第28話
「かわいいねー」
「ほんとかわいいねー」
空の上にある神殿にあるヒルデリアの間にて、女の神達が集まっていた。目当ては最近生まれた
力の神バリアスである。
「赤ちゃんってこんなに小さいんだね」
「すごく小さくってかわいい！」
女の神といってもまだ幼い子供達だった。ガーベラの子供達、癒しの神キュリアや土の神ネル、水の神
ユリアナとイオナもやってきている。水の神の２人は生まれた時よりも少しは大きくなっていた。
ガーベラの子供の女の子の中では外見はキュリアが一番大きい。
バリアスは女の子達の間をぐるぐる回っていた。ご機嫌でニコニコ笑っている。まだ自力では移動する
こともできない。これほど小さい赤ん坊は神の国では珍しいため、毎日誰かしらがバリアスを見に来ていた。
一緒に来ていたラーズが同じように抱っこして頬に触ろうとした時、バリアスはばくっとラーズの
指にかみついたのだった。
「いっいて！いてっ！離せ！こらっ！」
あまりの痛さにラーズは赤ん坊をほおりだし、ヒルデリアが受け取っていた。
「何するんだよ。痛いなー！」
指の先は真っ赤になっている。
「ひゃひゃひゃ」
とバリアスは笑った。
「こいつめ・・・」
「かわいい〜♪」
とキュリア達が笑っていた。
「どこがだ！ちっともかわいくないぞ」
「かわいいよねー」
「ひゃひゃひゃだって」
「ふふふ、どうもバリアスは大人の男は苦手なようじゃ。昨日もアシュランの手にかみついてのう・・・と
いってもまだ歯は生えておらんからそんなに痛くはないであろう」
ヒルデリアはにこやかに言った。
「十分痛かったぞ。まったくそれを早くに言ってくれよ・・・」
ラーズは真っ赤になった指をぶるぶる振るっていた。
「大人の男・・・じゃあ父様にもかみついちゃうのかな？」
とキュリアが言った。父様とはハロルドのことだ。
「ハロルドにはさすがにかみついてはいないようじゃが・・・抱いてもあまりご機嫌ではないようじゃ。ライオネルが
抱いた時には驚いて泣いておった」
「怖いのかなあ。それとも女性の方が柔らかくていい匂いだからかな？」
ネルが首をかしげた。
「きっとそうよ。男よりも女の方がいい匂いだもん」
「赤ちゃんでもちゃんとわかるんだね」
とユリアナとイオナも賛同した。
「・・・というよりも、誰かさんに似てただの女好きかも」
小さな声でぼそっと言ったラーズだったが、ヒルデリアに睨まれて、そっと横を向いたのだった。
人間界では、ゆりの魔法がようやく解けて、ゆりは男達とのスキンシップに励んでいる。
恋人でもない兵士や番兵と握手したりもしていた。
一緒にスポーツするのもいいが、やはり触れ合うのもいいものだ。
暦は新たな年に入り、５日のお祝いも終わっていた。
アナスターシャは今年25歳、25歳といえば、子供時代もようやく半分ほど終わったところである。
今年はアナスターシャが大きな街に現れて街の人たちに元気な姿を見せて回ったので皆喜んだようだ。
「これからもがんばるぞ」
とアナスターシャは決意も新たに張り切っていた。
「ああ、こういう寒い日には王妃のやわらかい肌が一番」
お祝い気分も冷めた頃、朝っぱらからミカエルがゆりの部屋にやってきてゆりに擦り寄っていた。
今日は朝から寒く、ゆりもあったかいドレスを着ていた。
「今日は休みなの？」
「仕事の前にすりすりしに来たんですよ」
「さいですか・・・」
「かわいがってあげたいけど、お仕事なんですいませんね」
「いいえ、全然かまわないけど」
「西の聖域に急遽贈り物をするんで品物を選ぶんですよ」
「ふーん、そうなの」
「ふーんって、神様が誕生したお祝いに送るんですよ。王妃にとっては他人事じゃないでしょ」
ミカエルにすぐ近くで睨まれた。
