思ってない。
見かけは完全にゆりで、声もゆりだった。歌もうまいな・・とは思うが、涙を流すほど感動する、という
すごいものではない。
「ねえ、どうだった？」
歌が終わり、ゆりに入ったガーベラが聞いた。
「すごくよかったぞ。お前がそんなに歌がうまいとはびっくりだ」
「うれしい？」
「ああ、うれしいぞ」
何せ歌の内容は自分に対する愛の歌なので、夫としては喜ばないわけにはいかないだろう。
「歌うって気持ちいいなあ・・・」
「そうか。もう寝ろ」
「うん。だ、抱きしめて」
「ああ」
ラクシュミはゆりの身体を腕に抱きしめた。
気持ちいい。愛されてるって感じる。なんだか他にも恋人一杯いるみたいだなあ。
人間にしてはやるじゃない。
また来たいなあ・・・
ガーベラはそのまま目を閉じた。
朝、目覚めたゆりは興奮した様子でラクシュミの腕をゆすった。
「ねえ、王様、聞いて聞いて、私すっごい夢みたんだよ」
「ん？なんだ？」
ラクシュミが目を覚ました。
「夢の中でガーベラになったんだよ。すっごい美女だったんだよ」
「・・・・そうか。よかったな」
ラクシュミの反応がつまんなかったのでゆりはむくれた。
「それだけ？」
「だって夢だろ？」
「そうだけど・・・一度超美女になってみたいって思ってたから、すっごいうれしかった」
「そうか。」
朝食の時間子供たちにその話をしたのだが、皆ふーんという感じだった。
ちぇっつまんない子たちねえ・・・
「お母さん、この前僕が言ったこと気にしてるの？」
ラギが神妙な顔で聞いてきた。
「え？」
「僕がガーベラ降ろしたらって言ったことだよ。お母さんはそんなこと気にしなくていいんだからさ」
「別にそこまで思いつめてないよ」
「ならいいけど」
なんだかラギに心配されてる・・・
私はいたって普通なんだけどなあ・・・
その日は昨日の変わりに竪琴を教えてもらい、ハザークのところで弾いた。途中弾いてない時期があったので腕前はちょっと
前に戻っていたが、それでもこれだけやってると、結構指が覚えてくれてる。
「なあ、王妃、そろそろ、身体の方はいいんじゃないか？」
ハザークがゆりを横に座らせて意味深な事を言った。
「そろそろ？」
「王とはもうしてるんだろう？」
「はあ、まあ」
「じゃあ我ともいいだろ？」
「それが・・・ちょっと今水不足だから・・・」
「それとこれがどういう関係だ？」
「そうなるとお風呂入りたくなっちゃうから、水不足が解消されてからね」
ゆりが微笑んで言った。ハザークは睨んでいる。
「別にハザーク様がやになったわけじゃないんですよ。本当ですよ」
「・・・じゃあ口付け・・・」
ハザークが顔を寄せてきて、ゆりはそのまま口付けを受けた。その時、ぼとぼとっと椅子の前に何かが落ちてきて、
ゆりは思わず「ひいっ！」と言って飛びのいた。見るとロイとナナミがいた。
「パパーパパー遊んで」
「ハザークパパ」
ハザークはへびぱぱからハザークパパへと昇格していた。
「いきなり来たらびっくりするじゃない」
ゆりがロイをだっこした。
「えへへ」
ナナミはハザークに手を伸ばしていたので、ハザークが膝に乗せた。
「本当の親子みたいですねえ。」
ゆりが思わず言った。
「王よりも我の方が子供らと遊んでやってる気がする・・・」
「それは・・・」
気のせいじゃないかも。
「パパ、たかいたかいしてー」
「ああ。わかったわかった」
ハザークはナナミを片腕で抱えたまま立ち上がり、部屋の窓を開けてぽんとほおり投げたのでゆりがぎょっとした。
見ると、窓の外でナナミが宙に浮いている。
「そっちも貸せ」
「はい」
ロイを渡すと、ロイもほおりなげて、宙に浮いた。
「きゃはは」
「わーいわーい」
二人ともじたばた手足を動かして大喜びしている。まるで空を泳いでるようだ。
確かにハードな遊びだなあ・・・でもなんだか楽しそう。私もちょっとやってみたいかも。
そう思ったが、さすがに言い出せなかった。
