それにしても・・・最近可愛い系の女の子に変な縁があるのだろうか・・・
クロエといいファティマといい。まあファティマはガーベラの問題だけど私がガーベラになる以上はほって
おけないし。ガーベラはいったいどう思ってるんだろう。
ゆりにはラクシュミという愛する夫がいるためミカエルをクロエから取り返すという気にはなっていなかった
が、ガーベラの場合は恋人達の中で誰が一番ということもない。どう思っているのか聞いてみたいくらいだった。
ゆりの横で目覚めたラクシュミはゆりがえらく不機嫌そうな顔で自分を見ていたので瞬いた。
「なんだ？朝っぱらから」
「王様って、かわいい系の女の子どう思う？」
「かわいいけいってなんだ？」
「妖艶な美女っていうタイプじゃなくて、可愛くて守ってあげたいような女性の事よ。たとえばクロエ
みたいな」
クロエという言葉にラクシュミは微妙に反応した。
「お前まだクロエにこだわってるのか？」
「そうじゃないよ。王様もたまにはああいう女の子にその気になるのかなあと・・・」
睨みながら聞かれてラクシュミが「実はそう」などというわけもない。
「なんなんだ。一体・・・」
「実は神の国ですごい女神が出現してね、ダーナとガーベラの恋人が数人いっちゃったんだよ。美人っていうよりも
かわいいって感じの女神なんだけどね」
「そうなのか？」
「なんだか雲行きが怪しくなってるんだよー」
「・・・ガーベラを捨てて他の女神へ、なんて信じられない話だが・・・ガーベラならその気になればいくらでも
恋人ができるんじゃないのか？」
「そりゃそうだろうけど・・・愛情があるのなら、やっぱりショックでしょ」
「その内に帰ってくるんじゃないのか？ちょっと他の女に寄り道しただけで」
「・・・王様は寄り道しちゃやだからね」
ゆりは横目でラクシュミを見つめて言った。
何もしてないのになぜ睨む・・・・
腑に落ちないラクシュミだったが、ガーベラのことを思うと、ちょっとせつなくなってきたのだった。
第29話
「ガーベラ、話を聞いてくれ！ガーベラ！」
お花畑をすたすた歩いていくガーベラの後ろから、ハロルドが必死にガーベラに話しかけていた。
「ガーベラ！」
ガーベラはまるっきり無視して、しまいにはハロルドの前から姿を消してしまった。
ハロルドは大きくため息をついた。横の方では花の妖精達がぼそぼそ噂話をしている。ハロルドはそのまま
とぼとぼと去って行った。
「まったくもう腹が立つったら！」
ガーベラはラーズのところにきてぶつぶつ言っていた。
「何が一生お前だけよ！よくもほざいてくれたわね。ぶつぶつ・・・」
「まあまあ・・そういう顔はよくないぞ。ガーベラ」
「お母さんが一番綺麗だよ。ハロルドのことはもうほっておいたら」
ラーズと小さいクーリーフンがなだめるように言った。
「ほっておくわよ。一生！」
ガーベラの怒りの矛先はラクアではなくハロルドに向いていた。それもハロルドが黄金の腕輪をファティマに
渡してしまったからだ。ただの贈り物をしたのとはわけが違い、「一番美しいと思う女神に贈る」と言って
あったのが災いしていた。その噂はすでに神の世界全体に広まっていたし、ファティマを知らない連中も
その噂を聞けば、ファティマはダーナやガーベラよりも美しい女神なのだな、と思ってしまうだろう。
自分の美に誇りをもっているガーベラが怒るのも無理はない。
「あの男、さては私を抱くのだけが目当てだったわね。」
普段温和なガーベラがこれほど怒る事も珍しく、ラーズとクーリーフンは思わず目を合わせた。
その時、その部屋に一人の神が入ってきた。神経質そうな目つきをしたその男は、伝令神グレンだった。
肩までの金髪で足には白い小さな翼がついたサンダルを履いている。
「ガーベラ様、ヒルデリア様がお呼びです」
