今年も変わらずに年が明けた。なんとアナスターシャは目出度く20歳になった。まだ子供でゆりの肩くらいの背丈
だがすっかりお姉さんらしくなっている。背中の中央までのストレートの銀の髪も金色の瞳もきらきら輝いていて
まぶしいほどだ。
この前産まれたと思ったらもう２０歳だなんて・・・・
ゆりとしては感慨もひとしおだった。
アナスターシャは結界を作るのは苦手らしいが、最近では攻撃系の魔法を習っていてそちらは素質があるらしい。
一方シスはアナスターシャよりも結界を作る力は上で、日に２時間ほどラクシュミの結界を助けたり、攻撃よりも
防御系の魔法を習ったりしている。ラギは相変わらず研究好きで、ゆりも知らない所でいろんなことに手を出して
いるらしい。ロイは相変わらず元気一杯ですぐいなくなっては周りの者を困らせているし、ナナミは文字の練習中
だった。子供達は軽い風邪などは引いたものの大きな病気もせずに皆元気一杯だ。城の中は２０年前とは比べ物に
ならないほどにぎやかで笑顔に満ちていた。
子供は５人になったが、ゆりはもちろんこれで終わらせるつもりはない。まだ見た目も若いし体も自分では若い
つもりだ。こちらでは大人になって２０数年という事になっているのでまだまだ若い内である。
なんといっても蛇の一族は人口が少ない。せっせと子供を作って大記録をぶったてるつもりだ。
「ねえラギ、どう？母さんの気」
ゆりは３の月に入ったある日ラギの部屋に行き聞いた。去年の後半から男達に気をもらいまくっていたのだった。
ある程度気が強くないとどうもラクシュミの子供は孕めないようだ。
「うん。結構いい感じだよ」
とラギが微笑んだ。
「そう。じゃあ今年はばっちりかな。ふふふ」
ゆりは腰に手をあててにんまり笑った。
「お母さんってすごいね。この分でいくと、10人だって夢じゃないね」
一族の出生率の低さを考えると桁外れの出産率だ。ラギとしては自分の母親の身体を研究したいくらいだった。
研究所の方では様々な精力剤やその気になるグッズが開発されている。それも一族の出産率をなんとかあげたい
という涙ぐましい理由からだった。出産の前に男女が興奮しなければ、子供なんてできるわけもない。
「10人でも20人でも産んじゃうよ〜ははは」
「将来は王族がわんさかできそうだねえ。ふふふ」
「じゃあね」とゆりはるんるんで出て行った。今年は赤い月は１０日の夜からだ。
３の月に入ってから今年もゆりの機嫌はすこぶるいい。
楽しみだなあ。次はどっちができるのかな？
６人目は男の子か女の子か。
ラギは妄想しつつも読んでいた本に視線を戻したのだった。
第６部 第１話
もう20回以上もラクシュミと赤い月を過ごしていたゆりだったが、やはりその直前になると落ち着かない。
10日の日、部屋にいても散歩していても落ち着かなかったゆりはハザークの部屋で竪琴を奏でていた。
今日は練習はお休みしたのだが、じっとしていてもさっぱり時間が経たないからだ。
今日は侍女達は部屋にいない。長椅子に寝そべっているハザークと二人きりだった。
「ハザーク様って・・・赤い月の間はどうしてるんです？」
竪琴をひとしきり奏でた後、ゆりは初めてハザークに聞いてみた。
「別にいつもと同じだ」
ハザークは顔色も変えずに答えた。
「そうなの？ハザーク様は性欲が高まったりしないの？」
「若い頃は赤い月にもそれなりに反応したがな、最近では別に」
「はあ・・・」
「若い頃」がハザークにとって何歳までを示すのかゆりには謎だった。
ハザーク様ってすごい時はすごいけどなあ・・・誰でもいいけどむらむらって気にはならないみたい。
「今年も王が元気だといいな」
ハザークはゆりを見ていった。
ハザークもゆりが赤い月をいつも楽しみにしているのにはさすがに気づいているようだ。
ゆりは長椅子の方に移動して寝そべっているハザークの横にちょこんと腰掛けた。
「ねえハザーク様・・・今からいちゃいちゃしちゃう？」
ゆりはちょっと考えて言った。
「・・・今晩から大変なんだろ？いいのか？」
