第５９話
「あ、面白いペガサスがいるわ！」
珍しく人間界に降りていたキュリアはクーリーフンの横で下を指して声をあげていた。キュリアの足には翼がついたちょっと大きめのサンダル
があった。これはヒルデリアが所有しているもので、ちょっと借りたのだ。あまりにも美しい兄と妹の図だったが、残念ながら普通の人間には
見えてはいない。だが馬には見えているようだ。皆上を向いていた。普通の馬に混じって一頭だけ翼がついた茶色い模様がある馬がいる。
「面白いわねえ。お兄様！」
「ああ、そうだねえ」
とクーリーフン。
「この子だけみたい・・・神の国にもこういう模様のペガサスがいればいいのになあ」
「ははは、そうだね」
「ヒヒーン・・・」
キュリアが見つけたのはプリモだった。プリモは２人の神にせつなげな声を出していた。
「ヒヒーン、ヒヒーン」
翼を広げてばたつかせている。
「なんだか元気がないみたい。えいや！」
キュリアは何の躊躇もなくプリモの首にぐさりと短剣を刺していた。
「またかい？キュリアったら・・・」
クーリーフンは苦笑ぎみだった。今日はキュリアにせがまれて一緒に人間界に降りてきたのだが、キュリアが短剣を出すのもこれで５回目だ。
傷を負った動物を見るとほっておけないらしい。
キュリアは癒しの女神。短剣を刺すと、傷が癒える効果があるのだ。傷だけではなく軽い病気も治る。だが死病となると無理なようだ。
「つい・・・」
キュリアがてへへと頭をかいていた。
「ヒヒーン♪」
プリモの声が元気になってきた。
「よかったあ。元気になった！」
「君ってば優しいね。ハロルドもちょっと見習ってほしいよ」
クーリーフンはつい愚痴っていた。
「ふふふ、じゃあね、面白いペガサス」
２人の神はそのまま飛んで行き、プリモは元気に草を食べ出したのだった。
一方城では、部屋の扉が閉ざされて一体どれほどの時が経ったのか、一同は廊下で突っ立ったまま黙って待っていた。
すると様々な人達が様子を伺いにやってきた。その都度ゆりや子供達が状況を説明している。
やがて、扉が開き、疲労困憊のザクートがよろよろと出てきた。
「ザクート様！」
シスとアナスターシャが同時に名を呼んだ。
大人達は固唾をのんでザクートの言葉を待っている。
「成功した。多分」
「多分？」
複数の声が同時にあがった。
「うーん、疲れた・・・」
ザクートは手前にいたカーライルをよけてゆりに抱きついていた。ゆりはザクートの背中に腕を回して支えている。
「こら、多分ってなんだ」
カーライルが文句を言っていた。
「あの・・・中に入っても？」
キースが遠慮がちに聞いている。
「今は２人とも眠っている。このままちょっと様子を見よう。一時間ほど経って若い方の身体に異常がなければ、成功だ」
ザクートはゆりに抱きついたまま告げた。
「ザクート様、ありがとうございます。ありがとうございます」
キースは目を潤ませてそっと部屋に入っていった。シスとアナスターシャ、フレイとザメハも後に続いた。セルジュもカーライルから離れて部屋に
急いだ。
「王妃〜疲れた・・・」
こんなに疲れたザクートを見るのは初めてだった。
「大変な魔法でしたね。ザクート様・・・」
ゆりは労るようにザクートの背中をなでている。
「ああいう細かい魔法はほんと苦手だ。私はやはり派手な魔法の方がいい。王妃の柔らかい肌でいやしてくれー」
ザクートがゆりの頬にすりすりした時、頭をぺしっとたたいた者がいた。
「いた」
「図に乗るな。離れろ」
ザクートが眉をしかめて後ろを見ると、そこにはしかめっ面で立っているハザークがいた。突然のハザークの出現にはカーライルも驚いている。
「嫌な感じがして来てみれば、一体人前で何してるんだ」
