第22話

交わりの月から2ヶ月ほど経過したある朝、ゆりが庭園を散歩して部屋に戻ってみると、一族の女性、キャシーとジェシカが

待っていた。

「おはようございます。王妃様」

二人はゆりの顔を見ると、同時に言った。

「おはよう。二人とも」

二人はそっくりな顔をしているので、ゆりはどちらがどちらかわからなかった。

「今日は王妃様に報告があってきました」

「報告？」

ゆりは二人と一緒にテーブルの周りのいすに座った。

二人はにこにこしてとてもうれしそうだ。

「実は私たち・・・赤ちゃんができたんですー！！」

「えーおめでとう！！！」

ゆりはびっくりして言った。

「これも全て王妃様のおかげです」

「ありがとうございます」

「え？私何にもしてないよ。二人ががんばったからだよ。それで相手はだれなの？」

「ミルキダス様です」

「どっちの相手が？」

「私たち両方です！」

「えーってことは、ミルキダス両方妊娠させたの？すごいね」

ゆりは感心して言った。一族の出産率はすごく低いというのを聞いていたので、一気に二人妊娠させるとはすごいことだ。

さすがにゆりもこちらの価値観をわかってきたので、二人も相手するなんて不潔！とは思ってない。

この国では力がある男性は数人の女性と交わりの月を過ごすのが普通なのだ。


こんな可愛い子を二人も・・・すみにおけないなあ。ミルキダスも

「交わりの月の時のミルキダス様、本当に優しくて素敵でしたの」

「是非来年も、って思っていたら赤ちゃんができて」

「私たち、同時に妊娠するのが夢だったんです」

「これで夢がかないましたわ」

二人は交互にいい、口をそろえて言った。

「ありがとうございます。王妃様！」

「いや、だから私は何にも・・・」

何をそんなに感謝しているのか、ゆりはわけがわからなかった。

「それでは私たちこれで」

「失礼いたします。王妃様」

二人はニコニコ顔で去って行った。

本当にうれしそうだなあ・・・

でもよかったね。王様も喜んでるかな。

そうだ、会いに行ってみようっと！

ゆりは王の間の前に行ってみた。

「ねえ、王様今忙しい？」

番兵に聞いてみる。

「入られてもいいですよ。今はミカエル様だけですから」

「王は今日は大変ご機嫌ですよ♪」

もう一人の番兵がこっそり言ってくれた。

「本当？王様ご機嫌なんだ」

ゆりがうきうきして入っていくと、奥にはラクシュミとミカエルがいた。ラクシュミは穏やかな笑みを浮かべてゆりを見た。

本当だ。めちゃくちゃ機嫌よさそう。

「ゆり、こっちこい」

ラクシュミが手招きして呼んだので、ゆりは側によっていった。

「王様、ミルキダス子供できたんだってね」

ゆりが微笑んで言うと、ラクシュミも微笑んだ。

「そうだぞ。しかも二人同時とはすごいことだ。ひざに来い。ひざに」

ラクシュミはゆりをひざの上に乗せた。かなりの機嫌のよさに、ゆりも喜んでいる。

「しかもそれだけじゃないんだぞ。ミカエルもフリットもジュノーもヴィラも、みんなできた」

「え？そうなの？」

ゆりがミカエルを見ると、ミカエルが微笑んで「はい」と言った。

「おめでとう。」

「ありがとうございます」

「ミルキダス以外は一人だがな」

「すごいね。みんなできるなんて！」

「ああ、すごいぞ。ここ最近は中級以上の戦士の子供は、一人もできなかったからな。今年はすごい」

ラクシュミはゆりの頭をなでている。

「よかったねえ・・・王様・・・」

みんなに子供ができたことよりも、ラクシュミの機嫌がすこぶるよかったのがゆりはうれしかった。

「私もちょっと安心しました」

というミカエルに

「何安心してるんだ。もっとつくれ」

ラクシュミがすかさず言った。

「ゆり、お前もミカエルよりも、二人も孕ませたミルキダスの方がいいだろ？」

ラクシュミがにこやかに言った。ゆりはきょとんとしていたが、ラクシュミが優しく「な？」といったのでうなずいた。

「ミカエルよりミルキダスの方がいい」

ゆりは優しいラクシュミに思わずみとれて言った。こういう表情の時のラクシュミは、本当に神様のように美しく見える。

「ほら、ゆりもこう言ってるぞ。二人目を孕ませないと、お気に入りにはなれないな」