ハザークは意外そうに聞いた。いつもはゆりはラクシュミのことで頭が一杯で直前にハザークとそうなるなんて
ことはないのだ。
「一度くらいならいいかなあ。赤い月は今晩からだし」
ラクシュミのことは最高に愛しているゆりだったが、やはりそれなりにハザークにだって愛情を感じている。
だけど赤い月の間だけはどうしたってハザークに会うわけにはいかない。
「お前がいいというのなら」
ハザークは身体を起こしてゆりに触れて移動した。
ハザーク様は他のみんなと違って私だけみたいだし・・・
まあいいよね。たまには。
ゆりはベッドの上でハザークに抱きついた。そして行為が終わると蛇の目のゆりが現れて「私も」と言って
もう一度ハザークに抱かれたのだった。
その頃ジュノーの屋敷では、ヴィラが大きなため息をついていた。
「どうしたんだ？今年もだめっぽいのか？」
酒を飲みつつジュノーが聞いた。
「今朝起きたら、テーブルの上に一杯精力剤が置いてあった」
ヴィラの言葉にジュノーはげらげら笑い出した。
「あはははは、女達も必死だなあ」
「はあ・・・儀式ではその気になるんだけどなあ。ここんとこ赤い月でなかなか興奮しまくれない」
「まあそういう時期なんだろ。仕方ないじゃないか」
ジュノーは笑って言った。今のところジュノーは精力剤のお世話にならなきゃいけないってことはない。
「はあ・・・なんだか気が重い・・・」
「あんまり考え込むと余計よくないぞ。気楽に気楽に」
「はあ・・・・」
ヴィラは再び大きなため息をついた。
夕闇が迫る頃、戦士達は皆家路に着いていった。これからの10日間はまさに戦いといえるものだろう。人口を増やす
ための戦いだ。この時ばかりは敵も子作りに忙しいので戦士達も子作りに熱中する事ができるのだ。
ジェナサイトはユリウスの屋敷で一緒に夕食を食べていた。
「なあ・・・よかったのか？」
ユリウスがジェナサイトを見つめて聞いた。
「何がだ？」
「他の女を孕ませる努力をしなくてもいいのか？」
ユリウスは妊娠中だ。だから今ジェナサイトがユリウスといても何もならないといいたいのだろう。
「ああ、別に。それよりもお前から目を離す方が何しでかすか怖いからな」
ジェナサイトとしても、次は他の女に子供を！という気にもなれなかった。
「それに俺が他の女とどうこうなるとお前悲しいだろ？」
ジェナサイトがにんまりして聞くと、ユリウスは鼻筋に皺をつくって別にと言った。
「嘘つけ。愛してるくせに」
「ばか！知らん」
ユリウスは横を向いた。
今年も赤い月の間は乙女になるのかなあ・・・
なぜか赤い月の間だけ女らしくなるユリウスだけに、ジェナサイトは今ではそれも楽しみになっていたのだった。
一方ミルキダスの屋敷では、キャシーとジェシカ、子供達が勢揃いしていた。
キャシーのおなかはちょっとだけ膨らんでいた。後一月ほどで産まれそうだ。キャシーがそういう状態なので
ジェシカもその気になりそうもなく、ミルキダスも今年は普通に赤い月を過ごすことになりそうだった。
ミカエル、フリット、イシュタールらは去年と同じように次の子供を作るべく彼女らと過ごし、ハインリヒとシャ
ナーンは初子供誕生を目指して奮闘する事になるだろう。
「お父さーん、がんばれ！」
息子であるヴィンセントの声援を受けながら、夜が更ける頃、ヴィラはヴィンセントを産んだ彼女と寝室に入って
行った。
そしてベッドの上で待つゆりの元にもラクシュミがやってきたのだった。
「王様」
ゆりが体を起こしてベッドから降りてラクシュミに抱きつくと、ラクシュミはゆりの額をぴんと指でこづいた。
「いたっ！」
「こら、お前昼間ハザークといたろう」
ラクシュミに言われてゆりはぎくりとした。そして真っ暗な中、おずおずと見えない顔を見つめた。
「・・・・怒ってる？」
「全く困った女だ。ちとひどい目にあわせてやらなきゃな・・・」
「ひどい目って？」
「嫌ってほど抱きまくってやる。覚悟しておけ」
「王様・・・」
ゆりは甘えるような声を出してラクシュミに抱きついた。
