第41話


カーテンの隙間から朝日が差し込んでいた。

ごろりと寝返りをうったゆりはうっすらと目を開けた。


もう朝かー・・・・眠いな・・・・


半分寝ぼけた頭で枕元を見た。きらきらした水色の綺麗な糸が大量にある。なんだこれーと思いつつ手で持つと頭の皮が引っ張られた。



そうか。これ髪・・・・え？髪？



「うわっ！」

ゆりは飛び起きた。そこで一気に目が覚めた。


どきどきする胸を押さえて寝室を出て行き、壁にかかっている鏡を見た。

そこにあるのは自分の顔ではなく、綺麗な男の顔だった。

「あー夢じゃなかったのかー・・・・」

声もいつもとは違う。ソフトな男の声だ。

エルバートと身体を取り替えたのは昨日の事だった。

あまりに現実離れしている出来事なので夢かと思ったが、夢ではない。

男になりたいと何度も思ったことはあったが、実際に男になってしまうとは驚きだ。

漫画や映画ではよくある話なのだが、自分が体験する事になるとは。


「くそー神の国には行けなかったか・・・」

夢の中でハロルドに会う事はできなかった。なので謝ろうにも謝れない。



エルバートは大丈夫だったかな？



侍女が服を持ってきたのでゆりは身支度をして食堂に行った。


5人の子供達と一緒に自分が座っていた。ひざにはナナミを乗せている。

「おはよう。皆」

ゆりがそういうと、子供達は皆挨拶を返してきた。

「おはようございます」

自分の顔でエルバートも微笑んでいた。

「ねーなんでエルと身体とっかえたの？」

ロイが聞いてきた。

「なんでだろうね。私にもよくわかんないわ」

とゆりが答えた。

「エルバート、いろいろ大丈夫だった？」

ゆりはエルバートに近づいて聞いた。

「はい、王妃は大丈夫でしたか？」

「うん。朝起きた時は寝ぼけてたからびっくりしたけど」

「私もですよ」

エルバートは優しく微笑んだ。


「なんだか・・・中身が違うと印象が違うね。いつもよりも落ち着いて見えるよ」

ラギが言った。

「そうね」

とアナスターシャ。

「こっちの方が王妃らしいなあ」

ラギにさらに言われてゆりはむっときた。

「悪かったわね。王妃らしくなくて」

「ところで、ハロルド様にお会いになりましたか？」

エルバートが聞いた。

「それが会えなかったの。ごめんね」

「いえ、いいんですよ。おかげで私も仕事休んでのんびりできます」

エルバートは優しく言ってくれた。



全然私のこと責めないなんて・・・エルバートって本当にいい人。




皆で食事を食べながらも、ゆりはつい、エルバートのほうを見ていた。


自分の姿を客観的にしばらく眺めるなんて初めてのことだ。



確かに・・・エルバートが入ってると私ってすごい上品に見えるなあ・・・・



穏やかな笑みをたたえ続けているエルバートにゆりはつい思ってしまった。


「母様、父様が後で王の間に来いってさ」

アナスターシャがゆりに告げた。

「わかった。エルバートは今日どうするの？」


「ラギ様とご一緒しようと思ってます。ずっと城の中にいますから」

「そう、わかった」


食堂から出たゆりは王の間に向かった。



あっ！もしかして瞬間移動できるかも・・・・後で試してみようっと。


ゆりはその事に気づいてうれしくなった。


王の間に行くとミカエルもいた。

「王妃、まだそのまんまなんですか？」

「うん。そうよ」

「ちゃんと謝ったか？」

ラクシュミに聞かれてゆりはハロルドに会えなかった事を説明した。

「困ったもんだな・・・」

「ですが、エルバートに変わったくらいでよかったですよ。神に罰を受けた人間の話を本で見てみたんですが・・・いきなり雷が落ちて丸こげに

された者とかいるらしいですからね。このくらいなら罰ってよりはいたずらに近いですよ。ハロルド様って結構お茶目ですね」

