３日続けて雨が降り続いていた。しかもバケツをひっくり返したようなどしゃぶりの雨である。部屋の中にいてもザーという激しい雨音は常に聞こえていた。時々雷の音と共に窓の外がぴかっと光っている。空は黒い雲に覆われていて昼間なのに薄暗い。
「きゃーまただー」アナスターシャは雷が鳴るたびに耳をふさいでいた。これだけ雨音がうるさいと勉強する気にもなれないらしく、今日は朝から
ゆりの部屋にいる。
梅雨にはまだ早かった。ただの雨らしい。
「アナスターシャ、母さん結構竪琴上達したんだよ？聞く？」
ゆりが聞くと、アナスターシャは即座に「いい」といった。上達したといっても、まだ初歩の初歩で、弦3本くらいの曲が
まあまあ間違えずに弾けるようになったくらいのものだ。ちなみにアナスターシャは王の侍女の素晴らしい竪琴を日ごろから
聞いてるのでゆりの竪琴を聞きたくないのも無理はない。
「冷たいわねー」
ゆりが口を尖らせて言った。
「ちょっとお昼寝しようっと。じゃあね」
アナスターシャは逃げるように部屋を出て行った。
まあ、さすがにこのうるさい雨の中じゃあ竪琴って気分にならないなあ。
「ちょっとお城の中でも散歩してくるね」「はい」
ゆりは侍女に言って部屋を出た。
湿気が多いなー
気温もちょっと高めなので肌がべとついていた。お風呂にはいりたいほどでもなかったが、湿気が多いと不快指数があがってくる。ゆりはすれ違う人たちと適当に世間話をしながら城の中をぶらぶらしていた。
第31話
雨が激しいこんな日は、さすがに戦士たちも暇だった。街の人々も家の中にこもっているし、商人達だって、こんな時に違う街に移動もしない。街から街へと移動する馬車も、今日は休業だ。
フリットはちょっと王妃のご機嫌伺いでも、とゆりの部屋に来たのだが、ゆりはいなかった。城の中のどこかにいるだろう、そう思いあちこち探してみた。だが、図書館にも、食堂にも、各階の廊下にも、ゆりの姿はなかった。
どこかな？もしかしたらハザーク様のところだろうか。
最近たまにハザークの塔をゆりが訪れているというのは知っていたので、そうかもしれないとフリットは思った。集中して気を探ればゆりの気を探れない事もないのだが、そこまでして会う用事もなかった。
それにしてもよく振る雨だ・・・
フリットは城の裏側の出入り口の扉を開けて空を眺めた。表の入り口には兵士が立っているが、ここにはだれもいない。扉も小さい一枚扉だ。扉は少しだけ開けられていて、扉留めが置かれていた。雨でも扉が開けっ放しているのは、蛇が自由に出入り
するためである。建物の外側を見ると、城の影になりそうな所に蛇が集まっていた。
フリットは庭の方を見てん？と目を凝らした。庭園への道に誰かが立っているのが見えたからだった。
黒髪、え？まさか・・・
その人物は黒髪で女のようだった。フリットは驚いてその人物の前に移動した。すると、やはりゆりだった。ザーザーぶりの中、体中びしょぬれである。
「どうしたんですか？何してるんです？！」
フリットはゆりを見て聞いた。ゆりはフリットを見上げて、ん？と首をかしげた。フリットは全く水に濡れていない。
雨の日は、戦士たちは傘など持たない。体にシールドをはって雨をよけているのだ。フリットの髪も、体も、全く濡れていなかった。
風邪を引いたら大変とフリットはゆりに触れて移動した。部屋に現れたびしょぬれのゆりを見て、ミラが「ぎゃあ」と悲鳴をあげた。「どうなさったんです！それ！」
ミラはあわてて白いタンスの中からタオルを引っ張り出した。
「さあ・・・わからない・・・」
ゆりはどうもぼんやりしていた。フリットも首をかしげる。ゆりの服はすっかりずぶぬれで、肌にへばりついていた。
「着替えませんと！」
「私はこれで」
どうもよくわからなかったが、フリットはここにいるわけにもいかなかったので部屋から出て行こうとした。すると、ゆりが
