第５７話
神の国である、小さな川岸でぼんやり立っていたのは伝令神グレンであった。
川の流れは緩やかで、水面には自分の姿が写っている。
神として生を受けてから、自分の神気がこんなにも衰えるのは、初めてではない。
神も、体調を崩すことがたまにある。つい最近、ガーベラも体調を崩していたくらいだ。
初めてではないのだが、今回は、どうもかってが違うような気がしていた。
自分だけがこれほど衰えるというのは、珍しいことなのである。
元々神気もそんなに強い方ではない。むしろ弱い方である。
神々の列でいえば、末席がグレンの席であった。
グレンの仕事は、アシュランやヒルデリアの命令を他の神々に伝えることである。まあいわば、小間使いのようなものだ。
時には神々の情報を主に伝えるために、他の神々からはあまり好かれる存在ではなかった。
グレン自身、神々から好かれたいなどとは思ってはいない。自分の仕事ができれば、それでいいのである。
そうして長い長い時を生きてきた。他の神々のようにグレンの存在は人間に影響を及ぼすことはない。
なんだか頭が重い
こんなにも神気が薄くなってしまうとは……
そのうちなくなってしまうんじゃないだろうか……
グレンはそんな不安を抱いていた。
飛ぶ速さも落ちている。飛べなくなってしまったら、雲の上の神殿に行くこともままならない。
早めに力が戻ればいいが、このままだったらどうすればいいのだろう
仕事ができなくなったら、私は用無しになってしまう
そうか、私は用無しになるのが怖いのか……
グレンは自分の不安をそう分析した。自分がこの神の国にとっては取るに足らない存在だと思っていたために、そう思うのである。
こんなにも不安な気持ちになるなんて、本当に一体どうしたんだろう……
グレンは視線を上に向けた。いつもは近い空が、今はとてつもなく遠く見えた。
場所は変わり、蛇の国のお城である。
昨晩はぐっすり眠ったシスは、今日は血色のいい顔立ちだったので、ゆりも周りもほっとしていた。
シスは内緒で侍女に頼み、成人男性が着ることができる大きな服を調達してもらった。
「お父さんが着られる服を、お願い」
といったので、侍女は、ラクシュミが着られそうなサイズの服を用意した。
その服を見てシスの目は点になっていた。
侍女が用意した服は、銀色に輝いていたからである。派手すぎる。
「ごめん、地味な服がいいんだ。黒っぽいの用意してくれる？」
「黒でございますか？」
「そうだなあ。ミカエルが自分の屋敷でくつろいでる時に着てるような服がいいな」
シスは具体的にいってみた。あえてハインリヒの名前を出さないのは、本人に話が行くと困るからだ。
「ミカエル様ですか……」
「ミカエルには言わないでね。まあ黒っぽい地味な服お願い。王族用じゃないやつね」
「かしこまりました」
侍女はきんきらきんの服を持って出ていった。
「服を用意するだけでも大変だなあ。ミカエルに服ちょうだいって言う方が早いかな？ でも理由がないしなあ……」
洋服屋に自分で買いに行くというのも目立つだろう。
夕方には、侍女は地味目の服を用意してくれた。白い下着もついている。
「ありがとう、そこのクローゼットに入れておいてね」
シスは寝室のクローゼットをさしていた。
「あのーこの服はどうなさるんですか？」
侍女は不思議そうである。
聞かれる事は当然シスも予想していた。
「また変身花を使おうと思ってね。花がついたらラギにもらうんだ。それで今から準備しとくの」
「シス様自身のためなのですか？ならば朝の服の方がようございましたのに」
「いいんだ。これで、どうもありがとう」
シスはラクシュミに報告されることも考えて、不審がられない理由を考えていたのだった。
シスはクローゼットに収まった大人の服を見て、にやっとした。
これは、朝と夜にシスが着る服が入っているだけで、大きなクローゼットは別にあるのだ。ここにドルイド用の服を用意することができた。
よし、これでドルイドの服は大丈夫だな。よしよし、明日ドルイドを迎えにいこうっと♪
シスはその夜もぐっすりと眠りについたのだった。
そして朝、朝食を食べたシスは、廊下で出会ったハインリヒに挨拶して言った。
「僕、後でドルイドに会いに行こうと思うんだ。城に連れてきてもいいよね？」
「ドルイドですか？ 今はだめですよ。ちょっと鼻水が出てるもので、城に連れてくることはできません」
思いもかけない言葉にシスは驚いていた。
「えー？ ドルイド、風邪引いてるの？」
「軽い風邪ですが、なかなか治らないもので、すいませんね」
「そうなんだ……じゃあだめだね」
シスはしょぼんとした。
もしかしたら、あの夜あんな姿でいたのが原因かもしれないとシスは思った。