抑揚のない事務的な声にガーベラはぎくりとして振り向いた。
「いやな予感がする・・・」
「さあ」
グレンが手を出す。
「やだー行きたくない！ラーズ助けて」
「よしよし、がんばれ、ガーベラ」
ラーズはガーベラの頭をなでた。グレンはアシュランとヒルデリアの使いであり、グレンが迎えに来る以上、
どんな神々も呼び出しに応じなければならないという決まりがあるのだ。
「さあ行きましょう」
「やだー！」
ガーベラは問答無用でグレンに腕を引いていかれた。
雨もない曇り空だったが、遠くの方ではピカピカと稲光が見えていた。時々近くでも雷が鳴る音が聞こえる。
「ヒルデリアの機嫌が悪いのかなあ」
とラギが窓から外を眺めて言った。ゆりはラギの部屋にいた。ファティマのことが神話の本に載ってるのでは
と思って調べてもらっていたのだ。
「そんなのいいから早く調べてよう」
「わかってるよ」
ラギは神話の本をあれこれめくっていた。
「うーん、ダーナとガーベラとファティマが美を競ったという話どっかで読んだような気がするけどなあ・・・
どこで読んだかが思い出せない。シャナーンなら知ってるかもしれないけど」
「わざわざこんな用事で呼べないわよ。今日仕事かもしれないし」
「うーん・・・ないなあ・・・」
ガーベラだけの本を探しても、それらしい内容は見当たらなかった。
「でもさ、ガーベラとハロルドってずっと恋人だったんでしょ？ってことは、ファティマに行ったハロルドと
より戻したってこと？」
「うーん・・・あ、ファティマのことがあった」
「どれ」
ゆりはラギの横から本をのぞきこんだ。
「アシュランがかわいがった花の女神。大変麗しい外見で首にはジェラルドが作った魅了の首飾りを下げていた」
「魅了の首飾り？何それ」
「だから、人を魅了する首飾りだよ」
「そんな事くらいわかるわよ。じゃあ何？首飾りのせいで皆ふらふらといっちゃったの？それってサギじゃないの？」
「サギって・・・女神がそういうのつけてるのは珍しくないよ。ダーナだってガーベラだってつけてるじゃない」
「え？」
「ほら、ガーベラの腰帯。あれにもそういう効果があったようだよ」
「そうなの？全然知らなかった」
「ファティマのことは他には書いてないなあ・・・もしかして、その後の神の国の動向いかんによって、
本の内容もかわるかもね」
「え？この本が？」
「新しく神話の本が出るってことだよ。いわゆる改訂版。神話の本って次から次へと出てるからさあ」
ゆりは首をひねった。
「私が行ってる神の国って・・・・過去よね？」
「わかんないよ。もしかして、今現在の事かもしれないし、」
「でも本が・・・本にはもうファティマのこと載ってるし。それに前アマンザが産まれた時も、すでに皆
アマンザの事知ってたじゃない」
「神話の本自体に未来を予知した内容も入ってるってことなのかもしれないよ。だから時々内容が
変わることあるし。ジンラは昔から信仰されていた神だけど、アマンザは最近だよ。ここ500年くらいで
知られた神様なんだよ」
「そうなの。神話の本って誰が書いてるの？」
「西の聖域にいる神官じゃないかな。聖域の本は、勝手に内容が変わってるってこともあるようだよ。神々の宣伝
をする神がいて時々内容書き換えてるとかじゃないのかな」
「はあ」
ゆりは大きく首をかしげた。
「まあ母さんが行ってる世界が過去が現実かはともかくとして、ハロルドとガーベラが別れたままって話になる
可能性もあるかもね」
「そうなのかなあ。そうなるとどうなるの？龍の国すぐ攻めてきたりする？」
「さあねえ、10年の約束まで後３年くらいだっけ。まあ人間界にそういう話がすぐ伝わるわけじゃないだろうけど
ね。」
「うーん。頭こんがらがってきたー」
