なんだかぼんやりする・・・
そう思いながらゆりは目を開けた。上を見ると、なんだかいつもと風景が違う。横を見た。横を見ても違っていた。
どこかのホテルに泊まりにきたんだっけ？そんなはずは・・・
ゆりはぼんやり体を起こした。布が垂れ下がったような天蓋の広いベッド、ヨーロッパ風の調度品。ゆりは自分の胸を見て首をかしげた。
あれ？なんで私の胸大きくなってるんだろう・・・・
なんだかおかしい。ここはどこ？私一体何してたんだっけ？
ゆりはふとみたじゅうたんの上に、長い青い紐があるのを見た。ゆりはそれをじっとみた。紐だと思っていた物は、少し動いて、なんだか先のほうに紫色のものがちろちろ動いていた。
「ぎゃあ！」
ゆりは悲鳴をあげた。
蛇だ！なんでこんな所に蛇が！？
蛇はベッドのほうに近づいてくる。しかも、首を上げて上にのぼろうとまでしている。
ゆりはあわててベッドから降りて壁にへばりついた。すると見知らぬ老人と女性たちがしきりのカーテンを開けてやってきた。
ゆりはまた悲鳴をあげた。その人たちの姿が、とてもおかしかったからだった。耳がとがってる。しかも、頭の上に猫のような耳がついてる女の子がいる。
尻尾まである。まるでゲームのキャラだ。コスプレ会場にやってきた覚えもないのに・・・
老人と女性達は、ゆりになにやら言っていた。だが、ゆりにはさっぱり言葉が理解できなかった。英語でもないし、ドイツ語やフランス語とも思えない。
何なの一体！ここはどこなの！？もしかして私・・・
宇宙人に拉致られた？
それで何かの実験で胸でかくされたとか？
ゆりはしばらく青ざめたまま固まっていた。
第１２話
「記憶喪失？」食堂にいたラクシュミは、思わず聞き返して目を見開いた。ラクシュミはフレイからの思念を聞いていたのだ。
ーはい、しかも、王妃はこちらの言葉をすっかり忘れているようなのです
「なんだと？本当なのか？」思わず声に出して言ったが、ちゃんと思念としてフレイにも届いている。
ーはい。ひどく怯えられていて・・・どうも誘拐でもされたと思っているようで・・・
ラクシュミは顔に手をあてた。
ー私があってみようか
ーそれはもうちょっとお待ちください。王妃は病み上がりですから、あと数日は様子をみないと、王に何かあったら大変です
ーそれはそうだが・・・
部屋の中では、ゆりは近づいてくる侍女たちから、泣きながら逃げていた。これ以上何かされては大変と距離を保ちながらだっと走って部屋の扉を開けて出て行った。
「王妃！私ですよ！ミラですよ！」
ミラは必死に言っていたが、ゆりには言葉の意味は理解できていなかった。
逃げようと廊下に逃げ出して、ぎょっと足を止めた。廊下を横ぎるように、なんだかすごくでかい縄がある。いや、それは縄ではなかった。茶色と濃い緑色の模様のついた、とてつもなくでかい蛇だった。蛇は顔をもたげて
ゆりを見た。ゆりは蛇と目が合った瞬間、そのまま失神してしまった。
「ゆり様！」
ゆりはこうして再び寝室に戻されたのだった。
「最初こちらにいらした時も、失神などされませんでしたのに・・・」ミラが不思議そうにフレイに聞いた。
「ふーむ。その時と今では状況が違うからではないかな。あの時は、自分の意思でこちらにいらしたようだったが、今は、
知らない内に知らない世界に来たと思われているのだから、その分恐怖心が大きいのだよ」
フレイが言う。
「なるほど・・・でもどうしましょう・・・」
「困ったのう・・・言葉が通じないというのは・・・」
「虎の国のアヤコ様に話してもらったらどうでしょうか」
「今はまだそれはできないんじゃ。王の間にはまだ連れて行けない。完全に病がいえていなければ・・・」