ラクシュミがミカエルをみてにやりとして言った。

「無理やり言わせてるじゃないですか。いつから子作り合戦になったんです」

ミカエルがぶすっとして言う。

「今からだ。今から。しかし来年はミルキダスはかなり人気になるんじゃないか？」

「それはそうかもしれませんね」

ミルキダスは力もあるし、初めて女と過ごして、しかも両方孕ませたとなれば、女たちの見る目もぐんと変わるだろう。

「ゆり、お前はお目が高いぞ」

「？」

「今夜からこっち来い。今夜は早めに行くからな」

ラクシュミが優しく言うと、ゆりの目が輝いた。

「本当？」

「ああ。期待してろ」

久しぶりのラブラブデー？

ゆりは喜んでラクシュミのひざから下りた。

「じゃあ後でね。王様」

「ああ」

ゆりはにやけそうな顔で王の間の門の方に行った。


王の寝室に行くのは交わりの月以来だった。しかもラクシュミはかなりご機嫌なだけにこれはもう、甘い一夜が期待できるという

ものである。

ありがとう。みんな・・・・王様の機嫌をよくしてくれて。

みんなに感謝したいゆりだった。

「しかし、儀式に参加した５人が全員とは・・何か関係があるのか？」

ゆりが出て行ってから、ラクシュミが首を傾げていった。

「さあ、どうでしょうね。関係ないんじゃないんですか？」

ミカエルが答えた。

「しかし偶然にしてはあまりにも・・・」

「関係ないと思います」

「・・・なぜそう思うんだ」

「関係ないと思うからです」

ミカエルはじっとラクシュミを見て言っている。

「ははーん。さては、儀式のメンバーを入れ替えられると思ってるんだろ」

ラクシュミが横目で見て言った。

「・・・やめてくださいね。それだけは」

「残念ながら、メンバーを決めるのは私じゃないからな。そこまで口はー」

「王・・・」

番兵がラクシュミの横にすっときた。

「王妃の様子が変です」

「ん？」

ミカエルが王の間の表側に行った時、ゆりは番兵の両手を握り締めてじっと番兵をみつめていた。

「何してるんです？王妃」

ミカエルが言うと、ゆりははっとして番兵から手を離した。

「あれ・・・・」

「番兵の手握り締めて何してるんです？」

「え？私手握ってた？」

ゆりが番兵を見ると、番兵の顔は引きつっていた。

「もしかして儀式の兆候が出てるんじゃないんですか？」

ミカエルの言葉にゆりはぎょっとした。

「まさか。あれはもう終わったはず」

「三度あったんだから四度あるかもしれないですよ？」

「まさかあ・・・」

ゆりはすたすた歩いていった。

冗談じゃない。今日は儀式なんてやってられない。

「王妃〜儀式じゃないんですか？」

ミカエルはゆりの横をついて歩いている。

「なんでついてくんの？」

ゆりはミカエルの顔を見ないようにして言った。

「王妃の様子がおかしいからですよ」

ミカエルが逆側に回って顔を覗き込むと、ゆりはさっと反対側をむいた。

「なんで顔をそらすんです？」

「ミカエル注意報が出てるから」

そういうとミカエルが笑った。

「王妃はたまに面白いこと言いますね」

ミカエルはゆりの腕をつかんで瞬間移動した。

「うげ」

ゆりの目の前は、自分の部屋の寝室に変わっている。

「ちょっと、私そんな気ないんだから。今日は何があっても、王様と愛の一夜を過ごすんだから！」

ゆりが怒って言うと、ミカエルと目があった。

「儀式今の内にしちゃえばいいじゃないですか。そうすれば、夜間に合いますよ？」

ミカエルが、悪魔のように美しい笑みを浮かべていった。

それいいかも・・・

一瞬ミカエルにみとれてはっとした。

「そうだ。王様と儀式しよっと。」

「えー、王一人じゃ大変ですよ？」

「一人でも蛇呼んでみせる」

「無理ですよ。そんな意地悪いわないでくださいよ。私としましょう。王妃」

「やだ」

「なんでそう嫌うんです」

ミカエルが眉をひそめて言った。

「なんでそうしたがるのよ。ミカエルもうすぐパパになるんだから、」

「それとこれがどう関係あるんです？」

「だから真面目にならないと」

「私はいつも真面目ですよ」

「王妃♪」

後ろから声がしてゆりが振り向くと、ヴィラが立っていた。

「・・・・どうしたの？ヴィラ」

ゆりは穏やかにほほえんで聞いた。