ゆりは頭を押さえた。どうも難しいことを考えるのは苦手だ。
自分が行ってる神の国は過去なのか現在なのか、なんてさっぱりわからない。
「でもなーんかむしゃくしゃする。よし！お酒でも飲もう」
ゆりはすたっと立ち上がり、「ありがと」と言って部屋を出て行った。
「お、お母さん・・・大丈夫かな？」
ゆりは珍しくまだ昼間にもかかわらず、部屋にお酒の用意をして一人で酒盛りを始めたのだった。驚いたのは
侍女達だ。蛇の目の方のゆりはたまに昼間でも酒を飲むこともあるのだが、こちらのゆりはまれだ。
「大丈夫ですか？ゆり様」
「まあいいじゃない。たまにはさ、今はなんだか酔っ払いたい気分なの」
「はあ・・・」
「たまにはどんどん飲んじゃおう！」
今は妊娠中でもないためゆりは身体のことは気にせずに酒を飲みだした。
さてこちら神界では―
「ほっんとうに情けない！それでもそなたらは女神の中で1、２を争うといわれた
美の女神なのか！むざむざとあんな小娘に恋人を奪われるとはなんと情けない！」
ヒルデリアの間にてダーナとガーベラが頭をたれてヒルデリアにくどくどと怒られていた。
すでにどれほどの時間が経ったのか二人にもわかりはしない。まるで母親に怒られる娘達のようだ。
ーああもう、いつになったら終わるのよ！
ー・・・・
しかも何度も何度も同じことを言われるので、ダーナもガーベラも疲れ果てていた。ヒルデリアの怒りは相当のよう
だった。目も眉もずっとつり上がっている。アシュランがかなりファティマのことをかわいがっているので、それも
癪に障っているのだ。それならば以前ガーベラの声を奪ってしまったようにファティマに嫌がらせでもすれば
いいようなものだが、なかなかそうもいかなかった。アシュランとヒルデリアの間には一つの取り決めがあった
からだ。それは、アシュランが他の女に産ませた子供には手を出さないというものだった。だからダーナとガーベラ
はいわば八つ当たりのように怒られていたのだ。
「恋人らをちゃんと監視しておかないからそのような事になるのじゃ」
そんなことしょっちゅうアシュランに浮気されているあなたに言われたくはないと二人は思ったが、もちろん
口には出さなかった。
ーまったくもう！ガーベラもなんで黄金の腕輪、さっさともらっておかなかったのよ！
ダーナは心の内でガーベラに話しかけていた。もらったのがガーベラだったのなら、ダーナもちぇっと舌打ちする
位ですんだのだが。
ーそんな事言われても・・・その存在さえ忘れてたし・・・ヒルデリアも自分の息子怒ればいいのに・・・
とガーベラ。
ー全くハロルドのせいで面倒なことになっちゃったじゃないの・・・
ーいつになったらお説教終わるんだろう・・・
ーよくあれだけ同じことを繰り返し言えるわね。
二人は愛の名がついた女神ではあるが、美の女神という側面ももっていたために、恋人であったハロルドが
二人にではなく違う女に黄金の腕輪を渡したことは、結構な事件ではあった。
二人が開放されて空の神殿の外に出た時には、すっかり陽が暮れかかっていた。
「嘘でしょ。もう夜になるじゃないの！」
「ああーなんだか肩こっちゃった・・・」
ガーベラは自分の肩をなでた。その時伝令神グレンが飛んできた。グレンは翼がついたサンダルで空を自由に
飛ぶことができる。
「おや、これはご苦労様でした」
グレンは二人の顔を見て言った。グレンは美しい二人にもでれっとする様子もない。
「ねえグレン、ファティマって、大勢を恋人にする気なの？」
ガーベラが聞いた。ダーナもガーベラも恋人は多数いるがだれもが皆そうではない。大勢恋人を持つ女神というのは
全体からいえばまれな方だ。
「さあ、今は相手を選ばれているようですから。候補者の中から数人選ばれるんじゃないんですか？もしくは
