第4話
「おほほほ〜捕まえてごらんなさ〜い」
城の庭園で瞬間移動している女性が一人いた。ゆりである。天気はぽかぽか温かい。花が咲き乱れた庭園は色彩豊かで
美しかった。ラギの花壇以外は。
「こっちよ〜」
ゆりは浮かれ顔だったが春の陽気のせいというわけではない。
瞬間移動ができるのがうれしくてたまらないようだ。相変わらず瞬間移動は下手だが、ちょこまかと小さな移動を繰り返している。
近くにはミルキダスがいたが、どうしていいのやらわからないといった顔つきだった。
「ミルキダスったらまてーって追いかけてくれなくちゃ」
「まてーですか。では、まてー」
ミルキダスは律儀にゆりを追いかけて、すぐに捕まえていた。
ゆりは「捕まえてごらんなさーい」と言って再び逃げていった。
ミルキダスにとってはよくわからない遊びである。
「瞬間移動って楽しいなあ。いっつもできればいいのになあ。そのうちできるようにならないかなあ・・・」
もう一人のゆりにとっては瞬間移動もなんでもないことなのだが、黒目のゆりにとっては瞬間移動は夢の魔法のようなものだ。
「ぱっと街に移動してさっと帰ってきたいのになあ・・・」
「それは少々まずいと思いますが・・・」
「ばれたら怒られそう。街に行って一般の人たちを眺めたり、洋服屋さんをのぞいたりしたいなあ。今の流行を知りたい」
「流行ですか、女性の服は毎年たいして変わってないと思いますが・・・」
「そうなの？ちょっとは違うんじゃない？」
「はあ・・・まあ私はそういうのには疎いですから・・・・」
頭をかいていたミルキダスの姿がはたっと止まり、石のように固まってしまった。
「どうしたの？」
視線の先をたどってみると、東屋の近くの大木の横に金色の姿が見えた。
「あれ？ハザーク様？」
「王妃、では私はこれで、ハザーク様と遊ばれてください」
ミルキダスはそう言ってそそくさと去っていった。
「あ、ミルキダス・・・・」
ゆりが名前を呼んだ時にはすでにミルキダスはいなかった。
すると近くにハザークがやってきた。
「ハザーク様、日向ぼっこですか？今日はいいお天気ですねえ」
ゆりはにこやかに言ったが、ハザークは少々むっとした表情を向けていた。
「お花も綺麗だし、空も青くて綺麗ですね」
春の陽気とハザークは、あんまり似つかわしいとは言えなかった。
「赤い蛇の男と何をしていたんだ？」
「追いかけっこして遊んでました」
「追いかけっこ？」
「瞬間移動ができるのが楽しくてー」
「そうか、なら我としよう」
とハザークが言い出して、ゆりの顔が若干引きつった。
「え？ハザーク様と？それはちょっと・・・・」
「なんだ？」
「なんか怖いです」
「捕まえた」
ハザークはゆりの腕をつかみ、そのまま瞬間移動で自分の塔に連れ去ったのだった。
母親は陽気に遊んでいたが、子供達はいつもの通り勉強したり、力の修行中だった。
ちなみにタロウはまだ蛇の国にいる。ロイと遊んだりラギに勉強のコツを教えてもらったりしている。タロウはもう何度もこの
国に来ているので、城の中にいてもあまり違和感がなくなっていた。大量の料理を作る料理長が大変なくらいだ。
今日は天気が良いからと遊べるのもロイやナナミ、ミシェイラくらいのもので、特に長女のアナスターシャには
さぼりは許されないのである。
こんな日はプリモと一日草原で遊んでいたいものだが、やっぱりそういう提案は却下されていた。
この日アナスターシャは闘技場にいた。力の訓練の日、相手をしているのはシャナーンである。
アナスターシャが力でいくら攻撃しても、シャナーンは涼しい顔でかわしていた。
まるで次の動きを見越しているかのようでさえある。
