第22話
愛の妖精に火の神殿に連れて行かれたゆりは、女性の声を聴きそちらに進んで行った。
広い廊下にいたのは見知らぬ女神と図体のでかい神、ライオネルである。
ライオネルは人化していて、その周りに妖精達がいた。ライオネルと女神は何かを言い合っているようだ。
妖精達は二人のやりとりに夢中でゆりに全く気づいていなかった。ゆりは一番後ろにいた火の妖精をちょいちょいつついた。
「あ、ガーベラ様」
「どうかしたの？」
「はあ、先ほどライオネル様がいらして、ディアメラ様をどうやらくどいておられるようで・・・」
男の火の妖精がぼそりと言った。
「へー・・・？」
ライオネルの横で眉間に皺を寄せてそっぽを向いている女神がどうやらディアメラのようだ。
今までにみた女神のタイプとは違うようね、とゆりは感じた。
髪も短くボーイッシュな感じの女神だ。
庭園にある石像はもうちょっと髪が長かった。
「だからよー言ってるだろ？男の神殿に暮らさなきゃならないんなら俺の所にくればいい。広いぞーなー来いよー」
ライオネルが両手を広げて言った。
「いや！月が空からなくなっても嫌！」
「そこまで嫌わなくてもいいだろう。俺が一体何したっていうんだ」
「暑苦しい外見が嫌いなの」
「ひどい・・・・」
ライオネルはショックを受けていた。
うーん、かなり気が強い女神様みたいね
ディアメラは性格も容赦ないようだ。どうやら取り込んでいるようだしどうしたものかと思っていたら、愛の妖精がシャンシャン
鈴を鳴らした。その音に、ディアメラとライオネルがこちらを向いたのだった。そしてゆりの前にいた妖精達がささっと横にどいた。
ゆりは思いっきりディアメラに睨まれた。
うわっ・・・・何か知らないけど怒ってる・・・
妖精は横で踊りながら鈴を鳴らしていた。どうも応援しているようだ。
「またあなたなの？鈴の妖精。うるさいからそれしまってちょうだい」
ディアメラは冷たく言った。
勝手に鈴の妖精にされてしまったようだ。妖精を見ると、勝ち気にもあの女神にアッカンベーをしていた。
「これこれ」
ゆりは思わずたしなめた。
「ガーベラ、今日は何の御用かしら？」
話をふられてゆりはどきりとした。
「いやーなんだか取り込んでいるようだから・・・日を改めた方がいいかなーと思ったり・・・・」
ゆりは頬をかいていた。この状況を考えると、サラディンとディアメラの仲はあのまま、と考えた方がよさそうだ。
愛の妖精に背中をばんとたたかれた。
「いて！」
妖精はどこで覚えたのかガッツボーズをしている。どうやら戦いを希望しているらしい。顔に似合わず好戦的だ。
いったい誰に似たのだろう。
「ところでサラディンはどこ？」
「でかけたわ。留守を狙ってこの獣がやってきたのよ」
ディアメラが横のライオネルをちらりと見て言った。
周りの妖精達ははらはらしながら成り行きを見守っている。
「たまたま留守だっただけだろ。そんなに邪険にする事ないじゃないかよー」
ライオネルはいじけていた。
「そうよ。かわいそうじゃない。ライオネルは性格は良い神様なんだから」
「じゃああなたが恋人にしたら？」
「今はそういう話をしにきたんじゃないの」
「じゃあ何よ」
「えーと・・・・」
うーん、どういう風に話をもっていけばいいのやら・・・・
いきなりの展開なので何も考えていなかったゆりは、どうしていいやら分からなかった。
とりあえず、ディアメラをここから追い出したいのだが、さてどうするか。
愛の妖精がシャンシャン鈴を鳴らしていたので、ディアメラが命じた月の妖精が鈴を取り上げてしまった。
愛の妖精は口を尖らせている。
「取らなくてもいいじゃないの。悪気はないんだから」
「うるさいって言ってるでしょ！」
「取りあえず、私はサラディンと愛し合っている。だからあなたに出て行って欲しいの」