お一人かも」
グレンが言った。グレンはその仕事上神々の情報ならなんでもよく知っている。
「アリアスもハロルドも、あの首飾りでころっといったに決まってるわ。」
ダーナが横を向いて言った。
「たとえ魅了の効果があろうとも、飾り物の力だけであれだけの神が好きになるとは思われませんが。ダーナ様
も魅了の飾りをつけていらっしゃいますし」
「私の魅力がファティマに劣ると言いたいわけ？」
ダーナはグレンを睨んで聞いた。
「そんなことは・・・ただ、物のせいにするのはダーナ様らしくないのでは」
ダーナは唇をかみしめた。
「まあまあ、別にグレンが悪いわけでもないんだし。それに私もダーナもあれは普段は身につけてないのよ。
あんまり男神を魅了しすぎるのも困るから」
ガーベラが仲裁するように言った。
グレンは軽く息を吐いた。
「それならば、本気でファティマ様を打ち負かしたらいかがですか？ファティマ様はアシュラン様があまりに
かわいがるのですっかり自分の美に自信を持っておられる。お二人よりも魅力的ではないかと思われてますよ。
黄金の腕輪を得たせいでますます」
「・・・」
ダーナもガーベラも沈黙した。
「私とてヒルデリア様の機嫌が悪いままなのは困りますので、お二人にはがんばっていただきたいです。
それでは」
グレンは二人の横を通り過ぎて行った。
「ねえ、グレンはファティマにころっといってないの？」
ガーベラはグレンの背中に聞いてみた。一度この男のでれっとした顔が見たいものだとガーベラは思った。
いつでも冷静な顔しかしないのだから面白くない。
グレンが振り向いた。
「私は私が一番美しいと思う女神に心を捧げておりますので」
グレンはそれだけ言って去って行った。
「・・・グレンの好きな女神ってだれ？」
ガーベラはダーナに聞いた。
「さあ、そういえば知らないわ。月の女神じゃないの？それとももしや、ヒルデリアとか」
「どっちも愛し合うのは無理ね」
月の女神は一生男は作らないと断言している女神だったし、ヒルデリアはアシュランと違って絶対に浮気はしない。
というよりも、アシュランの妻に手を出そうとする男はいないというのもあるが。
「だから一人なんじゃない？ずっと」
「なるほど・・・」
二人は空の神殿を後にした。
夕方、ラギはゆりの部屋に行ってみた。
「あれ、まだお母さんってば飲んでるの？」
テーブルの上にはお酒の瓶と杯があり、ゆりは真っ赤な顔で椅子に座って杯を握り締めていた。
「なかなかおやめにならないんですよ」
扉に近づいたミラがラギに言った。
「大丈夫かなあ。飲み続けて」
「そんなにすごい量ではないんです。ちびちび飲まれてるだけなんですけど・・・」
「お母さん、そろそろ・・・」
ラギが言うと、ゆりはきっと振り向いて「うるさい」と言った。
「・・・酔っ払ってる」
その時ミルキダスがやってきた。扉が開いたままだったのでミルキダスは中にいたラギを見た。
「ラギ様、お暇なら、ちょっと遊んでいただけませんか？」
遊びというのはバラクのことだった。ミルキダスはラギを誘いにやってきたのだ。
「ミルキダス、お母さんどうにかしてよ。３時ごろからずっとお酒飲んでるんだよ」
ラギはミルキダスに近づいてこっそり言った。
「え？」
ミルキダスは部屋の中のゆりを見た。
「珍しいですね。何かあったんですか？」
「いやーお母さんにとっては別に・・・」
「あ、ミルキダス、ねえ一緒にお酒飲もうよ」
ゆりがミルキダスに気づいて言った。
「ミラ、ミルキダスの分のお酒ももってきて」
「は、はあ・・・」
「・・・」
止めてもらおうと思ったのに・・・これじゃ逆だよ・・・
「ミルキダス、ここ座って！」
ゆりは自分の横の椅子を指した。
「は、はい」
