ゆりが恋人達と寝室の方に移動した頃、シスとアナスターシャがそろって王の間にやってきていた。
「父様、聞きたい事があるの」
アナスターシャがラクシュミに改まって言った。
「なんだ？」
「母様が妊娠中じゃないのに儀式をするのはどうして？」
アナスターシャが聞いた。横にいたシスも同じ質問のようだ。
ラクシュミは思わず自分の横にいた医師のフレイと目を合わせた。
子供達はゆりがそういう風になってしまうと部屋に行かないようにとお達しが来る。その上部屋の前には見張りも立つ
のだった。儀式とはそもそも蛇霊神をおなかの子供に入れるためのものなので、妊娠中でもないのになぜ儀式が起こるのか
子供らが不思議になるのも無理はない。
「それは・・」
ラクシュミがどう言おうかと思っていたら、フレイが口を開いた。
「それは、王妃が巫女性を保つためのものですよ」
「巫女性？」
アナスターシャとシスが同時に聞いた。
「王妃は素晴らしい巫女なので女蛇が儀式とは関係なくたまに降りてきてしまうんです。王妃は儀式をやる必要はないですが
女蛇と仲良くするために儀式をしてるんですよ。そうでないといざって時に女蛇が降りてこなくなってしまいますからね」
「へー・・・」
アナスターシャが言った。
「誰だって、必要な時だけ相手をされるのは嫌でしょう？」
「せっかくだから蛇霊神他の妊娠中の女の人に入れる事ができればいいのにね」
シスの言葉に
「まあなかなかそこまでうまくはいかないだろうな」
とラクシュミが言った。
第45話
ゆりの寝室には８人の男達が集まっていた。それぞれ裸で腰にタオルを巻いている。ゆりは胸から下をタオルで隠していた。
いくらベッドが広いとはいえ、これだけ男がいると狭く感じる。
ああ、どう数えても８人もいる。いつの間にこれだけ増えちゃったんだろう。
ゆりは今更ながらに思っていた。男達は皆冷静な顔をしていたが、やはり心の中にはこれから起こる事への期待が込められて
いるに違いない。
「一族の男が性欲薄いって嘘じゃない？」
ゆりは思わず皆の顔を見て言った。
「今まで今日は儀式に乗り気じゃないって人いなかったし・・・」
「我々のせいじゃなくて王妃が魅力的だからですよ？だって愛欲の女神様だし・・・」
ヴィラが言った。
「私も王妃に会うまでは女無しでも全然平気でしたよ？」
ジュノーが言った。
「本当かなーこっちはともかく、こっちの人達はどうなの？普段は女の人を抱いたりしないの？」
ゆりはフリットやイシュタールを見て言った。除外したのはハインリヒとミカエルだ。
「私もほとんど赤い月以外はないですよ」
フリットが言った。
「私もそうですよ」
とイシュタール。ミルキダスは恥ずかしそうにしていたが、まあ聞かなくても分かった。
「シャナーンも？」
ゆりはシャナーンを見て聞いた。
「私も普段は王妃だけです」
「そう・・・これから何がおこってもびっくりしないでね」
「はい」
どうもシャナーンを見る時だけゆりの目が違う。
「王妃、シャナーンは二度目なんですからびっくりなんてするわけないですよ」
ミカエルがむっとした顔で言った。
「うるさいなあ。初めての気分なんだからいいじゃない。とりあえず皆と抱き合ってキスしたい。じゃあ初めての
シャナーンから」
シャナーンがゆりに近づき、ゆりはシャナーンとベッドの上で座ったまま抱き合った。
残りの面々はベッドの端に腰を下ろしたり、椅子に座ったりしている。ゆりを見てたり見てなかったり様々だ。
「好き・・・シャナーン・・」
「愛してます。王妃・・」
二人はまるっきり二人だけの世界に入り、見つめあっていた。それを見てむっとしてるのはハインリヒとミカエルくらいで
他はなんとも思ってない様子だった。どうでもいいからではなく、ゆり自身がシャナーンだけを好きというわけではないのは
皆よくわかっているからだ。ゆりは何度かシャナーンと口付けをして身体を離した。
「じゃあフリット来て」
シャナーンがゆりから離れてフリットがゆりに身体を寄せた。ゆりはぎゅっとフリットの背中に腕を回して抱きついた。
