「アシュラン様」
神々の長アシュランは、謁見の間に現れた美しい女神の顔を見て微笑んだ。
「ああ、ファティマ、今日も美しいぞ。誰を恋人にするか決めたのか？」
「いいえまだですわ。皆様、とっても素敵な方ばかりですから」
ファティマが微笑んで言った。
「そうか、いずれにせよお前に選ばれる男は幸せだな。実の娘じゃなかったら、私が手を出したい所だぞ」
「まあアシュラン様ったら。ふふふ・・・」
「ははは・・・」
二人は微笑ましく笑いあっていたが、隣のヒルデリアの間では、女達の悲鳴にも似た声が響いていた。
「ヒルデリア様、どうにかしてくださいませ！」
「悔しくてなりません！」
椅子に座ったヒルデリアは10人ほどの女神達に訴えられて頭を痛めていた。その中にはダーナとガーベラは
いなかったのだが、皆恋人がファティマにふらふらっと行ってしまった連中ばかりだった。
「ダーナやガーベラに取られるのならともかく、ファティマに取られるのは嫌です」
「そう言われてものう・・・」
中にはアシュランとヒルデリアの娘もいた。その娘達も、最近アシュランがファティマばっかり可愛がるので
面白くないようだ。
「アシュラン様の愛情を傘にきて誘惑のし放題ですわ。このままでは秩序が乱れます」
「どうかヒルデリア様からアシュラン様にがつんと言ってくださいませ」
「皆の気持ちは分かったから、とりあえずは今日は怒りを抑えて帰っておくれ」
ヒルデリアがなだめるように言うと、女達はぞろぞろと出て行った。
「はあ・・・困ったものじゃ・・・」
ヒルデリアの後ろのカーテンの裏から、グレンが出てきた。
「グレン、今の聞いておったろう。ファティマはそんなに男神たちを誘惑しまくっておるのか？」
ヒルデリアはグレンの顔を見て聞いた。
「いえ、本人はいたって無邪気に微笑んで挨拶しているだけなのですが・・・」
ヒルデリアの頬が引きつった。
「ガーベラが産まれた当初もそうであったような・・・それでファティマは恋人を誰にするか決めたのか？」
「いえ、まだ選んでる最中のようです」
「恋人が定まれば他の男達もあきらめると思うがのう・・・そんなにファティマは魅力的な女神か？私には
そうは思えぬが・・・私がファティマに何かするわけにもいかぬし・・・まったくジェラルドめ、余計な物を
作りおって！」
ヒルデリアは拳を握り締めた。
「あの首飾りはジェラルド様も改心の作だと申されておりましたから、どうでしょうか、カサンドラ様に進言
していただいては。女神達が大勢泣いているといえば、アシュラン様もどうにか考えられると思います」
ヒルデリアがいくら言ってもまた嫉妬かくらいにしかアシュランは思わない。ここは他の女神が言ったほうが
効果的だろうとグレンは思ったのだ。
「そうじゃのう。カサンドラを連れておいで」
「かしこまりました」
グレンはヒルデリアの間を出て行った。
第31話
「あいあいあ〜いランランランランルンルンルーン♪」
人間界、蛇の国のお城にある双子の部屋では、ベビーベッドに乗ったナナミがご機嫌で歌を歌っていた。
ゆりも一緒に歌っている。ゆりの背中には、ロイがぶらさがっていた。
「ロイも一緒に歌おうよ」
ゆりが言うとロイは「や」と一言言った。
「こりゃ」
後ろに手を回してくすぐるとロイはきゃはははと笑って背中からぴょんと飛び降りた。
「びしゃびしゃしたい」
「ん？泳ぎたいの？お風呂にお湯入れてもらう？」
「いけ、いけ、いけ」
「外行きたいの？今日は曇り空だから風邪引くでしょ。お風呂にしなさい」
「ぶー」
その時ゆりの侍女が部屋に入ってきた。
「ゆり様、竪琴の時間ですよ。侍女さんがもういらしてますが」
「あ、いけない！それじゃあね」
ゆりが手を振ると双子も「ばいばい」と手を振って返した。
ゆりは急いで自分の部屋の横の部屋へと向った。
