第17話
外は３日続けて雨が降っていた。どうやら梅雨に入ったらしいとゆりに侍女が告げた。
この世界にきて、もうすでに２年が経過している。
体の成長はかなり遅くなっているようだ、とゆりは感じた。こっちの世界にきて、爪を切ったのも数回だし、
髪も、5回ほどしか切ってない。アヤコも20年以上たってもたいして変わっていないようだといっていた。
どうやら随分長生きできそうである。
ゆりは運動がてら城の中を歩いていて、ミカエルに出くわした。
「こんにちは。ミカエル」
「こんにちは。王妃」
ミカエルはいつもと比べると、かなりそっけなく通り過ぎていった。
「？」
変なの。何かあったのかな？
その日の夕方、ゆりの瞳は変わっていて、隠し部屋の方でジュノーと過ごしていた。
「梅雨ってつまんないねー」
ゆりがジュノーの胸にもたれたまま言った。ゆりは裸だが、ジュノーは上半身だけ裸である。
「水がないと困りますから、梅雨は大事なんですよ」
ジュノーが優しく言った。
「そりゃそうだろうけどね」
ゆりはゆっくりとジュノーから気をもらっている。最近はこちらのゆりが男から気をもらっているので、普段のゆりは
別に気を欲してもいなかった。
「儀式のことが、かなり外にもれてるみたいです」
ジュノーが言った。
「へーそうなの」
「母親によくやった、とか言われて困りましたよ。ヴィラもそうみたいです」
「へー」
ゆりはおかしそうに笑った。
「じゃあ巷では、王妃はジュノーとヴィラとしちゃったことになってるんだ」
「一般的には儀式がどういうものか知らされてはいないんですが、将軍たちは前王妃の時参加したらしいですから、
そう思ってるでしょうね」
「ジュノーはどう思ったの？儀式、またやりたい？」
「やりたいですよ。それは」
「ふふ・・・あれはちょっと反則だもんねー。まさかあれで儀式になっちゃうなんて私も驚いちゃった」
「あなたは、あちらの時の記憶は全部あるんですか？」
「あるよ。こうなった方が都合がいいから分かれてるの。たとえば、向こうがやりにくいことは私がしたりね。
たとえば今してるようなこと。男の肌って安心するの。私も、赤ちゃんも」
「そうですか」
欲しいのは誰かのぬくもりなのか、それとも想いなのか。
それは自分でも分からない。だけど誰かに寄り添っていると安心する。
一人じゃないって思えるからかもしれない。
ゆりがはっと目覚めた時、ゆりは長椅子でクッションを枕に横になっていた。
身体を起こすと侍女が言った。
「お茶でもお持ちいたしましょうか？」
「なんだかおなかすいちゃった」
「何がよいですか？」
「果物」
「はい」
侍女が部屋を出ようとした時、ちょうど扉がノックされて、開くと外にフリットがいた。フリットはバスケットをもっていて、
中に赤いぶどうがいっぱい入っていた。
「これ、どうぞ」
フリットが部屋にいるゆりにバスケットを見せた。
「わーちょうどいいね。これ食べるから。もういいよ」侍女は笑って部屋を出て行った。
「ちょうど果物食べたかったの」
「そうですか」
ゆりは座ってぶどうを食べた。すると蛇のルーがにょろっとよってきたので、ゆりはテーブルに乗せてぶどうもやった。
ルーは普通に食べている。フリットはテーブルを挟んで向かい側に座っている。
「最近食欲が出てきてね。よく食べるの。アヤコさんほどじゃないけど」「そうですか」
フリットは微笑んでいたが、何かいいたそうだった。
「どうしたの？」
「・・・いえ」
「？」
ゆりは首をかしげた。
フリットは一応儀式のことを、ラクシュミに聞いていた。普段の王妃がやったと言ったのだ。
「そういえば、ミカエル、この前会った時、えらい暗かったよ。何かあったの？」
「王妃に嫌われてしょげてるみたいですよ」
「私？嫌ってないよ。」
「そうですか？気ももらってくれないといってましたが」
「だって・・・ミカエルとひっつくの恥ずかしいもん。あんまり顔が良すぎて」
「はあ・・」
「フリットやジュノーも顔いいけど、ミカエルと一緒にいると、知らない内に王様を裏切りそうで怖い」
