それは梅雨が明けたある夜の事、ミカエルと２人の子供達がある屋敷を訪問していた。屋敷としては大きなものではない。

二階建てでこの居住区にはよくある小ぶりの部類に入る屋敷だ。

「こんばんは、セリアお姉ちゃん」

「こんばんは、お姉ちゃん！」

「ようこそいらっしゃい」

ラリーとその弟ミルドが出迎えてくれた少女に挨拶をした。少女はにこやかに挨拶を返した。

ラリーは20歳、ミルドは６歳である。ラリーは襟足が肩にかかる程度のさらさらの黒髪でミカエル譲りのいい男顔の少年だった。

幼いミルドはまだまだ女の子でもいいようなかわいい顔立ちをしている。こちらも黒髪黒い瞳だ。

一方セリアも黒髪で黒い瞳の少女だった。同じ未成年でも年齢も48歳でラリーよりずっと上だ。

腰までのつややかな黒髪、前髪は眉のラインでそろえられた、知的風貌の美少女だった。図書室で本を読んでいるのが似合いそうなこのセリア

だが、これでも女戦士である。腕にも足にもそれなりの筋肉がついているし、剣だって振るう。か細い少女ではない。

「お姉ちゃん身長かなり伸びたね」

ラリーがセリアの横に並んで言った。セリアはラリーよりもかなり背が高い。

「そうかな？」

「ねえ、お父さん」

「ああ、ちょっと胸もでてきたんじゃないか？もうちょっとで大人だなあ」

ミカエルが何気に言った言葉に、セリアの顔色がさっと変わり、その上白い目をミカエルに向けたのだった。

「ミカエル様さいってい！」

そういってセリアは歩いて行ってしまった。

「だめだよ。お父さん、女の子にあれは禁句だよ！」

「そうだよ。女の子は繊細なんだからね！」

「うっ・・・」

ラリーだけではなく幼いミルドにも言われてしまいたじたじのミカエルだった。


第50話

「いらっしゃい、３人共、あれ？今日は他には誰かいないの？ハインリヒ様は？」

セリアの母親カーラがニコニコ顔で食堂から出てきて３人の後ろをきょろきょろ見回した。この女性はミカエルの父親の妹にあたる。

腰までの黒髪は軽くカールしていた。きっちり化粧もし、紫色の余所行きのドレスを着ている所から見て、何かを期待していたようだ、

とミカエルは思った。

「今日はいないですよ」

というと案の定つまんなそうな顔をしている。

「いい年して何考えてるんですか」

「いいじゃないのよ。いい男を見て目の保養をしたいだけよ。なんだあ、もう着替えちゃおうかしら」

「おばさんはまだ若いよ。恋人ができてもいいくらいだよ」

ラリーがにこやかに言った。

「あらまーラリーったらかわいい事言って！まあいいわ、食事にしましょう」

そういって一同は食堂に入っていった。ミカエルらがこうしてやってくることは珍しい事ではない。子供達は姉と弟のように仲が良く、

子供らだけで遊びに来ることもある。ミカエルの両親はもう亡くなってしまっているが、セリアには母親だけだ。父親は敵との争いで命を亡くしている。


今夜のメニューは、大きな肉が入ったブラウン色のシチューに丸パン、サラダが並んでいた。当然お酒の瓶も何本か置かれている。

子供達も平気でお酒を飲む。


「おいしいですよ。カーラさん」

ミカエルがシチューを一口飲んで言った。

「どうもありがとう」

「おばさんのシチューはおいしいね」

「うん、おいしい」

子供達もおいしそうに食事を食べていた。セリアの母カーラはミカエルからおばさんと呼ばれるのはいやらしく、ミカエルはいつも名前で呼んでいた。

たまに訪問するといつもお手製の料理でもてなしてくれる。


「ねえミカエル様、この前王妃様が飛んでしまったお話してください」

セリアがミカエルを見て言った。

「ああ、王妃が飛びたい内容の歌を歌っていたら、おなかの御子様が王妃が飛びたがっていると勘違いして飛んでしまったらしい」

ミカエルは簡単に説明して酒を飲んだ。

