脅すだけ脅して結局は何もしなかった男。
一体何を考えてるのかしら？
私を怯えさせたかっただけ？でも目的は何なの？
本当にディアメラのことが好きなのかしら・・
サラディンの神殿から逃げたガーベラだったが、やっぱりサラディンのことが気にかかっていた。
どうにも性格がつかめない男だ。今までそんなに悪い噂も聞いた事がなく、気難しい男で他の神々とあまり
友好関係がないという噂を聞くくらいだった。
腑に落ちないわねえ。
ガーベラはダーナの神殿を訪れた。そして以前ダーナの娘がサラディンの元に行った時のことを聞いたのだった。
どうやら会いに行ったのは光の女神の一人だったようだ。
「ああ、サラディンね。あの子会いに行ってみたけど子供に用はないって追い出されたみたいよ。」
ダーナは笑って答えた。
「それだけ？他に何も言われたりされたりはしてないの？」
「別に何も言ってなかったわよ。まああの子にはああいう大人の神は荷が重いでしょうけど・・・どうしたの？
サラディンに興味があるわけ？」
「アシュランに強引に会いに行かされたのよ。もうサラディンに紹介する女神がいないとかで、それで行ったら
ディアメラの代わりに来たのかと言われるし・・・」
「ディアメラの代わり？」
「どうも本人の希望はディアメラだったみたいよ」
「へー、ディアメラねえ・・」
ダーナは椅子の背に背中をもたせかけた。
「でもサラディンがディアメラをくどいて振られたとかいう話は聞いたこともないけどね」
「そうよね・・・」
「まあほっておけば？」
「そうね・・・」
だが疑問があるとどうも頭の中がすっきりしない。
それにしてもアシュランには腹が立つったら！
と再びアシュランに怒りがこみ上げてきたガーベラだった。
第51話
「ハックション！！」
空の神殿ではアシュランが大きなクシャミをしていた。
「アシュラン様、大丈夫ですか？」
目の前で膝をついていたグレンが聞いた。
「ああ、きっとどこぞの美人が私の噂でもしているんだろう。所でサラディンがまたガーベラにあわせろと
言ってきてるんだが・・・」
「え！？」
「どうしたもんかな・・・」
「・・・・」
グレンの表情が暗く沈んできた。
すっかりサラディンがガーベラに何かしたと思い込んでいる。だがそのことは、さすがにアシュランには告げては
いなかった。
「ガーベラ様は、あまりサラディン様のことをお気に召した様子はなかったのですが・・・」
「だがせっかくサラディンが会いたいといっているしなあ・・無視したらどこか焼かれかねないし・・・あいつを
怒らせると面倒くさいんだ」
アシュランは困った顔でぶつぶつ言っていた。
アシュランは神々の長という立場についてはいるが、他の神が皆ははーとアシュランを崇めて従っているわけでは
ない。それは「アシュラン」と呼び捨てにしていることでも明白だ。重要な神々にはそれなりに気を遣っているのだ。
「・・・」
「とにかくガーベラをここに連れて来い。グレン」
「わかりました・・・」
グレンは空の神殿を出て行った。
空を飛んだものの、これほど気が進まない日はない。いつもは颯爽と空を飛ぶグレンも、今日ばかりは足取りが
重く、ゆっくりめだった。
ああ、そうだ、適当に飛び回って見つからなかったと告げよう。
そうしよう。
いつもはアシュランの命令に忠実なグレンだったが、今はそうすることができない。ガーベラと顔をあわせることも
できかねた。
はあ・・・
グレンはため息をついてふらふら低い所を飛んでいた。森を抜けて草原を飛んでいると、「やっほー」と声がかかっ
た。
やっほー？
おかしな呼び声だと思いつつ振り向くと、なんとガーベラ本人が向こうから近づいてくるではないか。