「儀式になるんですか？」

ヴィラもほほえんで聞いた。

「ううん。ならないよ。あれもう終わったし、気のせいよ。気のせい」

ゆりはにこにこしていっていたが、両手はミカエルの胸のあたりをべたべた触っていた。

「・・・もう誰かおりてるんじゃないんですか？」

ヴィラが笑って言う。

「え・・・」

ゆりは自分の手に気づいてぎょっとした。

ミカエルがゆりの体を抱き寄せた。

「遠慮せずに裸をじかに触ってください」

「だれかもうきてる？」

「明らかにおかしいですよ？王妃」

ミカエルがうれしそうに言った。

「王妃は優しいですね。子供ができたお祝いに、儀式をやってくださるだなんて・・・」

ヴィラが言う。

「え・・私はそんな気は全くないんだけど・・・」

「んじゃそういうわけで」

ミカエルがゆりを抱き上げる。

「・・・あ・・お風呂はいらなきゃ。お風呂」

ゆりが引きつった顔で言った。

「連れて行ってあげますよ」

ミカエルが言う。

「前みたいに一緒に入りましょう」

「え・・・」

「じゃあ私も」

ヴィラまで言い出して、もう一度ゆりは「えっ」と言った。

・・・・流されちゃだめよ。しっかりしないと。今日は絶対王様と過ごすんだから

絶対理性を手放すもんか！


「わかった。じゃあ、後でここで待ち合わせってことで」

ゆりはミカエルの腕から離れて言った。

「そういって逃げるんじゃないんですか？」

ヴィラがゆりの顔を見て言う。

「ううん。逃げない」

ゆりはヴィラのほうは見ていたが、ヴィラの後ろの壁をじっと見ていた。

「それじゃあとでね」

ゆりはさっさと寝室を出て行った。

「ふふ・・・王妃はああいうところがかわいいなあ」

ミカエルが笑って言う。

「前王妃の時は一回しかなかったのになんで何回もあるんでしょうか」

「さあ・・・王妃も実は楽しみにしてるとか」

「私は二人きりの方がいいんだけど・・・」

「私だってそうだ・・・お前、普段の王妃と儀式以外でそういうことしてないよな？」

ミカエルがもしやと思って聞いた。

「さあ、どうでしょうか」

ヴィラがはぐらかすように言う。

前から怪しいと思っていたが、やっぱり怪しい・・・

ミカエルはヴィラをじろりとにらんだ。

そのころ、ゆりはすたすた小走りで廊下を歩いていた。

こうなったら、夜まで身を隠そう・・・

なんだか胸がどきどきしてきているが、ゆりは必死に理性を押しとどめた。

二人は追いかけてはきていない。

後ろを見ながら廊下を曲がると、だれかにぶつかった。前を見るとミルキダスだった。

「ミルキダス・・・」

「王妃・・・」

「あ・・・おめでとう。ミルキダス」

ゆりが言うと、ミルキダスの頬が真っ赤になった。

「ありがとうございます」

ミルキダスは恥ずかしげにうつむいて言った。

ミルキダスって、やっぱりかわいい・・・

「そ、それじゃね」

ゆりは我に返って言った。

「どちらに行かれるんですか？」

ミルキダスが聞いてきた。

「え・・・どっか」

「なにやら儀式がどうとか思念が来ましたが・・・」

「・・・儀式いやだから逃げてるの」

「いやなんですか？」

「うん。」

「そうですか」

「に、逃がしてくれる？」

「いいですよ」

ミルキダスはあっさり言った。

「じゃあ塔のどっかに連れて行って」

「はい」

ミルキダスはゆりの腕に触れて瞬間移動した。

気づけば、以前ミカエルにつれてきてもらった塔にいた。ゆりは床にしゃがみこんだ。こうしたら、外からは見えない。

「私は行ったほうがいいですか？」

ミルキダスが聞く。

「ちょっとここにいてくれる？」

「いいですよ」

ミルキダスはゆりと離れたところに同じように座り込んだ。

どうやら、ミルキダスは他の人たちとは違い、儀式をやりたくてしょうがないわけでもないようなのでゆりはほっとした。

そういえば前回はミルキダス強制参加させたんだっけ・・・

なんで参加させたのか、今ではよくわからないけど・・・

「あのね、なんか時々男に惚れっぽくなるの。だれかがぱっと来てるのか自分が惚れっぽくなってるのかわからないけど・・・

儀式の時の私って、だれかきてるよね？」