（ごめん、僕がもっと気を利かせていれば……）と心の中でドルイドに謝っている。
「じゃあ元気になったら教えてくれる？」
「いいですよ」
ハインリヒは怪しむこともなく去って行った。
うーん、計画してもままならないものだなあ……まあいいや。そのうちだ
シスは気を取り直して、今日の訓練へと向かったのだった。
それから数日後、伝言貝の歌で眠りについたゆりは神の国に行くことができた。
神殿にいたゆりは、前回のことを思い出していた。
今日は……地味に遊ぶことにしよう。そうしましょう
今回はハロルドには会わずに、適当に遊ぼうとゆりは心に決めた。
考えてみれば、あの大事件があってから、ゆっくりと神の国で過ごしていない。恋人に会うとまた恥ずかしくなりそうだ。
「今日は休暇よ！ 何して遊ぼうかな？」
ゆりはとりあえず神殿の外にいた白馬に乗せてもらい、そこらを散歩したのだった。
女神と白馬、いいわねえ……
人間世界では馬に乗ることもないため、こういうこともかなり気分転換になる。
森の中の小道をゆっくりと進んでいると、素朴な楽器の音色が聞こえてきた。オカリナの音である。
ゆりは白馬から降りて、音がする方に行ってみた。
やはり切り株に座ってオカリナを吹いていたのはグレンだった。
グレンはこちらに気づくと演奏をやめた。
「やめなくてもいいのに」
「ガーベラ様……」
「オカリナの音色って郷愁を誘うのよねー」
ゆりはどんどん近づいて、またグレンと同じ切り株に座っていた。
「ガーベラ様、随分久しぶりでしたね」
グレンはついいっていた。もう一人のガーベラだと気づいたようだ。
「そうだっけ？」
「今日は私も時間があるんです。サンダルを貸して差し上げますよ」
「本当？ ありがとう！」
ゆりは素直に喜んで、グレンのサンダルを履いてふわふわ飛んだ。
「わーい！」
ゆりは空高く飛んでいった。
そんな無邪気な様子を見て、グレンは笑っていた。
グレンは体調が悪すぎるので、アシュランに「休んでいい」と言われていたのだった。
久しぶりに空を飛んだゆりはうれしくて、あちこち飛んでいた。
そしてクーリーフンに出くわしたのだった。クーリーフンは空飛ぶガーベラに驚いていた。
「ああ、お母さんかあ」
「クーリーフン！ グレンにサンダル借りたの〜」
「そうなんだ。びっくりした」
「楽しいな〜」
ゆりはるんるんである。空を泳ぐように飛んでいる。
クーリーフンはちょっと上を向いて、ゆりを見た。
「あのさ、グレン元気なかったでしょ？」
「え？ そうかな？ 気づかなかったけど」
「実はグレンには悩みがあってさ、それで悩んでるんだ」
クーリーフンはゆりの横を飛びながら言った。
「何の悩み？」
「不能だよ。不能で悩んでる」
ゆりの身体ががくっと下に落ちて、クーリーフンがあわてて支えていた。
「びっくりしたー」
「大丈夫？」
「不能って……夜がだめってことよね？ 神様もそんなことあるの？」
「そりゃあるよ」
クーリーフンは真面目で、冗談でもなさそうだった。
しかしクーリーフンの口からあんな言葉が飛び出すとは。
「お母さんの力でなんとかしてくれないかな」
「え、でも……」
（なぜ私に言うんだろう？）とゆりは思った。クーリーフンはいつものガーベラではないと分かっているはずだ。
「もう大丈夫？ じゃあ頼むよ」
クーリーフンはゆりの身体を離して飛んでいった。
「あ、うん……」
ゆりは釈然としないながらも空を下降して、グレンがいた所に戻っていった。
衝撃的な言葉が頭の中を巡り、もう飛ぶのを楽しむどころではなかった。
グレンは切り株に座ったまま待っていた。
グレンがそんなことで悩んでるなんて……
不能がどれほど男にとって大変か、ゆりはよく分かっていたので、かなりグレンに同情してしまっていた。
そりゃ私がなんとかできるものならしてあげたいけど……でも不能で悩んでるってことは彼女がいるんじゃないのかな？
でなければ悩む必要もないだろう。
ゆりは「ありがとう」といってサンダルを返して自分のサンダルをはいた。
「早かったですね。もういいんですか？」
「うん。グレンって彼女はできたの？」
ゆりはいきなり聞いてみた。
「いえ、いませんよ」
「そうなの」
不能が原因で彼女ができないとか、そういうことかもしれない……
「それでは私はこれで」
グレンは去って行こうとしていた。
「ねえ、暇ならお話しましょうよ」
ゆりは誘ってみた。
「私とですか？ 恋人と話された方がいいですよ」
「まあいいじゃない」
ゆりは切り株に座るように促した。
「はあ……」
グレンは座りずらそうに、ちょっと身体を離して座った。
さあどうしましょう
まさかいきなり押し倒すわけにもいかない。ゆりは自分で誘っておいてちょっと困っていた。