「！！！」
グレンは大きく口を開けたまま硬直した。
「ガガガガガ・・・ガーベラ様・・・」
「こんにちは〜グレン」
しかもガーベラは機嫌がよさそうにニコニコ微笑んでいる。
「どうしてこんな所に・・・」
「ん？あっちの花畑の方から歩いてきてたの」
とガーベラは草原の向こうを指指した。
「・・・・」
前しか見ていなかったグレンは全く気づいていなかったようだ。
「相変わらず気持ちよさそうに飛んでていいなあ・・・」
ニコニコ顔のガーベラの中身はゆりだった。
ゆりはついさっき神の国に来たばかりだった。どの恋人に会いに行こうかな、と考えつつ歩いていたらグレンが
飛んでいるのが見えたので声をかけたのだ。
グレンは暗い表情でゆりを見つめていた。
違う・・これはいつものガーベラ様ではない・・・いつものガーベラ様なら、私にこんな顔をするはずはない。
グレンはガーベラの中身が違う事に気づいた。
「どうしたの？」
ゆりが首をかしげて聞いた。
「・・・実は・・・空の神殿に来ていただきたいのですが・・・」
ガーベラに会ったからには言わないわけにはいかなかった。
「いいよ。」
ゆりはあっさり言った。
「あなたと飛んでくの？」
「はい」
「じゃあだっこして。誰かに下からのぞかれると嫌だから」
「・・・」
ああ、どうしよう・・・もしやあの時の記憶がないのでは。
グレンは困りつつもゆりを抱き上げて飛んで行ったのだった。
アシュランの前にきたゆりもニコニコ顔だったので、アシュランもにこやかだった。
「今日も綺麗だな。ガーベラ」
「どうもありがとう」
「この前サラディンに会った時、どうだった？サラディンはお前の事を大変気に入ったようなのだが」
「サラディン？」
ゆりは首をかしげた。ゆりはサラディンが火の神だというのはさすがに知っていたが、会ったことはなかった。
「もう一度会ってもいいか？」
「いいよ」
とゆりがあっさり言ったので、ゆりの後ろにいたグレンの顔が引きつっていた。
やはりあの時の記憶がない！！！
「そうか。お前がご機嫌でよかった」
アシュランはゆりに微笑みつつ言った。
「あ・・・あの・・・」
グレンがゆりの後ろで低い声をあげ、ゆりとアシュランが顔を向けた。
「あの・・・今日はおやめになったほうがよろしいのでは？ガーベラ様のお顔の色があまりよろしくないようで
すが・・・」
グレンの言葉にアシュランはゆりを見つめ、ゆりは自分の頬をなでた。
「そうか？そんなことないが・・・なあ、ガーベラ」
「ばっちり元気よ。なんだかグレンの顔色が悪いみたいだけど？」
「本当だな。お前の顔色のほうが悪いぞ。どうしたんだ？」
「・・・・・」
だめだ。こうなったら連れて行く途中でガーベラ様に用事ができた事にしよう・・・
グレンがそう決心した時、アシュランが口を開いた。
「今日は暇だから私が雲でサラディンの元に連れて行ってやろう」
「え！！！」
と大きな声をあげたのはゆりではなくグレンだった。
「お前なんて声を出すんだ・・・」
アシュランが驚いて聞いた。
「アシュラン様が自らですか？」
「ああ。行こう。ガーベラ」
「はーい」
ガーベラ姿のゆりはアシュランと共に行ってしまい、「なんで今日に限って・・・」とグレンはがくりと
うなだれたのだった。
本当に白い雲のような塊にゆりはアシュランと共に乗せられて飛んで行った。
うわー孫悟空みたい〜すごーい！！
初めての乗り物にゆりはご機嫌だった。
二人とも雲の上には座って乗っている。ペガサスと同じくらいのスピードは出ているだろう。
落ちないのが不思議・・・帰ったら子供達に自慢しよう・・・
さすが神様ってのはすごいねえ。
感動しちゃうよ。