ゆりはそれぞれに抱きついて口付けをしていった。
この日は最初から激しすぎにまったりと儀式が進んでいく感じだった。
お互いの想いを高めてから引っ付きたいというゆりの願望があったのかもしれない。いくら性の儀式とはいえ、お互いの
欲望だけで儀式をするのは嫌なのだ。ゆりと二人きりで抱き合っている時は男達も他に７人が周りにいる、という事を忘れ
そうになるほどだった。
そして、最後にゆりに引っ付いたミカエルが、「タオル取ってもいいですか？」とゆりに聞いた。
「いいよ」
ゆりが了承して、ミカエルはゆりの肌から白いタオルを剥ぎ取った。
ミカエルはゆりの体を寝かせて上に乗り、口付けをしながらゆりの肌に触れた。
そこから儀式は性的なものへと代わって行ったのだった。
「美しいですよ。王妃・・・」
それは誰が言ったのかゆりにはわからなかった。
ミカエルはゆりの胸をなでながら、胸に舌をはわせていた。ゆりは近くにいたヴィラの手を握り締めた。
「ヴィラも来て・・・」
ヴィラは微笑んでゆりに身体を寄せた。
男達の体温が上昇してくる。ゆりの気の色が変わっていき、なんともいえないいい匂いが漂いはじめた。
その匂いが男達の欲望に火を灯す。
ミカエルはゆりの足を大きく広げさせてそこに顔をうずめて指でも刺激していた。
「あ・・・あ・・」
ヴィラは優しくゆりの胸をなでながら、ゆりの首筋に口付けている。
やがてゆりの両足がびくびくっと痙攣した。
「気持ちいい？王妃」
「うん・・気持ちいい」
ゆりはミカエルの腕を引っ張り、横に寝転ばせて、腰に巻いてあるタオルを取った。
ゆりはミカエルに口付けながらミカエルの下半身へと手を伸ばした。
「口でしてほしいな・・・王妃・・・」
ミカエルがゆりの耳元で言った。
「後でね。最初からしてると疲れちゃうもん」
「はあ・・・」
ミカエルが達するとゆりはヴィラに引っ付いて同じ様に互いの身体をまさぐった。口付けも激しいものへと変わっている。
「じゃあ次は・・」
「もう待ちきれないです。王妃」
ハインリヒが言った。
「じゃあハインリヒと、シャナーンも来て」
「はい」
ハインリヒはゆりの唇に軽くキスしてゆりの胸に触れて、胸に舌をはわせた。
シャナーンは横からゆりに口付けた。
「ああ、王妃、王妃、愛してます」
シャナーンがゆりの頬に自分の頬を寄せて言った。
「うれしい。私もシャナーンが大好きよ」
「私のことは？王妃」
ハインリヒがゆりの胸に触れながら聞いた。
「もちろんハインリヒのことも好き」
「じゃあ楽にしてください。王妃」
ハインリヒの腰からはタオルが外れて、身体はすでに興奮状態になっていた。
「いいよ」
ゆりはハインリヒに抱きついて口付け、ハインリヒの体に触れた。
「王妃の指も好きですよ」
「私も、ハインリヒの指好きよ」
ハインリヒが達するとゆりはシャナーンに体を寄せた。
「シャナーンも一杯興奮してね」
「王妃・・・」
いつの間にやら部屋の中は薄暗くなっていた。ゆりはそれぞれと引っ付いては手で達せさせている。男達の手もゆりの肌を
何度もなでて、身体の中に侵入していた。ゆりは軽い快楽を何度も感じつつ、男達に引っ付くのをやめることはない。
それぞれの男が愛しくて、全員とひっつかないと気がすまないのだ。
「もっと、もっとキスして、ミルキダス」
「王妃・・・」
ゆりは男達と激しいキスを繰り返して、全員が達した所でシャナーンをじっとみた。
「来て、シャナーン」
「はい」
シャナーンがゆりに近づいた。
「ここに立って」
シャナーンが立ち上がるとゆりはひざをついてシャナーンの顔を見た。
「あ、ずるい王妃！」
ミカエルが言う。
「ずるくないでしょ。ミカエルは次にしてあげるから」
「うう・・・」
ゆりはシャナーンの胸に手をはわせて、下半身を優しくなでた。ゆりの匂いのせいもあり、シャナーンの体はすぐに
興奮状態になる。ゆりはその身体に、舌をはわせた。
「あ・・・ああ・・・王妃・・・・」
シャナーンの身体が痙攣した。
口の中にいれられると、あまりの快楽に耐え切れず、シャナーンは自分で身体を離してしまった。
「はあ・・・はあ・・」