どういう風にそっちへ話を持って行けばいいのかわからない。
だが、今は愛欲の女神として、何かするべきだろう。でなければ、ガーベラでいる意味がない、とゆりは使命感を抱いていた。
「そうだ、男の神様で、歌が上手な神様っていえば誰だと思う？」
ゆりはとりあえず普通の会話から始めることにした。
「男の神様ですか……常識的にいって、ラメーン様が一番ではないかと思いますが……」
グレンは真面目に返した。
「ラメーン？ 楽器だけじゃなくて歌も上手なの？」
「人前で歌われないので聞いたことはないですが、たぶんお上手でしょう」
そうかあ。他には？」
「ジュライ様ですかね。アリアス様も上手ですよ。他の神々も、歌えばそれなりに上手だとは思いますが」
「そうよね。じゃあ歌を聴いたら眠っちゃう神様はいるかしら」
ゆりは伝言貝の歌の主が誰なのか気になっていたのだった。
「歌で眠る神様ですか……さあ……まあ眠りといえばオルガ様ですが」
「オルガ？」
あの歌はオルガの歌？
ゆりはオルガが歌っている所はあまり想像できなかった。ゆりが癒やしの泉にいた時、オルガと出会ってはいない。
オルガが私の美容を気遣って歌をくれたってのもわからないしなあ……
ゆりは首をかしげていたので、グレンも不思議そうだった。
「オルガの歌、聞いたことある？」
「ないです」
「謎だわ」
歌のことは謎のままだったが、これからそっちの方へ話を持って行くのがゆりには難しかった。
うーん、困ったわ……
グレンもなんだか居心地が悪そうである。
クーリーフンに期待されたからには何かしなければ……
そう思っていたら空から一人の少年がやってきた。パティウスである。
「二人で仲よさげに何してるの？」
パティウスは長い白い物を持ってぶんぶんまわしていた。グレンの表情がさっと変わり、立ち上がっていた。
「パティウス様、またしょうもないいたずらをする気じゃないでしょうね」
「ガーベラ、ねずみがいるよ」
「え？ きゃあ！」
ゆりがぎょっと立ち上がったとき、パティウスは白い物をぽーんとほおりなげた。
それはでかいわっかになり、グレンとゆりの身体の周りにかかり、パティウスはそのわっかをぎゅっとしめたのだった。
「ちょっ！ 何するんですか！」
「グレン、うらやましーいいなーじゃあねー」
パティウスは二人を引っ付けたまま飛んでいってしまった。
「パティウス様ー！！！！」
グレンの絶叫が辺りに響いていた。
ゆりはグレンの身体とぴったりひっついていた。グレンは蒼白だった。
めちゃくちゃ戸惑い、腕を動かそうとしていたが、ひもはぴったり身体に引っ付いていて、手も横に固定されたまま動かせない。
「ガーベラ様も動いてみてください」
ゆりはじっとしたまま動こうとしなかった。
「ガーベラ様、どうしたんですか？」
グレン一人がおたおたしている。
グレンの身体には、ガーベラの豊満な胸が押し当てられていた。
「だ、誰か来たら大変ですよ。早くなんとかしなければ」
グレンは身体をひねろうとしている。が動けば動くほど、白いわっかは二人を締め付けていた。どうやら特殊な結び方をしているようだ。
「これって何のひも？ あ、ゴムかな。グレン動いたら痛いわ、動かないで」
ゆりが訴えると、グレンが動きを止めた。
「しかし、こんな場面を誰かに見られたら困ります」
「そうねえ、だけど動いたら痛いの」
「しかし、」
グレンは押しつけられた豊満な胸の谷間を見て、目をそらしていた。
ゆりはこの状況を歓迎していた。これで話をそちらに持って行きやすくなったからだ。
グレンはますます顔が青白くなっていた。
うーむ、こんなに身体が引っ付いているのにちらりともそんな気にならないとは……腰だってぴったりくっついてるのに
グレンは逃げようと必死である。
これじゃあ愛欲の女神の名折れだわ！
なんとしてもその気にさせなければ！！！
ゆりは恥ずかしさよりも、逆に燃えていた。こうなると強い。
「グレンって、おっぱい嫌いなの？」
「は？」
グレンは蒼白なまま目をぱちくりさせていた。
「今なんていいました？」
「おっぱいが嫌いなのかって聞いたのよ」
「おっぱ……いきなり何を言い出すんです！？」
「だって、さっきからさもいやそうに顔を背けてるじゃないのよ！ 失礼よ」
「はあ？ しかし、じっくり見るわけには……」
「せっかくこういう状況だからじっくり見てもいいわよ」
ゆりはからかうでもなくいったので、グレンは戸惑っていた。
ちらりと女神の胸の谷間を見て、女神の顔を見ている。
「そんなじっくり見られませんよ」
「なんでよ。でかい胸が苦手なの？」
「そ、そういうことでは……」
「普通の神なら喜ぶ所よ？」
「こんな所を誰かに見られたら困ります！……あの……ガーベラ様、今日はなんか変ですよ？」