ミカエルが言った。ハロルドというのは怖いイメージの神なので、それを考えると、お茶目ないたずらに思えたのだ。

「そうだな。エルバートの方はどうだった？」

「普通だったよ。」

「案外これで女に興味が出るかもしれませんね」

ミカエルがラクシュミに言った。

「そうだったらいいが、逆だったら困るな」

「逆だったらって・・・」

「まあ、お前もふらふら城の外に出るんじゃないぞ」

ラクシュミに言われてゆりは「はーい」と返事をした。



ゆりの姿をしたエルバートは、ちゃんと化粧もしてもらい、かわいいワンピースを着てラギと一緒の部屋にいた。

結構にこにこしていたのでラギは不思議だった。


「エルバートって結構のんきな人なんだね。突然他人の身体に入ったわりにはあんまり気にしてないみたい」

「そうですか？」

「とばっちり受けて怒ってないの？」

「まさか。こんな事くらいで怒る者はいませんよ。最初はかなり戸惑いましたが、女性になれるなんてめったにないことなので、この際と

思って楽しんでます。それに今、かなり幸せな気分なんです」

「どうして？」

「おなかに王の赤ちゃんがいるんですよ。それを考えたら、幸せな気分です」

エルバートはおなかをなでながら言った。

「そうかあ・・・・なるほど・・・」

ラギは納得した。


一族憧れのラクシュミの子供がおなかにいる。それを考えると、幸せな気分だった。

なんだか気分がほんわかしてくる。

戦が終わった今となっては、このくらいはなんてことはない。



「それにやはり皆さん憧れの王妃になってるんですから。シャナーンにはうらやましがられるかもしれませんよ」

「ありえるかもね」

ラギが笑って言った。ゆりの恋人達には話すとラクシュミは言っていたが、実際に話を聞いたら男達はどんな顔をするのだろう。

想像するとおかしかった。

「じゃあ僕と一緒に古代語の勉強しようよ」

「はい」

ラギの部屋には古代語の研究者が一人やってきて、3人は古代語で話を始めた。


「いやーまさか王妃様がこれほど古代語にお詳しいとは・・・」

エルバートと入れ替わっていることを知らない研究者の男はびっくり仰天していた。




その頃ゆりは、といえば、部屋で椅子に座り、手鏡で自分の顔をじっくり見ていた。

「うーん。エルバートってまつげ長いなあ・・・まつげも綺麗な水色だわ・・・・本当にかわいい顔してるよねー・・・」

「本当ですねえ」

横でミラが言っていた。

「・・・ちょっと化粧してみてもいいかな？」

「王妃ってば・・・やりましょう」

ミラはいそいそと化粧道具を持ってきて化粧を始めた。

「口紅はピンクがいいですねー。かるーくアイシャドウも入れて・・・」

「うーむ。かわいいじゃん。髪もちょっとアップにしてみよう」

「ではリボンをつけましょう」

髪はポニーテールにして白いリボンを結んだ。


元々女性でも通りそうな顔なので、化粧しても違和感は全然ない。


「スカートもはいちゃおうかなー」

ゆりが鏡を見つめつつ思っていたら、部屋の扉がノックされた。

「誰かな？」

ミラが出るとフリットだった。フリットは部屋にいるゆりを見て目を見開いた。

ゆりはにっこり笑ってウインクした。

「・・・・やっぱり王妃なんですね・・・」

フリットはエルバートの顔を見て思った。

「かわいいでしょ？」

身体が入れ替わって落ち込むどころか、遊んで楽しんでいるゆりだった。




ラギの部屋では二時間ほど古代語の授業をして、研究者は帰っていった。

「あのー・・・なんだか身体の様子がちょっと変なんですが・・・」

エルバートが言った。少し顔色が悪いようだ。

「あ、もしかして気がほしいんじゃないのかな？誰か呼んでもらってくるね」

「すいません」

ラギは部屋を出て行った。



そうか、気がほしいのか・・・・ということは、誰かとくっつかなきゃならないのかな？誰が来るんだろう・・・・