「うるさいな。あれだけのことをしたんだ。図に乗ってもいいはずだ！」
ザクートは開き直っていた。
「お前には一杯女がいるだろう。呼べ、女を呼べ」
「む・・・・まったく・・・・仕方ないな・・・」
ザクートの手が名残惜しそうにゆりの腕をなでなでし、ハザークにまたぺしっとたたかれていた。
やがて女性達がわらわらとやってきた。
「ザクート様〜」
女達の喜びの表情に場の雰囲気ががらりと変わった。
「いやしてくれ〜私の女神達よ〜」
ザクートは女性達と一緒にどこかに消えてしまった。
「ザクート様・・・・」
名残惜しそうにつぶやいたのは蛇の目のゆりだった。ハザークがじろりと視線を向けた。
「王妃・・・抱きつかれてさっと変わっただろ。さっき」
「え？何のことかしら」
実はその通りだった。ザクートに抱きつかれて蛇の目のゆりがさっと出ていたのだ。
「絶対そうだ。そういう時は素早く出てくるな。いつも」
「偶然ですよ。ぐ・う・ぜ・ん」
「全く・・・」
「こういうのを痴話げんかというのか？あほらしい」
カーライルは２人のやりとりを横目で見ながら部屋に入って行った。
カーラの魔法はすでに解かれていた。手前にセリア、奥のベッドにカーラが眠っている。皆ほっとしていいのかどうかわからないといった微妙な
表情を浮かべていた。
「やっぱりすごいなあ。ザクート様は・・・」
シスがつぶやいた。
「すごいよね。一体どうやったらそんなことできるんだろうねえ」
アナスターシャも不思議そうだ。
そこにハザークとゆりが入ってきた。
ゆりは黒目のゆりに変わっている。
「ザクート様はちょっと自信がなさそうでしたが、どうでしょう？」
ゆりは小声でハザークに聞いた。
「うーん・・・確かにこっちのおなかには子供はもういない」
ハザークはカーラを見詰めて言った。
「危篤の状態だったが、今は落ち着いているようだ。治癒の魔法もかけてくれたようだな。さすがは・・・いや、なんでもない」
カーライルは言いかけてやめた。
「さすがはザクート様、蛇の国の偉大な王ですじゃ！」
変わりに言ったのはザメハだった。
王の間では報告を受けたラクシュミがほっと胸をなでおろし、心配してやってきていたヴィクターやロナウドが手をたたいて喜んでいた。
「すごい！」
「さすがはザクート様！」
ラクシュミは久しぶりにちょっと身体が楽になっている。
「赤ん坊が無事だといいな・・・」
「そうですね」
「シャナーンに入られたザクート様がみたいなー」
ヴィクターはうれしそうにつぶやいていた。
やがて、部屋ではカーラが目を覚ました。カーラは記憶が曖昧のまま、目の前に大勢の人達がいたのでまず驚いた。
ハザークだけはいなくなっている。
「あ、カーラが目を覚ましたわよ」
アナスターシャの言葉に皆がカーラに注目した。カーラはきょろきょろと視線をさまよわせている。
「え・・・私は・・・あれ？」
「カーラ、カーラ大丈夫か？身体は？」
キースが横でカーラの手を握りしめていた。
「一体・・・私どうしたのかしら？」
カーラは周りを見ながら記憶を思い起こそうとしていた。
「君は４ヶ月近くも眠っていたんだよ」
「え？」
キースが今までのことを説明すると、カーラの顔はさっと青ざめ、横で眠るセリアを見たのだった。
「セリア・・・・セリアは大丈夫なの？」
「大丈夫だ。きっと大丈夫だ」
「まさかセリアに負担をかけることになってしまうなんて・・・」
カーラは辛そうな表情でうなだれた。ゆりが何か声をかけようと口を開いた時、部屋にザクートが戻ってきたのだった。
「お、気づいたな」
キースが「ザクート様だよ」と説明すると、カーラはベッドの上で正座して頭を下げた。
「この度はありがとうございます。私などのためにザクート様の手を煩わせることになってしまって・・・」