フリットの腕の服を引っ張った。
「？」
「王妃？」
ゆりはじっとフリットを見上げていた。
どうも様子がおかしい。
フリットもミラも感じていた。「私にいてほしいんですか？」
フリットが聞くとゆりがうなずいた。フリットはミラに目配せした。ミラはフリットにタオルを渡して出て行った。
「とりあえず、服を脱ぎませんと、風邪引きますよ」
フリットはゆりの顔をタオルでふいて、タオルで髪をなでた。ゆりはべたっとフリットに抱きついた。
どうも儀式の前兆のようだとフリットは感じた。
濡れた服は部屋に脱ぎ捨てて、ゆりはベッドの上でフリットにくっついていた。フリットはゆりの体をタオルで拭いていたが、ゆりはかまわずにフリットに抱きついて熱い口付けをしていた。
これはかなり役得だな・・・・
普段のゆりとはなかなかこうなることはないので、フリットはもうちょっといいか、とまだ誰も呼んでいなかった。
ゆりの手は大胆にもフリットの服まで脱がしている。「一杯かわいがってほしいな」
「いいですよ」
フリットは微笑んでゆりの額にキスした。
他の５人が来た時には、二人はなんだか情事の後のようなけだるい雰囲気になっていた。「・・・お前、かなり時間がたってから呼んだだろ」
ミカエルがむっとした顔で言った。
「まあ、いいじゃないか。たまには」
とフリット。他のメンバーは、そんな事で文句を言う性格でもなかったので黙っていた。ちなみに、みんなざっと体を洗ってきたので
呼ばれてからそれなりに時間はたっている。
「王妃、もうフリットはいいでしょ？私と引っ付きましょう」
ミカエルが言った。ゆりはまだフリットにべったりひっついていた。
「私、髪が長くてきれいな男好き」
ゆりが言った。といっても、ゆりの中にはすでに誰か入っていたので、その誰かが言ったようだった。
「髪が短くてきれいな男は好きじゃないんですか？」
ジュノーが聞いた。ゆりがジュノーに顔をむけた。
「うーん。そっちもいいかも」
ゆりはフリットからはなれてジュノーの手を引っ張った。
「王妃、愛してますよ」
ジュノーはゆりの体を抱きしめた。その後も、ゆりは他の男達とも肌を寄せ合った。だが、それほど大興奮している様子もなかった。
それなりに楽しんでいる様子ではあったが。
「王妃、どうしたんですか？今日はなかなかすごくならないですね」ミカエルはゆりをひざの上に乗せていた。ゆりの気はピンクになっていたが、普段のような感じで、儀式のような淫気もまだ
漂ってはいなかった。
「んーお外でやりたいなー」
ゆりがぎょっとするような事を言い出した。
「それはさすがに無理ですよ」
ミカエルが言う。
「お水の中がいいなー」
「水？」
「もしかして、あなた水蛇ですか？」
フリットが聞いた。
「ん・・・そーだから水の中がいいの」
だから雨の中外にいたのか・・・フリットは納得した。
「ならお風呂でしますか？お水ありますよ」ヴィラが言った。
「いいかも」
とゆり。
「え？風呂？」
イシュタールがぎょっとしている。
「楽しそうですねー」ジュノーが喜んで言った。
「それはちょっと・・・」イシュタールはしり込みしていた。
「いこうよ。イシュタールも。ミルキダスもくるよねー」
ゆりが言うと、ミルキダスは真っ赤な顔ではいと言った。
浴室に行くと、気を利かせてすでに浴槽の中に湯が入っていた。ゆり用に熱くされていたので、ヴィラは水を入れてぬるくすることにした。
ゆりは浴槽の外の白い石の上で、フリットのひざの上にのってフリットにキスしている。
「こちらはかなりフリット殿がお気に入りなんですね」ジュノーがその様子を見て言った。一人ミカエルだけは面白くなさそうな顔をしている。
しばらくして、浴槽のお湯がだいぶぬるくなった。「王妃、いいですよ」