「そうですね。そのような感じでしたよ。目がちょっとつりあがっていましたし。蛇を呼ぶ時の呪文も、普通の発音では

ありませんでしたよ」

確かに、あの不思議な言葉は、ゆりは今言おうと思ってもいえない。

「降りてくるのは蛇なのかな？蛇語のようなのしゃべるってことは」

「どうでしょうか・・・女性である事は確かですが・・・」

「話せればいいのにな。今日は絶対やりたくないのい。明日にしてくんないかな」

ゆりは口を尖らせて言った。

「どうして今日はいやなんですか？」

「今日は、王様が可愛がってくれるって言うから・・・」

ゆりが恥ずかしそうに言うと、ミルキダスは微笑んだ。

「王様と儀式できればいいのに・・・」

「できないんですか？」

「王様そんなに無理だし・・・」

「最後の方に来ていただいたらどうですか？」

「え・・・」

「それならそう無理ではないと思いますが・・・」

「・・・」

それならできるかも・・・


だけど他の男に散々触られた後にされるってのもなあ・・・

うーん・・・

なんだか・・・頭ぼんやりしてきた・・・

ゆりの頭がぐらりと前に倒れた。

「王妃！」

ミルキダスは体を寄せた。

「大丈夫ですか？」

「・・・戻ろうかな。」

「・・・・」

「あんまり邪険にしたらかわいそうな気がしてきた。だって、わざわざきてくれてるんだもんねえ・・・」

だれだか知らないけど。

全然来てくれなかったら、子供困ったかもしれないし・・・


まあいいや、王様とは違う日でも・・・

あんな機嫌の良い王様に、今度いつ会えるかわからないけど・・・

そう思うとちょっと泣けてくるゆりだった。


「お風呂に連れて行ってくれる？それから、みんなには儀式やりたい人だけきてって言っておいて」

「そういったらみんな来ると思いますよ？」

「みんな物好きだね。ミルキダスはどうする？」

「私は・・・」

ミルキダスの頬が赤くなった。

「まあいいか。子供ができたお祝いにしよう・・・」

ゆりはとうとう開き直った。


お風呂から出て瞬間移動でミルキダスに寝室に連れて行ってもらうと、やっぱり4人ともいた。

「ようやく決心つきましたか？」

ヴィラが聞いた。

「・・・儀式に参加するのはいいけど、後で私を責めないでね」

ゆりはおずおずと言った。

「だれが責めたんです？」

「なんかジュノーとミカエルが責めた。」

二人が同時に「え」と言った。

「私責めてないですけど」

「私も責めてないですよ」

とミカエルとジュノーが言う。

「ただくどいただけですよ」

「私もそうですよ？」

「・・・」

そうだっけ？

「王妃、ミカエルらの言うことに、耳貸さなくていいですから」

フリットが言った。

「あなたは王妃なのだから、いやな時はうるさいって一言言えばそれでいいんですよ。」

「え・・・・でも・・・なんか・・儀式に利用したような気がして・・・ちょっとした罪悪感感じちゃったりしたんだけど・・・」

ゆりが頭をかきながら言う。

「みんな喜んでいるんだから、気にする必要は全くありませんよ」

「そうなの？」

「そうですよ」

「なんだ・・・みんなの気持ちに答えなきゃいけないのかと思って悩んじゃった」

「答えてくれていいんですけど」

とミカエル。

「無視していいですから」

フリットがあっさり言った。

なんだ・・・

なんか、思い悩んだ自分がばかみたい・・・

「まあいいや。とりあえず、はじめよっと。ミルキダスからね」

ゆりはミルキダスの腕をつかんだ。

「王妃のお気に入りはミルキダスなんですか？」

ミカエルがちょっと口を尖らせて言った。

「だって、子供ができたお祝いだもん。だから二人できたミルキダスから」

「本当にお祝いなんですか？」

ヴィラが驚いて聞く。

「まあ、そういうことにしとく」

ゆりはミルキダスとベッドの上で抱き合った。すると、服も脱がない内から、すんなりゆりの顔つきが変わってきた。

「ねえ、ミルキダス、私のこと愛してる？」

「愛してますよ」

ミルキダスが頬を染めて言った。ゆりはにっこり微笑んで、ミルキダスに口付けた。

いつもと同じように、男たちの愛撫が始まり、ゆりの体から淫気があふれ出して、男たちの瞳が変化した。