カーラは申し訳なさそうに涙を流していた。
「いや、いいのだ。同族の女性は私にとっては皆女神も同然。あのような状態の女性を見てほっておけるわけがないだろう。このザクートが」
ザクートの言葉にカーラはますます涙し、ゆりも感動して「さすがはザクート様・・・」と涙していた。カーライルは１人しらけた表情をしている。
「セリアは大丈夫なんでしょうか？」
「うむ・・・見た所大丈夫そうだ。ちゃんと子供の気も感じられる。この先完全に大丈夫だとは言い切れないが・・・そうだ。良いこと考えた」
ザクートはぽんと手をたたき、キースの横にいたセルジュを見た。
「おい、お前ちょっとこっちにこい」
ザクートが呼ぶと、キースの方が反応して行こうとしていた。
「いや、お前じゃない。そこの霊だ。こっちこい」
セルジュは戸惑うようにザクートの横に移動した。
「王妃知ってるか？早い内に魂が入った胎児は、流れにくいと言われている」
ザクートはゆりを見て言った。
「そうなんですか」
「ああ、というわけで、お前、目を閉じて、らく〜にしろ。何も考えるなよーらくーにらくーに」
この場でセルジュの姿が見えていたのはカーライルとザクートだけだったので、他の皆は不思議そうにザクートを見ていた。
「らくーにらくーに・・・・」
セルジュが目を閉じて眠そうな顔をしていると、ザクートはセルジュの身体に上から下まで左手を振り下ろした。するとセルジュの霊体は
崩れてしまい、それらは集まって一つの光の玉に変わったのだった。
「よし、入れ」
ザクートはその光の玉を強引にセリアのおなかに押し入れたのだった。玉は吸い込まれ、もう出てこなかった。
あっけにとられたのはカーライルだった。まさかこんな転生の仕方があるとは。
「お前・・・今ものすごいことしたな・・・」
「お、成功した。ははは、やった」
ザクートは喜んでいた。
「こんな転生ってありなのか？」
「初めてしたらうまくいった」
「初めて！？」
「魂を探すのも面倒だし、まあ手っ取り早くこうしたのだ。普通の転生と違うからちょっと弊害はあるかもしれないが・・・まあいいだろ」
ザクートが気楽に言った。カーライルは呆れて口を開けている。
「あのう・・・一体何のお話をされているのでしょうか？」
キースが戸惑った表情で聞いた。
「つまり、お前の息子がまた息子として生まれてくるってわけだ」
カーライルが簡単に説明した。
「え？」
「そこらをちょろちょろしてた息子がいたろ」
「セルジュのことですか？え？この子はまたセルジュとして生まれてくるんですか！？」
キースの言葉に一同もようやくびっくり仰天していた。
「ちょうど男だったからな」
とザクート。
「そんなば、ばかな！！」
キースの慌てぶりはものすごく、ゆりは（もしかしたら嫌だったのかしら？）と思ったほどだった。
アナスターシャは素直に「嫌なの？」と聞いていた。
「いえ、嫌というわけでは・・・ただ戸惑っていて・・・・あの息子がまた・・・・」
セルジュが生き返れば良いとは何度も願ったことだったが、現実に再び自分の息子になると決定されてしまうと、なんだか微妙なキースだった。
「男の子だったのね。よかったわね。将軍」
カーラはキースの背中を軽くなでていた。
「ザクート様ってすごいですね。転生までさせられるなんて・・・」
ゆりが感心していると、
「普通とは違うからな。ちょっと弊害はあるかもしれない」
とザクートはちょっとを強調していた。
「でもセルジュにまた会えるなんてうれしいわ」
ゆりは素直に喜び、ザメハやフレイも「うれしいですな！」と喜んでいた。
セリアが目覚めたのはカーラの目覚めから一時間ほど経った後だった。
ベッドの側にはカーラとフレイ、キースにゆりがいた。