ヴィラが言うと、ゆりはフリットから離れてお湯の中にざぶんと入った。体も、顔までもゆりはお湯の中につけた。そして
顔を出した。
「みんなおいでよ」
お風呂は結構広いので、男６人にゆりが入ってもそうぎゅうぎゅうになることもなさそうだった。ジュノーが裸になって
中に入ると、ゆりは座ったままジュノーに抱きついた。そのまま体重をかけてお湯の中にジュノーごと倒れこんだ。
しばらくして、苦しくなったジュノーが体を起こした。ぜいぜい言っている。
「ふふふ」
ゆりは楽しそうに笑った。
「性格的には、かわいいですねえ」浴槽の外でゆりを眺めていたヴィラが言った。
「・・・そうだな」
イシュタールがそれに答えた。
「やっぱり巫女の性格に似たような女蛇が降りてくるのかな？今までも結構かわいかったし・・・王妃とあまり違和感がないなあ」
「そ、そうか？」
「まあ、半分は王妃だから全く性格の違う蛇は降りてきてもうまくいかないかも・・・」
ヴィラが考えてる間に、ミルキダスはゆりに引っ張られて湯の中にいれられていた。
「王妃、私も遊んでください」ミカエルがゆりに引っ付いて言った。
「いいよ」
ゆりはミカエルの体ごと湯の中に沈んだ。
「うわっ！」
しばらくそのままゆりはじっとしていたので、ミカエルは苦しそうに目を見開いていた。口から水泡がぶくぶく出ている。
「うはっ！」
ミカエルはもうだめだという所でゆりの体ごと顔を出した。
「ひどいなあ。王妃」
ミカエルの黒髪はびっしょり濡れていた。
「ふふ。いい男」
ゆりはちゅっとミカエルにキスした。
「王妃・・・かわいい」
ミカエルはゆりに激しく口付けた。ゆりの肌をまさぐっているとゆりもミカエルの胸に手を伸ばした。
「フリットも来て」
「はい」
「私も入ろうっと」
ヴィラもズボンを脱いでお風呂の中に入った。
やがて、ゆりの気持ちも盛り上がってきて、激しい愛撫へと移行した。ようやくゆりの体から淫気があふれて、男たちは変化してゆりの肌に触れて、ゆりも男達の体をまさぐり、口での愛撫も繰り返した。
一人イシュタールだけがどうにも入りきれなかったので、浴槽の外の石の上にズボンをはいたまま座っていた。今回のお気に入りはイシュタールではなかったので、ゆりは気に留めていないようだ。
はたから見ているだけでも、ゆりと変化している男たちの姿はかなり官能的で、イシュタールは自分が今まで参加していたのが
信じられないほどだった。だが、はたから見ていて感じることがあった。それは、それぞれの男達が、皆ゆりを愛しく思っている
ということだった。
欲望だけの行為とは思えなかった。腹の赤子のために蛇霊神を降ろすためでもなく、女蛇の機嫌を取るためでもなく、
ただ、愛しいからそうしていたのだ。
変化した瞳は、皆愛しそうにゆりを見ていた。
男達の気持ちを感じて、イシュタールはちょっとうれしく思った。
やがて、興奮が頂点に達した時、ゆりは不思議な呪文をはいて半透明な蛇が現れた。青っぽい大きい蛇だった。
イシュタールはその蛇霊神にも驚いたが、浴槽の中のお湯を見ておっと身を乗り出した。水面に、きらきらと銀の蛇のような模様が見えたからだった。
おお・・・きれいだ・・・・
それは、ゆりの中に入っていた女蛇の姿かもしれない。そうイシュタールは思った。
ゆりは青っぽい蛇霊神と会話するように不思議な言葉を吐いていた。青っぽい蛇は、ゆりと男達の周りをぐるぐる回っている。少しずつ、ゆりの淫気が消えていき、それが完全に消えた時、蛇はゆりの中へと入ったのだった。
ゆりはがくりと意識をなくした。ゆりの後ろにいたミルキダスがゆりの体を支えて、浴槽の外に出した。
男達の変化も元に戻った。
「今回は一匹でしたね」ジュノーが言った。
「だけど・・・今までのよりきれいだった」
ヴィラが言った。ミカエルはぼんやりしているイシュタールを見た。
「なんだ、ずっとそこいたのか」