「ごめんね。お待たせして」
部屋に入ると侍女は椅子に座って待っていた。
「いいえ。今日はどうしてこちらなのですか？」
侍女が微笑んで聞いてきた。
「部屋は大掃除中なの」
「そうですか」
昨日した儀式のせいで部屋はまだ酒臭く、寝室にいたっては中にいただけで酔いそうなほどだった。
当分使えそうにない。
ゆりは侍女に教えてもらい、琴の練習をした。最近では中級者向けの曲も弾けるようになり、子供達も
文句を言わずに聴いてくれるようになった。ラクシュミだけはまだ聴く気はないようだが。
これだけ弾けるようになると、継続してよかったと思えてくる。
竪琴の練習が終わり、侍女が言った。
「今日は午後いらっしゃいますか？」
「うん。行くよ」
「そうですか」
侍女はにこりと笑って部屋を出て行った。
うーん。相変わらず侍女さんの区別はつかないなあ・・・・
ゆりの子供らはみんな侍女のことを名前で呼んでいる。ゆりが知らない間にも結構ハザークの塔には行ってる
ようだ。アナスターシャやシスなどは古代叙事詩をハザークに聴かせているらしい。
結構長い付き合いなのに未だに顔の区別がつかないのもなんだけど・・・でもわかんないもんはしょうがない
しなあ・・・まあいいか。
午後になり、ゆりは一人ハザークの元に行った。ナナミを連れて行こうかと思ったが、ナナミは侍女に添い寝
してもらってぐっすり眠っていた。ロイは誰かが遊びに連れて行ったようだ。
「こんにちは、ハザーク様」
「ああ」
ハザークは寝そべったまま言った。
「今日は随分暑苦しい服を着てるな」
ハザークはゆりの首の辺りを見て言った。
「ああ、これですか？たまにはこういう服もね」
今日は首まですっぽり隠れる服装だった。
ゆりは笑ってごまかして椅子に座り、テーブルの上に用意されてあった竪琴を奏でた。今日は二曲。
一曲目は一人で、二曲目は侍女との二重奏だった。
「どうです？今日は参ったでしょ？」
ゆりがにんまりして聞くと、ハザークは目を瞬いた。
「何がだ？」
「もう、結構うまかったでしょ？ってことですよ」
「そうだな。中々うまくなったな・・・」
もうハザーク様ったら、まだぼんやりしてるんだから・・・
毎日部屋でぼーっとしてるのがいけないんじゃないかな。
「たまには野山を駆け回ったらどうです？」
ゆりが言うとハザークはきょとんとした顔をした。
「なんでだ？」
「だって、最近ずっとぼーっとしてるから。たまには運動とかしてみたらどうです？頭がすっきりしますよ」
「運動？そうだな」
なんとハザークがあっさり言ったのでゆりの方がびっくりした。
一体何の運動するんだろう。ジョギング？それとも体操？どっちにしろ見ものだわ。
想像するだけで笑いがこみ上げてくるゆりだった。
「それで何するんですか？」
ゆりがわくわくして聞いた。
「寝室で、お前と激しく動く」
「は？」
ハザークは椅子から離れてゆりの腰に腕を回した。
「ちょ、ちょっと！今日はだめですよ！」
ゆりがあわてて言った。
「なんでだ」
「えーと。えーと、今日はあの日だから」
ゆりはとっさに言った。
「あの日ってなんだ？」
ハザークはきょとんとした顔で聞いてきた。
「え、えーと・・・」
ゆりはすがるように前に座っている侍女を見た。すると侍女はにっこり微笑んで
「大丈夫ですよ。いくら汚していただいてもかまいませんから」
と的外れなことを言った。
「えー！」
「良く分からんが来い」
ハザークは暴れるゆりの腰に腕を回してそのままひょいと運んで行った。
「ちょっちょっと！何でよりによって今日なの！今日はだめだったら！」
「運動しろと言ったのはお前だろう」
「一人で運動してください！」
「嫌だ」
ハザークはゆりの身体をベッドの上において離した。
「それじゃ3日後とかにしてください！」
「今がいいんだ」