「今から月があけるまでは、他の男に会うんじゃないぞ」
「はい」
こうして２人のゆりにとって激しくも甘い夜は過ぎていった。月があける頃にはゆりはもう足腰も立たないほどに
なっていた。
食事も寝室まで運んでもらうほどだ。
あー今回は激しかったなあ・・・だけど・・・幸せだったな。
ベッドの上で月の間の事を思い出すと、自然と顔がほころんでくるゆりだった。
赤い月が終わった後、ゆりは２日ほど自分のベッドの上で過ごしていた。
するとアナスターシャがナナミをだっこして現れた。
「あらかわいいわね。」
二人はおそろいの水色のワンピースを着ていた。
「おそそいなの」
ナナミがいった。
「おそろいよ。おそろい。ねえ母様赤ちゃんできた？」
アナスターシャがゆりに聞いた。
「赤ちゃん？さあ・・・まだ気が欲しい状態にはならないけどねえ」
「そうなんだ。皆で次は男か女か賭けてるの。できてるといいなあ」
アナスターシャが笑っていった。
「みんなって・・・どのみんな？」
「皆よ。城の中にいるみんな」
「そう・・・」
王様の子供を賭けの対象なんかにしていいのか・・・
とゆりの顔はちょっと引きつっていた。
「赤ちゃんできるのー？」
ナナミが目を真ん丸くして聞いた。
「わかんないよ。」
「できたらナナミもお姉さんになるね。」
「ネーになるの？わーなりたい！マーがんばれ！」
「いや、もうがんばった後なのよね。」
「じゃあ行くねー。」
「うん」
アナスターシャはナナミをだっこしたまま移動した。
子供かあ・・・気がまだ欲しくないってことは、できてないのかな？
今年こそはと思ったんだけどなあ。まあいいか。来年またがんばれば。
その夜、ゆりは普通に眠りについた。
そして次の朝、ゆりの侍女であるミラがゆりの寝室をのぞきにきた。ゆりはまだ眠っていたのだが、
その顔色が尋常ではなかった。ひどく青い顔をしていたのだ。
「！王妃様！ゆり様！」
ミラは顔色を変えてあわててベッドの上のゆりを揺さぶった。
「ゆり様！」
「うーん・・・」
ゆりが目を開けてミラはほっとした。
「どうしたんです？ひどい顔色ですよ？」
「ん？うーん・・・なんだかひどく体がだるいような・・・」
ゆりは身体を起こそうとしたのだが、だるすぎて起きられなかった。
「ちょっと待っていてください」
ミラはあわてて寝室を出て行った。
「んー・・・どうしたんだろう・・・だるいな・・・」
ぐでんとしているとハインリヒが寝室にぱっとやってきた。
「王妃、気が欲しいんですか？」
「気？わかんないけど・・そうなのかな」
ハインリヒはベッドの上でゆりを抱きしめた。
「体温がいつもより低いですよ。顔色もひどく悪いし」
「昨日までは普通だったんだけど・・・」
ハインリヒに引っ付いて気をもらっていると医師のフレイがやってきた。
「王妃、ああ、本当に顔色がひどく悪いですよ」
フレイはハインリヒに引っ付いたままのゆりの額に手を当てた。
「でもハインリヒに引っ付いてたら楽になってきたよ。気が欲しかったのかなあ・・・」
「妊娠したんですか？」
ハインリヒが聞いた。
「そうなのかな？」
ゆりがフレイを見る。
「そうかもしれませんね。まだわからないですが・・・ですが気が欲しいという自覚がないのは困りますよ。」
「知らない内にこうなってたから・・」
しばらく引っ付いていたらゆりの顔色も正常に戻ってきた。
「ああよかった・・・」
ゆりの顔を見たミラは安心したようにいった。
「王妃、今晩から王と一緒に休まれてくださいね」
フレイがゆりにいった。
「でも、王様機嫌悪いんじゃないのかなあ」
「そんなことを言ってる場合ではありませんよ。一人寝は危険です。」
「はーい」
ゆりがハインリヒの顔を見ると、今度はハインリヒのほうが顔色が悪くなっていた。
「ごめん。ちょっともらいすぎた？」
「いいですよ。今日は休みますから。王妃も気をつけるんですよ」
「うん」
ハインリヒはゆりの頭をなでて寝室を出て行った。
その日は念のため安静にしていたものの、体調は普通で気が欲しいというようなことにもならなかった。
