夜だった。星がきらめき、大きな月も出ている。世界が静寂に包まれていた。昼間の世界もいいが、夜の世界も
また美しい。
ガーベラは神の国で夜、丘に立ち、夜空を見上げていたのだった。ふいに、闇が形を作り、神の姿に変わった。
紺色っぽい長い髪、全身闇のような衣をまとった神は、肌だけがやけに白く見えた。
「オルガ」
ガーベラはその神に抱きついた。
「ガーベラ・・・声が戻ってよかったな」
夜の神オルガ、古くからのガーベラの恋人だった。闇色の瞳には星のようなきらめきが見える。
切れ長の瞳、整った大人っぽい顔立ちをしていた。
「あなたの声が久しぶりに聴けてうれしい」
「そうか・・・」
オルガはガーベラの頭をなでた。背が高いのでガーベラが抱きついてもオルガの胸元くらいの高さにガーベラの
頭がある。
「まあそれはいいとして・・・」
オルガはおもむろにガーベラの身体を離してガーベラの左耳を引っ張った。
「いたたたた。もう何するの」
「何するのじゃない。お前ハロルドの子供産んだな？」
オルガが少し身をかがめて、ガーベラの顔を睨んだ。
「え、うん。もう聞いたの？」
「嫌でも聞こえる。あれだけ盛大に鐘が鳴っていればな。全く・・・ジンラは私と同じ頃の恋人だからまあいいが、
私の子供よりもハロルドの子供を先に産むってのは一体どういう事だ」
闇の瞳で睨まれて、ガーベラの顔は引きつっていた。
「いや・・・その・・・ハロルドの子供は、なぜか偶然産まれちゃって・・・えへへ」
「えへへじゃない」
「もう怒らないでよ。でもあの子のおかげで声戻ったし、ヒルデリアも喜んでるし、ま、しばらく空の神殿は
平和でいいじゃない」
ガーベラはかわいげに笑みを作って言った。
「・・・まあ、産まれてしまったものはしょうがない。」
「そうよ。オルガの子供できるようにがんばりましょ」
「そうだな。んじゃ、服脱いでくれ」
「・・・え？ここで」
「ここで」
「こ・・・ここでするの？」
「ここでする」
「ここ、外よ。神殿行こうよ」
「いいじゃないか。今日は星も月も綺麗だし」
「たいてい毎晩きれいじゃない」
「ガーベラ・・・しのごの言うなら、他の女神の元に行ってしまうぞ？」
オルガに横目で睨まれて、ガーベラは口を尖らせた。
「もうわかったわよう」
ガーベラは腰紐を外して衣を脱いだ。美しい肌がキラキラと輝いてみえる。オルガはガーベラを抱きしめて口付けた。
「お前は肌を隠しているのがもったいないな。ずっと裸でいた方がいいのに・・・」
「それはさすがに・・・」
「来い」
オルガは草の上に座り、ガーベラの腕を引っ張った。
「オルガは脱がないの？」
「私は面倒だから下だけな。お前がしてくれ」
「もう・・」
ガーベラはオルガのローブ状になってる服を、腰までたくしあげた。神というのは基本的に下着のようなものは
つけていないので、衣の下はすぐ裸だった。
「あの・・・すぐ乗っちゃってもいい？」
「だめだ」
オルガは微笑んで言った。
「ううー・・・」
「ガーベラ・・・私は今まで他の女神に手を出さずにお前だけをだな・・・」
「わかったわよう。意地悪」
ガーベラは身をかがめて、オルガの下半身に手を伸ばして、舌でなめまわした。
こんな所誰かに見られたら、私の女神としての立場は・・・
そう思いながらも、愛する男が相手では、ついはりきってしまう。
「ガーベラ、もういいぞ、来い」
ガーベラは身体をあげて、オルガの膝の上に乗ってオルガの肩に両手をかけた。
腰をぐいと引かれて、身体を貫かれた。
「ん・・・」
「次はじっくりかわいがってやるからな。ガーベラ・・・」
「んん・・・」
何もされなくても、ガーベラの体はすでに興奮状態になっていた。そういう状況になれば、自然にそうなるように
身体がなっている。
「せっかく声が戻ったのに、出さないのか？」
オルガが腰を突き上げながら言った。
「だって・・・外だし・・・」
「いいじゃないか。誰かに聞こえても。お前は愛されてる時が一番美しいんだからな・・」
「オルガ・・・あああ！」
ガーベラが思わずあえぎ声を漏らした時、二人の間から、何かが二つくるくると空に上がって行った。
二人がを空を見上げると、それは人の姿に変わり、地上に降りてきたのだった。
「あ・・・・あれ？」
「子供ができた」
オルガが唖然として言った。
「こ・・・子供・・・」
ガーベラはオルガから離れて、その二人をじっと見つめた。二人とも男の子で黒いウエーブがかかった短い髪の
あどけない顔立ちをした幼い子供だった。額には金色に輝く光り物をつけていた。二人おそろいだ。