「あらまあ、かわいらしい話ね」

おばのカーラが微笑んだ。

「本当に、かわいいお話」

とセリア。

「王妃は突然飛んでしまってびっくり仰天だったようだが」

ミカエルは笑って言った。その場面が見れなくて残念でしたといってこの間ゆりに睨まれたのだった。想像するだけで笑えてくる。

「王妃様は普段飛べないもんね。そりゃびっくりしただろうね」

とラリー。

「赤ちゃんかわいいね」

とミルドも言っていた。ラリーはすでに瞬間移動も飛ぶこともできるが、ミルドはまだまだできない。

「どんな歌だったんですか？」

セリアが聞いた。

「さあ、王妃がいた世界の歌らしいぞ」

「へー・・・・」

どんな歌なんだろうとセリアは想像を膨らませた。


「今度は男の子か女の子どっちかしらね、楽しみね」

カーラの言葉に、「僕は女の子の方がいいなあ」とミルドが言い、「恋人になれるかもしれないもん」と付け加えた。

「ミルドったらもうそんな事狙ってるの？」

セリアが笑って聞いた。

「当然だよなー」

となぜかミカエルが先に答えた。

「ラリーとミルドが恋敵にならなくてよかったな」

アナスターシャとナナミ、それにもう一人女の子ができれば、２人が争わなくても恋人の座を狙えるかもしれない。王族相手の場合は恋人ではなく

婿と言う事になるかもしれないが。

「アナスターシャ様もかわいいけど、僕は王妃様も気になるなあ・・・」

ラリーがぼそっといい、ミカエルが「おいおい王妃様はやめろ」と突っ込んでいた。

「ラリーがお気に入りになっちゃったらミカエルの立場ないわね」

おばの冗談交じりの言葉にミカエルの顔が引きつっていた。



夕食の時間は和やかに過ぎて行き、食後子供達は違う部屋に移っていった。

食器が下げられた後、ミカエルはカーラと酒を飲んでいた。


「カーラさん、セリアなんですがねえ、誰かあこがれてる男はいないんですかね？」

ミカエルがおもむろに切りだした。セリアの相手の男の事では、ミカエルでなくても皆興味深々だった。強い女には相手を指名する権利だってある。

その気になれば男はよりどりみどりだ。

「さあねえ、まあまだ子供なんだし、大人になれば好みも出てくるんじゃないかしら？」

「誰を選ぶのかなあ・・・・」

よりどりみどりといってもセリアが選べる相手は限られている。下級戦士でも相手にしようなら、それこそ大変な事になるのだ。

「この前は王様素敵だったーって言ってたわよ」

「・・・セリアは王妃になりたかったんじゃないのかな？」

ミカエルはふと真面目な顔で聞いた。

「さあねえ、どうかしら。私はこうなってほっとしてるけどね」

カーラは言って酒を飲んだ。


ラクシュミが大人になる頃、同じような年頃の上級の女性はまったくいなかった。このカーラのような当時100歳以上の女性世代にはいたのだが、

この世代になると先代の王と関係を持った女性も多かったため、候補にはなっていなかった。

先代の王にしても、なんとか王族を増やしたい、ラクシュミに兄弟を作ってやりたい、という思いがあったのだが、結局ラクシュミ以外に子供は

できなかった。


力が強い女が生まれることが皆の悲願でもあり、そんな中生まれたセリアはかなり一族の期待を寄せられていた子供だった。力の強さは両親に

よって受け継がれる事がほとんどだ。ミカエルの血筋の者は結構強い力の持ち主が多かった。セリアの父親も強かったために、セリアへの

期待はより高まったのだ。それより以前に生まれたユリウスは、父親が病んでいたがために女として届けられていなかった。


自分の娘が王妃になるかもしれない。普通の平和な国の話でなら、カーラも喜び誇らしく思う所だが、この国では王妃という存在はかなりの

心理的負担が課せられる。先代の王妃達がどれほど子を望み、子ができない度に失望し苦しんでいたか、カーラはそれを知っていた。