グレンは引きつった表情をしていた。ゆりは自分でも気づかないうちに、女神の力を強めていた。
つまり、グレン誘惑モードにはいっていたのである。
女神のかぐわしい匂いが強くなり、グレンは気を失いそうになっていた。
グレンは後ろに後ずさろうとして、足を滑らせて、女神の身体ごと倒れてしまった。
「うわ！ だ、大丈夫ですか？」
「大丈夫よ」
ゆりの身体はグレンの上にすっかり乗っていた。もちろん胸も腰もおしつけられている。
「……あの、このままじゃまずいことになるんですが……」
「まずいって？」
「こ、興奮しそうです……」
「ようやく？」
ゆりはうれしげに顔をあげていた。
「何喜んでるんですか。私をからかってるんですか？」
「からかってないわよ。私は真面目よ。こんなに引っ付いてて男が興奮しないんじゃ、愛欲の女神じゃないじゃない」
「はあ？」
「だから興奮していいわよ」
「はあああ？」
グレンはもう病人のように真っ青になっていたが、ゆりはおかまいなしだった。
「も……もうだめだ……」
グレンは死ぬ間際のような声をあげていた。
グレンは必死に耐えていたが、男の本能の方が勝っていた。この状況で、今までよく耐えたものだともいえるが。
やがて、グレンの下半身に変化が訪れた。身体は興奮してしまっていたのだ。
ゆりはようやくグレンが興奮状態になったのでうれしかった。
「これで満足ですか？」
グレンはちょっと怒っていた。
「おわびに手でしてあげるね」
「え？ 手？」
グレンが見ると、なんと女神は両手を動かしている。よく見ると、身体の周りのひもは、いつの間にやらなくなっていた。
しかも女神の手がグレンのズボンの中に入ろうとしている。
「え？ あれ？ ちょ、ちょっと何してるんです。触らないでください！」
グレンは逃げようとし、ゆりは足の上にしっかりまたがった。
「まだ逃げちゃだめよ」
「もういいです。もーいいです！お願いですから！」
「最後までしないとだめ」
「何がだめなんですかー！！！！」
「誰かきちゃうでしょ。しー」
これでは完全に女の方が襲っているようである。ゆりはここまできたからには、途中でやめたくなかった。
やはり達してもらわねば、という気になり、ズボンの中に手を入れていたのだった。
「う……」
女神の美しい指に触れられて、グレンはすぐにでも昇天しそうだった。
これは悪夢か、それとも幸福な夢なのか。
「ガ、ガーベラ様！」
すべてがグレンの頭から消えて、グレンは女神に抱きついていた。やがて、身体も達してしまったのだった。
ゆりは手を離した。そしてふくものがなかったので、自分の服で手を拭いていた。
グレンはぼんやりしていた。まさかこんなことになってしまうとは。今まで生きてきて、これほど驚いたこともないだろう。
「グレン、大丈夫？」
「……なんでこんなことをしてくださったんですか？」
グレンはぼんやり顔で聞いた。
「グレンが性関係で悩んでるって聞いたからなんとかしてあげたくて」
ゆりはほっとした表情を浮かべている。
「誰がそのようなことを……」
「クーリーフンがいってたけど、違うの？」
「クーリーフン様が？」
そこでグレンはぴんときた。クーリーフンは自分が気落ちしているのを知り、勇気づけようとそんなことを言ったのだろうと。
もしかしたら、パティウスはクーリーフンに頼まれたのかもしれない。
「それで、こんなことを？ 私などのために？」
クーリーフンのいうことを信じて真面目にどうにかしようと思った女神に、グレンは驚いていた。
「あなたは優しいですね。もう一人のガーベラ様ならば、そうは思わないですよ」
「え？ どうして？」
いつものガーベラが不親切というわけではない。だが、いつものガーベラがそう聞いても、「あらそうなの？」と思うだけだろう。
二人の間には長い時が流れて、いろいろなわだかまりもうまれている。それゆえだ。
「もう一人のガーベラってどういうこと？」
ゆりは今更ながらにはぐらかすように聞いていた。
「いえ、いいです。実は、ずっと悩んでました。その、性関係のことで」
グレンはぼそっと言い出した。この際そういうことにしておこうと思ったのだった。
「おかげで、ちょっと自信がでました」
「そうなの。よかった」
ゆりは微笑んでいた。
「それでは私はこれで」
グレンは元気なくふらふらと飛び去っていった。
女神としていいことをしたわ！
ゆりは満足した顔で、服も汚れたので自分の神殿に帰ることにした。
小道を歩いているとさっき乗った白馬がまだいたので、それにまたがって神殿に戻った。
そして部屋の中で服を脱ぎ捨てて奥の部屋へと入っていった。
