「かーえーるーのーうーたーがーきーこーえーてーくーるーよー♪」

「かーえーるーのーうーたーがーきーこーえーてーくーるーよー♪」


光り輝く神の世界で、女神ガーベラが火の神の神殿を訪れてみると、神殿の横の方から歌声が聞こえてきた。

「げろげろげろげろぐわっぐわっぐわっ♪」

「げろげろげろげろぐわっぐわっぐわっ♪」

一人の声はサラディンの娘、ルティアナ、もう一人は少年の声だ。そっと横手をのぞいてみると、ルティアナの他に

比較的幼い火の妖精達がいた。同じ歌詞を少しずらし、みんなで歌っている。




まあおもしろい歌ね。ルティアナが考えたのかしら。




ガーベラはそう思いつつ神殿の中に入っていった。



サラディンは神殿の中の広間にいた。

「こんにちは、サラディン」

ガーベラが挨拶すると、サラディンが顔を向けた。

「ああ、ガーベラ」

「外でルティアナがおもしろい歌歌ってたわ。子供ってかわいいわねー。かえるの歌ですって。うふふ」

ガーベラは笑いながら口元に手をあてた。


「何言ってるんだ。来る度に変な歌教えてるのはお前だろ」

サラディンは横目でガーベラを見た。


「え？私？そう言われればそうだったかも」

「全く、湯浴みの度に変な歌教えていくから、ルティアナもすっかり覚えてるじゃないか。横で歌われるものだから

私も覚えてしまったんだぞ。どーしてくれるんだ」

どうやら歌を歌ってるのはゆりの時らしいとガーベラは気づいた。


「ちょっと歌ってみて」

おもしろそうだったのでガーベラはそう言った。

「歌うか！」

「えーちょっとだけ」

「あのな・・・」


「かーえーるーのーうーたーがー♪」

「歌わんと言ってるだろ！」

サラディンは眉間にしわを寄せていた。しかし次の歌詞はすっかり脳裏に浮かんでいる。

「きーこーえーてーくーるーよー♪」

「・・・・」



げろげろげろげろ・・・・くそっ頭から離れん




単純な歌詞だけにすっかり頭の中でリフレインしているサラディンだった。


第２６話



それは遠い昔の物語、とある国に存亡の危機をむかえて悩める王様がいました。

その夜も憂鬱な気分で湯浴みをしていると、なんと一人の少女がどこからともなく浴室に舞い降りて

きたのです。

王様はびっくりして少女を凝視しました。少女の方もとても驚いている様子です。


少女はこの世界の人間とはちょっと外見が違っていました。なんと違う世界からやってきたのです。


この少女は神様からの贈り物に違いない。そう王様は思いました。


行くあてのない少女は城の中で暮らす事になりました。


少女はとても朗らかでかわいらしく、少女の微笑みを見るだけで王様の心も晴れていくようでした。

少女の方も、美しい王様の顔を見るたびに、心がどきどきしています。


どうやら恋をしてしまったみたい。そう少女は思いました。

これが恋というものだろうか。王様もそう思いました。




自分の部屋の長椅子に座り文章を読んでいたゆりは、途中で横にいるミカエルを見た。

ミカエルは長い脚を組み、背もたれの上に肘をのせてにやにやしてゆりを眺めている。


「おもしろいでしょ？王と王妃の出会いを元にした物語なんですよ」

「え、これが？」

「子供の国語の教科書に載せるんですよ。原稿ができたんでもらってきたんです」

「・・・・」

ゆりはまだにやにやしているミカエルの頬をひっぱった。

「なによーその顔」

「いやー本当の事が書かれなくてよかったですね」

ミカエルは満面の笑みを浮かべて言った。

「む・・・」

ゆりは原稿をめくって最後のページを見た。この物語はフィクションではありません、とはどこにもかかれていない。

「元にしたって・・・あってるのは浴室に落ちた所だけかも」

「これを書くにあたっては作者は誰かに話を聞いたらしいんですけどね」

「誰かって・・・もしやシャナーン？」