若い女性達が見れば黄色い声援が出そうなほど、青系の戦士服に身を包んだシャナーンは美しく、動きにそつがない。
大人の男になってそう日が経ってもいないが、貫禄ではすでに中堅クラス、頼もしい存在である。
外見上も年を追うごとに男らしく変化を遂げている。だが、決して男臭くはない。中性的な風貌であるのに、気質だけは
父親のヴィクター譲りで濃く、攻撃的で、男そのものなのだ。そんなアンバランスさがシャナーンの魅力の一つで
あるのかもしれない。
そんなシャナーンをアナスターシャはうっとりとではなく、憎らしげに見つめていた。
「そろそろ休憩しましょうか」
アナスターシャがばててきたので、シャナーンが提案した。
「うううう・・・もうシャナーンの顔ってば嫌味！ヴィラの次に！」
「はあ？」
アナスターシャは悔しさのあまりに地団駄を踏んでいた。
「その涼しい顔が今日は憎いー！」
「はあ・・・・」
シャナーンは首をかしげていた。どうやら攻撃をかわす時にも表情ひとつ変えないシャナーンが気に入らなかったようだ。
アナスターシャは傍らに用意されていた椅子に座り、侍女が用意したお茶を飲んだ。
シャナーンも横の椅子に座っている。こちらはまったく疲れてはいないようだ。つまり、ほとんどアナスターシャだけ力を使わされて
いたことになる。
闘技場には他の戦士達もいた。右半分では若い戦士達が剣の訓練をしている。
「あ、でもハインリヒの顔の方が嫌味かも。一番ヴィラ、二番ハインリヒ、シャナーンは三番目ね」
アナスターシャは指を三本出した。
「それは光栄です」
シャナーンが言うと、「意味わかってないんだから・・・」とアナスターシャはぶつぶつ言っていた。
「これがイシュタールだとね、一回は途中でほめてくれるんだけどね。「おお、今のはよかったですよ、姫」とか」
「イシュタール殿はほめ上手ですからね」
「シャナーンってばずっと無表情なんだからー」
「どうもすみません」
お茶を飲んでいたアナスターシャはある話題をふった。
「そうだ。シャナーン母様に会った？また一族の女性になったのよ」
「いえ、まだ・・・話には聞きましたが」
「耳大きい母様かわいいよ？」
アナスターシャが様子を伺うように言うと、シャナーンの表情がちょっと変わっていた。明らかに何かを想像しているようだ。
（よしよし、作戦成功・・・・いまだ！）
「隙あり！」
アナスターシャは右手を出して至近距離で力を発動させた。しかしシャナーンはひょいと前にかがんでそれをよけ、その力は
離れて同じように休んでいたほかの戦士へと飛んでいったのだった。
「いたー！」
不意打ちを食らった戦士は悲鳴をあげ、アナスターシャはあわてて「ごめんなさーい！」と謝りに行ったのだった。
「ごめん、本当にごめん！」
アナスターシャは平謝りで、戦士の方は腕を押さえたまま「たいしたことないですから」と言っていた。
その様子を見たシャナーンは「まだまだだな・・・」とつぶやいた。仲間しかいない場所だと思って油断してはいけないのだ。
前を向いたシャナーンの表情がふっと和らいだ。
それにしても・・・一族の女性になった王妃・・・かわいいんでしょうねえ。元のままでも美しすぎるというのに・・・
王妃の大きい耳・・・想像しただけでぼんやりしてしまう・・・
耳をちょいちょいっと触りたいなあ。ちょいちょい、さわさわっと
シャナーンの左手の親指と人差し指は何かを触れるように動いていた。
耳を障られてくすぐったがる王妃の姿を想像しただけでもう・・・
しかし私にはそんなことは許されないのだ。男としての勤めも果たしていないのだから・・・・
シャナーンは赤い月で恋人を抱けなかったことをまだ気にしているようだった。
「隙ありー！」
アナスターシャが声と共に再び攻撃してきたが、今度はシャナーンは右手でぱしっと受け止めていた。