「ああ・・・」
「見学した感想はどうですか？」
ジュノーが聞いた。
「すごかった」
「率直な感想をどうも」
ジュノーがあきれたように言った。ミルキダスとフリットは、ゆりの体をきれいに洗って、タオルで拭いていた。
儀式が終わったのは夕方ごろで、ゆりはそのまま王の寝室へと運ばれて、そこで眠った。
ラクシュミはその夜、ハザークの塔を訪れて、酒を飲んでいた。「今日儀式があっただろう」
ハザークの方から切り出した。
「どうして知ってるんだ？」
ラクシュミが聞いた。
「蛇霊神が来る気配を感じた。ちょっといいのがやってきたな」
「やはりそうなのか？今回は一匹だけだったようだが。女の水蛇が降りたらしいぞ」
「そうか・・・それは面白いな・・・たいしたもんだ。お前の王妃は、すでにいい巫女だな」
ハザークは感心するように言って、酒を飲んだ。
「・・お前・・・月に一度ゆりの竪琴を聞くことにしたそうじゃないか。かなり未来の息子の言葉を気にしてるんだろ」
ラクシュミは話題を変えた。
「いや、それは違うな」
ハザークはあっさり言った。
「違わないだろ。私はどんなに暇でも、ゆりの竪琴だけは聞きたくないぞ。もうすっかりその気になってるんじゃないのか？」
ラクシュミが横目でハザークを見た。
「いいや」
「本当か？」
その気になったといわれても、ラクシュミとしてもどういっていいやら困ったが、一応ハザークの気持ちを知っておきたかった。
「・・・大昔、竪琴のへったくそな女がいた。それを思い出してびっくりした。それだけだ」「お前の言う大昔とは、一体何千年前だ？」
「さあな・・・かなり昔だ。我はまだ子供だったからな」
「すると・・・一万年前くらいか？」
「あの女も簡単な曲を、間違えながら必死の形相で弾いていた。それを思い出した。そんなに昔の事を、思い出すことはそうないの
だが・・・少し懐かしかったな・・・」
「そうなのか。それはよかったな。」
ハザークは、うつむきがちに、少し目を細めていた。
「その女は、お前のなんだったんだ？」「さあな・・・」
「大事な女だったんだろ？そうでなければ、覚えているはずはない」
「我の血族だ」
「血族？なら女蛇なのか？」
「さあな・・・それ以上は教えない」
ハザークは、それ以上、ラクシュミが聞いても答えようとはしなかった。だが、別のことを言い出した。
「我はお前の王妃にはたいしてその気はないが、お前が是非にと言うのなら、そうなってもいいぞ」
「言うわけないだろう。そんなこと」
ラクシュミがあきれたように言うと、珍しくもハザークは笑っていた。
ラクシュミは驚いた。ハザークの笑った顔を、今まで見た記憶がなかったからだ。
もしかして・・・冗談を言ったのか？ハザークも冗談を言うのだな・・・
ラクシュミは妙な事に感心して、しばらくハザークと酒を飲んだのだった。
次の日ゆりが目覚めた時には、雨は上がっていた。その日から、お風呂にはいるたびにちょっと微妙な気分になったゆりだったが、まあもうしょうがないと割り切っていた。
だが、その数日後、再びしとしとと雨が降り出した日、ゆりは竪琴の練習をしていたのだが、なんだか体がもやもやするのを感じた。その日は朝からそうだった。
うーん。まさかまた儀式じゃないだろうし・・・なんだかうずうずするなあ・・・
こうなったら・・・ミカエル呼んじゃおうかな・・・
そう思っていたらヴィラがたずねてきた。
「おや、まだ弾いてたんですか。竪琴」ヴィラが机の上にある竪琴を見て言った。
「弾いてるよ。ずっと。最近はだいぶ上達したんだから」
「だいぶですか」
「うん・・・」
ヴィラはゆりの側にやってきて、にこりと笑った。
「なんかちょっとその気になってます？」
「え？その気ってどんな気？」
ゆりがどぎまぎして聞いた。
「ちょっと、ビンク色が・・・」
「え・・」