「ガーベラの服はどこかな〜？ 服って誰か洗ってくれるのかな？ まさか自分じゃ洗わないよね？ あった！」
寝室の横の部屋にガーベラのクローゼットらしき部屋があり、ゆりはそこで似たようなピンクがかった布の服を身体にまとった。
「手はどこで洗おうかなあ……」
服を着て部屋に戻り、ゆりはぎょっと後ずさっていた。自分が脱いだ服から、にょきっと二本の足がはえているではないか。
「え……だれ？」
足はぴくりとも動かない。ゆりはそろりと近づいて布をめくった。倒れていたのは女の子だった。
首あたりまでの金色のおかっぱの女の子で、まだ子供だがかなり大きい。アナスターシャよりも大きいほどだ。
「ちょっと、あなた……」
少女の様子はおかしかった。横になったまま動こうとはしない。眠っているのかと揺り動かしてみても、ぴくりとも動かないのである。
「変だわ。アシュランの所に連れて行かなくちゃ、えーと、こういうときは！」
ゆりは布ごと女の子を抱きしめて移動した。
ついた先は滝の横だった。
ゆりはすぐに目当ての男の姿を見つけた。
「ラーズ！ この子をアシュランの所に連れて行って！早く！」
滝の近くにいたラーズはすぐに飛んできた。
ラーズは女神に抱かれている女の子をみた。
「この子、どうしたんだ？」
「わからない。私にもよくわからない。気づいたらいたのよ。とにかく、なんだか様子が変なのよ！ アシュランの所に連れて行ってあげて」
「確かに変だな。わかった。すぐに連れて行く」
「お願い！」
ラーズはよくわからないまま、女の子を抱いて飛んでいった。
「大丈夫かしら？」
ゆりはなぜあの子があそこにいたのかを考えていた。
もしかして……グレンの精液がかかった服から産まれたってことかな？
ってことは、私が産んだことになるのかしら？ うーむ……
知らないうちにいたので自分が生んだという実感がまるでなかった。
目の前を風の妖精が通り過ぎるのがみえた。
「あ、ちょっと、お願い、グレンを探して！ 雲の上の神殿にすぐ行くように言ってちょうだい！」
ゆりは妖精に頼み、妖精は女神の剣幕に、「わかりました」と言ってあわてて飛んでいった。
なんだかよくわからないけど、あの子が無事でいるように！
ゆりはどきどきしながら祈っていたのだった。
雲の上の神殿では、アシュランが女の子を見て首をひねっていた。
「この子、どうしたんだ？」
とアシュランがラーズに聞いている。
「さあ、私に聞かれても、それで、早くこの子を治してやってくれ」
アシュランはガーベラの服にくるまれた女の子の額に手をあてていた。
少女はぴくりとも動かない。だが、眠っているわけでもないようだ。
「変だな。神のようだが、神気が薄すぎる。これはどうしたことだ？」
そこにヒルデリアがやってきた。アシュランが呼んだのだ。
「ヒルデリア、この子は何の神だ？」
ヒルデリアは腰を下ろして少女を見た。
「伝令の神ですね」
「伝令神？ なぜ目を開けない？」
「さあ……どうしたんでしょうか？」
ヒルデリアも不思議そうだった。
「この子はどこにいたんだ？」
アシュランがラーズに聞いた。
「さあ、ガーベラが連れてきたんだ。ガーベラも気づいたらいたとかいってたぞ」
「ふうん？」
「おかしいですね……」
「グレンの子供じゃないのか？」
アシュランがヒルデリアに聞いた。
「そのようですが、グレンはどこに？」
「ラーズ、グレンを探してきてくれないか」
「あ、ああ、わかった」
ラーズが部屋を出て行こうとすると、ちょうどグレンがやってきたのだった。
「何かあったのですか？」
グレンはまだ何も知らないようだ。
「何かあったのじゃない。この子を見ろ。どうやらお前の子供のようだぞ」
アシュランの指摘に、グレンはきょとんとしたまま近づいていった。アシュランに支えられて、布にくるまった少女がいる。
「一体何の話ですか？」
「この子だ、知らないのか？」
「知りません」
「勝手に生まれたんじゃないのか？」
アシュランがヒルデリアに聞いた。
「そうなのでしょうか？」
「だけど、この子ちょっと、雰囲気がグレンに似てるけどな」
ラーズが言った。
「この子はどうしたんですか？」
グレンは少女を上から下まで眺めた。神気は薄く、元気がない。
「せっかく生まれたのに目を覚まさないのだ。伝令神というのは確かだが」
「伝令神なのですか？」
「ああ。そのようだが」
「神器を何もつけていないですね」
少女の足は裸足だった。グレンは生まれた時から翼のついたサンダルを履いていた。
少女にはなぜ何もないのだろうとグレンは不思議だった。伝令が仕事ならば、飛べなければ話にならない。
「そのうち翼でも生えてくるんじゃないか？」
ラーズがいった。
そのとき、グレンはあっと何かに気づいた。