ゆりはサラディンの神殿につくまで空の散歩を楽しんだのだった。
神殿につくとゆりだけ下ろしてアシュランは雲に乗り行ってしまった。
ここが火の神様の神殿かあ・・・
ゆりはあたりを見回した。自分達の神殿があるところとは違い、あたりには起伏がある岩肌しか見えない。
ちょっと寂しげな場所に神殿が立っていた。
さあ、火の神様ってどんな人なんでしょ。
なんで前に会ったのかな？もしかして・・・ガーベラの新しい恋人？
ゆりはそう思いつつも中に入り、「こんにちは〜」と軽く声をかけた。
すると真っ赤な髪の男の妖精がやってきた。
「ガーベラ様・・・」
「こんにちは。火の神様に会いに来たの」
「そうですか。ではこちらに・・」
ゆりは妖精に案内されつつ廊下を歩いて行った。昼間にもかかわらず両方の壁に火の灯りがついているせいか
結構神殿の中は暑い。
よく火事にならないものだ。神殿に使われている石はガーベラや他の神殿のような真っ白な綺麗なものではなく、
ちょっと灰色がかっていた。火に変色しないような石なのかもしれないとゆりは感じた。
「あ」
ゆりは横の通路に赤い長い物があるのが見えて思わずそちらに走り寄った。
「わー、蛇だ！」
それは真っ赤な蛇だった。小さめの蛇だったのでゆりは両手に取った。すると蛇は口を開けて小さい火をぽっと
吐いた。
「うわー火吐いた。すごい！！」
案内していた妖精が近づいてきた。
「火吐く蛇見たの初めて」
ゆりは興奮した様子で言った。
「そうですか。この辺にしかいないですからね」
「あ！向こうにもいる！」
「あの、ガーベラ様・・・」
妖精が止めようとする間にもゆりは小走りに横の通路を行ってしまった。そこには手に持っている蛇よりも
ちょっと大きいのがいた。
「かわいー！！」
ゆりは蛇を下に降ろして蛇を並べた。
「あの・・・そろそろ・・・」
「ねえなんでむわってするの？ここら」
ゆりが妙な湿気を感じて聞いた。暖かい空気が漂っている。
「ああ、奥に湯浴み場があるからですよ」
「ユアミバ？お風呂のこと？神様って水にしか入らないんじゃないの？」
「サラディン様は熱いお湯に浸るのが好きなので・・・」
「え、そうなの？行ってみてもいい？」
「え？」
「ね、いいでしょ？ね」
ゆりはちょっと身体を摺り寄せて聞いた。妖精の頬が赤くなった。
「はあ・・・まあいいですが・・・」
と妖精が言い終わらない間にゆりは勝手に奥に進んで行った。そして、奥の布をたくし上げて見えた光景に
愕然とした。
こ・・・これは・・・温泉！！！！
灰色の岩を丸くくりぬかれた中には熱そうなお湯が一杯入っていた。湯気が上がっている。この部屋全体が
床は岩だった。
ああああ、まさかこんな所にこんな場所が・・・・！！
ゆりは両手で頬を包んで感動していた。
「あの、ガーベラ様？」
「ねえ、これって、自然に湧いてるの？」
「近くに湧いているのを運んで来てるんです」
「やっぱり温泉なんだ。入りたい」
「え？」
「ねえ、お願い。妖精さん、中に入りたいよう」
「え、でも・・・ここはサラディン様の・・・」
「サラディンに会う前に身体綺麗にしないと。今日水浴してないし」
ゆりは必死だった。どうしてもあの岩でできたお風呂に入りたくて仕方がない。
今あの中に入らなかったら一生後悔するかもしれない。そんな気までしていた。
なにせ久しぶりに日本の温泉らしいものに遭遇してしまったからだ。
「お願い。お願い」
ゆりは妖精に抱きつかんばかりで、妖精の顔はもう真っ赤で頭から湯気が出そうだった。
「ではサラディン様に聞いてきますから」
「お願いね」
妖精は離れて行ったが、ゆりは衝動を抑えることができなかった。
だめだ！もう入る！
