「お母さんお父さんがんばってねー」
赤い月が出る日の夕方、そっくり同じ顔の黒髪の女の子が両親に言った。
「ええ、がんばるわ。ねーミルキダス様♪」
「夢の同時妊娠、しかも男の子！がんばりましょうね。ミルキダス様」
二人の女性はキャシーとジェシカ、ミルキダスの子供を産んだ女性達だった。ミルキダスもいたのだが、一人真っ赤な
顔でうなだれている。初めての交わりの月で女性を二人も孕ませたミルキダスだったが、二人が妊娠中ぽつりぽつりと
違う女性とも過ごしてみたものの、10年ほど経ってからはまた二人と過ごしていた。ミルキダスとしても、最初に
交わりの月が成功した女性達だし、明るい性格がゆりっぽくて結構気に入っていたのだ。
だが二人とも是が非でも再び同時妊娠したいらしく、かなり燃えていたのでミルキダスとしては恥ずかしい事この上
ない。
「私達もう弟達の名前考えちゃった。だからがんばってね」
娘達はにこにこして言っていた。
え？もう？随分気が早いな・・・しかもなぜに弟限定？
「あの・・・あまり圧力かけないでほしいんだが・・・」
「大丈夫ですわよ。ミルキダス様、今年無理でも来年がんばればいいんですもの」
「そうですわよ〜来年がだめでも再来年がありますし〜お互いに子供ができるってわかっていますから、気は楽ですわ」
「はあ・・・」
女4人にたじたじのミルキダスだった。
第１３話
「あ・・・ああ・・・はあん・・・」
その夜、ゆりはラクシュミの上に乗り、身体を貫かれたまま揺らされていた。すでにゆりの頭の中には欲望しかない。
むちゃくちゃに愛されて抱かれる事が今のゆりにとっては何よりの喜びだった。
ゆりの左目はせわしなく黒目と蛇の目が入れ替わっていた。最近あまりに興奮するとこうなってしまうのだ。
腰がぐいと抑えられて奥で放たれて、身体が離された。
「ゆり・・・・大丈夫か？ゆり・・・・」
頬をぺちぺちとたたかれて、ゆりの目がラクシュミを見た。今ラクシュミは変化している。普段の姿とは全く違う
姿なのだろうが、ゆりにとってはそんなことはどうでもいいことだった。
「お前興奮しすぎだぞ」
ラクシュミが笑って言った。
「だって・・・２年ぶりだから・・・去年はだめだったし」
「そうだったな・・・」
声を聞くだけでぞくぞくする。
この王様だけは誰にも見せたくない。
声も聞かせたくない。
私のもの。
「王様・・」
ゆりが甘えるようにラクシュミの胸に手を伸ばした。
「ふふ・・・今日は死ぬほど満足させてやるぞ。」
「うれしい・・・」
ゆりはラクシュミに抱きついた。
朝、ゆりはラクシュミとぬるいお湯につかりながらぼんやりしていた。あまりに快楽を感じすぎてまだ心はぽやーんと
している。
「ゆり、お前、神相手にあんなに興奮するんじゃないぞ」
横で言ったラクシュミの言葉にゆりは瞬いた。ラクシュミは普通の姿に戻っている。
「いくらなんでもおかしいと思われてしまうからな」
「そ・・・そんな・・・私は王様以外とはあんなにはならないよ」
「そうなのか？今度ハザークに聞くぞ？」
「う・・」
ラクシュミは意地悪げに笑ってゆりを見ている。こういう顔も普段はあまりしない。ゆりは頬を染めたまま横を
向いた。
「ひどい・・・」
「全くお前は悪い女だ。目を離すとすぐ他の男を欲情させおって」
「そんな・・・」
「悪い女だ」
「元々・・・王様が恋人達は儀式以外でもかまってやらなきゃだめとか言ったんじゃない・・・」
「お前は王妃なのだから、男たちに奉仕させるだけでいいんだぞ。どうせいろいろやってやってるんだろ？」