シャナーンの身体からは精が放たれていた。
「シャナーンってかわいい。また後でね」
ゆりは微笑んで言った。
「じゃあ次私」
ミカエルがすぐにゆりに抱きついた。
「寝転んでください。王妃」
「うん」
ジュノーに言われてゆりは寝転がり、ミカエルはゆりの口元に体を寄せた。
ゆりの下半身の方にジュノーが移動して、胸にも、他の男の手が触れていた。
「ん・・・んん・・・」
「はあ・・・王妃・・・」
男達の瞳は蛇の目に変わってきていた。
ゆりの匂いが濃くなり、男達のあえぎ声と荒い息が部屋に響いている。
何もされずとも達してしまいそうなほど、男達は興奮していた。そのため、ゆりが必死にならなくても男達は楽に達していた。
「ああ・・・腰が抜けそうだ・・・気持ちいいです。王妃・・・」
「私も・・・気持ちいい・・・」
ゆりはもはや誰がどこを触っているのかも把握していない。
身体の外にも男の指が這い、中にもせわしなく指が出入りし、かきまぜられている。
「ああ・・・いい！」
ゆりの身体は男達に囲まれて、ゆりは男達を快楽に導きつつも、自らも快楽の狭間にいた。
「綺麗ですよ・・・王妃・・・」
「愛してますよ・・・」
「王妃・・・」
「ああ！」
ゆりは男と共に達していた。
「ああ、もう誰にしたか忘れちゃった・・・ずっといた人はどいてどいて、ミルキダスとイシュタール、シャナーン
こっち来て」
ゆりは輪の外でぼんやりした顔をしている３人に声をかけた。声をかけられると男達はぼんやりした顔のまま
ゆりに近づいて行った。
「大丈夫？3人共」
「なんだか、王妃の匂いに酔ってしまって・・・」
イシュタールが言った。
「あ・・・」
シャナーンが視界に何か黒い物が横切ったのを見た。それは宙を飛んでいる蛇霊神だった。
「蛇はほっといていいから、来て来て」
「はい・・・王妃・・・」
蛇霊神は全部で3匹いた。部屋の中をふらふらっと飛び回り、やがてどっかに行ってしまった。
「頭がくらくらしてきた・・・」
輪の外に出たハインリヒが顔を振るった。胸には顔が二つある黒い蛇が現れている。
「今日は最高に匂いがすごいかもしれないですね」
同じく輪の外に出たヴィラが言った。何度達しても、少しでも王妃に触れたいという衝動が止まらない。
それは赤い月のような衝動でもあった。
「まさしく、我々にとっては愛欲の女神ですよ。あなたは・・・」
ヴィラは男達に囲まれたゆりを見て言った。
夕食の時間になり、ラギは自分の部屋から廊下に出てぎょっと片足を浮かせた。
廊下に黒い蛇が伸びていた。それもちょっと透けている。
「蛇霊神じゃないか・・・」
ラギは腰をかがめてその蛇を眺めた。蛇霊神はお腹の方を上にして口を開けている。
まさか幻の蛇が死ぬわけはない。
寝てるのかな？
ラギはつんつん指でつついてみた。だが幻なのでまるで感触はない。
しばらく観察するように眺めていると、蛇はふらふらっと体をくねらせて、飛んで行ってしまった。
「儀式につられてきたのかな？」
ラギは首をかしげた。
寝室には灯りが灯されていた。夕食も食べずにゆりは男達と引っ付いていたのだが、男達にはさすがに体力の限界が
やってきた。
「あー皆に優しく愛されるって楽しいなあ」
ゆりはフリットに抱きついて言った。男達の姿は元に戻っていたのだが、皆ぼーっとしている。
精も根も尽き果てたといった感じだ。
「本当は抱かれたいけど、まあいいか。それじゃあ。さよなら〜」
とゆりの中にいた女蛇が言った。
そこでゆりははっと正気に戻った。
『ちょっと、面白いことしてくれるってのはどうなったの！？』
『あら覚えてたの？てっきり忘れてるかと思ったのに・・・』
のんきな声が聞こえる。
『・・・・』
『わかったわよう。じゃあ浴室で』
「浴室に移動しましょ」
ゆりが男達に言った。すると、だれも反応しなかった。
「おーい、みんなー」
ゆりが手をたたく。
「王妃は元気ですねえ・・・」
ヴィラが感心していった。
「わりと元気だけどお尻痛いよ」
ゆりがジュノーを睨んで言った。
「おや、また咬んでしまいました？」
「今日は二箇所も咬んだ」