「そうですねえ・・・」
ーフレイ、肌に触れて、思念のような感じで会話はできないか？
ラクシュミから思念がきた。
ー目を覚まされたらためしてみましょう。
フレイは思念を返した。
ゆりは再び意識を取り戻した。
ああ、なんかすごく変な夢見ちゃったよ。宇宙人に連れ去られたなんてばかな話あるわけないのに。
えーと・・・今日の授業は・・・
ゆりは自分の記憶を持っていたが、それは、この世界に来るまでの記憶だった。しかも、来たいきさつなどは全く覚えていない。向こうで事故にあった事も、全く記憶になかった。
あれ？今日は何曜日だったかな？
ゆりは目を開けてそのまま固まった。ベッドの横に、紫色っぽい髪をした女の人がいた。耳は大きくて上の方がとがっている。
宇宙人・・・
その女性はそんなに若くはなさそうだったが、気品があって、優しそうな顔をしていた。だが、そんな事は、今のゆりにとっては、慰めにもなりはしない。
ゆりはそろりとベッドの端の方に移動した。そして警戒するように女性を見ている。
女性はいすから立ち上がり、ベッドから離れて仕切りのカーテンの方に移動した。そしてにっこり微笑んで手でおいでおいでと仕草をしている。ゆりがじっとベッドにいると、女性はカーテンのむこうに消えた。ゆりはそろそろとカーテンのところから部屋
の中をのぞいてみた。女性はゆりから離れた部屋の反対側のほうにいた。丸いテーブルの上には、食べ物がおいてあった。
女性はその食べ物を手で示している。
食べろってことかな。でも、何か毒とか入ってるんじゃないのかな。おなかすいた・・・
おなかはぐるぐる鳴っていた。
テーブルの上には、スープのようなものと、パンがあった。ゆりはそろそろとテーブルに近づいて、パンをひとつ取り、女性をじっと見ながらむしゃむしゃ食べた。
「・・・・」
ーフレイ様、王妃に触れるのは今は無理ですわ。なんだかひどく警戒していますから
ロアンナは部屋の外にいたフレイに言った。なるべく刺激を与えないようにと、蛇も部屋から出して、ロアンナだけにしていたのだ。ゆりはロアンナから目を離さない。少しでも近づいたら逃げられる体勢でいる。
「はあ・・・」王の間で、ラクシュミは大きなため息をついた。
「かわいそうな王妃、会ってもいいですか？」
ミカエルが言う。
「だめだ」
ラクシュミと、ミカエルの横にいたフリットが同時に言った。
「お前何考えてるんだ。話がややこしくなるじゃないか」
フリットがミカエルをにらんでいった。
「私の愛で元に戻してあげたい」
「ばかなこと言うな」
声はまた同時だった。
パンを食べたゆりは部屋のすみにじっとたっていた。対角線上のすみにはロアンナがいて、優しく問いかけたりもしていたが、ゆりは言葉が理解できていないので、さっぱりわかってない。
頭の中整理しなきゃ。一体いつ宇宙に連れ去られたんだろう・・・
ゆりはすっかり地球以外の宇宙のどっかにいると思っていた。
私何してたんだっけ。大学行った帰り？飲み会の帰りだっけ？なんだかよく覚えてないなあ・・・
ゆりは自分の左腕にブレスレットがあるのを見た。金細工で、蛇の模様が入っている。
あれ？私・・・蛇のブレスレットしてたのに・・・あれはどこいったんだろう・・・
その時、昔自分を助けてくれた男のことを思い出したが、それとこれが頭の中で一緒にはならなかった。
どうしよう・・・トイレに行きたくなってきた・・・
ゆりの顔が青ざめた。ゆりは部屋の中を見回したが、トイレらしき扉のようなものは見えない。
ど、どうしよう・・・こんなところでするのはやだし・・・