「もう部屋の中じゃ満足できなくなってしまったんだ」
「そうなんですか。すいません。いろいろしてもらって」
「お前の子供だから別にいい」
「・・・」
その時ゆりの左目がぱっと変わった。ゆりは横からハザークに抱きついた。
「ハザーク様、好き」
ハザークがゆりを見た拍子に、双子がどんどん落下して行った。
「あっ！」
「おっと」
ハザークが再び双子を上に上昇させて、双子は部屋の中に戻ってきたのだった。
その夜、寝室に来たラクシュミはゆりを見て、
「今夜は歌わないのか？」
と聞いた。ゆりはきょとんとしていた。
「歌？」
「昨日いろいろ歌ってたじゃないか」
ゆりの横に入りながら言う。
「歌なんて歌ってないよ」
「？」
「王様ったら夢見ちゃって。うふ」
「？？？」
ラクシュミは首をかしげた。
変な夢見たのはお前だろう、と言おうと思ったがやめて、そのまま二人は眠った。
その夜ゆりは夢も見ずに、朝普通に目覚めた。
12の月の15日になっても梅雨は来ない。水不足はいよいよ深刻だった。
あーあ。もしかして、その内お風呂に入れなくなったらどうしよう・・・
かといって裸踊りはいやだし。踊って雨降らなかったらただのバカだしなあ・・・
そんなことを考えていた20日の夜、眠りについて気づいたら、ゆりはまたガーベラになっていた。
場所はどこかの神殿の中らしかった。白い椅子に座っていたのだ。ガーベラになったというのは、自分の長い豪華なくるくる
した髪を見てわかった。部屋の隅には白い柱が一杯あって、天井から布があちこち下がっている。とっても広い部屋で、他
にも数人の男女がいた。
わお、美形度高いなー・・・
皆きらきら光り輝いている。
神様だ、どの神様やらさっぱりわからないけど・・・・この際夢でもいいから水の神様探してみようかな。
中にいる神々を眺めたが、だれも水瓶はもってない。
ゆりは神殿の外に出てみた。
ん？
周りには白い物が浮いていた。
あれ？
地面も白い。白い塊を歩いて行ってぎょっとした。地面は途切れて、そこから下を見ると、遠い所に森や神殿のような
建物が小さく見える。
ええー！ここって浮いてる？しかも、なんだか動いてる。
じっと見てると地上が動いて見えた。動いてるのは自分がいる場所の方だろう。
どうやって降りるんだろう。神様って、飛べるのかな？
うーんと考えていたらちょいちょいと肩をつつかれた。
横を見ると男の人がいて、その後ろに翼がついた白い馬がいた。
わおーこれって、ペガサスってやつじゃない！？すごーい、きれー！
子供らにみせたーい！
男の人はにこにこしながらなにやらいい、ペガサスを差し出した。白い鬣がとても美しい。
そうかあ。これで地上に降りるのね、そう思ったが、もちろんペガサスどころか馬すら乗ったことはない。
落ちたらどうしよう・・・
なんだか心配になってきた。
誰か一緒に乗ってくれないかなあ。そう思っていたら、神殿の中から誰かやってきた。えらく派手な髪をした男で背中に
白い翼がついている。男は近づいてきてゆりに話しかけた。ゆりにはさっぱり意味はわからない。男はひょいと身体を
抱き上げて、そのまま飛んで行った。
ええー！！！
白い大きい翼が男の背中でばさばさいっていた。
わー、なんだか気持ちいい。空飛んでる〜
もしかして、この人が虹の神様ラーズかな。だからこんな派手な髪してるんだ。良く見るといい男。
ゆりがじっと顔を見ると、ラーズは顔を向けて微笑んだ。そして地上に降り立って身体を下ろしてくれた。
ゆりはお礼代わりにニコニコ微笑んだ。ラーズはなにやら言って、頬と唇にちゅっとキスして去って行った。
キスされちゃった・・・こっちでは挨拶かも？
周りを見ると草原だった。心地よい風が吹いている。遠くに川や森があるのが見えた。
よし、とりあえず、ラクア探そうっと。
ゆりは適当に歩いて行った。
一方、夜中寝室にやってきたラクシュミは、またゆりが大きな声で歌ってるのを見た。顔を見るととても気持ちがよさそうに