「雨降ってるから、この前のこと思い出したんでしょう」
「え？別に・・」
ゆりの顔は真っ赤になった。
「私も実は思い出してきたんですよ。一緒にあっち行きましょう」
「え・・・」
という間に連れて行かれた。
「・・・」「いらっしゃい。王妃」
ヴィラは後ろからゆりを抱きしめた。
「なんかさー朝から今日変なの。ちょっと体がその気で・・・」
ゆりはこの際白状した。相手がヴィラなら、ゆりもかなり気楽にこういう話をしている。
「この前の儀式の後遺症ですかね」
「えー」
「そうでなかったら、ただの欲求不満ですよ」
「う・・・」
それもやだ・・・・
「まあいいじゃないですか。」とか言いながら、ヴィラは自分の服を脱いでいた。
「・・・・私、そのうち二人の子持ちになるのに、こんなんでいいのかな」
「いいんですよ」
ヴィラは微笑んで言った。
「なんならジュノーも呼びましょうか、ちょうど休みなんです」
「えー！」
「えーって、ジュノーだってあなたの恋人じゃないですか。」
「いや、そうだけど・・・でもさ、３人は・・・」
あれだけ儀式でひっついておいて恋人じゃないというのも変なので、そこは素直に認めたゆりだった。
「儀式の時は７人じゃないですか」
「いや、それはそうだけど・・・」
とゆりが言っていたら、目の前にジュノーが現れて、ゆりはぎゃあと飛びのいた。
「王妃、うれしいですよ。誘っていただけるなんて」
ジュノーは心底うれしそうににこにこしていた。
「は、はやかったね。ジュノー」
誘ったのはゆりではなかったが、勝手にそういう話になっている。「ちょうど城の中の図書室にいたんですよ。だから」
ジュノーは近づいてぎゅっとゆりを抱きしめた。
「私、この前のこと思い出してたんです」
「二人に可愛がられたら、欲求不満もなくなりますよ。きっと」
ヴィラが言った。
「欲求不満なんですか？かわいそうに。一杯かわいがってあげますね」
ジュノーがゆりを抱きしめたまま言った。
「いや・・・別に欲求不満では・・・」
ゆりはぼそりと言ったが二人はゆりの言葉は全く無視してさっさとゆりの体をベッドに運んでいた。
「好きですよ。王妃」ジュノーに優しくキスされているうちに、ゆりはまあ、もういいか、という気になってしまった。
ああ・・・もしかして・・・やっぱり欲求不満だったのかも・・・かなり情けない・・・
「罪悪感を感じなくてもいいんですよ。そのために恋人が一杯いるんだから」ヴィラがゆりの髪をなでていった。
恋人一杯って・・・・そういえば、シスにはトー一杯って思われてるし・・・
「次は私と口付けしてください。王妃」ヴィラが耳元でささやくように言った。
ジュノーが唇を離した。ゆりはヴィラと口付けた。
二人とキスしているだけで、ゆりはその気になってしまい、そのまま裸にされてしまった。体中をなでられて、キスされているだけで、ゆりは感じてしまっている。
「かわいいですよ。王妃」
「恥ずかしい・・・王様にばれたら、軽蔑される・・・」
ゆりが涙目で言った。
「されないですよ。かわいいあなたを軽蔑するわけないじゃないですか」
ヴィラが言った。
「そうですよ。みんなあなたを愛しく思ってますよ」
ジュノーはゆりの髪を優しくなでた。
３人は夕方までそこから出てこなかった。途中ゆりの左目が黄色と黒に変わり、またしばらく３人でひっついていたからだ。
この日は欲求不満ですませたゆりだったが、その後も雨が降るたびに体がちょっとその気になり、12の月に梅雨がきたら一体どうなるんだ、とかなり不安に思ったのだった。
ゆりはフレイに「性欲が減退する薬ってない？」と真面目に聞いてみたのだが、フレイにはあっさり「そういうものはないです」
と言われてしまったのだった。
おしまい
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