「いやーははは、力の神のことかあ・・・」
実はなぜ魔法が解けたのか、とういうことは言わずしまいで、昨日ぽろりと言ったところ、ラクシュミには
「そういうことは早く言え」と言われてしまった。
力の神誕生のことは神話の本でも予言されてなかったようだ。つまり、神話の本でも登場していなかった
神様なのだ。そうでなくても、ラクシュミはガーベラが子供を生むたびに聖域に贈り物をしている。
だがせっかく最近ラブラブが復活したところなので、ゆりとしてもハロルドの子供を生んだとは言いにくかった。
「まったくもう、王妃ってば神の国でも男といちゃいちゃしてるんだからー」
ミカエルに耳を軽く引っ張られた。
「私じゃなくてガーベラが生んだの。お祝いの品って神の国にまでは届かないんでしょ？」
「そうですよ。神様じゃなくて結局は神官連中のものになるんでしょう。まあこういうことは贈り物をしたという
事実が大事なんですよ。龍の国もたいそうな贈り物を贈ってますよ。きっと」
「ふーん・・・」
「じゃあ行きますね。あんまり他人といちゃいちゃしちゃだめですよ」
ミカエルは頬にちゅっとキスして去って行った。
「あの時の赤ちゃんかわいかったなあ・・・」
神様だから次会う時は大きくなってるのかなあ・・・
ゆりはミシェイラに会いに行こうとして廊下に出てヴィラに出くわした。
ヴィラは手にラケットをもっていた。
「王妃、暇ができたんで遊びましょう」
「えー」
とゆりはあからさまに嫌そうに言った。
「王妃ってばあれから誘ってくれないんだから」
「ヴィラが意地が悪いからでしょー」
「最近子供らの間にもはやってるんですよ、これ。学校の空き時間に遊んでるようです」
「へーそうなんだー」
「遊びましょう」
「やだ」
「じゃあ熱烈に迫ってください」
「いっ？」
「年が明けてから女達の視線が痛いんです」
「さては今年も淡白？ぷぷっ」
思わず噴出したゆりに、ヴィラの頬は引きつっていた。
「一年や二年飛んでもいいと思うんですけどねー」
「そりゃ恋人にとってはその時が戦いなんだから、飛ばしちゃだめよ。がんばりなさいな」
ゆりはヴィラの肩をぽんぽんとたたいて言った。だが目が笑っている。
「じゃあ王妃も協力してください」
ヴィラはゆりごと別室の方に飛んだ。
「えーやだなあ」
「恋人じゃないですか。その気になるように色っぽく迫ってくださいよ」
「うーむ・・・」
赤い月が飛ぶとういことは、ヴィラの恋人達にとってはそれこそ大問題だろう。ゆりだってラクシュミとの
月が飛ぼうものなら泣くは怒るはで大変だ。
ここは王妃様として一族の女性達のためにもちょっとがんばってみるかな、とゆりは思った。
「わかったわ」
ゆりはベッドに座り、おもむろに分厚いドレスの首から胸あたりまでの留め金をはずしだした。
案外すんなりゆりが了承したのでヴィラも興味深々でゆりの横に腰を下ろした。
胸元をちらっと見せて、左手で髪をかきあげ、ヴィラに向かってウインクした。
「うっふ〜ん」
「・・・」
ヴィラは目を見開いていた。
「・・・・・」
ヴィラの反応が何もなかったのでゆりの方が恥ずかしくなっていた。
「今のは・・・・」
「色っぽく迫ってみたんだけど・・・」
「今ので？！」
「今のって・・・他にどうしろって言うの」
ゆりの顔は真っ赤になっていた。
「ぷぷぷ・・・くくくく・・・・」
ヴィラは横を向いて笑いだした。
「何よ。失礼ね！せっかく・・・」
「うっふーんって・・・くくくく、あー横腹が痛い・・・・・」
ゆりはベッドにたてかけてあったラケットの網の部分でヴィラの頭をたたいた。
「笑いすぎ！」
「だっておかしいんですもん。王妃、もう一回言って」
「誰が言うか！」