「あーもう！悔しい！」
「まだまだですね」
（大声をあげて攻撃しなくてもいいのに）と思ったシャナーンだったが、そこがアナスターシャの人の良い所なのだろうとほほえましく
思っていた。
「こうなったら他の攻撃に変えるわ！」
「？」
シャナーンが何だろうと思っていると、アナスターシャは先ほどアナスターシャの攻撃を受けた戦士の肩にぽんと手を乗せていた。
「お詫びに母様に会わせてあげる。気に入られたら恋人になれるかもよ！」
「え？」
「え！！」
戦士も驚いたがシャナーンの形相も変わった。
「何言ってるんですかー！！」
とシャナーンが飛んで行った。その素早さたるや恐るべしである。
「だからお詫びに」
「お詫び？そんなのいらないですよ。傷なんかないでしょう？」
シャナーンは戦士の腕をぶんぶん振っていた。腕にはちょっと青いあざができていたが、「こんなものすぐ治ります！」
とシャナーンは腕をぽんぽんたたいていたので戦士は「いていて」言って顔をしかめていた。
「攻撃って一体これのどこが攻撃なんですか」
「精神的攻撃」
しれっと言ったアナスターシャに、シャナーンの目が輝いた。
「それでは先ほどの続きしましょうか」
「うわっ・・・なんかこれって自分で墓穴ほったってやつかしらん？」
アナスターシャは引きつった顔で侍女に聞いていた。侍女は（まったくその通りです）と言いたかったろうが黙っていた。
間にいた戦士は怖かったのか逃げていた。このシャナーンと張り合う気はさすがにないだろう。
「さ、真ん中にどうぞ」
シャナーンが手で示した。
「母様助けてー」
アナスターシャの悲鳴はゆりには届かなかったのだった。
その頃ゆりはハザークと寝室にいた。双方裸でゆりの気はピンク色である。途中ゆりは入れ替わり、今は蛇の目のゆりが
出ていた。
情事の後ハザークはゆりに文句を言っていた。
「王妃はどっちも冷たいな。我は待ってたのに・・・・ずっと・・・」
「今日の午後にもお邪魔しようと思っていたんですよ。本当ですよ」
「・・・・」
「本当ですよ。それよりも、せっかく蛇紋見たのに反応は「ほお」だけだったですね。もっと驚いてくださいよ」
ハザークはゆりの金色で腹の下側にいろいろな色がある蛇紋を見ても大して驚かなかった。
ゆりとしては大げさくらいに驚いてほしかった。
「しょうがない。王妃の珍しい蛇紋にもすっかり慣れてしまったんだから」
「もー・・・」
「王は驚いたか？」
「それが、まだ見てないんですよ。まだ引っ付いてないんです」
「そうか、倦怠期か。まあ誰にでもあることだ。気にするな」
ハザークは同情するでもなく、ゆりの頭にぽんぽんと手を置いていた。
「いえ、そういうわけでは・・・・そうだ、ハザーク様今晩ミシェイラと一緒に寝てくれません？」
「やだ」
ハザークは即答した。
「えーどうしてですか？あんなに愛してるんだから一緒に寝てくださいよ」
「王と一緒に寝たいと泣かれたら困る」
「ちぇー」
ゆりは口を尖らせていた。
昨晩もミシェイラがひっついていたので、あれやこれやとしてる間に二人眠ってしまったのだった。
トーじゃなくてマーと寝てるんだけど・・・・
まあいいか・・・まだだいぶ変わってられるし・・・
ハザークは布団をめくってゆりのおなかを見ていたので、ゆりは心なしかおなかを引っ込めていた。
「あのー何か？」
「ちょっと気になった」
ゆりはもっとおなかを引っ込めていたが、ハザークが気にしていたのはおなかの中にいる赤ん坊だった。
ちょっとは力があるかもしれないな・・・これなら我が力をあげることもできるかも・・・
今日は疲れたから今度にしよう
などと考えていたのだった。