「嫌」
ディアメラは即答した。
「せっかくだからライオネルの神殿に行ったら？ここは熱いから過ごしにくいでしょ？ライオネルの神殿の方がいいわよー」
ゆりはやんわりと言った。
「そうだ。そうしろってさっきから言ってるのによー」
ライオネルの目が輝いていた。
「嫌だって言ってるでしょ！こんな獣と一緒に住むなんて冗談じゃないわ！次の朝にはどうなってるか！」
「おとなしく何かされるような性格か？」
ライオネルにぼそっと言われてディアメラがきっと睨んだ。
「大丈夫よ。ライオネルは無理やり女を手ごめになんてしないわよー」
「さーどうかしらね？」
ディアメラが意味ありげな目をライオネルに向けた。ライオネルはちょっと気まずげだ。それにゆりはピンときた。
「もしかして・・・昔何かしたの？そういう神じゃないと思ってたのに」
これにはゆりもちとショックだった。
「スカートをめくって太ももをなでただけだぜ。昔の話だぜ。それも」
「そのまま押し倒そうとしたでしょ！」
「もういいじゃないかよ。その後短剣でぶすっと刺したんだからよーあれは痛かったぜ」
「自業自得じゃないのよ」
「・・・・」
ゆりは脱力していた。確かにおとなしく押し倒される女神ではないようだ。
「今度はディアメラがその気になるまで待つさ。だからな」
「嫌よ」
どうやらライオネルの想いは望みが薄いようだ。それでなくてもディアメラは男嫌い。昔そんな事があったとあっては、
そういう気にもならないだろう。
他にいい男はいないかなー独身で・・・
ゆりはいろんな神様の顔を思い浮かべた。他の神とひっついてくれればいうことはない。
その頃サラディンは空の上の神殿にいてアシュランと話をしていた。話題はもちろんディアメラのことだ。
アシュランも最近はサラディンから逃げるのをやめたらしい。今日はまともに話を聞いていた。
「いい加減ディアメラを元の神殿に返してやったらどうだ？」
とサラディンが切り出した。
「そういうな。同居もいいものだろ？」
「全然」
「その内に二人がなじめば恋人同士にだってなるかもしれないじゃないか」
「私はやはりガーベラが好きだ。ディアメラといるとどうも落ち着かない」
「いい娘じゃないか。美人で性格だってそう悪くはない」
「悪いとは言ってないだろう。落ち着かないのだ」
「その内いい女だと思うようになる」
「・・・・」
サラディンが睨んでもアシュランは何のそのだ。
確かに長い間男女が同じ神殿に暮らしていればそういうことになる可能性もあるかもしれないが、ディアメラと自分がどうこう
とういうのもどうにも想像がつかない。ディアメラは女性にしてはトゲがありすぎる。
「他の神を紹介した方がいいんじゃないのか？」
「お前昔ディアメラをくれと言ったじゃないか」
アシュランの言葉にサラディンはぎくりとした。
「あれは、冗談で言っただけだ」
「神が言った言葉は神聖なものだ。冗談では通じないぞ」
「・・・・」
こんな感じでアシュランがかわしていると、アシュランの間にハロルドが入ってきた。
「邪魔するぞ。火の妖精がサラディンに合いたがっているぞ」
ハロルドはサラディンに告げた。
「火の神殿で何か騒ぎが起こってるようだぞ」
ハロルドは神殿の中で火の妖精に頼まれたのだった。
「騒ぎ？」
「どんな騒ぎかは知らないが・・・・」
「へー見てみよう」
アシュランは興味を引かれてしまったようだ。
「あ、おい！」
サラディンが止める間もなく、床に火の神殿の中の様子が映し出された。
映像はやがて３人の神の姿を映したのだった。
「ディアメラとガーベラに、なぜかライオネルもいるな・・・」
アシュランがつぶやいた。
一体どういう場面なのか、と３人が思っていたら声も聞こえてきた。
「とにかく！私はここから出て行かないわよ」