「たぶんね。それでかなり事実がねじ曲げられてしまったんでしょうね」

「シャナーンは真面目にこうだと思ってるんだから夢を壊さないでよ」

「あいつは王妃眼鏡を持ってますからねー」

「何それ」

「王妃が世界一の美女に見える眼鏡ですよ」

とミカエルが説明した。

「いいじゃない。世界で一人くらいそういう人だっているわよ」

「世界で一番かわいくておもしろい人だとは思ってますよ。」

「フォローしてくれなくてもいいわよーだ。所でこれ王様読んだの？」

「いいえ。見せても苦笑いされるだけですしね」

ミカエルはあっさり言った。

「それじゃ私は行きますね。実は仕事の途中なんで」

「さよならー」

ミカエルはゆりの頬に軽くキスして去って行った。ゆりは紐で閉じられている原稿をぱらぱらめくった。そんなに長い

話ではない。原稿も５枚程度だった。最後の方を読んでみた。



「あなたとなら、どんな困難があっても乗り越えられる気がします。」

少女は王様を見つめて言いました。

「私も同じように考えていた。どうか私と結婚してほしい。」

王様は少女の両手を握りしめて言いました。

「そして私の子供を産んでほしい。」

「はい。喜んで。５人でも１０人でも愛するあなたの子供を産んでみせます。」


少女は澄んだ瞳でこう答えました。


「なんとたのもしい。すぐに結婚しよう！」


王様は感動して少女を抱きしめました。


こうして二人は結ばれました。少女と子供達のおかげで王様の憂いは綺麗に消え去り、

国中が明るくなったのでした。



おしまい




「・・・なんてセリフだ・・・王様苦笑いじゃすまないかもね」

あまりの内容に思わず苦笑したゆりだった。



確かに・・・本当の事書いたんじゃ美しい物語にはならないけどね・・・まあ事実ってのはそんなもんよね・・・



扉がノックされてミラが中に入ってきた。


「王妃様、これシャナーン様からですよ」

ミラはゆりに紐で閉じた冊子を渡した。自分が持っていた物と同じだ。

「あれ、これ、さっきミカエルにもらったよ」

「あら、そうでしたか。王様と王妃様の感動的な物語らしいですね。シャナーン様がみんなに配ってました」

「みんなに？」

「城中のみんなに配ってましたよ。じゃあ、これ私がもらいますね」


「え・・・いやーミラは読まなくてもいいよ。真相を知ってるんだから」


ゆりはミラがとろうとした原稿を上にあげた。

「真相？」

「だってさー」

「見せてくださいよー」

「うーん。まあいいけど」

ミラは原稿を受け取ると一ページ目をめくり、最初の方を読んだ。

「まあ良いのではないでしょうか。これくらい歪曲されてる方が。なにせ国中の子供が読むんですから」

「歪曲・・・・」

「王様と王妃様が愛し合ってる事に変わりはないですからね〜」

「はあ・・・」



国中の人に誤解されちゃってもいいのかな。でも確かに、少女は最初王様に見向きもされませんでした、とか

書かれても嫌だけどさ・・・子供欲しさに結婚しました。とか書かれたらもっとやだし・・・




そのころ、城にある一室では、勉強が終わったアナスターシャ、シス、ラギにシャナーンがこの物語を見せている所

だった。アナスターシャとシスは普通の顔をしていたが、ラギは笑っていた。

「これ読んだら母さんはどれだけ美少女なんだ、ってつっこみたくなるなあ・・・・ははは」

「王妃は美少女じゃないですか」

シャナーンは真顔だった。

「シャナーンは相変わらずだね。」

「出会いはお風呂ってのが変なの。お父様それでよく追い出さなかったなあ」

アナスターシャが疑問に思って言った。

「確かにいきなり風呂場に異性が現れるのはやだよね」

とラギ。

「良いじゃないですか。運命の出会いに場所は関係ないですよ」

シャナーンが言った。

「そうだよ。母様が風呂場に落っこちなかったら僕ら産まれてないんだから」


「落っこちたんじゃなくて舞い降りたんです」