「だ・・・だって・・・抱かれてあげれないから・・・せめてと思って・・」
「困った王妃だ。ちょっと仕置きしてやらなきゃいけないな」
ラクシュミはゆりの額の髪をあげて額をなでた。
「し・・・仕置きって？」
ゆりはどきどきして聞いた。
「今晩は全部口でさせてやる」
「ええー！そんな！」
「なんだ？嫌だというのか？」
「だってえ・・・王様には抱かれたいもん・・・」
「今晩しだいでは明日も抱いてやらないからな」
「そんな・・・」
「そろそろ出るぞ」
ラクシュミは立ち上がった。
王様ってば・・・一応嫉妬してくれてるみたい・・・王様のお仕置き・・・・ちょっとぞくぞくする。
私ってばマゾっぽいなあ。
ゆりはラクシュミについて出て行った。
神の国では、ガーベラはダーナや他の妖精たちと一緒に水浴をしていた。神には熱いお湯に入るという習慣がないので
たいてい木々に囲まれた泉などで身体を水に浸している。別に身体を洗わずとも汚れることはないのだが、こうするのが
好きなのだ。美しい女性達が水に入っている光景は、実に絵になる。妖精たちがざわざわ何か言っているので、ガーベラ
はダーナを見た。ガーベラには彼女らの声は聞こえない。
「ジェラルドがのぞいてるのよ」
ダーナが遠くの木を指した。
ーあら、ほんとね。
遠くの方に確かに木に身体を隠して誰かこちらを見ている。
妖精たちは嫌そうに水の中に首まで入ってしまった。
ーまあいいじゃない。見せてあげれば。別に減るもんじゃないし
ガーベラがダーナにいい、ダーナが妖精たちに伝えた。
「えーでもー・・・」
ダーナもガーベラも、別に身体を隠そうともしていない。
「ジェラルドったらおっかしいのよ。もっと側で見たらっていっても、遠くからのぞくのがいいとか言ってさ、
側にはこないのよねー」
ダーナが笑って言った。同時にガーベラの心にも伝わっている。ガーベラもおかしそうに笑った。
神々の中には美男美女が多いが、皆が皆そうではない。ジェラルドはおなかがでっぱった見た目小太りの中年の男だっ
た。金髪の短い髪で口ひげをはやしている。この男、見た目はこうだが物を作り出す才能は抜群にあり、神格の高い
神々の飾り物は全てこの男の作によるものだった。ジェラルドの神殿の横にはジェラルド工房という工房があり、神国の
調度品や食器、楽器なども全てそこで作られている。神々の姿を模した木像や石像などの製作もお手のものだが、昔
ジェラルドがダーナの裸体をこっそり石像で彫っていた時、それを見たダーナが「これは私じゃない！」といちゃもんを
つけて彼の前で裸になったのは有名な話だった。
ジェラルドが生み出す作品はどれも素晴らしいのでダーナもガーベラも裸体を見せて欲しいと言われれば見せてあげるの
だが、本人は遠くからそっと見るのが好きらしく、そうは言ってこないのだった。どうものぞきが趣味らしい。
ダーナやガーベラは平気だが、そこそこの美しさの妖精たちは、裸体を恋人以外にさらすのに抵抗があるようだ。
「ああ見えて人気あるのよ。ジェラルドは。芸術系の女神達にはね」
ダーナが妖精たちに言った。
ーまあ彼が目当てか、彼の作品が目当てなのかはわからないけどね。
とガーベラ。
ーあ、そーだ。私さ、またハロルドと別れちゃった。
ダーナが突然言い出した。
ーふーん。あなた達よく別れたりひっついたりするわね。
ガーベラが興味なさそうに言った。
ー私だけじゃないわよ。ハロルドは他の女神とも別れたりひっついたりしてるわよ。
ーあ、そう。
ー・・・まだ昔の事根にもってるのね。
ガーベラの微妙な表情にダーナが言った。