歌っている。こっちにはまたガーベラがやってきていたのだった。ガーベラはラクシュミの顔を見るとにこりと微笑んだ。
「王様、また歌聞いてね」
ガーベラはまたラクシュミに寄り添って歌いだした。
この前は歌なんて歌ってないと言ったのに・・・どうなってるんだ？
ちょっとおかしいなと思ったラクシュミだったが、別に危機的状況というわけでもなかったので、深くは考えなかった。
その夜の歌は妙に官能的な内容で、ラクシュミはついその気になって、そのままゆりの体を抱いてしまった。
「王様愛してる」
「ゆり・・・」
抱かれた後に、ガーベラは今度は愛する人に抱かれた喜びの歌を歌いだして、ラクシュミは奇妙だと思いつつもじっと
聞いていたのだった。
その頃ゆりは、ガーベラがラクシュミとそんなことになってるとは思いもよらず、ただ闇雲にうろうろとラクアを探し
続け、疲れ果てていた。
ああーもう！この世界に馬車とかないの！？せめてだれか地図ちょうだい！
神殿らしきものはいくつかあってこそっと行ってみたのだが、中から出てきたのは女の神だったりで、ラクアの神殿では
なさそうだった。しゃべれれば誰かに聞けるが、しゃべれないのだから聞きようもない。筆談しようにもここの言葉は
書けそうになかった。
不親切だなあ。現在地ここ、とかいう看板があちこちにあればいいのに・・・
一人ぶーぶー愚痴りながらゆりは丘の上で座り込んだ。
そしてため息をついてるうちに目が覚めてしまったのだった。起きた時はちゃんと寝間着を着ていたのでゆりは何もきづかな
かった。
「ゆり、昨日歌歌ったか？」
ラクシュミが目が覚めたゆりに聞いた。
「え？歌？ううん」
ラクシュミはゆりの左目の辺りに触れて、「ゆり、ちょっと出て来い」と言った。
するとゆりの左目がぱっと蛇の目に変わった。
「なあに？」
「昨日歌歌ったのお前か？」
「え？ううん。歌なんて歌わないよ」
ラクシュミは首をかしげた。
「お前達、最近体調とかどうだ？」
「普通よ。」
「おかしな事何もないか？」
「ないよ。また夢の中でガーベラになっちゃったよ」
「ガーベラ？」
「いろんな神様が見れて楽しい」
「そうか・・・まあ何もないならいいんだが・・・何かあったらすぐ言うんだぞ」
「はーい」
おかしな事もあるもんだ・・・といっても、昨晩のゆりも、歌を歌いまくってただけだしな。
ゆりの夢とこのおかしなことが、一緒だとはまさかラクシュミも思っていなかった。
朝食後、ゆりは神の世界の事をいろいろ考えていた。一度ならばただの夢だが、二度もあるとただの夢とも思えない。
うーん。もしまた神様の世界に行った時のために、ちょっと予習しておかねば・・・神様の世界の地図、どっかに
ないかな。
ラギに聞いてみようかなと思ったが、また妙な目で見られてしまいかねない。
ちょっと図書室に行ってみようと廊下を歩いていたら、シャナーンに出くわした。
「王妃」
「シャナーン、どこ行くの？」
「え・・・あの・・・王妃に会いたくなって・・・」
シャナーンはちょっと恥ずかしそうに言った。
そういえば、シャナーンって結構本好きだったよね。ちょっと聞いてみよう。
「じゃあ部屋でお話しようよ」
「はい」
ゆりはシャナーンに部屋に移動させてもらった。そしてゆりは思い切ってシャナーンに夢の事を話したのだった。
「本当ですか？すごいですね」
シャナーンは目を輝かせた。
「この話、信じてくれる？」
「もちろんですよ。だって王妃には二度もガーベラ様が降りられたのだし、そういう事だってありえるじゃないですか」
「そうだよねえ」
シャナーンがすぐ信じてくれたのでゆりはうれしくなった。
それに比べてあの子らは・・・・
「空に浮いていた神殿というのは、神々の長、アシュラン様の神殿ですよ。雲の上にあるらしいですから」
「へー。なんでしゃべれないのかなあ。あーもうーも言えないんだよ」
「そういえば・・・」