まだよくわからないな。子供ができたのかどうか。
フレイに言われたため、ゆりはその夜王の寝室に行った。
「大丈夫か？ゆり」
寝室にやってきたラクシュミは、赤い月の時よりは幾分きつい表情で聞いた。
「うん。今は平気よ」
「そうか」
「ごめんね。今はあんまり一緒に寝たくないでしょ？」
「別にいい。何かあればすぐ言うんだぞ」
「はーい」
ゆりはラクシュミと人一人分くらいの間をあけて眠りについた。
その夜も普通に寝ていたゆりだったが、真夜中になり、ゆりの体がラクシュミの方に移動していった。そして横か
らべったりラクシュミの上に覆いかぶさったのだった。ラクシュミが目を覚まして見ると、ゆりは目を閉じたまま
体の上に乗ってラクシュミの気を奪っているようだった。
「・・・」
やはり子供ができたのか？
気が欲しいという事は子供が欲しているという理由以外にはない。
ゆりはある程度の気を奪うと気を奪うのをやめてそのまま眠りについた。
次の日の朝、目を覚ましたゆりはラクシュミに引っ付いていたので驚いた。
「あ、ごめんなさい。ひっついちゃったみたい」
ゆりはラクシュミの気を奪った事については記憶にないようだった。
だがその晩も、次の晩も同じようにゆりが引っ付いてきて気を奪うので、さすがにラクシュミもまいり、シスと
アナスターシャを真夜中に呼び出してゆりを二人にくっつけることにしたのだった。
「父様、やっぱり赤ちゃんができたの？」
ゆりにひっついたままアナスターシャが聞いた。ゆりは目を閉じたままだ。
「うーん。そうなんだろうな。なぜか今回は夜中に欲しくなるようだ。しかも無意識に・・・」
「昼間気をもらえば夜はいらないんじゃないんですか」
とシスが聞いた。
「さあなあ・・・シス、変わってやれ」
「はい」
アナスターシャの気がかなり減ってきたので今度はシスがゆりに引っ付いた。
「どうしたもんかな・・・」
ラクシュミはあごに指をあてて考え込んだ。
次の朝、食堂でアナスターシャとシスを見たラギは、二人の気が異様に減ってるのでびっくりした。
「どうしたの？二人とも。」
「何々？何が？」
ゆりが聞いた。ちなみにゆりの血色はすこぶるいい。今年から食堂にはナナミとロイも加わっていた。
「二人の気がすごく薄くなってる」
「え？どうして？夜中に何したの？」
ラギの言葉にゆりは驚いて聞いた。アナスターシャとシスは目を合わせた。まさか自分が奪ったとは夢にも思って
ないようだ。
ラクシュミはフレイとも相談して、あることを決めた。
王の間に呼ばれてそれを聞かされたゆりはびっくり仰天した。
「毎晩恋人達と一緒に寝ろ！？それってどういう事？」
「言った通りの意味だ」
とラクシュミはあっさりいった。
「お前は今回は夜中になると気が欲しくなるようだ。といって毎晩私が気をやるわけにもいかない。昨晩は子供達を
呼んだが、お前全く覚えてないだろう？」
「・・・え・・・じゃああの子らの気って私が奪ったの？」
ゆりの顔は引きつっていた。
「ちょうど男達は８人いるから２人ずつでお前と一緒に寝ることにする。それにハザークに私を加えて、順に回して
いこう」
「・・・ハザーク様まで？」
「６日ごとならなんとかなるだろう」
「あのー・・・・それっていつまで？」
「お前が落ち着くまでだ」
「はあ・・・昼間気をもらえば夜は大丈夫じゃないのかなあ」
「大丈夫じゃなかったらどうする？その都度誰かを呼ぶのは面倒だ。最初から一緒に寝させた方がいい」
「うう・・・今晩から？」
「ああ、自分の寝室にいろ。誰か来る」
「はあ・・・」
なんか変な事になってしまった・・・・
何で今回は夜に気が欲しくなっちゃうんだろう？？？
「その前に、これって確実に子供ができたってこと？」
ゆりは一番肝心な所を忘れていた事に気づいた。
「多分な」
「そうなんだ・・・」
無意識に気をもらってるだけに自覚があんまりないけど・・・
でも子供ができたんならよかった。
その夜は豪華な夕食で子供達とお祝いした。