ゆりが逃げようとしたのでハザークはそのままゆりの身体を固めてしまった。
「うぎゃ」
「全く世話がやけるな。我に服を脱がさせる女はお前だけだぞ」
ハザークはそういいつつゆりの服を脱がしだした。
「いやーん。だめだったら！」
ハザークはゆりの首元を見て目を見開いた。
「どうしたんだこれ。あちこちあざになってるぞ。お前何か悪いことでもしたのか？」
「え？いえいえいえいえ」
「そうか、てっきり王に怒られて何かされたと思った」
「違いますよ」
「じゃあどうしたんだ。胸の方にも痕がついてる。」
「その・・・昨日女蛇が降りてきちゃって・・・儀式をやっちゃって」
「なんでやったんだ？」
「え・・・なんでって言われても・・・」
だからいやだったのにー！！！
「やらなくていいのにやるってことは・・・王妃はよっぽど儀式が好きなんだな」
ハザークはばかにするでもなくしみじみと言った。
「え・・・別にそういうわけでは・・・」
ゆりの顔は引きつっている。
「それとも王が相手してくれないから欲求不満だったんだな。最近抱いてやらないで悪いことをしたな。」
ハザークはすっかり裸になったゆりの上に乗って言った。
「別に悪いって事は・・・」
「今日は一杯満足させてやるぞ」
ハザークは優しくゆりの身体をなでて、ゆりに口付けた。
ああ、ハザーク様の誤解は相変わらずね・・・
まあいいか、最近王様ともしてなかったし・・・
ハザークはゆりの身体をうつぶせにした。そしておしりをなでながら言った。
「おしりに歯型がついてるぞ」
「え！」
「儀式では噛み付かれてるのか？そういうのが好きなのか？」
「違います！！！」
ゆりは声を大にして言った。
くそー絶対ジュノーに違いない・・・
しばらくすると、ハザークは「久々にいい運動をした」と言ってどろんと大蛇に変身してしまった。
横でゆりは腰砕けになっている。
こんな運動しろって一言も言ってないのにい・・・でもまあ、気持ちよかったけど・・・
・・・これだけされて子供ができないのが不思議だなあ・・・遺伝子が違うとか？
ゆりはしばらく目を閉じて眠る金色の大蛇を見つめていたのだった。
一方神の国では、カサンドラが散々アシュランに言ったものの、アシュランは笑っているだけだった。
たいした問題だと思っていないようだ。
「第一首飾りが問題だといっても全ての男がファティマを好きになったわけでもないだろう？」
「それはそうですが・・・」
「美しい女神が産まれた時はありがちなことだろう。たいていの男神にはすでに恋人がいるのだし誰かの恋人
を奪う事になってもしょうがないではないか。その内恋人ができれば落ち着くだろうし、もうしばらく様子を
見てはどうか」
「・・・あまり他の女神達が泣くようなことがあれば、ファティマのためにもよくないと思いますが」
「わかったわかった。ファティマには早めに恋人を定めるように言っておこう」
それで治まればよいが・・・しかしファティマがハロルドから黄金の腕輪を奪ったいきさつが気になる・・・
一体誰が入れ知恵を・・・？
カサンドラはヒルデリアに報告し、やれやれと空の神殿を出た。その時目の前に「バア！」と子供の
顔が現れてカサンドラはびっくりして立ち止まった。見ると目の前に子供が逆さになって浮いている。
「パティウス」
それは10歳くらいの子供の姿をした神だった。
茶色い短い髪、青い瞳。額には白い翼が二つついた飾りをはめていた。グレンのサンダル同様、この神器にも
空を飛ぶ効果がある。カサンドラと同じ知恵の神だった。ただし知恵は知恵でもパティウスは悪知恵がよく
働く神で、常にどこかでいたずらをして楽しんでいる。全く困った子供だった。また始末が悪い事にパティウス
もアシュランが妖精に産ませた子供なのだ。カサンドラとは関係がない。
「元気ぃ？カサンドラのおばさん♪」