そして興奮の絶頂に達した時に、ゆりの口から再び不思議な呪文がもれて、一匹の半透明な蛇が部屋の中に入り、

ゆりの体の中に消えた。

男たちの手が離れてしばらく、ゆりは体の中に異物が入ってくる感触にはっと目を覚ました。

なんだか誰かが上に乗っている。足は広げられていて、男の体が中に入ってくる、それに気づいたゆりは

「ぎゃあ！」と悲鳴をあげた。

「やだ！やめて！」

「ゆり」

「王様助けて！」

ゆりは足をばたつかせて、男から逃れようと必死に体を動かした。

「ゆり、私だ」

その声にゆりは動きを止めた。

「王様？」

「ああ」

「あれ？」

ラクシュミは体を離している。ゆりは周りを見た。真っ暗でよくわからなかった。

「ここどこ？」

「私の寝室だ。」

「そうなの・・」

いつの間にやら儀式は終わったらしい・・・

「お前がえらく楽しみにしてたから抱いてやろうと思ったんだ」

ラクシュミが言った。

「何も寝てる時にしなくても・・・」

「こい」

「・・・・」

ゆりはラクシュミに抱きついた。だけど儀式の疲れのせいか、そのままゆりは目を閉じて眠ってしまい、

結局ラブラブデーはお預けになってしまったのだった。

しかしなぜこう何度も儀式が起きるのだろう・・・

ラクシュミは疑問に思った。

ラクシュミが他の者に聞いた話では、ラクシュミの母親の時は、蛇霊神の儀式は一度しか起きなかったらしい。

だがゆりはもう４度もやっている。

ちょっとハザークに聞いてみるか・・・

数日後の夜、ラクシュミはハザークの塔を訪ねた。部屋の隅には、三匹の真っ白な蛇がいる。

ハザークの正体は、金色の巨大な蛇である。ハザークは長い時を生きて相当の魔力を持っているので、

蛇でいる時も大きさを変えられるし、人に変わることができる。ラクシュミが産まれた時から、

人化したハザークの姿は全く変わってない。

ラクシュミはたまにここに訪れては一緒に酒を飲んでいる。

王として力を使い続けなければならないというのは大変なことだが、長い長い時を生きている

ハザークに比べると、自分のほうがましなような気がしてくるラクシュミだった。

蛇霊神の儀式が４度あったというと、ハザークはただ「よかったな」と言った。

「私の母の時は一度だけだったのに、なぜゆりは４回もできたんだ？お前わかるか？」

「巫女の素質があるからだろ？」

ハザークはそっけなく言って酒を飲んだ。

「巫女の素質？」

「お前の子供は力はあるが、お前ほどの力はなさそうだから、蛇は一杯入れた方がいいぞ。」

「巫女の素質ってなんだ？」

「いい巫女になればなるほど、一杯蛇が呼べる。」

「素質ってなんなんだ？」

ラクシュミがしつこく聞いた。

「好色ってことだ」

「好色？」

「男とするのが好きなんだろ？お前の王妃は」

「・・・・まあ好きな方だな」

「儀式の時に降りてくる女蛇は、男とするのが好きだ。満足したら蛇を呼んでくれるんだ」

「・・・そういうわけなのか・・・」

「何度も来るってのは、巫女の体が気に入ったからだ。相手の男も気に入ったんだろうがな。男が気に入らないとたまに

降りてこないようだぞ」

「・・・素朴な疑問がある。ゆりは、儀式の時、男と交わってないぞ」

ラクシュミが言うと、ハザークは間髪いれずに「嘘だ」と言った。

「本当だ。ゆりもそういったし、男たちも抱いてないといってる」

「お前儀式見たのか？」

「・・・それは見てはいないが・・・」

「交わらないはずはない」

「・・・」

ハザークに断言されて、ラクシュミは少し首をかしげた。

「ゆりはともかく男たちが嘘をつく事はないだろう」

別に抱いたからといって、罰を与えるわけでもない。


しかも、一族の者たちは、ラクシュミに嘘をつくことはできない。それは、血の掟というもので、

本能的に王に嘘はつけないのだ。

「ならどうやって満足させるんだ？」

「・・・・」

男たちは口を濁して言わないが、ラクシュミには見当くらいはついていた。だがここでべらべら言うのも気がとがめた。

「巫女の素質があるのなら、日ごろから男たちと交わらせた方がいいぞ。女蛇が降りやすくなる。」

「・・・・」

そんなことゆりに言えるわけないだろ

そう思ったが価値観の相違を説明するのも面倒なのでラクシュミは黙っていた。