ディアメラは腕を組み、ゆりに向かって宣言していた。
「どうしてよ。サラディンを愛しているとでもいうわけ？」
「愛はまあその内に浮かぶかもしれないし・・・」
「それなら他の神様でもいいじゃないー」
「私は一度でいいからあなたの悔しがる顔が見たかったのよ。別れた恋人が私と仲良くなったと知って、さぞ
悔しかったでしょうね。ガーベラ」
ディアメラは楽しそうに笑いながら言った。なんだか悪役っぽい笑いだ。
「私悔しがってる？」
ゆりはこっそり愛の妖精に聞いた。妖精は首をかしげている。
「あなたの悔しがる顔が見れて気は晴れたけど、せっかくだからもう少し悔しがらせてあげるわ」
「別に悔しがってないわよ。何で私に嫌がらせするのよ。私が何したっていうのよ」
ゆりは思わず聞いていた。どうもディアメラはガーベラのことを嫌っている。それがよく分かるからだ。
「まさかあの事を忘れたわけじゃないでしょうね」
ディアメラは眉をひそめていた。
「あの事？」
あの事がどの事かゆりにはさっぱりわからなかった。
ディアメラがあれほど怒るのだから結構な事件のはずだ。ゆりはちらちらと周りをみた。
誰か助けてくれないかと思ったが妖精らは頼りにはできない。ライオネルに視線を送ってみたが、ライオネルはぼんやりと
二人のやり取りを見ているだけだった。
ああ、こういう時にクーリーフンがいれば・・・・クーリーフンを連れてくるんだった・・・・
今更嘆いても遅い。ここにはクーリーフンもアマンザもいなかった。
「まさか！忘れたわけじゃないでしょうね！」
ディアメラが信じられないとばかりに聞いてきた。
「忘れたわけじゃないわ。ただ今までいろいろな事があったからどれに一番怒ってるのかなーと・・・・」
「あれだろ？昔人間がディアメラの石像を汚したこといまだに怒ってるんだろ？」
ライオネルがようやく口を挟んだ。
「そうよ！あの事よ！」
「人間がディアメラの石像を汚した？それが何で私と関係あるの？」
「あんたすっかり忘れてるじゃないのよ！」
ディアメラは真っ赤な顔で怒っていた。
「ごめんなさい」
ゆりは素直に謝った。
「でも、教えて、この際だから」
ゆりは両手を合わせて懇願した。ここはディアメラとガーベラの仲違いの原因を聞いておく必要があるだろう。
ディアメラは両手を腰にあてて横を向いていた。
「教えてよ。ライオネル」
ゆりは仕方なくライオネルに聞いた。
「人間がディアメラの石像に粗相しちまったんだよ。それで・・・」
「え？粗相って・・・・？」
「美しい石像に思わずしちまったらしい。それを知ったディアメラが怒ってだな、アシュランにその人間を罰するように
告げたわけだ」
粗相・・・粗相って・・・・何したのかしら・・・・
ゆりは頭の中をフル回転させて考えた。人間が石像に思わずしちまったこととはなんだろうか。
これほど怒るのだからよっぽどひどいことに違いない。
「それなのにちょうどその場にいたあなたがそんな些細なことで罰するなんてかわいそうって言ったのよ！」
ディアメラがゆりをにらみつけて告げた。
「そ、それが怒りの原因？」
「この私が、石像とはいえ人間にあれほどの屈辱を受けるとは！」
粗相・・・そそう・・・粗相って何したのー人間！！！
いろいろお下品な妄想は浮かんでいたが、口に出してはいえなかった。
「あの人間、細切れにしてサメのえさにしてやろうと思ったのに！」
「だけどあの人間相当ディアメラにほれていたそうじゃないか。だからさすがにそれはかわいそうじゃないか？」
ライオネルが口を挟んだ。
「あんたは黙ってて！」
ぴしゃっといわれてライオネルが直立不動した。
「ちょっとごめんなさい、悪いんだけど・・・・人間がした粗相って何だったかしら」
ゆりはとうとう聞いた。やはり一番重要なところをうやむやにしておくのはよくないと思ったのだ。