そう思っていると、ラギと一緒にやってきたのは、よりによってシャナーンだった。

シャナーンは部屋にいるエルバートを見て、たとえようもない奇妙な顔をしていた。

「やあ、シャナーン」

とエルバートが言った。

「本当にエルなのか？」

「そうだよ」

「君の両親の名前は？」

「ユルーゼルとマイカ」

「・・・エル・・・・」

まさかゆりがエルバートの両親の名前を知っているわけはない。シャナーンの顔が引きつっていたのでラギが言った。

「いっておくけど、お母さんのとばっちり受けただけだから、エル悪くないからね」

「私が疑問なのは・・・なぜエルと入れ替わったか、ってことです。君その時王妃と何してたんだ」

「何って話をしてただけだよ」

「何の話してたんだ？」

「えーと・・・なんだっけ？」

ゆりと何の話をしてたかエルバートはすっかり忘れていた。

「あのーシャナーン、気あげてよ。」

「全くなんで君が・・・」

シャナーンはぶつぶつ言いながらエルバートの横に座った。

「抱きついていい？」

「どうぞ」

エルバートはちょっと遠慮がちに横からぴたっとひっついた。



「もしかして、シャナーン自分が変わりたかったの？」

ラギはもしやと思って聞いてみた。するとシャナーンは「はい」と即答した。

「そうなんだ・・・・」

「シャナーン、本当に王妃が好きなんだね」

とエルバート。

「もちろん、他の誰かが変わるなら自分がって事ですよ。だって、君その身体でお風呂とか入ったんだろ？」

「うん。女の子の身体ってやわらかいんだね」

エルバートが微笑んで言うと、シャナーンが見た事もないような顔でエルバートをぎろっと睨んだ。



シャナーン、こわっ！



「じゃあ僕はこれで・・・・」

ラギは逃げるように部屋を出て行った。


「そんなに怒らないでよ。私が故意に変わったわけじゃないんだよ？」

「当たり前だよ。なんだい、君って王妃にその気は全然ないって言っておきながら、いつも何かしら王妃にからんでるじゃないか」

「妬かないでよ」

「とっとと彼女作ったら？なんなら私が相手決めてあげるよ」

シャナーンが言い出した。

「いいよ。なんだか怖いから。所で、前に砦の掲示板におかしな張り紙したのって君じゃないだろうね」

エルバートはその事を思い出して聞いた。

「そうだよ。実は私」

シャナーンはにんまり笑って言った。

「シャナーン・・・あの時は大変だったんだよ」

「女の子の免疫をつけてあげようと思って」

「ひどい・・・」

シャナーンは開き直っていた。今更謝る気もないらしい。

エルバートの心にちょっといたずら心が起きた。


エルバートはシャナーンの身体をぎゅっと抱きしめた。

「おい、エル」

「シャナーン・・・愛してる・・・」

エルバートはこの上なく甘めにシャナーンを見つめて言った。

すると、シャナーンの頬がちょっと赤くなった。


「ぷっ・・・」

エルバートは思わず噴出してしまった。シャナーンははっと我に返り、頬を引きつらせた。

「エル・・・君ってやつは・・・」

「張り紙のお返しですよ」

エルバートは舌を出して言ったのだった。




ゆりの部屋にはフリットと入れ違いにジュノーやヴィラまでやってきた。ゆりもフリットに会った時点で化粧は落としている。

「王妃って本当に退屈しない人ですね」と皆に言われてしまった。


そんなに私っていろいろ騒動を起こしているだろうかとゆりは疑問に思いミラに聞いた。

「結構起こされてます」

とミラには言われてしまった。

「次に何をしてくださるかと思うと、私達侍女は楽しみでなりません」

とまで言われた。


侍女を楽しませるためにいろいろしてるわけではないのだが・・・



「ハロルドにはしばらくそれで反省しろって言われたんだけど・・・しばらくってどの程度だと思う？」