「セリア、ごめんなさい。あなたに負担をかけてしまって・・・」
カーラが申しわけなさそうに告げると、セリアはカーラの手を握りしめた。
「成功したのね。さすがザクート様はすごいわね。私は平気よ」
セリアはまずは魔法の成功を喜んだ。
「セリアも今日から妊婦ね。何かわからないことでもあったらなんでも聞いてね」
ゆりが明るく言った。セリアはゆりに微笑んだ。
「セリアもカーラも無事でよかったですな。今回ばかりはザクート様に感謝してもしきれませんな」
フレイが喜びつつ告げていた。
「息子が・・・息子が・・・また息子に・・・・」
セリアはカーラの横でぶつぶつつぶやいているキースを見た。
「将軍？どうかされたんですか？」
カーラが聞くとキースははっと我に返った。
「いや、なんでも・・・なんだか私の頭が混乱しているようだ・・・」
「？」
「赤ん坊の名前はもう考えなくてもいいかも？」
ゆりはくすりと笑っていたのだった。
疲れ果てたザクートは最後にミシェイラの顔を見て去って行った。夜までいる元気はもうなかったようだ。
「強引に転生させるとは・・・・むちゃくちゃするな・・・」
カーライルにその話を聞いたハザークは呆れていた。
「そんなんで大丈夫なのか？」
「さあ、わからん。まあ無事生まれてくればまずはいいんじゃないか？」
「そうか・・・」
「今回ばかりは見直した。絶対本人には言わないが」
カーライルはにやりと笑っていた。
「言わない方がいいな。すぐ図に乗るからな」
ハザークもその意見には賛成のようだ。
カーラもセリアも仲良く入院してしばらくは状態を観察されることになった。
恋人がいきなり妊婦になってしまったエルバートも驚いていたが、２人が無事だったことに喜んだ。
「セリアさん、なんという勇気なんでしょうか、私もお手伝いします。なんでも言ってください！」
エルバートはセリアの勇気に感動したらしい。
「私は何も・・・それにまだ全然妊婦って感じがしないし。でも赤ちゃんがいると思うとなんだかうれしい気分かな？」
「おなかに子供がいるっていいんですよね。私もあの時は幸せでした・・・」
エルバートがほんわかした表情で言った。
「あの時って？」
「王妃になった時に」
「え？」
「いえ、こちらのことです。なんでもありません」
エルバートは話を切り上げた。
「セリアさんの子供・・・なんだか私の子供のような気までしますよ」
エルバートがそういうと、「やだあ！」とセリアは照れたようにエルバートの背中をばしっとたたいていた。
城でもようやくほっとした一時が流れていた。
「母様、プリモ元気になったって！」
夕食の最中アナスターシャが告げた。
「本当？私の草が効いたの？」
ゆりが驚いて問うと、
「戻って来た時はもう元気戻ってたって！」
アナスターシャがさらりと告げた。
「そう。よかった・・・」
「もちろん母様の草も効いたよ。きっと」
シスが優しくフォローしていた。
「そうだといいけど・・・」
神の国で草を摘んだ自分がばかみたいだが、まあ今回はプリモが無事だったんでいいか、とゆりは思うことにした。
（私って神の国で何してるんだかねー・・・）
ありがたい神様の国に行き、ただの草を摘みまくった人間は自分だけに違いない。
「ラギ明日帰ってくるかな？」
シスが話題を変えた。
「多分ね。きっと魔法が見たかったって残念がるでしょうねえ。それよりもシャナーンの身体が心配だわ」
ゆりはザクートが抜けた後のシャナーンの心配をしていたのだった。
翌日の夕方、羊の国から帰ってきたラギは、カーラの話を聞いて予想通り残念がっていた。
「一体どういう魔法なの？呪文はどんな？」
ラギは皆に聞いて回ったが、誰も魔法を見ていないのでその問いには答えられなかった。