ゆりが泣きそうな顔でロアンナを見ると、ロアンナは首をかしげた。
「トイレどこですか？」ゆりは聞いてみた。ロアンナには、意味は通じてない。だが、ゆりの泣きそうな表情でもしやと思い、部屋の扉を開けて、
ゆりにおいでおいでと手で呼んだ。
もしや通じた？
ゆりはロアンナの後をついていくと、部屋と同じ階のはじの扉に案内された。中に入ると、トイレらしきものがある。
やったあ！宇宙人と心が通じた！
ゆりは大喜びでトイレに入って行った。
トイレから出ると、廊下にロアンナが待っていた。そして、また元の部屋に案内された。
ここはどこなのだろう・・・
頑丈な石造りの建物のようだが、ひどく古びて見える。ちょっとかび臭い匂いもした。部屋の中はそんなことはないのだが、なぜ自分がここにいるのか、さっぱりわからない。
部屋に戻ると、またロアンナはゆりと離れたところに座った。
何が目的なのだろう・・・一体ここはどこの星？
ゆりは部屋の奥にベランダがあるのを見て、そちらに歩いて行ってみた。ベランダに出て外の景色を見た。空はどんより曇っている。下を見ると、結構高い。飛び降りるのは無理だ。
遠くの方に、町並みらしき物が見えるが、後は森や、川、湖などだ。
「・・・なんだかヨーロッパの風景っぽいかな」でかい鷲のようなものが飛んでいた。
私どこから来たんだろう。宇宙船で連れ去られたのかな。でも、ここって宇宙船とかありそうにないけどなあ・・・
どうもイメージが合わない。宇宙船というよりは、魔法とか、そっちの方があいそうな世界だ。
魔法で連れ去られた？そんなばかな。漫画じゃあるまいに。
ベランダにずっといると、ロアンナがそろりと近づいてきた。するとゆりの体がびくりと震えたので、ロアンナはゆりから離れて行った。
とにかく逃げなくちゃ。これ以上変な実験されたら困る・・これってどういう実験なわけ？
ゆりは自分の胸を見て途方にくれたのだった。
その日は、だれもゆりの体に触れることはできなかった。触れようとするならば、悲鳴をあげて泣き叫びそうな勢いだったからだ。
夕方、ロアンナは夕食をテーブルにおいて部屋を出て行った。ゆりは一人残されて、椅子に座ってご飯を食べた。
なんか変な肉だな。これ何の肉だろう・・・
お皿には調味料で味付けされた肉がおかれている。食べると、まずいということはなかったが、あんまりおいしくなかった。
正体は巨大なオオサンショウウオのような生き物メメントだということも、今のゆりにはわかってない。
ご飯を食べたあと、ゆりはそろりと扉を開けて、廊下を見てみた。すると、廊下の所に猫耳がついた女の子が、イスに座っていた。
見張りかな？
女の子はゆりを見ると、にこっと微笑んだ。
ゆりはそのままそろそろと扉を閉めた。
どうしよう。逃げたら、強引に連れ戻されるのかな。
夜逃げる方がいいのかな。
でもお風呂はいりたいなあ・・・体がべとべとする。髪もなんだかべたついて気持ち悪い。
ゆりはもう一度扉を開けて外に顔を出した。すると、そこにいたミラがゆりににこりと微笑んだ。ゆりはからだを洗うジェスチャーをした。
すると、ミラはぴんときたのか立ち上がり、廊下を歩いてゆりを手で招いた。
やったあ、通じた。案外言葉なくてもいけるわね。外国人と話す時も、ジェスチャーで結構話せるって聞いたことあるし。
廊下をかなり歩いて曲がり、下に下りていき、ある扉の前に案内された。もちろん通路や階段にいた蛇は、全て連れ去られている。中に入ると脱衣場のようなものがあり、その奥にはさらに、浴室っぽいものがあった。湯気がたっている。
やったあ！お風呂だあ！