フリットは苦笑している。
「そういえば、最近ロアンナさんもさえない顔してるね。どうかしたの？」
ロアンナは時々ゆりのご機嫌伺いに訪れてくれるのだった。
「いえ、ほっといたらいいです。あの人は」
「優しくてきれいなお母さんだね」
「・・・儀式のこと、聞いてもいいですか？」
聞かないでおこうかと思ったフリットだったが、ついに聞いてしまった。
「儀式？」
ゆりの頬がちょっと赤くなった。
「ミカエルや私も、実は参加したかったんです」
「なんで？」
「なんでって・・・王妃のことが好きだから」
ゆりはきょとんとした顔をした。
その時、胸がなにやらどきどきしてくるのを感じた。
げ・・・・
ゆりの顔がますます赤くなってきた。
しばらくおさまっていたのに！なんか変な気分になってる！
フリットに触りたい。
「王妃？大丈夫ですか？体中真っ赤ですよ？」
フリットはちょっとびっくりして言った。
「うう・・・・うーん・・・」「王妃？フレイ様を呼びましょうか？」
「また蛇くるかも」
「は？」
「わかんないけど・・・」
「儀式ですか？」
儀式・・・・
その言葉がゆりの中でリフレインしていた。
またするの？あれを？
フリットに引っ付きたい。いやでも・・・・やっぱりひっつきたい・・・・
でもなあ・・・・
引っ付きたいという思いとそうではない思いが交互に起こっていた。
ゆりはずっとフリットを凝視している。
「王妃？」
「・・・フリット本当に私のこと好き？」「はい。好きです」
「じゃあ、７の時くらいにここ来て」
「はい・・・本当に儀式なんですか？」
「わかんないけど、そうかもよ。・・・ミカエルどうしよう」
「誘えば喜びますよ。」
「何期待してるかしらないけど、あんなの楽しくないよ。」
「それでもいいです」
「んじゃ連れて来て。でも本当に辛いだけだよ？」
「はい。王には言っておきますね」
「うん」
フリットは出て行った。
蛇霊神かあ・・・・いっぱいいれたらいいことあるのかな。
それならいっぱいいれてあげたいな。
蛇は食べられなかったから。
かなり複雑だけど・・・蛇食べるよりはましだもんね。
ジュノーとヴィラの次はミカエルとフリットかあ・・・
なんだか自己嫌悪に陥ってるんですけど・・・
その夜部屋で待っていたら、フリットとミカエルがやってきた。
部屋の中は淡いあかりだけつけていた。
「王妃・・・」
ミカエルはゆりに近づいてゆりをぎゅっと抱きしめた。
「嫌われてるかと思ってました」
「嫌ってないよ」
「うれしいですよ。王妃」
「・・・ミカエルも何期待してるかしらないけど、全然楽しくないよ。こんなの」
「どうしてです？」
「男にとっては辛いだけだと思うけどなあ・・・」
「あなたが抱けるんじゃないんですか？」
「抱けないよ」
ゆりはあっさり言った。
「そうなんですか。まあいいですよ。どうでも」
ミカエルは声がかかったのがよほどうれしかったようだ。
「そう。」
ミカエルはゆりを抱きしめて口付けた。
ミカエルに熱烈にキスされていると、ゆりはぼんやりしてきた。
やっぱりミカエルって刺激的だなあ・・・
近くで顔見るだけで、うっとりしてしまう・・・
ミカエルはゆりの首筋に顔をうずめて首をなめた。
「好きですよ。王妃」
手はゆりの服を脱がしている。
「ミカエル・・・」
肌に触れられて、ミカエルの息遣いを感じているうちに、ゆりは理性とさよならしていた。
キスされながら、下半身の中には指を入れられている。
「ん・・・」
ミカエルは何度も何度もキスを繰り返した。
「どうされたいです？王妃」
「もういい」
「え？気に入らないんです？」
「ううん。今度は私がしてあげる」
「え？」
「全部脱いで」
「・・・」
ミカエルが全部服を脱ぐと、ゆりはミカエルを寝転ばせて、ミカエルの肌に触れた。そして体をうずめて、ミカエルの下半身に触れた。
「王妃・・・抱けないんじゃないんですか？」
「抱けないよ。だから私の口でいってね」
そういったゆりの顔は、すでにどこか違っていた。