オルガがにっと笑った。
「たまには外でやるものだな。星の神の誕生だ」
「星の神？」
「ああ、見てみろ。星が先ほどより綺麗にきらめいている」
ガーベラは夜空を見上げた。そういわれればそうという気もしないでもないが、よくわからない。
「さあ、空の神殿に行ってアシュランをたたき起こそう」
オルガは二人を抱き上げてふわりと浮いた。
「ではな、ガーベラ。」
子供たちはガーベラに手を振り、オルガも子供たちも、消えてしまった。
ガーベラは衣で肌を隠したまま、しばらく唖然としていた。
子供産まれちゃった。二人も・・・
「いやー楽しんだ楽しんだ」
横からのんきな男の声が聞こえてきて、ガーベラはぎょっとした。
「ウィル！」
男はふわふわ宙に浮いていた。風の神ウィルだ。
「綺麗だったぜ。ガーベラ」
ウィルはにまにまして言っていた。
「見てたの？どこから？」
「合体した所から。俺だけじゃないぜ、他の妖精たちも見て興奮してたぞ」
「え・・・・」
ガーベラの顔が引きつった。
「神の誕生に立ち会えて光栄光栄。俺もダーナのとこいっちゃおっと。じゃあな、ガーベラ、また外でやってくれ」
そういうとウィルはふわふわ飛んでいった。
「やんないわよ！」
ガーベラは真っ赤な顔でいい、穴があったら入りたい心境に陥ったのだった。
第17話
「あらら、どうしたの」
庭園にいたゆりは突然現れた子供達とハインリヒを見て言った。皆水浸しだ。
「話は後で、着替えてくるー」
それぞれ部屋に消えて行った。
今日は子供達はハインリヒと一緒に滝に行ったのだった。ナナミが虹が見たいと言ったからだ。
「ロイが滝つぼに飛び込んじゃってさー」
「それで皆水浸しになったの？あらら」
ゆりは笑っていた。子供たちは３人共渋い顔をしている。子供たちもゆりも双子の部屋に来ていた。
双子はベビーベッドに乗っている。
「ぴちゃぴちゃ」
ロイはベッドの上でうれしそうだった。
「泳いだの。すごいねーロイは」
「水から出るの嫌がって、しばらくばちゃばちゃやってたよ。ロイは」
シスが呆れたように言った。
「ナナミは？虹見れた？」
「ちっこい」
「ちっこかったの。そりゃしょうがないねえ」
「ナナミはおとなしいんだけど、ロイは何するかほんとわかんないんだから」
とアナスターシャ。
「びちゃびちゃ」
「泳いだって言っても、ずっと僕が体もってたんだよ。まださすがに泳げないよ」
とシス。
「しかも水を飛ばされてみんな水浸しになっちゃったんだよ」
ラギが言った。
「困った子ですねえ。ロイは」
ゆりが顔を寄せて言うと、ロイはきゃはははと笑っていた。
その夜遅く、ラクシュミが寝室に行くと、ゆりがベッドの上で竪琴を奏でていた。達人の域に達するその音色は
ゆりの物ではなかった。
「来ていたのか・・・」
「うん。あのね、私声が戻ったの」
ゆりに入っていたガーベラは手を止めて言った。
「そうなのか、よかったな」
「だからもう当分この身体にはこない」
「・・・そうか・・・残念だが、仕方ないな・・・」
ラクシュミはつぶやくように言った。これだけ会えたのが幸運だと思うべきだろう。
「今夜は思う存分私の竪琴聴いてほしいな。」
ガーベラはにこりと笑って言った。
「それはうれしいな。せっかくだからハザークも呼んでやろう」
ガーベラはラクシュミと、唖然としているハザークに、夜通し竪琴を聴かせ続けたのだった。
次の朝、ゆりが目を覚ますと、ラクシュミは横に寝そべったまま目を開けてゆりを見ていた。
「おはよう。王様」
「ああ。昨日は神の国行ったか？」
「ううん」
ゆりは昨晩神の国には行っていなかった。ガーベラがこちらに来ただけだったのだ。
もう二度と会えないかもしれないと思うと、ちょっと悲しくなったラクシュミだった。
「これ、お前に御礼だそうだ」
ラクシュミは５センチほどの青い小瓶をゆりに渡した。
「え？」
「昨日またガーベラの幻が現れたんだ。声が戻った御礼って言ってたぞ」
「えー」
ゆりはばっとからだを起こして小瓶を眺めた。
「ガーベラって私が入ってるの知ってるの？」
「知ってるんだろ。御礼くれるくらいだから」
「・・・なんで私入れてるの？」
「さあ。よくわからんが・・・それを全部飲んだらいいことがあるって言ってたぞ。飲んでみろ」
「うん」
ゆりは小瓶の蓋を開けて口元に持って行った。なんだか花のいい匂いが漂ってきたが、味は何もしなかった。
全部飲んでからラクシュミを見た。
「何か変わった？」
「あ・・・・」
ゆりの目がキラキラ輝いてきた。