ゆりは服を脱いで中に入って行った。そして、広いお風呂で十分温まり、脱衣場に行った。そこには、親切にも新しい服と下着がおいてあった。
ゆりはありがたくそれを着た。
なんなんだろう。ここの人って親切なのかな。それとも何か目的があるのだろうか。
外に出たらミラがいて、ミラはゆりを元の部屋に連れて行った。
その日は疲れていたのでゆりはもうベッドで眠った。朝起きると元のアパートに戻っているはず、と思ったが、目覚めてもやっぱり、違う場所だった。
ああ。全くなんなんだ・・・
部屋のほうに行くと、朝食が用意されていて、着替えの服が長椅子の方においてあった。食事の横には大きめの洗面器とタオルが置かれていたので、ゆりはまずそれで顔を洗って服を着替えた。
着替えのたびに、自分の胸が気になる。
もそもそ朝食を食べてぼんやりしていたら、老人が中に入ってきた。その老人は、昨日見た老人と同じだとゆりは気づいた。
ゆりは昨日ほど警戒していなかったが、それでも、何をするのかとじっと見ている。
入ってきたフレイはゆりの側に近づいて、手を出した。「？」
ニコニコ微笑んで右の手のひらを上に向けている。
なんなんだろう。何かほしいのかな。
フレイは右手の上に自分の左手を乗せる仕草をした。それで、ゆりは、自分の手を乗せろといってる事に気づいた。
・・・どういうつもりなのかな・・・
相手は老人だし、そんなに危険そうにも見えなかったので、ゆりはちょんと手を乗せてみた。
ーゆり様、聞こえますか？
頭の中に声が響いて、ゆりはびっくりした。
ー聞こえますか？
ゆりはうなずいた。
ーあなたは熱のせいですっかり記憶をなくしてしまったようです。
ー記憶？
ーそうですよ。あなたはもう随分前にこの世界にやってきて、我らの仲間として生活してきたんですよ。ここで楽しく暮らしていたんですよ。
ゆりは無言だった。
ーちょっと体の様子を見せてくださいね。わしは医者のフレイです。ずっとあなた様の体の様子を診てきたんですよ。
フレイはゆりの額に手をあてたり、脈を測ったりした。
ーお体の方はもう大丈夫みたいですね。
その時、扉がノックされて昨日の紫っぽい髪の女性が入ってきた。
ー彼女はロアンナ。あなたの過去をいろいろ彼女から聞いてくださいね。
フレイは部屋を出て行き、ロアンナがゆりの側に椅子を持ってきて座った。ゆりはぽかんとした顔をしている。
ロアンナはゆりの手をそっと握り締めた。
ー大丈夫ですか？ゆり様。ー私どうしてここにきたの？
ーあなたは我らの王と、運命の出会いをするべくしてこの世界にやってきたのですよ。ロアンナは微笑んで言った。
ー運命の出会い？
なにやら心ときめく響きだった。
ーあなたは6年以上の前にこの世界にやってきて、王と恋に落ちて、そして可愛い赤ちゃんまで産まれたんですよー赤ちゃん？
ーアナスターシャ様といって、それはかわいらしい赤ちゃんですよ。後でつれてきますからね。
ーはあ・・・
あ、そうか。赤ちゃん産んで胸でかくなったんだ。そういう話聞いたことあるし・・
ゆりは納得した。
ー後で王にもお会いしましょうね。ー王って、王様？どんな人？
ーとても素敵な方ですよ。
ーどうやって愛し合ったの？
ー王の一目ぼれですわ。王はこの世界に来たあなたを見られて、一目で恋に落ちて、またあなたも、あまりに美しい王に
心奪われて、互いに恋に落ちたのですわ
ー・・・へえ・・・
ーそして、二人は手を取り合って、愛の階段を駆け上ったわけですわ。本当に、素敵な恋の物語ですわ
ロアンナは、ちょっと妄想気味に言った。
実際本当のことを話すといっても、未来の子供がどうのこうのと話しても混乱するばかりなので、簡単にそういうことにした