ゆりはミラに聞いた。今は部屋に二人きりだ。

「さあ・・・どの程度でしょう。一日や二日ではなさそうですねえ」

「そうね。一月くらいかなあ。まさか一年二年ってことはないでしょうね」

「そうだとしたら、来年の赤い月がまずいですね」

「赤い月・・・・ガーン・・・」

まさかエルバートの姿でラクシュミと過ごせるわけはない。一日や二日では笑ってすませられるが、一年となると笑えない。

「それまでになんとかしなくちゃ」

「がんばってくださいね」

ミラは笑っている。



どうにかして神の国に行かねば・・・



その日の午後、ゆりは寝室で昼寝をした。神の国に行きたいがためだ。

すると、少ししてゆりは目を開けた。左目は変わっていないがもう一人のゆりだった。

「ねえ、水蛇さん」

ゆりはカーライルに呼びかけてみた。カーライルはこちらが話しかけない限り何も言ってはこない。寝ているのか起きてるのかは謎だが。

「ねえったら、水蛇様、カーライル様〜」


ーなんだ？


面倒くさそうな声で返答があった。


ー所でなんでお前二人もいるんだ？

「さあ、あのね、私あなたの顔がすっごい見たいんだけど。どうにかして見れないかなあ」

ゆりはずっとカーライルの顔が気になっていたようだ。


ーどうでもいいだろう。

「見たいんだもの。いい男なんでしょ？それとも不細工だから見せたくないとか？」


ー誰が不細工だ。

「じゃあ見せてよ」


ー・・・・じゃあ交換条件だ。お前の蛇紋を見せろ。

「え・・・」

いきなりの申し出にゆりはぎょっとした。

「そんな事言われたって・・・今エルバートに入ってるし・・・」


ーじゃあ身体に戻ったら見せろ。

「えー・・・・そう言われてもなあ・・・」

エルバートが恋人ならいいよという所だが、まだ恋人でもない。恋人になるのかどうかもよくわからない。

「何？私達に興味があるの？」

ゆりはにんまりして聞いた。


ー蛇紋にだけはな。戦の時北の砦でいろんな色の綺麗な蛇が現れたと聞いた。それがお前の蛇紋かどうか知りたい。

「そうよ。いろんな色の蛇ちゃんよ」

ゆりはあっさり言った。


ー・・・珍しいな。


「そうみたい。王様もハザーク様も珍しいって言ってた」


ーハザークめ・・・・嘘ついたな・・・


「嘘？」


ーこっちの事だ・・・

ゆりは首をかしげた。

「それじゃあなたの顔見せてよ。交換条件」


ー実際に見てないが・・・まあいい、水鏡もってこい。

「水鏡？」


ーたらいか何かに水入れろ

「わかった」

ゆりは部屋を出て行き、丸い陶器の器をテーブルにおいて水差しで水を並々そそいだ。


「これでいい？」


ーああ。


ゆりは座ってわくわくしながら上から器をのぞきこんだ。すると、水面が揺らぎ、水色の髪の男の顔が映った。

「おおー！！！すごい！」

ゆりは歓声をあげた。

「わー確かに美形だ！素敵！」

切れ長の瞳、ハザークのような独特な不思議な雰囲気を持った大人の男だった。


ーどうだ参ったか。


その顔の口が動いていた。表情も動いている。

「うん。素敵ー実際に会いたかったなあ」


ーそうだろう。そうだろう。


「人になれる蛇さんって皆美形なの？」


ーわざわざ不細工になる者がいるか？


「それはそうですね」

ゆりはにこにこして水面に映る顔を眺めていた。


ーじゃあ今度蛇紋見せろ。

「それはだめー」


ーなんでだ。


「あなたは素敵だけどハザーク様の方が素敵だもーん。だから」


ー・・・・


「あれ？もしかして初めて女に振られちゃった？」

ゆりが面白そうに聞いた。

「ごめんねー振っちゃって♪」


ーバカ女

そう言って水面の顔は消えた。



カーライル様と仲良くするとハザーク様にまた天井にはり付けられちゃいそうだからなあ・・・