「え？」
ゆりはお尻をなでた。
「どれ」
ジュノーがゆりの腰を浮かせてお尻を見ると、確かに両方のお尻にくっきり歯型が残っていた。
「両方私？」
ジュノーが男達を見て聞いた。
「いや、一つはシャナーンが・・・」
ミルキダスがぼそっと言うとシャナーンがぎょっとした顔をした。
「すみません。王妃・・・」
そして何かを思い出したシャナーンは恥ずかしげに言ったのだった。
ガーン、シャナーンだったとは・・・まあいいや。
「とにかく皆浴室に移動よ。水蛇さんが何かしてくれるんだって。タオルタオル」
「はいはい」
ヴィラがタオルを皆に配り、一同は浴室へと移動した。
浴槽の中には新しいお湯が入れられていた。
「何をしてくださるんですか？」
フリットがゆりに聞いた。
「さあ」
ゆりは首をかしげつつも浴槽の縁に座り込んで、お湯の中に右手をいれた。
「じゃあ面白い物見せてあげるね」
ゆりはぶつぶつ小声で何かを言っていた。やがて、水面がゆれて、水に何かの映像が映ったのだった。
「おおっ！？」
男達は浴槽の周りで声をあげて、それを見つめた。
くっきりと一つの鮮明な映像が映された。それはー
「何これ」
言ったのはゆりだった。映っていたのは湯船に入り、お湯に浸かっているラクシュミだった。
『面白いでしょ？』
『面白いって・・・これ？』
ゆりはあっけにとられた。
男達もしーんとしている。
ゆりの顔が引きつった時、
「冗談だよ。次が本物」
ゆりはもう一度お湯の中に手を入れてぶつぶつ何かを言った。
水面に違う映像が浮かんでいた。それは戦いの映像だったので男達の顔つきが変わった。
相手は明らかに龍の国だった。龍族の男らしき人物が見える。そして戦いに参加している自分達の姿も。
「これはいつのことかわかりますか？」
ヴィラが聞いた。男達の顔はさすがにひきしまっている。
「さあそこまで詳しくはわからない。明日以降10年までってとこかなあ？」
ゆりは首を傾げつつも言った。
「フリット殿の髪が背中の上の方ですね」
ジュノーがちらりと映ったフリットに気づいて言った。
「本当だ。といっても今はそんなに伸びない時期だからな。２、３年後かもな」
とフリット。大人になってある程度経つと、髪も爪もたいして伸びることはない。しばらくは外見は成長が止まっている
ような感じになるのだ。フリットは今そういう時期に入っていた。髪が元の長さになるにはかなりの時間がかかるだろう。
「２、３年か・・・」
ミカエルがつぶやいた。
「それじゃ私はこれで。皆またね」
明るく言って女蛇は出て行った。水面の映像は消えた。
快楽の後に戦いの場面を見た一同は皆複雑な表情をしていた。
「元気出して。皆」
ゆりは皆の顔を見て言った。
「元気ですよ。まあ明日にも戦いが起きるわけじゃないですからね」
とヴィラが微笑んでいった。
「いずれ起きることですしね」
とジュノー。
「それよりも、今日は楽しかったですよ王妃。定期的にやってくださるとうれしいんですけど・・・」
ハインリヒがにんまり笑って言った。
ゆりは口を尖らせて「やなこった」と言い、一同はくすっと笑った。
皆浴室で体を洗い、脱衣所に置いたままの服に着替えて、解散したのだった。
お腹があまりにすいていたゆりは、自分の部屋の横の部屋でむしゃむしゃとご飯を食べていた。
儀式の後は侍女らと顔をあわせるのも気まずい。
今頃寝室は綺麗に掃除されている事だろう。
ああ、恥ずかしい・・・
あれだけの男達が興奮しまくっていたのだから、ベッドの上はそれは悲惨な事になっていただろう。
今のゆりには自己嫌悪も後悔の感情もなかった。それを証拠にご飯を食べまくっている。ただ恥ずかしいだけだ。
今日は男が多い割りには楽だったなあ。皆早めにいっちゃってたし・・・
入れ替わり制にするよりは８人とやった方がいいのかな？
ついにシャナーンとも激しい関係になってしまったのはちょっとショックだけど・・・
でも別に、普段は今まで通りに接すれば、純愛路線は消えてしまわないはず。
ゆりはしつこくそんな事を考えつつも時々お尻をなでたのだった。
すすむ