シスの言葉をシャナーンは笑顔で訂正したのだった。



アナスターシャとシスはその後王の間に移動した。これから結界作りの修行なのだ。



「ねえ父様、母様と最初出会ったとき、怪しいって思わなかったの？」

アナスターシャはラクシュミに聞いてみた。

「なんだいきなり」

何かの書類を読んでいたラクシュミは顔をあげた。

「だってさ、普通浴室にいきなり現れるなんて変じゃない」

「ゆりは蛇の飾り物を持っていたからな。それにアヤコを知ってたせいで異世界の人間のことは知ってたし」

「母様がかわいいって思って結婚したの？」

「ん？」

「最初に会った時から好意があったんでしょ？」

アナスターシャもシスもラクシュミに無邪気な瞳を向けていたので、ラクシュミは「まあそうだな」と答えた。

「僕はわかるなー母様って笑ったらすごくかわいいもんね。守ってあげたくなっちゃうな。父様もそう思ったんだよね」

シスはきらきらした瞳で言った。

「まあ・・・そうだな・・・」

「ふーん。父様と母様の組み合わせってなんだか意外って感じだけど・・・」

「余計な話はいいから修行に入れ」

ラクシュミがいい、二人は「はーい」と返事をした。


夕方、ゆりはラクシュミに、「一緒にお風呂に入りましょ」と誘いをかけた。出会いの物語を読んだせいで、ちょっと昔が

懐かしくなったのだ。

休憩所にいたラクシュミは、「いいぞ」とあっさり言った。

「今日は私が髪洗ってあげるからね。あれ、それ」

ゆりはラクシュミが手に持っていた物を見た。物語の原稿だ。

「ああ、シャナーンが持ってきたんだ。きっと懐かしく思うことでしょう、とか言ってたが・・・全く思わなかった。というより

全く別の話になってるじゃないか」

「それでいいの。みんなが読むんだから。本当の事書いたら夢が壊れるじゃない」

「夢が壊れる・・・・ような出会いだったか？」

ラクシュミが首をひねった。

「とにかく後でねー」

ゆりは休憩室を出て行った。


夜が更けて、ゆりは約束通りラクシュミと一緒にお風呂に入った。こうして二人で湯に浸かるのは久しぶりだ。


「王様ってあのころからあんまり変わらないね」

ゆりはしげしげとラクシュミを見つめて言った。

顔立ちもたいして変化はないし、体型もそのままだ。

「おまえは変わったな」

ラクシュミはゆりを見て言った。

「え？あのころより美しくなった？」

ゆりが頬を染めて聞いた。

「あのころより肉付きがよくなったな。腹のあたりが」

「む・・・・それは妊娠中のせいですよ」

「そうか？妊娠前からそうだった気がするが・・・」

「やせてる方が好き？」

「別に。さわり心地が良くていんじゃないか？」

「そう？」

「とミカエルが言ってた」

「・・・・」


ゆりは微妙な目でラクシュミを見つめていた。


「なんだか言葉の端々に愛が感じられないなー。もしかして愛が冷めたとか」

「そんなことはない」

「そうかなーなんだか冷たいなー」

「気のせいだろう。今日は満月だし久々にかわいがってやろうかなーと思ってるくらいだ」

「え？本当？」

ゆりの目がぱっと輝いた。




思えばここから全てが始まったんだな・・・・



ラクシュミはぼんやり天井を見つめた。



「舞い降りた」なんていう優雅なものじゃ全然なかったが・・・・かなりお湯ひっかけられたし。



ラクシュミがゆりを見ると、ゆりはなんと浴槽の端に頭を乗せて上を向いていた。口を開けて寝ているようだ。


「・・・・・」



全く色気もそっけもない・・・・



ラクシュミが呆れて思ったとき、「きゃはは」という子供の笑い声が聞こえてきた。

浴槽の真ん中あたりから、白い塊のようなものが浮いてきた。



きゃはは。きゃはは。



それは赤ん坊のような姿をしていた。水の中をぱしゃぱしゃ泳いでいる。


「おやおや、出てきてしまったのか」