実は密かにミルキダスからハザークがエルバートのことを気にしているという話を聞いていたのだった。それでゆりは、ハザークがカーライルの

事を気にしているのだろうと予想がついたのだ。同じ変化する蛇なので複雑な思いがあるのだろう。




強欲は身を滅ぼすからね。でもいい男だし、実際に目の前にいたらやばかったかも。



ちょっぴりそう思ったゆりだった。




黒目のゆりが目覚めたのは夕方だった。昼寝でも神の国には行けなかった。


「だめだったかー」

ベッドでがっくりうなだれていると、声が聞こえた。


ーお前、いつになったら出て行くんだ？

「あれ？いたの？」

ゆりが聞いた。


ーいたのじゃない！お前が来る前からいただろうが！


いきなり怒鳴られた。


「いやー声が聞こえないからてっきりもういないかと思ってた。しょうがないでしょ。帰れないんだから。いきなり何怒ってるのよ」

カーライルはさっきもう一人のゆりに振られてむっとしているようだった。だがこちらのゆりはそんな事は知らない。

「私だってあなたといたくないよ。あ、でもトイレのやり方は教えてくれて感謝してるけど」

どうやら結局カーライルに聞いたようだ。

「エルバートのようにもっと優しくなってくれればいいのに」


ーうるさい。王はよく我慢してお前といるな。歴史上一番気の毒な王に思えてならない。


「そんなことないわよ。王様は私に会えてとっても喜んでるわよ！」

ゆりは力一杯言った。


ーそうかあ？お前が思い込んでるだけじゃないのか？

「そんな事ありません。なんであなたってそう口が悪いわけ？」


ーお前だって足癖が悪いからこういうことになるんだ。


「だから言ってるでしょう。別に狙って蹴ったわけじゃないって。まああなたが目の前にいたら狙って蹴ったかもしれないけど」


ー・・・・

「冗談よ。気品あふれる王妃様がそんな事するわけないじゃない」

ゆりは微笑んで言った。


ーお前の気品は床に落ちた豆粒よりも見つけるのが難しい。

「うるさいわね」


ーお前の蛇紋なんぞだんじて見たくない！


「私だって見せたくないわよ！何よ。エルバートと一緒にあっち行ったらよかったのに！」

ゆりはぷんと怒って言った。


ーそうだな。そうすればよかった。そしたらお前の身体で裸で走り回ったりもできたのに。


「いっ？」


ー今から向こうに行く。


「えっちょ、ちょっと待って！お願いだからいてください」

ゆりは両手を合わせて拝んで言った。

「お願いです。水蛇様。この通り！」


ーふん。

カーライルはそういって意識を閉ざした。



危ない所だった・・・ストリーキングなんぞされた日にゃ、私の評判は一体どうなるんだか・・・・



ゆりはほっと息をついた。



口にも足にも気をつけないと。



「そうだ、瞬間移動してみよう」

ゆりは気を取り直してベッドから降りた。


「えーと、ラギの部屋に行ってみよう。ラギの部屋ラギの部屋」

ゆりは脳裏にラギの部屋を思い浮かべてみた。

すると姿がぱっと消えた。



やった！できたっ！



だが目の前にあるのはー

「あれ？外？」

夕焼け空と庭園が見えた。下を見ると地面が見える。後ろはどこかの部屋のベランダだった。


「ぎゃー！！！」

ゆりは悲鳴を上げながら落下していた。ゆりはあわてて側にあったベランダの支柱をがしっとつかんだ。


「誰か助けてー！！！」

ぶら下がったまま叫んでいると、ベランダにラギとエルバートがやってきた。

「王妃！？」

「お母さんったら何してるの！？」


どうやら部屋を通り過ぎちゃったようだ。


「あげてー落ちるー！！！」


二人と応援に来た戦士二人にあげてもらったゆりはぜいぜい言っていた。知らない戦士達は不思議そうな顔をしていた。

そういえば飛べたんだっけ、と気づいた時にはもう遅かった。



その後ラクシュミに怒られたのは言うまでもない。



すすむ


戻る