もう一度ラケットを振るったらヴィラに奪われてしまった。
「王妃ってば真っ赤になってかわいい。あ、なんかその気になってきましたよ。さすが王妃。さあこっちへ」
「もういいわよ」
逃げようとしたゆりをヴィラがとっ捕まえてベッドに組み敷いた。
「今一瞬昔のこと思い出しましたよ。男を知らない頃のウブな王妃を。あの頃はすぐ真っ赤になって
かわいかったなあ」
「その話はしないでー」
「じゃあおとなしく脱いでください。あっためてあげますから」
「いや。ヴィラの肌は冷たいからあったかくないもん」
「私があったかいんです。軽くひっつきましょう」
「むー・・・」
どうやらヴィラの性欲もそれなりに回復したようだ。
もしかしてだまされた？と思ったゆりだったが、ヴィラはミカエルやハインリヒほど激しいタイプでもないので
最終的にはまあいいか、と思ったゆりだった。
そんな頃、王の間のラクシュミの元にはハザークから意味不明な思念が数回飛んできていた。
ーあ・・い、今！・・・・なんでもない・・・
とういうような思念だった。どうやらミシェイラがハザークの部屋で何かしようとしているようだ、とラクシュミには
想像がついていた。楽しそうでいいことだ。
「ここのところ平和だなあ」
「はい？」
ラクシュミは小さな声でぼそっとつぶやいただけだったので近くでいろいろ報告していたフリットが聞き返した。
「平和だなあと言ったんだ。あんまり平和だと気持ちが悪いな」
「そうですか？」
小さい事件はいろいろとあるが、国全体的に見れば平和な方だ。
数年前の戦争のこともすっかり忘れそうなほどである。
「今の内に皆子作りに励んでほしいものだ」
「結局はそこに行くんですね」
「ああ。フリットも今年がんばれ」
「はあ」
つい生返事をしてしまったフリットに、ラクシュミは「はあじゃない。平和を持続するためには、子供が一杯
いるんだ。一杯。２人で満足するんじゃない」と語っていた。
「そうですね。では私はそろそろ・・・」
フリットはさっさと退散し、ラクシュミは次に扉近くにいた番兵達に、「最近の皆の動向はどうだ？」
と聞いていた。若者達にあまり言い過ぎると緊張しすぎてよくない、と周りから言われ、言わないようにしていた
ラクシュミだったが、何かあるとやはり口に出てしまうようだ。
昔も今も、ラクシュミの一番の願いは一族の数が増えることにある。
ーあっ王、今すごかったぞ！
またハザークから思念が飛んできた。
ーすごい？何がすごいんだ
仕方なくラクシュミは返した。
ーミシェイラがな、転ぼうとした時にふわりと浮いたんだ。賢い子だ
ーそうかそうか。よかったな。今のお前をどういうか知ってるか？
ーん？
ー親バカって言うんだぞ
ーバカ？なんで我がバカだ
ー親バカだ。親バカ
ー我はバカじゃない
ハザークはむっとして思念を閉じた。
「まったく失礼な王だ。我のことをバカだと言った」
ハザークの部屋では、微妙に眉をひそめたハザークが侍女に語っていた。
「まあ、なぜにそのようなことを王が・・・」
「親ばかって言うんだ。なんだ親ばかってのは」
「そりゃ王に賛成だ。お前がこの子の些細なことに喜んでいるからそう言ったんだろう」
違う長いすに寝そべっていた男が言った。エルバートの中にいるカーライルだ。
「別に些細なことに喜んではいないぞ。珍しいことをしたから驚いて王に教えてやったのに・・・」
部屋の真ん中にはミシェイラが座っていた。ミシェイラは最近侍女に手をもたれてひょいと立ち上がる
ことがある。手を離すと数秒立ち上がっていられるのだが、すぐにしりもちをついてしまうのだ。
先ほどはしりもちをつく前にふわりと浮いたのでハザークが驚いたのだった。
ゆっくりながらも成長しているようだ。ちなみにハイハイはらくらくできるようになった。