ゆりは服を脱いで裸になり、足をお湯にちょっとつけてみた。ちょうどいい温度だ。
「ああ〜これはいい感じ」
少しずつ体をお湯の中に沈めると、なんだか懐かしい記憶がよみがえってきた。
昔家族で温泉旅行に行った記憶だ。おしりに伝わるごつごつした岩の感触が自然でいい。
お湯の温度は３９度といったところだろうか。
「ああ、最高にいい！！」
お湯の感触はさらりとしていた。
「ああ〜気持ちいい〜」
ゆりは足を伸ばして首までお湯の中につかっていた。ゆりにとってはもはやここは神の国ではなく、懐かしい日本
の温泉場だった。
一方広間にいたサラディンは、ガーベラがアシュランに連れられてきた、と妖精から報告は聞いたものの、
一向にガーベラが現れないので不思議に思っていた。そんな時妖精が現れてサラディンにガーベラが湯浴みを
したがってると告げたのだった。
「湯浴み？他の神は湯に入る習慣はないはずだが？」
サラディンは眉をひそめて言った。
「それがどうしてもといわれて・・・」
「？」
サラディンが湯浴み場の外に移動すると変な歌が聞こえてきた。
「い〜い湯だな〜あはは〜♪い〜い湯だな〜あはは〜♪」
布をめくって中をのぞくと、女神はすっかり湯の中に入り込んでいた。
「ガーベラ・・・」
その声にゆりははっと我に返り、顔を向けた。
「ごめんなさい。もう入っちゃいました」
「・・・・」
そこには呆れ果てた顔のサラディンが立っていたのだった。
「クーリーフン様！お早く！」
その頃、グレンはようやく見つけたでかいクーリーフンの腕を引いて猛スピードで飛んでいた。
用も知らされていないクーリーフンはわけもわからずに引っ張られている。
「一体どこに行くの？」
「いいから早くきてください！！」
「いいけど・・・」
ここはガーベラの息子であるクーリーフンに様子を見させるのが一番だと思ったグレンは、急いでクーリーフンを
サラディンの神殿に連れて行っていた。
「全く・・・お前のような失礼な女は初めてだ・・・」
広間でサラディンはぐちぐち言っていた。
「ごめんなさい。つい・・・」
お風呂から出たゆりはしょんぼりした顔でサラディンを見ている。髪を乾かすのは女の妖精達が手伝ってくれた。
確かに人の家にきて勝手に風呂に入る女はあんまりいない。
「・・・・お前肌が赤くなってるぞ・・」
サラディンがゆりの胸元を見て言った。
「すごく気持ちよかった。身体もぽっぽしてる。」
「所でお前、なんできたんだ」
サラディンは眉間に皺を寄せたまま聞いた。
「なんで？」
ゆりは記憶を探った。
「あなたが私に会いたがってるって聞いたけど？」
「普通は来ないだろう」
「なんで？」
ゆりはきょとんとして聞いた。
「・・・」
サラディンは目をそらした。
「私に会いたいんじゃなかったの？」
「来ないと思ったから言ったんだ」
「どうして？」
「ただアシュランを困らせてやりたかっただけだ」
「全然困ってなかったけど？」
「・・・」
ゆりにはサラディンの意図する所がさっぱり分からなかった。
「ねえ、あなたって恋人いるの？」
「・・・」
「いなかったらまたお湯に入りにきてもいい？」
「だめだ」
サラディンにあっさり言われてゆりは口を尖らせた。
「いいわよーこの近くに湯が沸いてる所があるんでしょ？そこに入るから」
ゆりの言葉にサラディンはぎょっと顔を向けた。
「それはやめておけ。あそこは熱湯だ。中に入ることはできない」
「そうなの・・・じゃあここに入れて。迷惑かけないから」
サラディンは眉間に皺を寄せてゆりを睨んでいる。だが、ゆりは温泉がかかっているとあっては引けなかった。
「たまにしかこないから、お願い。お願い」
「・・・お前変な女だな・・・」