ゆりはミカエルの体をなめまわした。するとすぐにミカエルの体は興奮状態になってきた。
「お・・・王妃・・・・」
「私の体に注いでね。いっぱい」
ゆりは躊躇なく口で奉仕を続けた。
「はあ・・・ああ・・・」
「気持ちいい？ミカエル」
「いい・・・」
王妃が自分にこんな事をしている、そう思うだけでミカエルはたまらなく興奮していた。
「んく・・・」
やがて、ミカエルの体からどくりと液体がでてきた。ゆりはそれを自分のおなかにかけさせた。
「お待たせフリット」
ゆりはフリットを見た。フリットはゆりの体から、淫気がのぼっているのをみた。
なんともいいにおいで、フリットは引き寄せられるように体を寄せた。
やがて、部屋の中には三人の妖しい気で満ちていった。ゆりは二人の男に愛撫されて、よりいっそう強い淫気を放っている。
フリットもミカエルも変化し、ミカエルの肌には二匹目の蛇が浮き出ていた。二人とも、相手が王妃という事すら忘れている。
「王妃・・・ああ・・」
「王妃・・」
「まだ口でしてほしい？ミカエル」
「して欲しいです」
「私の事、愛してね。口で言うだけじゃなくて、本当に愛してくれなくちゃいや」
「愛してますよ。王妃・・・」
「じゃあそこに立って。動いてもいいよ。ミカエル」
ミカエルはゆりの前に立ち、ゆりはそそりたった男の身体を口に含んだ。
ミカエルが軽く腰を前後に動かす。「はあ・・ああ・・」
ゆりの発する淫気は、男たちの興奮をさらに増している。フリットはゆりの後ろから背中に口付けてゆりの両方の胸に触れていた。
やがてミカエルが達して、再びゆりの肌へと注がれた。ゆりの肌は男達の精液でぬめぬめしている。
「王妃・・・私も・・・」
フリットが甘えるようにゆりの耳元で言った。
「いいよ。フリットも私を愛してね」
「はい、王妃」
やがて、三人の興奮が絶頂へと高まり、ゆりはまた再び不思議な呪文のようなものを吐いた。
やがて部屋の中に二匹の蛇がぬっと現れて、しばらくゆりの周りを回った。蛇は時々体を回転させるようにしている。
「・・・doireiutallal」
二匹の蛇はゆりの体の中に吸い込まれた。ゆりは目を閉じてそのまま体を横にした。
フリットもミカエルも元の姿に戻ったが、かなりげっそりしている。
「・・・すごい体験をしてしまった・・・」
ミカエルが言った。
「・・・そうだな・・・なんだか、激しい夢を見た気がする」
「確かに抱いてないが・・・抱くよりすごかった気がするけどな・・・」
ミカエルはゆりを抱き上げて、浴室へと運んだ。そして、優しくゆりの肌を洗った。
普段のゆりからは考えられないほど淫らだった。
だが嫌悪感はない。王妃という立場にありながら自分達を興奮させようと必死になっていたゆりを可愛く思っていた。変化して何度も達したせいで、赤い月を共に過ごしたような気にさえなっている。
ただ、この身体が愛しい。
赤い月でさえ、あんなに女に夢中になったことがあっただろうか。
ミカエルはゆりの体を軽く抱きしめて頬に口付けた。「愛してますよ。王妃」
そして耳元でささやいたのだった。
次の朝、またゆりの髪は伸びまくっていた。
ゆりは目を開いてラクシュミを見た。
「なんだかきれいな景色の夢みたの。森も、湖も、きれいに光ってて、きれいな蛇いっぱいいた」
「蛇霊神は古の蛇の霊だというからな。その記憶かもしれないな」
「・・・」
ゆりはぼんやりしている。
「大丈夫か？無理に儀式やらなくていいんだぞ？」
「王様とやれればいいのにね。でも無理だね。あんなには」
「・・・」
「早く次の交わりの月がくればいいな。あの時の王様に会いたいな」
「そんなにあの時の私が気に入ったのか？」
「うん！」
普通、一族の女は妊娠したら交わりの月を過ごすことはないのだが・・・
だが、それを言ったら泣くかもしれないから黙っていよう。
ラクシュミはそう心に誓った。
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