「おい、王に失礼だと言っておけ」
ハザークが言った相手はカーライルではなかった。横のテーブルがあるほうに縮こまって座っていた
ミルキダスだった。ミルキダスは突然話をふられてびくついていた。
今日のミルキダスは自分からここにたずねてきたのだった。それも娘達が焼いたケーキをどうしても
ハザーク様に差し上げたいというので、やってきたのだった。すぐ帰ろうとしたのだが侍女に捕まってしまい
今に至るのだった。
「自分だって親のくせに関心がなさすぎる・・・これも言っておけ」
「はあ・・・」
言えませんって・・・早く帰りたい・・・・
ミルキダスはそれを切に願っていた。何のためにここに座っているのかは謎だ。ハザークがいる上に
カーライルまでいたので居心地悪いことこの上なかった。エルバートの時とは表情がまったく違う。
今後エルバートに出会ってもびくついてしまいそうだ。
今日はご機嫌で笑顔を振りまいていたミシェイラだったが、やがて侍女の腕の中で眠ってしまった。
「ミシェイラって、昔の女王の名前から取ったのか？」
カーライルが聞いた。
「ああ、我がつけたんだ。将来美人になりそうだし、今思えばぴったりの名前だ」
「そうか・・・まあいいがな・・・娘がかわいいのもほどほどにしておけ。大人になれば親に反抗するようになり、
変な男とくっついたりするんだからな」
「それはお前の娘じゃないのか？」
「そうだ、私の娘だ。ちなみに変な男ってのはお前の父親のことだ」
カーライルはずばり指摘した。
「あの男が変なのは同意するが・・・まあこの子は大人になってもすぐに男を作らなくてもいいだろう。上に
何人もいるからな。ゆっくりでいいんじゃないか？」
「子供が大人になるのはあっという間だぞ」
「大丈夫だ。まあ男なんて100超えてからでいいだろう」
ハザークは結構めちゃくちゃなことを言っている。
ミシェイラ様と恋仲になる男は大変だ・・・
ミルキダスは２人のやり取りとりを眺めつつ思った。
それほど勇気がある男もそうはいないだろうな・・・
「お２人とも、まだまだ先の話ですから」
「そうですわよ」
侍女達が言った時、カーライルが「あっ！」と声を発した。
「今気づいたが・・・お前は私の娘を抱いた男だな」
カーライルがいきなりミルキダスに言い出して、ちょうど紅茶を飲んでいたミルキダスは「ごほっ」と
むせていた。
「え？な、何の話ですか？」
「儀式で私の娘を抱いただろう。別に怒ってるわけじゃない。娘にも困ったものだと思ってるだけだ」
「い、いえいえ抱いてません」
ミルキダスはそこはきっぱり否定した。
「なんでだ。何度も儀式したんだろう？降りてきた蛇の中に水蛇がいただろう」
「誰も抱いてませんから」
「なんでだ？」
カーライルは不思議そうに聞いた。
「今の王妃は独特なのだ。儀式では男達と交わるところまでいかないんだ」
ハザークが助け船を出した。
「え？じゃあ何してるんだ」
「まあいろいろだ」
「いろいろ〜？」
「いろいろ男と遊んでるだけだ」
「さっぱりわからん」
カーライルは首をかしげまくっていた。ミルキダスはハザークがフォローしてくれたのでほっとしている。
「いろいろが気になる・・・一体どんな儀式なんだ・・・」
「のぞくなよ」
とハザークが言った。
「のぞくか！」
「あのー私はそろそろ・・・」
ミルキダスはそろりと言い出し、逃げるように去って行った。
「あの王妃はいろいろ謎が多いな。私の見えない魅力がいろいろあるようだ」
カーライルは身体を起こして言った。
「あまり気にするな」
「エルバートにその気はなさそうだからな。どうにかして女に目覚めさせたいもんだが・・・」
「女に興味ないのか」