そして、今までのことがすとんと心に落ちたのだった。
そうか、こういうことだったのだ！
私の神気が弱まったのは、やはり理由があったのだ！
グレンは自分のサンダルを脱ぎだした。
「どうしたんだ？」
アシュランが聞いた。
「アシュラン様、わかったんです。私の神の気が弱くなったのは、こういうことだったんですよ」
「ん？」
グレンは自分のサンダルを少女に履かせた。
「おい、グレン……」
「こういうことだったんです。女の子ならば、みなにかわいがられるでしょう。アシュラン様、ヒルデリア様、お世話になりました」
「え？」
「グレン！？」
「あっ！」
お辞儀をしたグレンの身体は、すーと消えてしまった。変わりに少女は目を開けた。青い瞳をしていた。
「…………」
アシュラン、ヒルデリア、ラーズの３人はぽかんとしていた。
たった今、何が起こったのか。
グレンは少女に神器を譲り、消えてしまったのだ。
ということはつまり……
「神の交代ってわけなのか？ まさか、いくらなんでもひどいじゃないか、アシュラン」
ラーズはアシュランに非難の瞳を向けて、アシュランは「え」とのけぞっていた。
「ちょっとまて、私はこのことについては何もしてないぞ」
「だが、神を交代させることができるのは、アシュランだけだろう」
「そうだが、これは違う。私はあいつを重宝に思っていた。いなくなると不便だ。消すわけがないだろう」
「じゃあこれが自然におこったことだというのか？」
「そうだ。私だってまさかこんなことになるとは……」
「あー……」
目を覚ました少女は泣き出してしまった。
「おいで、服を着せてあげましょう」
ヒルデリアは優しく言って、少女を違う部屋に連れて行った。
ラーズはじろりとアシュランを睨んでいる。どうも疑っているようだ。
「私は消してない。本当だったら」
「じゃあ元に戻してやってくれ」
「そう言われても……これが自然に起こったことだとしたら、このままの方がいいんじゃないのか？」
「そんなばかな」
ラーズはグレンが好きだったわけではないが、グレンがいなくなってしまったことに結構なショックを受けていた。
神の交代が目の前でおきたのだ。まさかこんなことがありえるなんて、思ってもいなかった。
「さんざんアシュランにこき使われて終わるなんて、気の毒だ」
「私だって悲しんでいるんだぞ」
アシュランはふてくされていっていたのだった。
りんごの木が並ぶ果樹園にて、サントスが一本の木の枝に誰かがひっかかっているのを発見していた。
「おーい」
と叫んでも動かない。
「おーい、グレンじゃないか、どうしたの？ まさか空から落ちた？」
その声に、その人物ははっと目を覚まし、それと同時に木から落ちたのだった。
「わああああ！」
２メートルほどの高さから落ちたグレンは、腰を打ったのか、「いたた」と腰を押さえていた。
「大丈夫？ 一体どうしたの？ あれ？ サンダルはどうしたんだい？」
サントスはグレンが裸足なのに気づいた。
「あれ？ 消えてない。てっきり消えたのかと思ったのに……」
「？」
サントスはおかしなグレンに首をかしげ、とりあえず、カサンドラの神殿に連れて行ったのだった。
グレンは神殿にいたカサンドラに事のあらましを説明した。
横ではサントスも驚きながら聞いている。
「カサンドラ様、私はこれから一体どうしたらいいんでしょう」
サンダルも失った今、自分が神の国にいる意味がないと、グレンは思っていた。
話を黙って聞いていたカサンドラは、やがて「ばかなことをしたものじゃ」と言った。
「やり方が違っていたのだよ。今から雲の上の神殿にいこう。サントス、馬車を用意しておくれ」
「はい！」
サントスはあわてて神殿を出て行った。
「グレン、何も不安がることはない。グレンだって立派な神の一員ではないか」
カサンドラはグレンを安心させるように言った。
「カサンドラ様……しかし……」
「消えてもいいなどとはばかなことよ」
カサンドラ、グレン、サントスの３人はペガサスにひかれた馬車に乗り、雲の上の神殿へと向かった。
伝令神として生まれた少女は、ヒルデリアの部屋にいたのだが、泣いてどうにもならなかった。
妖精達が慰めようとしていたが、泣きじゃくるばかりである。
「困ったのう……」
ヒルデリアも困り顔だった。ヒルデリア自身もグレンがいなくなったことも悲しかったが、
やはり、この少女も同じことで悲しんでいるに違いない。
カサンドラ、サントスと共にグレンが戻ってきて、ヒルデリアは珍しく「ああ！ グレン！」と歓喜の声をあげていた。
「ヒルデリア様……」
「驚いたではないか！ てっきり消えたかとおもうた」
「私もてっきりそう思ったのですが……」
妖精が一人アシュランに知らせに走って行った。