パティウスは宙に浮いたまま言った。カサンドラの眉間にしわがよった。
ん？まてよ。誰かの入れ知恵？
「・・・もしや・・・黄金の腕輪の事を教えたのはお前ではあるまいな？パティウス」
カサンドラがパティウスを睨んで聞くと、パティウスがにんまり笑った。
「今頃気づいたの？腕輪を奪われた時のハロルドの顔ったらなかったよ。あはは」
パティウスが腹をかかえておかしそうに笑った。。
「あははじゃない。そのせいでハロルドは困った事になってるんだぞ」
「僕はただファティマの相談に乗ってあげただけだよ。お兄さんとして」
「誰がお兄さんだ。一体何を相談されたのじゃ」
「一番美しい女神だと皆に認められるにはどうしたらいいかしらって聞かれたんだよ。一番の美の女神だと
もっとほめられたいって。だから僕は、黄金の腕輪の事を教えてあげたんだよ。ハロルドはどうせくれないから
ちょっと借りてそのまま逃げちゃえばいいって。ハロルドったら目をまんまるーくしてたよ」
パティウスは両目の前で指でわっかをつくった。
「パティウス・・・今のこと、ハロルドに言うぞ？」
「いいよ。別に。元々はハロルドがスケベ心を出したせいじゃないか。ファティマにでれでれしなきゃ
あんなことにはならなかったんだよーだ」
パティウスはアッカンベーをしてそのまま上へ昇っていき、がしっと腕をつかまれた。
「見つけましたよ。パティウス」
「うげ！グレン！」
パティウスの腕を捕まえたのはグレンだった。
「またヒルデリア様の花壇を荒らしましたね！100たたきですね」
「えー！！！助けておばさーん！いやカサンドラのお姉さん！」
パティウスはグレンに連れて行かれながら絶叫していた。他の神には様づけのグレンだが、パティウスだけは
呼び捨てだった。
「100どころか1000叩かるがよい。全くクソガキめが・・・」
カサンドラはやれやれとため息をついた。
その頃、ハロルドの神殿にファティマが訪れていた。
「これ、お返しいたします」
ファティマは黄金の腕輪を手に持っていた。ハロルドはそれを受け取ったものの、今更返された所で
どうにもならない。
「怒ってらっしゃいます？」
「なぜあんなことをしたんだ」
「黄金の腕輪を手に入れれば一番美しい女神になれると聞いたものですから。ごめんなさい。ハロルド様を
傷つける気はなかったんです。」
ファティマは後悔しているように言った。
「なぜ一番美しい女神になりたかったんだ」
「アシュラン様が、お前は娘の中で一番美しいといってくださったので、もっとほめていただきたかったんです
わ」
ハロルドは無言だった。
「ハロルド様さえよろしければ、私、ハロルド様の恋人になりたいのですけど」
「・・・いや、やめておこう」
「そうですか。それでは」
ファティマはハロルドに背中を向けて去って行った。
「・・・」
今更ファティマを恨む気にもなれなかった。こういう事態を招いたのは自分のせいだ。
ついあの時は、ファティマを抱きたいと思ってしまった。その前に黄金の腕輪という神器を見せてほしい
と言われて、見せるだけならと渡してしまった。
全く間抜けな話だ。
奥の部屋から大きいクーリーフンがやってきた。腕にはキュリアをだっこしている。
「キュリア借りていきますよ」
「ああ」
クーリーフンは部屋を出て行こうとして振り向いた。
「まあその内に、お母さんの機嫌も直りますよ」
「今度はどれほどの時間がかかるのかな」
クーリーフンはそのまま去って行った。
今思えば、本当に長かったな。ガーベラに嫌われた時期は。これからまた同じだけの時がかかるのかと思うと
気が遠くなるな。
ハロルドは手に持っている黄金の腕輪をしばらく見つめていた。
そしてまた同じ頃、技の神ジェラルドの神殿では、太陽の神アリアスと緑の神ジュライが渋い顔でやってきて
いた。