ーああいうことは一生根に持つのよ。
ーまあまあ、ハロルドも前よりは多少丸くなったわよ。
ーそれで今度は何で別れたの？
ー私がクーリーフン追いかけてたら勝手に怒り出して、もういいわよ。あんな奴
ーふーん。
その時クーリーフンが飛んできて妖精たちから今度は「いや〜ん」という黄色い声が上がった。
ーおかあさ〜ん。
クーリーフンはガーベラの横に飛んできた。
「あら、クーリーフン」
ダーナが身体をちょっとくねらせてウインクした。人間の男なら鼻血を出して失神ものだが、クーリーフンは
女性の裸体に興味が全然ないので、にっこり笑って「やあダーナ」と言った。妖精達から思わずぷぷっと声が漏れて
ダーナがぎろっと睨み、妖精達はそそくさと泉を出て行った。
ーラーズがお母さんに会いたいなあって言ってたよ。
ーそう、じゃあ会いに行こうかな。
ガーベラも泉から出て柔らかい布で身体を拭いた。
「ねえ、クーリーフン、一緒にどこかで歌を歌いましょうよ」
「僕これからアマンザに会いに行くんだよ。またねー」
「そう、またね」
ダーナが残念そうに言うとクーリーフンは飛んで行った。
「ああ、クーリーフンに性欲さえあれば！」
ーまたそれ
ガーベラは呆れ顔だ。
ーなんであんたの息子なのに性欲ないの？
ーさあ。まあいいんじゃない。
ーよくないわよ！いつか恋人にしちゃうから。もうちょっと大人になってくれないかしらね〜
淡い期待を抱いているダーナだった。
人間界では赤い月が終わり、次の朝を迎えていた。
「ジェナサイト、今回は結構できたな。な？」
そういったのはユリウスだった。二人は今年も１０日間一緒に過ごしていた。
「結構って、たった４回じゃないか」
とジェナサイトが寝そべったまま言った。
「去年の２倍じゃないか」
「そりゃまそうだが・・・10日で４回は不満だなあ・・・」
ジェナサイトはぶつぶつ言っている。
「まあ、来年その倍になれば８回になるじゃないか」
「なんでお前って女は、赤い月になるととたんにいや〜んとか言い出すんだ？」
「え？そんなこと言ってない」
ユリウスの顔が引きつっていた。
「言ってたぞ、普段と赤い月が逆になればいいのになあ」
ジェナサイトが思わず言ってユリウスに睨まれた。
一方ゆりは、疲れきって朝から晩まで自分のベッドでごろごろしていた。
ああ、王様ったら今回は結構激しかったなあ。でも楽しかった♪
しんどい日もあったけど・・・普段の王様ってああしろこうしろって言わないから、やっぱり赤い月の王様って
新鮮で楽しいなあ・・・
ぼんやりしてたら横にころんころんと物体が現れた。見ると双子だった。
「まー」
「まーねんね？」
「そうよ。まーはねんね。一緒にねんねしよ」
ナナミはそのままコロンと横になった。
「ロイもねんね」
「や」
「やじゃないでしょ。ねんねしなさい。たまには」
「や」
「ほら、おいで。ロイ」
ゆりは強引にロイをだっこして寝転ばせた。
「ねーんね。ねーんね」
ロイはパッチリ目を開けていたが、しょうがないと思ったのかそのまま目を閉じた。
ゆりはしばらくまったりとした時を過ごし、夜も一人で眠った。気が欲しいという状態にはならなかったので、
子供ができなかったようだ。できらたできたでいいが、しばらく体を休めるのもいいかもしれないとゆりも思っていた。
赤い月が終わり10日ほどが過ぎた頃、ゆりは気づくと、また夢の中で光り輝く世界にいた。
久しぶりに神の国へとやってきたようだった。
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