シャナーンはちょっと上を向いて記憶を探るようにした。
「ガーベラ様が言葉が話せない時期がありましたよ」
「え？なんで？」
「確か、ガーベラ様の歌を聴いたアシュラン様が懸想してしまって、それを怒ったヒルデリア様がガーベラ様の声を奪って
しまったんですよ。そういう話がありましたよ」
「え？それってどういうこと？私が行った神の国って、過去って事？」
「そうなりますねえ。一説には、神々の世界の周りには、様々な時間の流れがあると言われてますから。たまたまその時の
ガーベラ様の中に入ってしまったのではないでしょうか。神話の本というのも不思議なもので、元々誰が書いたのか全くわ
からないそうなんですよ。西の聖域には様々な神々の本があるんですが、時々白紙になってしまったり本の内容が変わった
りするらしいですよ。そういう時は神の世界に何か変化があった証拠らしいです」
「へー・・・」
「我々が手にしている神話の本も、本によって内容が違ったりで、どれが本当でどれが嘘か、なんて我々にはわからないで
すしね。ガーベラ様が声をなくされたのがいつかなんて事も、さっぱりわからないです。」
「そりゃそうよねー。ねえ、水の神様ラクアの事教えてくれる？」
「ラクア様は水瓶を持った優しい神様で、その水瓶の中の水は、どんな汚れた泉さえも一瞬で綺麗にしてしまう魔法の水が
入ってるそうですよ。綺麗な湖の真ん中に神殿があるらしいです。」
「湖の真ん中。なるほど、今度行けたら探してみよう」
「ラクア様にあってどうするんですか？」
「水不足の相談。恋人の頼みなら聞いてくれるかなーって思って」
シャナーンは全くばかにすることもなく微笑んだ。
「王妃、神の世界に行くのはいいですが、ちゃんと帰ってきてくださいね」
「うん」
シャナーンとゆりは手を握り合って別れた。
シャナーンってほんと、いい人ね。私を信じてくれて。
今度こそはラクアに会いに行ってみよう。水不足解消に役立つかどうかわからないけど・・・
全く何の役にも立たないかもしれないけど、まあせっかくだしね。
でも探すなら空からじゃないと無理ね。あのペガサスに乗って探すのが一番だなあ。
といっても、ペガサスから落ちて死んじゃったら困るし・・神様だから死なないまでも足折るかもしれないし・・・
せめて馬に乗る練習でもしようかなあ。
ゆりはラクシュミに馬に乗る練習がしたいと言ってみた。すると、即答で「危ないからだめだ」と言われてしまった。
「馬はだめだ。大蛇に乗ってろ」
それじゃあ練習にならないじゃんよ。
ゆりはぶーたれたが、確かに、乗馬というのは危ないという話は向こうでも聞いたことがある。
ラクシュミがだめだという以上はだめなのであきらめた。
３度目の神の国訪問は結構早かった。二日後の夜には行けてしまったのだ。場所は花が咲き乱れた丘の上だった。
わーきれーと一瞬見とれたが、そういう場合じゃない。朝までにラクアを探してなんとかしたいものだ。
よし、今日こそは！
気合を入れて拳を握り締めていたら、腕に何かが引っ付いた。見ると金色の頭の赤ん坊だ。背中に白い翼が生えている。
あ！あの時の天使！
ーお母さん、今日も綺麗だよ。
赤ん坊はちゅっとゆりの唇にキスをした。
あれ？今声が聞こえた。そう思っていると、赤ん坊は見る見る内に大きくなり、ゆりはぎょっとのけぞった。ゆりよりも高い
背丈の男に変身してしまったのだ。しかも顔はかなりの美形なのでゆりは目を見開いた。
ーじゃあね
そう言って男は飛んで行ってしまった。
え・・・あれ？今声が聞こえたよね。
待って、ラクアの場所教えて息子ー！息子、戻ってきてー！息子！
とっさに名前が出てこなかったのでゆりは息子息子と叫びながら走ったが、すでに遠くの方に飛んで行ってしまった。
くそーやっぱり地道に探すしかないのね。さてどうしようかなあ。
ゆりはガーベラ姿でとりあえず、他の神か妖精かを探しにでかけたのだった。
すすむ