ジュライは濃い緑色の長い髪をした精悍な顔つきの神で、アリアス同様ダーナとは古い付き合いだった。
二人の後ろにはふわふわとウィルも飛んでいる。
「どうしたんですか。おそろいで」
ジェラルドが驚いてやってきた。
「あの首飾りのせいでとんだことになってるんだぞ。どうしてくれるんだ」
アリアスがジェラルドに詰め寄った。
「首飾り、ああ、ファティマのことですか？」
ジェラルドがのんきに言った。
「つい恋人になれるならダーナを捨ててもいいとまで言ってしまったじゃないか！」
「え？そこまで言ったのか？そりゃダーナが怒るのも無理はないなあ」
後ろでウィルがつぶやき、アリアスは振り向いて「お前は黙ってろ」と言った。
「いや、私を責められても、私はアシュラン様の言いつけ通りにしたまでで、それに本当に首飾りのせい
ですか？ファティマにくらくらっといったんじゃないんですか？」
ジェラルドが横目で言うと、アリアスとジュライは言葉を詰まらせた。
「ウィルも首飾りのせいで？」
ジェラルドが後ろのウィルを見て聞いた。
「いや、俺はただついてきただけで、ダーナを裏切ってない」
「ほらごらんなさい。お二人が女の色香に迷っただけじゃないんですか」
「ジェラルド、太陽の熱で溶かすぞ。それ以上言うと」
アリアスの両手に白い炎が浮かんだ。
「おっと」
ジェラルドが後ずさる。
「ああ、私も別にダーナを捨てる気もなかったのに。ちょっと浮気のつもりが・・・ハロルドが黄金の腕輪を
ファティマにやったせいでそれを知ったダーナがカンカンになってしまった。二度と顔も見たくないと言われ
てしまったじゃないか」
ジュライがぶつぶつ言った。
「ジュライ、ファティマを抱いたのか？」
アリアスが聞いた。
「いいや、手を握っただけだ。でも贈り物はしてしまった。お前と同じように」
アリアスの眉が潜まった。
「二人とも何あげたんだ？」
ウィルが後ろで聞き、二人は同時に振り向いて「お前は黙ってろ」と言った。
「首飾りのせいというよりも、浮気癖のせいじゃないですか・・・」
ジェラルドがボソッと言うと二人が同時にきっと睨んだ。
「あの首飾りを無効にする物を作れ」
ジュライがジェラルドに言った。
「えーそんなつまらない物作りたくないですね」
「うるさい。作れ！ファティマにころっといったのか、首飾りにころっといったのか確かめたいんだ」
とアリアス。
「浮気癖のせいだと思いますけど・・・」
「うるさい！とっとと作れ！」
二人は同時にジェラルドに言ったのだった。
その夜、ガーベラの神殿では、クーリーフンが、どうやらハロルドが黄金の腕輪を自分でやったわけでは
ないようだ、という話をしていた。夕方までキュリアが来ていて、ガーベラはキュリアと一緒に遊んでいた。
今はもうハロルドの元に返している。
「そうなの」
「ハロルドしょんぼりしてたよ？」
「真相はどうであれ、噂が違うんだから許すわけにはいかないわよ。ダーナにも怒られるし」
「ダーナもかんかんだったもんね」
「それにしても間抜けな話ね。第一私にあれをすぐ渡してたらこんなことにはならなかったのに。
結局ハロルドの愛ってのもよくわかんないわよ」
「僕にもよくわかんないけど。じゃあずっと別れるの？」
「まあ、ずっと先には分からないけど。ああ、むしゃくしゃするからジンラといちゃいちゃしてこようっと」
「いってらっしゃーい」
ガーベラはジンラの元に移動した。
「ハロルド、ちょっとかわいそうだなあ。キュリアもいるし・・・仲直りしてあげてほしいけど。
もう一人の母さんならどうだろ。でもいつ来るかわからないしなあ」
クーリーフンはちょっと首をかしげて、そのまま寝室の方へと去って行った。
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