やがてお酒が運ばれてきて、笑顔のゆりは真っ赤な顔でミルキダスの杯にお酒をついであげた。
「王妃、何かあったんですか？」
ミルキダスがおそるおそる聞いた。
「うんにゃ。なーんにも・・・」
ゆりは大きく首を振っている。
「王妃はそんなに強くないんだから、飲みすぎちゃだめですよ」
「うん。私はもういいからミルキダス飲んで」
「はあ」
「ま大丈夫だろう。その内に寝るよ。きっと」
ラギは出て行った。
「ミラ、もっとお酒！」
「はいはい」
ゆりはミルキダスの杯にどんどん酒をついで行った。
「王妃、からだが揺れてますよ」
「うーん。いい気分ナリ・・」
珍しいなあ。本当に何があったんだろう・・・
首をかしげるミルキダスだった。
「ねえ、ミルキダス、私のこと愛してる？」
「愛してますよ」
「本当？」
ゆりがじろりと睨んで聞いた。
「本当ですよ」
「じゃあキッスして」
「キッス？」
なにやら怪しい雰囲気になってきたのでミラはそろそろと出て行った。
「ミルキダス・・・愛って・・愛って時に儚いものなのね・・」
ミルキダスがどうしようかと思っていると、ゆりは今度は涙を流して言い出した。
「王妃？」
「ぐす・・・」
「儚くないですよ」
「その内私も王様にぽいって捨てられちゃうかも」
「そんなことないですよ」
「ううん。ある」
「王妃、どうしたんですか？」
「ぐすんぐすん」
ゆりはミルキダスの膝に乗って抱きついた。ミルキダスはゆりをあやすように背中をなでている。
あんな極上の女神でさえ振られるんだもの、私もその内に捨てられるかも・・・・
「王は王妃の事をすごく愛されてますから、愛がなくなるなんてこと、一生ありえないですよ」
「・・・・ミルキダスゥ・・・・」
「はい」
「誰か降りたみたい」
「え？」
ミルキダスがゆりの顔を見ると、ちょっと顔つきが変わっていた。目元がちょっとあがっている。
ゆりはミルキダスにちゅっとキスした。
「よし、決めた。儀式だ」
ゆりはすくっと立ち上がった。
「え！？」
「こうなったら儀式をして男達をまとめてメロンメロンにして愛させてやる！」
ミルキダスはぽかんと口を開けている。
「そして神の国に行った時には神様もメロメロにするのだ。見てろ〜」
「？？？？あの・・・王妃・・・」
ゆりは完全に酔っ払っていたし、ミルキダスも一体どうしていいのやらわからなかった。
「儀式するから皆呼んじゃって」
「皆って、どこまでが皆なんですか？」
「うーん。シャナーンはちょっとかわいそうだからやめとこう。７人」
「7人呼ぶんですか？でも儀式っていっても・・・」
「これは蛇関係ないの。人間の男もめろめろにできないようじゃ神様はめろめろにできないわ」
「意味がわかりませんが・・・」
「いいから呼んで。来ない男はすっぱり別れるから」
「はあ・・・」
ゆりはえらく張り切っていたし、ミルキダスはどうしていいやらわからなかったので、一応ラクシュミに
お伺いをたてた。すると、「ゆりがやりたいのならやらせりゃいいんじゃないのか？」という返答が
返って来た。
「よし、お風呂入ろう！ミルキダス、連れて行って。」
「はあ」
「あ、それから、寝室に酒運んでもらっといて」
「酒！？」
「酒だ酒だーさーお風呂にレッツゴー♪」
ゆりはかなりご機嫌だ。
いいんだろうか・・・でもお湯浴びたら酔いも冷めるかも。
ミルキダスはそう思ったものの、お風呂に入ってもゆりはそのままだった。浴槽にはお湯ははってなかったので
二人でお湯を浴びて身体を洗った。ゆりはすっかり誘惑モードに入っているので、お風呂に一緒にいただけで
ミルキダスはふらふらしていた。
寝室に行くと酒瓶の箱がつまれていて、ヴィラとジュノーハインリヒがやってきていた。
「王妃、だれか降りちゃったんですか？」
ヴィラが寝室にやってきたゆりに聞いた。