のだった。
・・・よくわからないけど・・・本当なのかな。とにかくその王とやらにあってみないと・・・
その時、猫耳の女の子が人形のような赤ちゃんをだっこして部屋にはいってきた。女の子は赤ちゃんで、ゆりを見てなにやら言っている。
ーアナスターシャ様ですよ。あなたが産んだんですよ
「え？」
私が産んだ？
ゆりは赤ん坊を受け取って腕に抱いた。じっと人形のような赤ちゃんを見る。髪は銀色っぽいし、瞳はなんだかきらきらしてる。白い肌で、どうみても、
自分の子供とは思えない。
本当に私が産んだの？
「マーマーチャンポチャンポチャンポ」「？」
「アナスターシャ様！いけません！」
ゆりの姿は消えていた。
「あれ？」ゆりは周りを見渡した。部屋の中ではなく、外にいた。近くにでかい蛇が見えて、ゆりはぎょっと飛びのいた。
なんで突然きたんだろう。
ゆりが不思議そうにしていると、目の前に黒髪のすごくいい男が現れて、ゆりは驚いた。思わずほえーと男を見上げていると男はゆりの頬に触れた。
ー大丈夫ですか？心配しましたよ。ーもしかして・・・あなたが私の夫？
ゆりはそうだったらいいなあと思って聞いた。すると男は微笑んだ。
ー違いますよ。私は、あなたのただの恋人ですよーえ・・・・・
ゆりの顔が引きつった。
恋人？それってどういう意味？ただの恋人ってことは、ただじゃない恋人もいるの？
ゆりはひどく混乱していたのでわけのわからないことを考えてしまった。
夫がいるのになぜ恋人が？？？？
「ミーミー」赤ん坊が男に手を出したので、男が赤ん坊をだっこした。
仲よさげだけど・・・でも、赤ちゃんのお父さんじゃなさそうだよね。だって、黒髪同士でこんな子できないし・・・
その時、もう一人の男がぱっと近くに現れた。紫っぽい髪を首の横にたらした優しい風貌の男だ。フリットだった。フリットは、ゆりとミカエルを見て頬を引きつらせた。
「ミカエル、まだ会うなといっただろう！」
「ここで偶然出会ってしまったんだ」
ミカエルはアナスターシャをあやしながら言った。
フリットは、ゆりの目が、ひどく不思議そうにミカエルを見ているのを見た。
「お前何か変なこと言ったんじゃないだろうな」「なーんにも」
ーゆり様、もしかしてこいつが何か言いました？
フリットはそっとゆりに触れて聞いた。
ーこの人私の恋人だって
フリットの頬がさらに引きつった。
ーすいません。この男は、前にあなたに振られて以来、ちょっとおかしいんです。この男の言うことは、信じないでください
ーえ？振られた？
どう考えても、こんなにいい男を自分が振るってのが信じられない。
ーさあ、王に会いにいきましょうね。
フリットはそのまま瞬間移動した。
ゆりは王の間に連れて行かれたのだが、そこでさらに、不思議な男に出会ったのだった。長いゆるやかにうねる銀色の髪の、とても美しい男が大きな椅子に座っていた。
瞳はきらきら輝いていて、なんだか、この世の者とは思えない顔立ちをしている。
ー・・・神様か何か？
ゆりはフリットに聞いた。
ーあの方が我らの王ラクシュミ様ですよ。あなたの夫ですよ
そういわれてゆりの瞳は凍りついた。どう考えても自分とどうにかなりそうにない。
不思議な男はゆりを手招きしていたが、ゆりはぼんやり突っ立ったままだった。
その時、先ほどの女性が言ったことを思い出していた。
一目で恋に落ちた、というような事を言っていたが、そんな事、絶対にありそうにない。
絶対嘘だ、嘘だ。この人が私の夫なんてありえない！やっぱり騙されてる！何かの罠に違いない。
ゆりは目に涙を一杯ためて、じっとラクシュミを見ていたのだった。