「目がきらきらしてるぞ」
「本当？」
「ちょっと服脱いでみろ」
「ん？うん」
ゆりは服を脱いでみた。
「肌も綺麗だぞ。髪も・・・」
「本当だ。つるつるだ。」
自分で肌を触っても、すごくつるんとしていた。肌もなんだか輝いて見える。
「すごーい。儀式の次の日以上ね」
「そうだな・・・」
ラクシュミはゆりの身体を抱き寄せて、寝かせて上に乗った。
「その気になってきた」
「王様ったら」
「すごい肌触りだな・・」
朝から盛り上がってしまい、ガーベラに感謝したいゆりだった。
食堂に行くともう子供達はいなかった。
御礼くれたってことは、もう神の国には行けないのかなあ。面白かったけど・・・
まあいいか。
でもジンラや他の神様とお話してみたかったなあ。
ゆりの肌や髪がきらきらしてたので侍女らはきょとんとした顔で見ていた。
ゆりはるんるんで部屋に戻ってきた。
もう一回鏡の前でじっくり見てみようっと♪
部屋に入るとヴィラがいた。
「あら、おはよ。どうしたの？」
「今朝はなんだか王妃に会いたくて・・・」
ヴィラはゆりの顔を見て首をかしげた。
「ねえねえ、私綺麗になったでしょ？」
ゆりはくるっと回って言った。ヴィラはゆりに近づいてきて髪に触れた。
「どうしたんですか？なんだかすごく肌つやもいいし・・・目もきらきらしてる」
「えへへ、神様に魔法の薬もらっちゃった。」
「魔法の薬？」
「うん」
「・・・・」
ヴィラはゆりの頬に触れて、顔を寄せて口付けた。
「もう、ヴィラったら・・・」
「唇の感触もすごくいいですよ」
ヴィラにじいっと見つめられてゆりはどぎまぎした。その時扉がノックされたので、ゆりはさっと離れて扉を開けた。
すると、ミカエルが立っていた。
「本当だ。綺麗になってる」
ミカエルはゆりの顔を見るなり言った。
「え？」
「王に王妃が綺麗になったって聞いたんです」
「えー！！」
「思わず触れたくなるような肌ですね」
ミカエルが手を伸ばしてきたのでゆりはさっとよけた。
「なんで逃げるんです？」
「だってえ・・・朝っぱらから何よ。二人とも」
「王妃が魅力的だから悪いんですよ」
ヴィラが言った。
「王妃、他の部分も見せてください」
ミカエルが目を輝かせて言っている。
「え・・ほ、ほかって・・・」
「それじゃ久々に３人で仲良くしましょうか」
ヴィラがにこやかに言ってゆりを抱きしめた。
「えー！！」
ゆりは問答無用で別室に連れて行かれて、興奮した男二人にすぐ裸にされてしまった。
「さ・・・さっき王様としたのに・・・」
「だからお風呂入ったんですね。せっけんの匂いがする」
「すごく綺麗ですよ。全部」
「うう・・」
肌を触られまくれ、愛撫しまくられて、ゆりは興奮状態になってしまった。
「朝からひどいぃ・・・」
「だって夜は無理でしょ？」
「朝も昼も一緒ですよ。王がうらやましいなあ。私もここに入りたいな。」
ミカエルはゆりの足の間に指を入れて体の中をかきまぜていた。
「だ・・だめ・・」
「王妃ってばこんなに興奮してるくせに・・・もう・・・」
「あ・・・」
ゆりの身体がびくびくと痙攣した。
「本当に可愛い身体ですね。王妃は・・・」
ヴィラがゆりの頬をなめた。
その時、ゆりの瞳がきゅっと上につりあがった。
「「あ」」
「二人のばかばか。誰か降りてきちゃったじゃない！」
「本当ですか？うれしいなあ」
とヴィラ。
「久しぶりに儀式ですね」
ミカエルもうれしそうだった。
「儀式って、今儀式して私に何の得もないじゃん！ばかばか！」
ゆりはヴィラに抱きつきつつもそう言っていた。
「いいじゃないですか。あれは愛の行為なんだから損得でやるもんじゃないんですよ？」
ヴィラがゆりを抱きしめて言った。
「そうですよ。王妃も一緒に楽しみましょう」
「う・・・うう・・・」
「せっかくだから他にも誰か呼びましょうか、王妃」
ヴィラが優しく言った。
「ハインリヒは呼びたくないな」
ミカエルが言う。
「誰がいいですか？王妃」
「誰でもいい・・・私のこと愛してる人なら・・・」
ゆりはヴィラに口付けた。
「フリットとミルキダスがあいてるようだ。まあ、４人でいいですね。」
やがてフリットとミルキダスもやってきて、ゆりは４人の男達と儀式並に盛り上がってしまったのだった。
ガーベラの薬は全身綺麗にする効果があったものの、男たちがその気になってしまうという思わぬ副作用も
あったのだった。
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