「ああ、まだな。私も自分の息子のような気がしているからなんとかしてやりたいんだ」
「一番いいのは、赤い月に女と部屋に閉じ込めておくことだな」
ハザークはずばり言った。
「・・・そこまで強引なことは・・・昔息子にやって怒られたからな。それとなくその気にさせたいのだ」
「その内その気になるだろう」
「昔は変化草ってのがあったんだがな。今はどうもないようだ。昔の王は変化させる力があったんだが
なあ。今の王はそういう力はないんだろう？」
「ないなあ」
「一度変化してしまえばその気になると思うんだが・・・」
蛇の目のゆりにそういう力があるということは、もちろん黙っていたハザークだった。
「お前催眠術が得意なんじゃないのか？」
「得意だがエルバートにかけるというのは難しい」
「ラギ様がいろいろそういう研究をされてますから、街で売っていない興奮剤などもお持ちかもしれないですよ」
侍女が言った。
「そうか、今度聞いてみよう・・・私がいるうちに子供の顔が見たいものだ・・・」
カーライルがしみじみといいだした。
「ん？出てく気になったのか？」
「私がいて何もしないんじゃいる意味がないだだろう」
「ふーん・・・」
「カーライル様がいなくなられたら寂しいですわ」
「そうですわ」
侍女達がしんみりと言った。
「そうか？寂しいか？」
カーライルはちょっとうれしそうだ。
「我は別に・・・」
「そうか、ハザークまでそんな寂しいか。まあ、まだ出て行くと決めたわけじゃない。私は霊体の身だし
この先何があるかわからないしな・・・」
寂しいとは言ってないが・・・とハザークは思っていたが、昔は多くいた人化する蛇も今はハザークと侍女ら
だけ。カーライルがいなくなればちょっとは寂しいと感じるかもしれない。
「蛇霊神になって儀式で王妃に入るという手もあるが・・・・」
「それは絶対いやだ」
「残念だな。お前が入ったら子供がかなり強くなりそうなのにな」
「嫌なこった。それくらいならどっかに飛んで行った方がましだ」
どうやらカーライルは儀式に呼ばれるのだけは嫌らしい。だがゆりだって儀式でカーライルがやってくるのは
いやだろう。
午後、城の中でラギとシスがジュノーに出くわした。
「あ、いい所に会ったね。ジュノーちょっとお願いがあるんだけど」
ラギが言い出したとき、ジュノーはすかさず、
「す、すいません、急用があるのでまた！」
と言って消えてしまった。
「ひどい・・・最近みんなすぐ去っていくんだよ。ひどいと思わない？」
ラギが口を尖らせてシスに言った。
「そうなの？どうしてかな？」
シスはきょとんとしている。
「僕の薬を試してほしいんだけど、みんな嫌そうなんだ。僕は一族の将来を思ってやってるのに・・・」
「そうかあ・・・」
ラギのお願い、とはラギが作っている興奮剤のモニターだった。良い物を作るためには、たくさんの人に
試してもらって統計を取る必要があるのだ。それを察して皆逃げていくのだった。
「渡しても試してくれなかったりするしさ。興奮の度合いが知りたいんだよね。強すぎても困るしさ、
ほどよく興奮できるものじゃなきゃいけないんだ。それが難しくて・・・」
「ふーん・・・」
「訓練所に連れて行ってくれる？そこでみんなに配るよ」
「いいよ。みんな試してくれるといいね」
「うん」
ラギは薬を部屋にとりに行き、シスに訓練所まで連れて行ってもらった。
薬をどれだけの人が試してくれるかは謎だが、ラギのような息子がいてラクシュミも喜んでいることだろう。
「だめだよ。逃げちゃ！僕はみんなのためにがんばってるんだぞー！！！みんなが赤い月で興奮できてたら
こんなのいらないんだからねー！！！」
訓練所ではラギのこんな声が響いていた。
すすむ
戻る