そしてアシュランがあわててやってきて、「グレン！ よかった！」と喜んでいた。
「ほらみろ、私のせいじゃないだろう！ 誰かラーズにも知らせてこい！」
アシュランはあわてて命じていた。
「グレン、まったく、びっくりさせるんじゃない！」
「すみません。私はてっきり、自分の役目は終わったかと思ったんですが……」
「グレンの役割はグレンにしかできないもの。サンダルを両方あげたのがいけなかった」
カサンドラは泣くのをやめて、グレンを見ていた少女に近づいた。
「サンダルを片方もらってもいいかな？」
少女はこくりとうなずいて右のサンダルをカサンドラに渡した。
カサンドラはそれをグレンに渡した。
「しかし、片方だけでは飛べませんよ」
「まあ待ってみようではないか。はいてごらん」
「はい」
少女はグレンに近づいて、グレンと手を繋いでいた。グレンは不思議そうに少女を眺めている。
「名前は決めましたか？」
カサンドラはヒルデリアに聞いた。
「ええ、ライサにした」
「ライサ」
グレンが少女の名を呼ぶと、少女は初めてにこりと微笑んだ。
「かわいい子だね」
とサントスが言った。
「おとうさん？」
少女がグレンに言った。
「え？」
「やっぱりグレンの子供じゃないのか？」
とアシュラン。
「私の身に覚えはありませんが……」
ライサの神気に引っ張られるように、徐々にグレンの神気が回復してきた。
すると二人の足に、新たなサンダルが現れたのだった。
「ああ！」
「おおっ！」
ライサのサンダルはライサの足に合った大きさに変わっていた。
ライサはうれしそうに足を踏んでいる。
グレンは自分のサンダルを見つめていた。
「結局、神が一人増えただけだったのか。グレンの神気が弱っていたのは関係なかったのかな？」
アシュランが首をかしげていた。
「グレンにも気持ちの切り替えが必要だったのでは？」
カサンドラが言った。
気持ちの入れ替え……あれかな？
グレンは昼間のことを思い出していた。確かに、すごい出来事だった。長年の想いが成就したわけではないのだが、
あれで何かが振り切れたような気がしないでもない。
「何はともあれ、よかった。鐘を鳴らしましょう！」
カサンドラが笑顔で言った。
やがて、神の国に神の誕生を知らせる鐘の音が響いた。
話を聞いたラーズもやってきた。部屋の中は和やかな雰囲気になっている。
ラーズはグレンが消えてなかったことをとても喜んでいた。
「グレンは本当に身に覚えがないのか？ この子はすごくグレンを慕ってるじゃないか」
ライサは「お父さん」といってグレンに引っ付いている。グレンは突然こんな大きな子供ができてかなり戸惑っていた。
「全然わかりません」
「ガーベラが見つけたみたいだけどなあ」
その言葉にグレンはどきっとしていた。
「ガーベラお母さんに会いたい」
ライサがそんなことを言い出して、グレンはぎょっとし、他のみんなも目を見開いていた。
「ガーベラ、おかあさんって……どういうことだ。グレン」
睨んだのはラーズではなく、アシュランだった。
「え？ 違います。違いますよ。私はガーベラ様となにもしてません！！！」
グレンは必死になって弁解していた。
「本当か？ なんかあやしーぞ」
「本当です。何も」
「おかーさん、美人？もがっ」
グレンはライサの口をふさいでいた。
「違います。本当に違いますから。そうだ、この子に飛ぶことを教えなければ、それでは失礼します！」
グレンはライサの手を引っ張り、さっさと部屋を出て行った。
「ヒルデリア、本当にガーベラは母親じゃないのか？」
アシュランはヒルデリアに聞いた。
「母親のことは、どうもよくわかりません」
「怪しい、ラーズ、お前恋人だろ、何か言わなくていいのか？」
アシュランは黙っていたラーズをけしかけている。
「あー、まあ、よくわからんし、もういいや」
今はグレンが無事でよかったという思いが強いので、ガーベラとどうこうなったのでは、などと嫉妬する気にもなれないラーズだった。
新しいサンダルの調子もよく、ライサもすいすい空を飛んでいた。
グレンもすっかり調子を取り戻している。あの不調が嘘のようだ。
「ねえ、お父さん、お母さんのところにいこうよ」
ライサはまだいっていた。
「君、私は、君がなぜうまれたのか疑問だが、お父さんでもいい、だが、ガーベラ様をお母さんといってはだめだ」
グレンはライサが自分の娘だという実感がまるでなかったために、「君」と呼んでいた。
それに自分の娘にしてはかわいらしすぎると思っていた。ライサは知的な印象も受ける、美少女である。
「どうして？」
「どうしてもだ。それにお母さんじゃない。ガーベラ様は君を生んでないし」
「じゃあお母さんはだれなの？」
「さあ、まあとにかくだ」