「うん。おりたかもね。でも今日は蛇ちゃんはどうでもいいの」
「はあ」
「今日は皆と愛を深めるのが目的だから」
「？」
3人共首をかしげた。なんだかえらいはりきりようだ。
「何かあったんですか？」
ジュノーが聞いた。
「別になーんにも。」
といいつつ、ゆりは服を脱ぎだした。
「いつになく張り切ってますね」
とヴィラ。
「私を愛せない男は去れ」
「なんだか人格まで変わってますけど・・・」
「でもまあ、なんだか楽しい夜になりそうですね」
ハインリヒが部屋の中に積まれたお酒を見て言った。
やがてミカエル、フリット、イシュタールもやってきた。その時にはすでに男たちもゆりも裸でからまっていた
し部屋の中は酒の匂いで充満していたので、3人共目を見開いた。
「あ、きたな。3人組」
ゆりが3人を見て言った。
「酒好き女蛇が降りてきたんですか？」
ミカエルが聞くと、ゆりはミカエルを睨んだ。
「うるさい。女好きミカエルめ」
「は？」
「・・・王妃、酔っ払ってるんじゃないのか？」
フリットが男達に聞いた。
「酔ってない」
その時ミルキダスはベッドの横の方ですでにのびていた。
「だけどかなり熱烈ですよ。今日の王妃は」
ハインリヒはゆりの髪をなでながら言った。
「じゃあ男交代」
「大丈夫なのか？王妃・・・」
イシュタールがちょっと不安そうに聞いた。
「王妃は大丈夫ですけどこっちが大丈夫じゃないかも・・・」
ヴィラが小声でぼそっと言った。
「じゃあ来て。3人共。当分他の女のことは考えられなくしてやるから」
3人ともぽかんとしている。
「きょ〜お〜は変化の日〜♪」
ゆりはご機嫌で歌まで歌っていた。
しばらくして後、すでに外は真っ暗な時刻になっていた。
寝室はすっかりゆりの淫気と酒の匂いが充満して、本当の儀式の時ほど酒を飲まなかった男達もふらふらに
なっていた。
「あららあ・・・」
少しの間目を閉じていたゆりはぱっと目を開けた。左目は蛇の目になっている。
身体の中にいた女蛇はもう抜けていた。
「王妃、一体何があったんですか？」
ハインリヒが聞いた。
「今日はかなりすごかったですよ。」
とヴィラ。
「ああ王妃・・・」
ミカエルはゆりの足をなでていた。すでにメロンメロンにされている。
「ジュノーったらまたおしりかじったわね」
ゆりはおしりをなでながら言った。
「すいません。それで何があったんです？」
「うーん。愛の儚さを憂いてるみたい」
「はあ・・・？」
「まあこれだけされたらそりゃしばらくは女抱く気にもなれないよね」
ゆりはちょっとおかしそうに言った。
「せっかくだから私もちょっと遊んじゃおうっと」
ゆりはすぐ後ろにいたハインリヒに抱きついた。
ハインリヒがゆりを抱きしめて口づける。
「でもうれしかったですよ。王妃があんなに張り切って相手してくれて・・・・」
ジュノーが目を細めて言った。
「張り切ってというか、鬼気迫る感じでしたけど・・・別に王と何かあったわけではないんですね？」
ヴィラが確認するように聞いた。
「別に何もないよ。ただ、感情的になってただけよ」
「ならいいんですが・・・」
朝、王の寝室で目覚めたゆりは、おなかが異様にすいているのと身体のあちこちがひりひりするのを
感じた。
んー？なんだかおしりが痛いなあ・・・
「おなかすいた」
おなかがぐるぐる鳴っていた。
ゆりは体を起こして頭を振るった。
「ゆり、今日は首まである服を着ろよ」
横で目を覚ましたラクシュミが言った。
「なんで？」
「すごいぞ。首」
「え？何が？」
ゆりは首に触れた。だが自分で自分の首は見れない。
「覚えてないのか？昨日女蛇が降りてきて儀式しただろ？」
「え？」
ゆりはぽかんと目を見開いた。
「覚えてない・・・」
ゆりはすっかり昨日のことは記憶になかった。
すすむ