「ああもうー！！どうして僕がいない間に〜！ザクート様〜！」
「所で羊はどうだったの？」
ゆりは土産話を聞きたがったが、ラギはあまりにショック過ぎて土産話をするどころじゃなかったのだった。
「そうだ、シャナーンに聞いてみよう！」
「だめだめ！シャナーンまだベッドの上なんだからね！」
ゆりはあわててラギを止めていた。
ザクートが抜けて後、シャナーンはずっとベッドの上だった。大きな魔法を使い、精も根も尽き果てたかのように寝たきり状態になっている。
数日経っても食事も自分では食べられない有様だった。だが、ザクートが自分の身体に入ったことは光栄だと思っていた。
しかも悪い事ばかりでもなかった。
一日一回蛇の目のゆりが様子を見に来ていたからだ。
ゆりはシャナーンに食事を食べさせてあげたりもしていた。
（王妃に食べさせてもらうなんて・・・）と情けなく思ったシャナーンだったが、（これはこれでいいかも）などとも思う自分もいるのだった。
「はい、あーん」
ゆりの言葉に大きなクッションにもたれたシャナーンは口を素直に開けていた。身体は辛かったが、シャナーンはなんだかザクートに
感謝したい気分にもなっていた。
「早く元気になってね」
「はい」
「もう一度あーん」
「あーん・・・・・・・」
シャナーンの視線がゆりの後ろに注がれた。
ゆりがその視線に気づいて自分の後ろを見た。
「あらミカエル」
後ろにいたのはミカエルだった。いつの間にか部屋に入ってきていたらしい。
「王妃ひどい！私の時はお見舞いに全く来てくださらなかったのに、ずるい！」
ミカエルはゆりに近づいて子供のように怒っていた。
「そうだっけ？まあ今回はシャナーンも初めてだったし・・・」
「何があーんだ。素直に口開けるな！」
ミカエルはシャナーンにも怒っていた。
「ちょっと、シャナーンは病人なんだからね。一体何しに来たの？お見舞いでしょ？」
ゆりはミカエルをベッドから離した。
「いえ、様子を見に来ただけです」
「見舞いじゃないなら帰ってよ」
シャナーンも迷惑そうな顔をしていた。
「じゃあお見舞いならいてもいいんですね？」
ミカエルは皮肉げに言うと椅子にしっかりと腰を下ろした。
「やっぱりお見舞いでも帰って」
「嫌です」
「はい、シャナーンあーん」
ゆりがこれ見よがしに言い、シャナーンにスープを飲ませていた。シャナーンはミカエルを気にしつつも口を開けている。
「ずっこい・・・ずっこい・・・」
ミカエルは小声でぶつぶつ言っていた。
「わかったわかった。ミカエルもあーん」
ゆりは丸いパンを丸ごとミカエルの口に押し込んだ。
「うー・・・」
「これでおとなしくなった。シャナーンどんどん食べてね」
ゆりは優しくシャナーンの口に食べ物を運んだのだった。
「・・・・（ずるいー）・・・」
（私がいなかったからシャナーンの身体を借りただけに決まっている！）
普段は身体を貸すのは嫌なのにシャナーンにザクートが入る方が嫌なのか、ミカエルは「次に寝込んだら絶対来てくださいね」とゆりに
念を押していた。
「絶対ですよ」
「次もシャナーンに入られるかもよ？」
「いえ、絶対私です」
「いっつも嫌だって言ってるくせに・・・シャナーンのザクート王素敵だったー」
威厳のあるシャナーンはかなりゆりの好みにはまっていたようだった。思い出すだけで頬が赤くなっている。
「私だって素敵ですよ」
ミカエルはパンをかじりながら言った。
次にザクート王が現れたとき、ミカエルとシャナーン、一体どちらの身体を借りるのか、（どちらでもいいから早い内にお会いできればいいな）
と思ったゆりだった。
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