「あんたってばそれすらも忘れたって言うの？」
ディアメラはあきれ顔だった。
「私が長年恨んでたことをころっと忘れてたっていうのー！？」
「ごめんなさい」
ゆりはディアメラを見つめて正々堂々謝った。
「あんたって女は・・・・そういうところがだいっきらいなのよ！」
ディアメラの顔は怒りで真っ赤だった。
「それで粗相って何よ」
ゆりはライオネルに聞いた。自分も今はガーベラなのだから、怒りにおびえている場合ではない。
「粗相ってあれじゃないか。ディアメラの石像に恋をした人間がある夜抱きついてつい、射精を・・・」
きゃーと月の妖精達から悲鳴があがり、
「そこまで言うな！」
とディアメラの足がなんとライオネルのおしりを蹴飛ばしていた。女神らしからぬ所業に火の妖精達の目は点になっている。
「そういうことなの。その人間じゃあ裸で抱きついていたの？」
とゆりは聞いた。そこが気になったようだ。
「あんたもしつっこいのよ。どっちでもいいでしょそんなこと！」
ディアメラはもう切れていた。
「とにかく！あれを些細だと言ったあんたが私は許せないのよ！」
「まあ些細なことじゃないけど、細切れにするのもかわいそうよ。それくらい女神の広い心で許してあげたら？」
「嫌よ！！」
ぜいぜい息をしていたので妖精がディアメラに水が入った杯を渡し、ディアメラはそれを一気に飲み干した。
アシュランの間では、３人の神はずっと無言でそのやりとりを眺めていた。
ハロルドはガーベラの中身がゆりであることはとっくに気づいていた。
あれほど行くなと言ったのに、自分の言葉をまるで無視したゆりの態度には腹が立っていたが、女神同士のやりとりを
見ていたら、なんだか馬鹿らしく思えてきた。それよりもこんな場面を神３人がのぞいていていいものだろうか。
アシュランを見ると、びっくりした様子で少々目を見開いていたが、ガーベラの様子がおかしい、とは思っていないようだ。
サラディンはというと、なんだか心ここにあらず、といったぼんやりした顔をしていた。
「おい、もうのぞきやめないか？」
ハロルドがアシュランに告げた。
「ん？今から面白くなるところじゃないか？」
とアシュラン。
「面白くって・・・お前ディアメラの味方じゃないのか？」
「私は全ての神の味方だぞ。それよりもうらやましいぞ、サラディン。美女二人に挟まれて」
アシュランがサラディンに言った。
「え・・・・」
サラディンはたいしてうれしそうでもなかった。
「私は全然羨ましくないぞ」
ハロルドはきっぱり言った。
「神格が高い女神のするけんかじゃないだろう」
「それより止めた方がいいような気がしてきた。私は行く」
「こらこら、いい所なんだから。もうちょっと待て」
アシュランはサラディンを引き止めた。
「だが、これ以上はあんまり・・・・見たくないぞ・・・」
「ガーベラはわざとディアメラを怒らせて何か仕掛ける気じゃないか？」
アシュランはあごに触れながら言った。
「え？わざと？」
「そんなことまで考えないぞガーベラは」
ハロルドは断言した。
「まあ昔のことはともかくとして、今はサラディンのことよ、あなたがここにずっといたって、そんなにいいこともないと思う
わ。サラディンを愛してるってわけじゃないのならね」
「ふん」
ゆりの言葉にディアメラは横を向いた。
「どうせならもっと他の神様のところに行った方がいいんじゃない？」
「・・・・わかったわ」
ディアメラはちょっと考えて言った。
「え？本当？」
「私と勝負なさい。ガーベラ、私が負けたらここを出て行くわ！」
ディアメラはびしっとゆりを指差した。
「勝負？・・・・わかったわ。受けて立つわ」
なんとゆりは正々堂々と宣言したのだった。
「ばかっガーベラ！ディアメラと勝負して勝てるわけないだろう！」