サラディンは呆れるように言った。
「あなただって変じゃない。結局はアシュランを困らせたいってどういうこと？」
「さあな。もう帰れ」
「せっかくだからもう一度お湯に入っていい？」
ゆりは全然懲りてなかった。
ゆりは半ば強引に再び湯浴みに行ったのだった。サラディンのようにちょっと冷たい男というのは
最初の頃のラクシュミやハザークで慣れていた。かなり性格も図太くなっている。
「・・・なんなんだあの女・・・ずうずうしいにもほどがある」
サラディンは一人ぶつぶつ言っている。それを聞いて横にいた火の妖精がくすりと笑ったのだった。
クーリーフンが神殿に着いた時には、ゆりは二度目の温泉気分でまったりしていた所だった。
「お母さん一体何してるの！？」
クーリーフンは湯浴み場の入り口付近で顔だけ入れて聞いた。
「あ、クーリーフン、一緒に入る？気持ちいいよー」
「僕はいいよ。こんな所入ったら翼が重くなる」
「気持ちいいのになあ・・・」
クーリーフンは首をかしげつつ神殿の外に出た。ガーベラの危機と聞かされたのだが、全然危機ではない。
外には心配顔のグレンが待っていた。
「どうでしたか？」
「なんか楽しそうにしてたよ？」
「え？」
「心配しなくても大丈夫だよ。」
「本当ですか？」
「うん」
「本当に？」
「本当だよ。サラディンと母さん何かあったの？」
「いえ・・・そうですか。何もなかったのならよかった・・」
グレンはほっとした顔をしていた。
「よくわからないけど・・・じゃあ僕行くよ」
「はい、どうもすいません」
「じゃあね」
クーリーフンは飛んで行った。
二度目の温泉気分を十分満喫したゆりは、サラディンに御礼を言って神殿を出て行った。といってももうサラディン
はゆりの顔も見はしなかったが。
かなり怒っちゃってるかも。まあしばらく日にちを置いたらまた来てみようっと。
えーと、だれかのところに移動しようかな。そうだ、しばらくオルガに会ってない。行ってみよう。
ゆりはぱっと移動して、神殿の影に隠れていたグレンはそれを見てからようやく移動したのだった。
ゆりが着いた場所はオルガの神殿だった。まだ午後だ。オルガはやっぱり寝ているようだった。
私もなんだか眠くなっちゃった。
ゆりはオルガの横にこっそり身を忍ばせた。するとオルガが目を開いて、その目がぎょっと見開いた。
「どうしたんだ。肌が真っ赤だぞ！」
「えへへ、ちょっとお湯に浸かっていたから」
「お湯？」
「うん。サラディンの神殿に行ったの。そしたらお湯があって・・・」
「サラディン？なぜサラディンの神殿に行ったんだ？」
オルガが驚いて聞いた。
「それがよくわからないの。サラディンが会いたがってるって言うから行ったのに、行ったら別に来なくてよかった
って言われるし・・・アシュランを困らせたかったから言っただけだって。どういうことだろう？」
ゆりは首をかしげつつ言った。
「・・・・」
オルガは何かを考えるように横を向いた。
「バカな奴だ。いい加減違う女を好きになればいいものを・・・」
「サラディン誰か好きな女神がいるの？」
「さあな」
「もう、誰？」
「お前、すごく熱くなってるぞ」
オルガがゆりの頬に触れて言った。
「なんだか眠くなっちゃった。ちょっと寝させてね」
「ああ」
「おやすみなさい」
そう言ってゆりは目を閉じた。
「まあ、火の神だけに、一度燃え上がった愛の炎はおいそれと消えることはないのだろうがな・・・それにしても
相手が悪いな」
オルガがぼそりとつぶやいた言葉はゆりには聞こえてはいなかった。
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