「子供ができたっていうか、まだできかかってる状態なんだろうね。僕もまだわからない」
ラギがゆりを見つめつついった。
「そう。まあまだ小指ほどにもなってないからね。その内分かるようになるよ。きっと」
「私女の子に賭けたんだー。女の子がいいなあ」
アナスターシャがいった。
「僕は男の子に賭けた」
とラギ。
「僕はどっちでもいいけど女の子に賭けたんだー」
とシスまでにこやかに言い出した。
「でも案外、また双子ってこともあるよね。男と女だったりして」
とアナスターシャ。
「皆言いたい放題ね。まあいいけどさ。ロイとナナミはどっちがいいの？」
ゆりは双子に聞いてみた。
「あたしはいもーとが欲しい！」
「僕おとーと！」
「まあどっちかはお楽しみね」
それにしても・・・今晩は誰が来るんだろう・・・
それを考えるとちょっとどきどきしてきたゆりだった。ここの所夜ラクシュミ以外の男と過ごすなんてことはなかっ
たからだ。
夜、寝間着を着てベッドに座っていると、男が二人瞬間移動で部屋に入ってきた。
ミカエルとジュノーだった。
「こんばんは、王妃、妊娠おめでとうございます」
ミカエルはそういってゆりに近づいて頬にちゅっとキスした。
「次の御子様も楽しみですね」
ジュノーも同じようにゆりの頬にちゅっとキスした。
「・・・本当に３人で寝るのお？」
「私としては２人がいいんですけどねえ、王妃が一杯気を欲しがったら困るから２人ずつってことになりました」
ミカエルがいった。
「毎晩刺激的すぎるよ。絶対眠れない」
「まあ慣れますよ。その内に」
ジュノーがいい、ゆりを挟んで男二人が両側に寝転んだ。広いベッドなので３人いても狭い事はないのだが。
「ミカエル変な事しないでね」
「なんで私にだけ言うんです？」
ミカエルがちょっと不服げに聞いた。
「だってえ・・・」
「しょっぱなから変な事はしませんよ。まあその内に・・・ふふ・・・」
なんじゃその笑いは・・・
絶対眠れないと思っていたゆりだったが、なんだかんだいって男達との付き合いも長く、さほど緊張もしないで
その内ぐーと寝てしまった。
そんなゆりにジュノーは内心やっぱりね、と笑ってしまったのだった。
しばらくはゆりもじっと寝ていたのだが、真夜中になるとゆりがもぞもぞと動き出してミカエルの上にぴったり横
から乗っかった。
お・・・・
ミカエルが目を開けてみると、ゆりは目を閉じたままミカエルにひっついていた。
確かに眠ったままやってるようだなあ・・・
しばらくゆりをだっこしていたミカエルだったが、さすがに気が弱くなってきてジュノーに交代した。
「王妃、次はこっちですよー」
ミカエルはゆりの体を移動させてジュノーにくっつけた。
ゆりは眠ったままでジュノーの気を奪い、ひっついたまま朝になったのだった。
頭を優しくなでられる感触で目を覚ましたゆりは、目の前にあるジュノーの顔を見てぎょっとした。
「あれれ？いつの間にこうなったっけ？」
横を見るとミカエルもいた。
「やっぱり１人は無理だなあ。２人ずつじゃないと。残念」
とミカエル。
「え？」
「昨晩王妃は２人の気を奪ったんですよ」
「そうなの？全然覚えてないけどなあ・・・」
ゆりは頭をかいた。
「でも王妃に引っ付かれて朝を迎えるのはいいですね。それじゃそろそろいきますね。王妃」
「うん。どうもありがとう」
２人はゆりの頬にちゅっとキスして去って行った。
うーん・・・やっぱり気が欲しいんだ・・・
今晩は誰がくるんだろう・・・
仕度をして食堂に行くと、子供らの他に珍しくラクシュミもいた。
「ゆり、よく眠れたか？」
ラクシュミにそう聞かれたゆりは、
「あの状態じゃあさすがに緊張して眠れなかったよ」
と言ったのだった。
「嘘だろ。お前の事だからすぐにぐーすか寝たんじゃないのか？」
「そんなことないよう！」
ゆりが真っ赤な顔で反論すると、
「実はもうミカエルから思念で聞いた」
といわれて、ぐうの音も出なかったゆりだった。
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