午後、黒目のゆりは城の中で出会ったエルバートといろいろお話をしたり、昼寝から起きたタロウとラギのお勉強を眺めたり
していた。この二人のコンビは結構見ていて面白いものだ。自分の部屋に戻り、ゆりはふと違和感に気づいた。
「あれ？そういえば変身してからミカエルに会ってないわ。どうしたんだろう？いっつも忙しくても真っ先に現れるのに・・・」
いつものミカエルらしくないではないか。
「フリットとイシュタールとハインリヒも顔を見に来たのに・・・シャナーンとミカエルはまだだわ・・・」
シャナーンは最近遠慮がちなので理由はわかるが、ミカエルは不明である。いつも来る人が来ないとなんだか落ち着かない。
突っ立ったままうーんとうなっていたら侍女のミラが部屋にやってきた。
「あ、ミラ、最近ミカエル見ないんだけど、何か理由知ってる？」
ゆりはすぐにミラに聞いてみた。
「ミカエル様なら先ほどお会いしましたよ。普通にお元気そうでしたよ」
「え？そうなの？なんで会いにこないんだろう？」
「ミカエル様まだなんですか？珍しいですねえ。入れ違いになられたのでは？」
「そうかなあ」
ミラも首をかしげていると、ぼそぼそと声が聞こえてきた。二人が驚いてきょろきょろ見回すと、声は姿見鏡から聞こえてくる。
「え！」
「あれ？ミカエル様じゃないですか？」
鏡にはミカエルの姿が映っていたので二人はびっくりした。ミカエルはソファに腰かけて脚を組んでいる。
「なんで？」
ゆりは鏡にへばりつくようにして見ていた。
「・・・王様の休憩室のようですねえ・・・」
ミラは部屋の様子からそう感じた。
ミカエルは向かいにいる誰かと話をしているようだ。たぶんラクシュミだろう。
『・・・・たまには王妃からお誘いがほしいんですよ。ずっとお誘いがないんですもん』
ミカエルは少々いじけたように言っていた。
『誘いがなかったらどうするんだ？』
とラクシュミの声が聞こえた。
『あるでしょう』
『わからんぞ』
『ありますよ。絶対！ところで今回の蛇紋は・・・・』
映像は薄れて消えてしまい、鏡にはゆりとミラの姿が映っていた。ただの鏡になってしまったようだ。
「今のって私の話してたのかな？」
ゆりはミラを見た。
「そのようですねえ。ミカエル様王妃様のお誘いを待ってるみたいですね」
「誘わなかったら来ないのかな」
「そんな意地悪な・・・それよりも先ほどのは王妃様の御力ではないですよね・・・・」
「赤ん坊の力？私がミカエルのこと知りたがったから教えてくれたのかしら？ってことは・・・
この子、まるっきり力がないわけじゃないみたい？」
ゆりは目を輝かせながらもお腹をなでていた。
「よかったですねえ。王妃様」
「うん。うれしい。きっと王族の力があるんだわ！」
「よかったですわあ」
ミラもゆりも涙ぐんでいた。赤ん坊にまったく力がなくてもかまいはしないが、力があるに越したことはない。
「こんな力があるなんて・・・すごいわ・・・」
実はミシェイラがお腹にいる時にもおこったことだったが、その時は蛇の目のゆりの時だったのでこちらのゆりは知らなかった。
あの時は鏡に映ったのは遥か過去の時代を生きるドルイドだったので、ゆりの力はかなり消耗し、大変なことになったのだが、
今回は映ったのが近くにいたミカエルだったせいか、ゆりの気は減ってはいたが、ごっそりなくなったわけではなかった。
「喜びついでにミカエル様も呼んであげてくださいませ」
「やだ」
「またまたそんな意地悪をおっしゃらないで・・・・」
「やだもーん」
意地でも誘ってやるもんか、と思ったゆりだったが、ふと考えを改めた。たまにはかわいいこともしなければ、たとえミカエルでも
その内愛想をつかされてしまうかもしれない。