空の神殿ではサラディンが思わず言っていた。ディアメラは弓矢の名手でもあり、運動神経が優れた女神なのだ。
「何の勝負するかによるんじゃないか？」
とアシュラン。
「勝負って・・・いったい何するんだ？」
ライオネルが聞いた。
「私達は女神よ。ここは平和的に勝負しましょうよ」
ゆりは言った。もともと取っ組み合いのけんかをする気もない。
「平和的？何するの？」
「我慢大会よ」
「我慢大会？」
「暑い湯に入ってどっちが長く入っていられるかどうか競うの」
「はっ！？」
ディアメラはぽかんと口を開けた。
「え！？」
と空の神殿でもサラディンが声をあげていた。
ガーベラ・・・・それはあまりにセコイぞ・・・・
もともとガーベラは湯が好きなだけに、この争いはフェアではないだろう。
「我慢大会ってお前はもともと湯がすー」
ゆりはあわててライオネルの口をふさぎに行った。
「ライオネルは黙ってて、これは私とディアメラの勝負なんだから」
「だがよー」
「いいわよ」
ディアメラがあっさり言った。
「え？いいの？本当？」
とゆり。自分でもちょっとセコイかなと思っていたのだが、他に勝てそうなことも思いつかなかった。
「どっちみち、あなたと弓矢や剣で勝負してもしょうがないものね。熱い湯で長く我慢した方が勝ちってわけね。
まあいいわ。それも」
「そう、じゃあさっそく勝負しましょう！」
「わかったわ！」
驚く妖精達の間で、二人は火花を飛ばしあった。
「よし、俺が審判を！」
意気揚々と片手をあげたライオネルだったが却下された。
「お母さん！」
そこへサラディンの娘ルティアナが小走りにやってきた。
「まさかお母さんが来てたなんて！」
「ルティアナどこ行ってたの？」
「ちょっと人間界に遊びに行ってたの」
「そう、じゃあちょうどいいからルティアナに審判をしてもらいましょう」
「審判？」
「今からディアメラと勝負するのよ。勝負に勝ってここから出て行ってもらうからね」
「本当！？」
「そううまくいくかしらね」
ディアメラはにやりと笑っていたのでゆりはん？と首をかしげた。もしや月の女神も湯に強いのだろうか。
ゆりがせかして勝負はすぐに行われることになった。人間界に帰ってしまったらまずいからだ。
空の神殿で見ていた面々は、口々に「セコイ戦いだ・・・」と言っていた。
「だが女神同士の醜い戦いは見たくないからな。このくらいがほほえましくていいかもなあ」
とアシュラン。
「ところで、まさか湯をのぞくわけじゃないだろうな」
サラディンが聞いた。
「のぞきたいなあ。セコイ戦いを最後まで見守りたい」
「だめだ。神々の長が女神の風呂をのぞくんじゃない」
ハロルドが言った。
「だが気になるなあ・・・」
「後から報告受ければいいだろう。ほら、閉じろ閉じろ」
ハロルドにせかされて、アシュランは映し出していた映像を閉じたのだった。
ゆりとディアメラは裸になり湯気が立ち上る湯浴み場へと入っていった。
「ディアメラ様がんばってー！」
「ガーベラ様がんばってー！」
湯浴み場の外では妖精達もやんややんやと声援を送っていた。
鈴を返してもらった愛の妖精もしきりに鈴をシャンシャン鳴らしている。
「あー見たい見たい」
外でぶつくさ言っているライオネルは、しっかり月の妖精達に捕まえられていた。
思えば、火の神殿がこれだけ盛り上がったことが今まであっただろうか。いやない。
中にいるのはどちらも神格が高い女神なのだ。
「ガーベラ様が勝つんじゃないか？」
「だがディアメラ様も自信ありそうだったぞ」
火の妖精達もなぜかみな興奮状態になっていた。
「二人ともがんばってください」
ルティアナの目の前でゆりとディアメラはその美しい体を湯の中に沈めたのだった。
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