「あれ？ 新しい神様って君？」
クーリーフンが飛んできてライサを見つけた。
「ライサです」
「ライサかあ、かわいいね。え？ あれ？ もしかして……生んだのお母さん？」
クーリーフンは気まずそうなグレンを見て指摘した。
「違いますよ」
「じゃあどうしてできたの？」
「わかりません」
「ガーベラお母さんっていったらだめってー」
ライサがうらめしげにいっていた。
「やっぱりそうなんだ。よかったね。グレン」
クーリーフンは無邪気ににこにこである。
「よくありませんよ。ガーベラ様は本当に生んでないし、私は困りますよ。アシュラン様の手前とかあるんですから」
「あは、まあそうかもね。じゃあこのことは内緒にしておこうね」
「クーリーフン様、ガーベラ様に変なこと言ったでしょう」
グレンはそれを思い出していた。
「うん。それでこうなったんだ。よかったね。それじゃ」
クーリーフンは軽く手を振って飛んでいった。
「まったく」
「ねえ、ガーベラお母さんに会おうよ」
ライサはよっぽど会いたいようだ。
「だから違うよ。ほら、君は飛ぶ練習をしよう」
グレンはライサをガーベラの神殿と違う方向に連れて行った。
だが、どうしてもガーベラがみたかったライサは、隙を見て逃げ出して、一人でガーベラの神殿にたどりついたのだった。
神殿にガーベラはいたが、中味はゆりではなかった。ゆりはすでに人間界に戻っている。
ライサはガーベラの顔を見るなり、「おかあさんですか？」と聞いていた。
ガーベラは目をぱちくりさせていた。
「あなたはだあれ？」
「私はライサです。お父さんはグレンなの」
「グレン？」
ガーベラはゆりが来ていた事を知っていたので、（あっちとグレンが何かあったのかしら？）と思っていた。
「お母さんですか？」
「あなたは私がお母さんだと思うの？」
「はい」
「じゃあそうなのかもね」
「お母さんて呼んでもいいですか？」
ガーベラは、「いいわよ」といった。
「本当ですかあ？ よかった！」
グレンとは違い、なんとも陽気でかわいらしい少女である。
まさかグレンの子供まで産んじゃうなんて……何があったのかしら……
ガーベラは驚くのを通り越して呆然としていた。
「いらっしゃい」
ガーベラは手招きして、ライサを抱きしめてあげた。
「お母さん、いいにおい……」
ライサはうれしそうだ。
そこに、顔面蒼白のグレンがやってきたのだった。
「君、勝手にきちゃだめじゃないか！」
「だって、お父さん、お母さんに合わせてくれないんだもん」
「お母さんじゃない」
「お母さんって呼んでいいっていったもーん」
「え」
ガーベラは横目でじろーとグレンを見ていた。
「グレン、仮にも娘に君って呼び方はないんじゃない？」
「ガーベラ様、この子を生んだ記憶があるんですか？ ないでしょう？ ならよけいなこと言わないでください」
グレンはいつもの仏頂面に戻っていた。
「まあ、かわいくないわね。本当は私のこと愛してるんじゃないの？」
ガーベラの指摘にグレンの頬は引きつっていた。
「違います」
「あらそう、ならなんで子供ができたのかしらね〜」
「あなたの子供じゃないですよ」
「でも、みて、この子の顔、この目はあなたに全然似てないわよ。だってかわいすぎるもの。
あなたに似たら目が細くて目つき悪くなってるわよ。それに性格も明るそうだし、あなたみたいに陰気じゃないじゃない」
ガーベラはライサの顔を見せていった。
「陰気で悪かったですね」
「それとも、他の女神が生んだっていうの？ なら誰よ」
「知りませんよ。とにかく謎です」
「私のこと愛してるんでしょ？」
「愛してないですよ。さあ、いこう」
グレンはライサの手を引いていた。
「本当は愛してるんです。私にはわかります」
ライサがぼそっと言い、グレンは真っ赤な顔で「違う！ よけいなことを言わなくてよろしい！」と怒っていた。
グレンはライサを強引に連れて行ってしまった。
二人が去った後、ガーベラは首をかしげていた。
母親なのか母親じゃないのか。
グレンのあの様子、あっちの私といちゃいちゃしまくったってわけでもないみたいだし……
ガーベラにはその場面が全然想像できない。
ガーベラはその後やってきたクーリーフンにも聞いたが、「たぶんお母さんがきっかけでできたんだよ」と言われた。
どういうことがあったのか、クーリーフンも知らないので、ガーベラも想像するしかない。
「何があったのかめちゃくちゃ気になるわ！ でも子供ができたのにグレンが全然変わってないなんて、どういうこと？」
それは謎のまま、とにかくも、神の国には空を飛ぶ神が一人、増えたのだった。
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