美しい王を独り占めできるという単純な話ではないのだ。ことは一族の存亡の危機に関わることなのだ。それはこの一族が王族と他の者との

力の差が大きすぎるせいでもあった。同じような一族が王族がいなくなってしまったために一族が散り散りになり国を失ったという事例もある。


王がセリアが大人になるまで他の女を召さないということはないだろうが、それまでに誰か他の女性が王の子供を産んでくれないだろうか。

カーラはそう願っていた。なにしろセリアが大人になるのはかなり先の事、上級クラスの力を持つのかどうかも分からない。

そんな不安の中ゆりが王妃に収まりセリアの王妃話はそれですっかり消えたのだった。


「セリアは小さい頃から結構努力してましたからね。今はどう思っているのかなあ。後で聞いてみようかな」

「あまり先の話はしないのよ。あの年頃は難しいんですからね」

「はーい」

ミカエルは子供のように返事をした。


セリアが上級までの力を持つかどうかは謎だが、大人になれば、確実に中級の中以上にはなれるだろうと予想されている。子供の頃から

王妃様になるかもしれないと思って努力してきたのだ。ゆりが王妃になった時にセリアは普通に「よかった」と言っていたような記憶があるが、

内心はどう思っていたのかはよくわからない。王だけを見てきたのなら、他の男が目に入らないのも仕方のない事だとミカエルは思った。


夜が更けて、ラリーとミルドが寝室で休むころ、ミカエルはセリアの部屋に行ってみた。今日はこちらで泊まらせてもらうことにした。

「はーい」と言われたので部屋に入ると、セリアは机に向かっていた。部屋はそんなに広くはない。机に本棚が３つ、ベッドも同じ部屋に置かれていた。

女の子らしく蛇のぬいぐるみなどもあるが、実際に生きている蛇も部屋の隅っこにいた。

「なんですか？」

セリアは本にしおりを挟んでミカエルに顔を向けた。

「実は話があるんだが」

「はい？」

ミカエルは他に座る所がなかったのでベッドに腰を下ろした。

「セリアは今も王妃になりたいと思っているのか？」

ミカエルの言葉にセリアは瞬いた。

「王妃？なんですか突然」

「王妃になるかもしれないと言われて育ってきたろう？」

「はあ・・・・昔の話ですけど」

「王一筋でいたかったのかと思ってな・・・」

「王様のことは大好きですよ。たとえば二番目の后になるか？と王がおっしゃればそれはうれしいですが、王が望まれないなら別に私も

望みません。王の幸せこそが私の望みですから」

セリアはにっこり笑って言った。

「そうか・・・」

「私上級までいけるかどうかわかりませんしね」

「そうか、じゃあ他に気になる男は？」

「ミカエル様って、最近そればっかですね」

ミカエルはまたセリアに睨まれてしまった。

「他の皆にも聞かれまくって正直うんざりです。まだ大人になってもいないのに」

「しょうがないだろう。あのシャナーンなんて３０歳になる頃にはもう相手決まってたんだからな」

「大変だったでしょうねえ・・・」

セリアは心底同情するように言った。

「赤い月なんてまだぴんと来ませんよ。人並みに異性には興味がありますからご心配なく」

セリアはミカエルから顔をそらせて言った。

「そうなのか？たとえば誰に？」

「秘密」

「なんでだ」

ミカエルが不服げに聞いた。

「今は誰かに興味があるとかそういうのはないですから、残念でした」

セリアは早口で言ってミカエルにべーと舌を出した。

「そうか、なら誰かに興味が出たら教えてくれ」

「はいはい」

ミカエルは「おやすみ」と言って部屋を出て行き、セリアはもう一度舌を出した。


誰か気になる人ができても絶対ミカエル様には言いません。言うもんですか

っていうか、そんなに私を誰か他の男とくっつけたいわけ？