赤ん坊はラクシュミの方に泳いできた。

ラクシュミはその白い赤ん坊を抱き上げた。



きゃは。きゃは。



ぼんやりとしすぎて、まだまだ性別はわからなかった。だが元気に足を動かしている。



ラクシュミは赤ん坊をしばらく眺めてゆりを見た。


「まあ、とにもかくにも、よくここに落っこちてくれたもんだ」

ラクシュミは笑みを浮かべてそう言ったのだった。




真夜中、人々も動物達も寝静まった頃、南の方角にある大きな街の片隅に、ある人影があった。

その人物は辺りをうかがうようにこそこそっと建物の影に移動して、持っていた巾着袋から小瓶を４つ取り出した。

奇妙な事に、コルクでふたをされているのに関わらず、その小瓶の中には小さい火が灯っていた。

「ふふふ、見てろよ。兄貴の敵を取ってやる」

男は唇の端をあげてにやりと笑った。

「さあ、出てこい、火の妖精よ。街を火の海に変えるのだ」

男は一つの瓶のコルクを抜いた。だが、瓶からは何も出てこなかった。

「出ろっていってるだろ。出ろ。出ろってば！」

男はしまいには声を荒げて瓶を激しく振っていた。それでも出なかったので、男は瓶を踏みつけた。するとぼっと

火が灯り、地面の草がめらめらと燃えだしたのだった。


「ふふふ、いいぞ。いいぞ。」

「こら！何してる！」

ちょうどパトロール中だった戦士が人声を聞いて飛んできた。

「はっ！」

男は戦士を見て逃げた。

「待て！」

戦士は仲間に思念をとばしながら自分は建物に燃え移りそうな火の消化をすることにしたのだった。


男は追われつつも街の違う場所に瞬間移動して瓶を割り、そこでも火の塊を出した。道の真ん中に突然ぼっと

大きな炎が燃え上がった。火はあちこちに飛びちっている。


「いいぞ、燃えろ。もっと燃えろー！」

男は酒屋が並んでいる通りにも小瓶を投げつけた。

炎は瞬く間に大きくなり、酒場にいた客達は、「火事だー！」と叫びながら店の外に出た。突然の火に街の人たちも

目を覚ましだした。通りに逃げる人達からは悲鳴も聞こえてくる。



「はっはっは！ざまあみろ！それもう一つ！」

男が最後の瓶を民家に向かって投げつけた。しかしその瓶は誰かにキャッチされた。

「げっ！」

「あ！お前は！」

瓶をキャッチしたのは敵を探していたヴィラだった。敵は小男で、大きな鼻をした老人だった。忘れもしない、あの日蝕

の日に、ひどい目にあわされた男の顔だ。



あの男は死んだはずだ。兄弟か何かか？



ヴィラはそう思いつつ、仲間に思念を送って男を追った。


「こっちもだ！火を消せー！」

戦士達の多くは火の消化と街の人々の避難誘導にあけくれた。眠っていた戦士達も次々と街に集まってきている。



「絶対に捕まるもんか。ふん」

男は街の北にある森の中に身を潜めていた。今日は満月とはいえ、森の中は真っ暗闇だった。街の騒動もここまでは

聞こえてこない。

「せっかく集めた妖精を使っちまったのはもったいなかったがなあ・・・」

魔法の小瓶で火の妖精を捕まえて、火事を起こしたのだった。妖精が起こした火は普通の火よりも消化しにくいという

特性があるのだ。

背の高い草の中をごそごそ移動していると、目の前に突然大きな炎が現れて男はびっくり仰天した。

「なんだ！？」

『やれやれ・・・最近帰ってこない妖精がいると思ったら・・・』

「！？」

炎は一つの姿に変化した。燃えるような長い髪に瞳、その鋭い眼光に男は恐れおののいた。その男こそは、火の神

サラディンであった。


『さてどうするか・・・』


逃げようとした男の身体に火が取り巻いた。




街の方では悲鳴と怒号が飛び交い、大変な騒ぎになっていた。真夜中なのにまるで昼間のような明るさだ。

戦士達も街の人達も必死になって消化していたのだが、火は広がるばかりだ。


炎があがる街にサラディンが現れた。だが人々には見えてはいない。


『手を貸せ！水の精達よ』