ミカエルに愛想をつかされる
↓
恋人達にも愛想をつかされる
↓
王様にも愛想をつかされる
ゆりの中にこの図がぱっと出来上がり、ぞっとした。まさに悪夢である。
（たまにはミカエルを喜ばせておこうかなあ・・・）とゆりはかわいらしくミカエルに手紙を書くことにしたのだった。
その夜、シャナーンの屋敷にエルバートがやってきていた。たまにはお酒を一緒に飲もうという話になったのだ。
ヴィクターは外出中だったので、二人は屋敷の酒飲の間で飲むことにした。
ご機嫌でやってきたエルバートは、さっそくシャナーンにゆりの話題を降った。
「今日、王妃の姿がちょっと変わっていたからびっくりしたよ。君はもう見たんだろう？王妃があの耳だとなんだか不思議だよね」
シャナーンが返答する間もなくエルバートは続けた。
「つい耳に障らせてもらっちゃったよ。ちょいちょい触ったらぴくぴくって動いてかわいらしかったなあーわっ？！」
エルバートの身体が前に吹っ飛んでいた。
「？？？な、何？」
エルバートはわけもわからず床に前のめりに倒れていた。背中から誰かが蹴ったのだ。誰かと言っても後ろにいたのは
シャナーンだけだが。
「ごめん、足がちょっと滑って・・・」
シャナーンはエルバートを見下ろしつつそう言った。
「え？・・・足が滑った・・・・？」
「滑ったようだ」
（普通あんな風にすべるだろうか？）
王妃の耳に障ったくらいで嫉妬されるとはエルバートも思わなかったようだ。ちなみにシャナーンの赤い月のくだりについては
エルバートは知らない。
「ただちょっと耳に障っただけだよ？」
エルバートはそこを強調していた。
「そうしたら王妃の耳がかわいらしげに動いたんだろう？」
「まあ、その・・・」
「その手を触らせて。エル」
シャナーンは今度はしゃがんでエルバートの手をそっと握り締めていた。表情はどこかうっとりしている。
今日のシャナーンこわっ！！
危機を感じたエルバートは「あ、用事思い出した」とさっさと帰ろうとした。
「まあそういわずに、王妃の耳についてもっと教えておくれよ」
シャナーンはエルバートを立たせて、そう言った。
「耳についての話題はもうないよ」
「そんなことないだろう。もっと、もっと何かあるんじゃないのかな？耳以外はどうだい？耳以外にどこかに障ったりなんかは」
「そういえば肌にも触らせてもらったよ。手にーおおっ！」
シャナーンの蹴りを今度はエルバートは後ろに避けていた。
「シャナーン！」
シャナーンの形相が変わっていた。今日はよく表情が変わるようだ。
「手、手、手にも触ったのかい？さっきは耳だけだと言ったのに・・・」
シャナーンの手がわなわなと震えていた。エルバートは部屋の隅っこに逃げていた。
「やっぱり帰った方がよさそうだ」
「いーや帰さない。王妃の美しさに目がくらんで何かしたんだな！？白状しろ！」
「してないー！」
ついにエルバートは瞬間移動で屋敷から出て行った。だが、妄想にかられたシャナーンはエルバートを寮まで追いかけて行った。
こうなるともう手がつけられない。
「君はやっぱり王妃の恋人をまだ狙ってるんだな！」
「違うって！ちょっと触っただけなのにー！！」
「そのちょっとでやっぱり恋人になりたいと思ったはずだ！」
「今日のシャナーンはもう！なんなんだよー！！」
寮の周りをエルバートは逃げながらシャナーンと言い争いをしていた。
「君は時々ミカエル様より手に負えないぞー！！」
などという絶叫も聞こえていた。
やがて二人の争いを聞いた戦士達が集まり、「王妃の耳をめぐってまた二人が争った」と再びおかしな噂が流れたのだった。
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