セリアはむくれてベッドに寝転んだ。

ミカエルは完全にセリアのことを妹としか思っていなかったが、セリアにとってはちょっと違っていた。いつもお菓子を持ってきてくれたり

城の話をしてくれたりするミカエルに、一時期ちょっとした憧れのようなものも抱いていた。もちろんラクシュミに対する憧れもあったが、

ラクシュミはセリアにとっては神のような存在だったのでミカエルの方が身近に感じられたのだろう。


王妃のゆりがラクシュミの子供を産んで、セリアはこれで自分は王妃にならないんだという事を確信したその時、「それならミカエル様の

子供産みたいなあ」と冗談交じりに母親に言った事がある。その時カーラはこう言った。

「ミカエルはいとこだからだめよ。他の人にしなさいね」

「え？いとこじゃだめなの？」

「だめよ。血が濃くなってしまうから」

「えーそうなの？」

こうしてあっけなくセリアの淡い恋は終わった。恋といっても憧れ程度のものだが、その時は結構ショックだった。兄と妹という関係ならば

だめだと言うのも分かるが、いとこでもだめだとは思ってもいなかった。



どうせ産むならラリーみたいな黒髪のかっこいい息子が欲しかったなあ・・・まあもういいけど、ミカエル様って女心分からなさすぎ！

平気で胸の事言うし。それに他の男とひっつける気まんまんだし・・・・あれで本当に王妃様のお気に入りなのかしら。王妃様騙されてるのかしら


ハインリヒだけではなく、フリットやイシュタールもミカエルにここに連れてこられていた。


さあ誰がいい？と言われても困る。皆それぞれ素敵な大人の男で、当然それぞれ恋人達がいるのだ。自分が相手を選ぶなんておこがましい。

それに今から赤い月のことなんて考えたくない。なんだか生々しすぎていやだ。



セリアは早く大人になって赤い月を過ごしてみたい、というタイプではなかった。

ラリーのような子供を産みたいなあ、とは思っても、産むまでの過程についてはあまり考えていなかった。大人になりそうな子供達は

男女のそういう事も習うが、いざ実際に自分が誰かとそれをするということまでは想像できていない。ミカエルと過ごしたいとも思っていない。



まあいいわ。ユリウス様だってしばらく男とそうならなかったっていうし・・・・すぐ男作らなくたっていいよね



今は男よりも気になってることがあった。それは王妃様であるゆりの事だった。

だからミカエルが来るといろいろ王妃様の事を聞いていたのだった。


もし自分が王妃になったとしたら・・・・


幼い頃何度も考えたことだった。

わくわくする気持ちもどこかにはあったが、自分が子供を産めなかったために国が滅びる。そんな夢まで見てしまった。

それは子供心にあまりに怖い夢だった。

王の事は大好きだったが、王妃には正直なりたくなかった。みんなの期待に添えられなかったらと思うと恐ろしかった。

誰か他に強い女の子が現れればいいのにとそう思っていた。

自分が強くなりたいと願いながらも、同時にそう願っていたのだ。


王の子供が産まれて、セリアはほっとしていた。嘘のように肩の力が抜けたのだ。嫌な夢も見なくなった。


私が気楽になれたのは王妃様のおかげだわ。国中の皆を幸せにしてくださって、なんて素晴らしい方なんでしょう。

見かけもとってもかわいらしくて。

もっと王妃様の事が知りたいわ。

大人になったらお城にいけて、強くなれば王妃様に気をあげる事もできるんだわ。

いろんなお話もできる。それがとっても楽しみ。男は当分どうでもいいわ


セリアは再び椅子に座って机の引き出しを開けてノートを取り出した。ノートはかなり盛り上がっており、開くとそこには新聞の切り抜きが

貼り付けられていた。どれも王妃関連の記事だった。ノートはこれだけではない。すでに30冊以上にはなっている。