火の神の呼びかけに、噴水や井戸から一斉に水があふれ出して街中に降り注いだ。


「わっ！」

「なんだなんだ！？」

「雨だ！」

「井戸の水があがってる！」

サラディンが火の妖精達を引き上げさせ、水が降り注いだ事で火は瞬く間に鎮火した。この不思議な出来事に、

街の人達は驚いたが、とりあえずほっと胸をなでおろしたのだった。



一方、敵を追っていたヴィラは、森の中で「助けてくれー」という悲鳴を聞いた。

「何やってるんだ？」

とヴィラが聞いたのも無理はない。敵の小男は裸のまま木の枝から逆さづりにされていた。足には木の蔓が

巻き付いている。よく見ると、髪は黒こげになって煙りがあがっていた。


「げっ！助けなくていい。通り過ぎろ！」

男はヴィラを見てあわてて言った。逃げようにも蔓ははずれないし身体を揺らす事しかできないようだ。

「そんなわけにいくか。あーこれでこの前の恨みがはらせる」

「いー！！！」

ヴィラはにんまりほほえんだ。



「あー久々にすっきり気分爽快だ！」

男を始末したヴィラは街の火事は消火したとの思念を受けた。



よかった。よかった。だが後始末はかなりかかるだろうな。



街の中に移動したとき、目の前にぱっと炎があがってヴィラはぎょっと後ずさった。

よく見ると炎は人に変わっていた。男はヴィラに手を出している。

「？？？」

男がヴィラのズボンのポケットを指でさした。

「ああ、もしやこれ」

ヴィラは先ほど敵の男が投げた火の小瓶を取り出した。目の前の男はその小瓶を取り、すっと消えてしまった。


「・・・・もしかしてあれが火の神？」


とてつもない威厳と恐怖を感じたヴィラはそう思った。周りを見てもこっちを見て驚いている人はいない。先ほどの炎は

自分にだけ見えたのかもしれない。



あれ？火の神って・・・ガーベラの恋人だったような・・・・王妃ってば神の国に行っちゃ、あんないい男と仲良くしてるの

かなー・・・・



ヴィラはそんなことを思いつつ、火事の後始末に加わった。



ー怪我人は多数いますが死者は出なかったようです。

ラクシュミは寝室でナザニエル将軍から思念で報告を受けた。

ーそうか。よかった・・・

ー放火した敵はヴィラが始末しました。そのほかの報告はまた明日ゆっくりと。

ーわかった。



火はかなり広がったようだが死者がでないのは何よりだった。

ラクシュミは幸せそうに眠るゆりの横で、再び目を閉じたのだった。




神の国では、水の神殿に不似合いな神がやってきていた。

「ラクア、水の精をちょっと借りたぞ」

来ていたのは火の神サラディンだった。

「聞いたよ。優しいんだね。火を消火してあげるなんて」

「火の精が元で起こった火事だからな。じゃあな」

「うん。また来てよ」

「いや、あんまりここには来たくない・・・」

そう言ってサラディンは消えた。さすがに水の神殿は居心地が悪いようだ。



火の神殿に帰ると、ルティアナが近づいてきた。

「お父さんお帰りなさい」

「ああ」

「しっずかっなこっはんのもっりのっかげっから♪」

ルティアナは歌いながら去って行こうとした。

「待て、もしかしてまたガーベラに変な歌教わったのか？」

サラディンがもしやと思い聞いた。

「変な歌？」

「今歌ってたろ？」

「浴室で教えてもらったの。輪唱って楽しいな。　かっこーかっこーかっこかっこ、かっこー♪」

ルティアナは歌いながら広間を出て行った。人間界でご機嫌だったゆりが神の国にきてお風呂に入って

行ったのだった。最近ではルティアナと一緒に歌うのがお気に入りだ。


「・・・・」



どうせならもっと女神らしい歌を教えてやってくれればいいのに・・・・



こうしてサラディンの歌のレパートリーも増えていくのであった。



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