小さい記事から大きな記事まで全て貼り付けられていた。

ほとんどほほえましい記事ばかりだ。読み返しているだけで心があったかくなる。


早く王妃様とお話がしたいなあ。飛びたい歌って一体どんな歌詞だったんだろう？



周りの期待はよそに、セリアの頭の中は「素晴らしい王妃様」の事で一杯だった。



その頃ミカエルはすでにこの屋敷内にはいなかった。フリットの屋敷に飛んでフリットを酒に付き合わせていた。

「今度シャナーンをセリアにあわせてみようかなあ。どう思う？」

「まだやってるのかそれ」

フリットが呆れるように言った。この前フリットもセリアに引き合わされたが、「ちょっと今日は夕食に付き合え」と言われて行ったら

そうだった。フリットももちろんセリアのことは知っているし、何度も顔を見た事はある。その時は本当に単なる夕食会で終わった。

フリットとしても、もしセリアが自分を気に入ったのなら恋人にしてもいいが、というくらいのもので、是非恋人にというほどの熱意はなかった。

若い者は若い者同士の方がいいような気もしていた。何より自分にはすでに子供が２人いる、という事がそう思わせていた。

その上ミカエルはセリアのことを妹とも娘とも言えるほどにかわいがっている。フリットとしても、ミカエルの娘を恋人にするのはいささか抵抗がある。


「あの子まだ男に興味ないんじゃないか？ほっといたらどうだ？」

「お前達に興味がなかっただけかもしれないじゃないか」

「そうだがな」

といいつつフリットのこめかみのあたりは引きつっていた。

「心配なんだ。知らない内に力が下の男と恋に落ちちゃったりしたらと思うと・・・」

「それほど勇気があるやつはいないだろう。だがあのシャナーンがお前が誘う夕食会に行くとは思えないが・・・・」

「あいつは王妃の事で話があると言ったら来るだろう」

ミカエルはにやっと笑いつつうなづきながら言った。

「お前・・・それは反則じゃ・・・それよりも、かわいいセリアがシャナーンを選んでもお前は嫌じゃないのか？」

フリットにすれば意外なことだった。

「別に。上級の男ではヴィラ以外なら別に誰でもいい」

ミカエルはきっぱり言った。

「ヴィラ？なんでだ？」

今ではヴィラやジュノー、ミルキダスは上級にあがっていた。ミカエルはヴィラと仲が悪い事はないが良いこともない。

「決まってるだろう。あの役をやったからだ！」

ミカエルは酒の杯を握り締めて言った。フリットがあの役の意味を知るまでに10秒ほど要した。つまりゆりが初めての赤い月までの間ヴィラが

ゆりにいろいろ教えた事を指している。

「まだ根に持ってたのか。ずっと前のことなのに」

フリットはすっかり忘れていた。

「当たり前だ。私だってウブな王妃に触れたかった」

今は全然ウブじゃないのか？という突っ込みをしようかしまいか迷ったフリットだったが結局しなかった。

「王がお前じゃなくヴィラをその役に選んだのは正解だったと思うぞ。私は」

心底そう思うフリットだった。

「まあセリアが誰を選ぼうが、お前は少し離れた所から暖かく見守ってやればいい」

フリットは途中を強調して言った。

「見守ってるじゃないか。それとなく。娘が大人になるってこういう気持ちなんだろうなあ。うれしいような悲しいような・・・赤い月を本当に

誰かと過ごすとなると、かなり悲しいんだろうなあ」

ミカエルは急にしんみりしだした。それなら別にわざわざその気にさせることもないじゃないか、と思うフリットだった。

「まあ私が側にいたからなあ。やっぱり私並にいい男じゃなきゃその気にならないのかもな。私以上となると王だけだしな」

ミカエルは一人でぶつぶつ言っていたが、フリットは完全に無視して酒を飲んでいたのだった。



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