第13話
神の国では、ガーベラに入ったままのゆりは、クーリーフンにガーベラの神殿に連れてきてもらっていた。
「あっちは楽しかった？」
クーリーフンがゆりをおろして聞いた。
「うん、とっても！」
「そうよかった。今回は長かったから、お母さんにあっちであったことをざっと話しておいて」
「わかったわ。あの、クーリーフン、お願いがあるの。ニイニは、ガーベラの時に生まれたことにしておいて。ハロルドにもし聞かれたらそう言って」
ゆりは真面目な表情でクーリーフンに頼んでいた。
「うん、わかった」
「絶対よ？」
「うん、だけど、ハロルドが信じるかどうかは知らないけど。でもハロルドに愛されてる自覚があるんだね」
「愛されてる自覚？ そういうんじゃなくて、普段でも『欲求不満女』って言われてるんだから。ばれたら絶対言われるじゃない。
ハロルドは私が人間の男に相手にされないからガーベラになって遊んでるって思ってるのよ。私はそういうんじゃないの」
「今回は否応なしに二人の男を相手にすることになっちゃったの？」
クーリーフンが聞いた。
「え？ 否応なしにっていうか、むしろ進んでって感じだけど……」
ゆりが頬をかきながらいうと、クーリーフンは、
「それでこそお母さんだよ」
と微笑んでいた。
「流されて、とか、いやいやながらも、なんていわれたら、僕は君にがっかりしたところだよ。お母さんは愛で力が持続する女神だから、自分でも進んで男を愛さないとね」
クーリーフンはどうもほめているようである。
「はあ……ガーベラは、３人でして怒らないよね？」
「怒らないよ。むしろ二人同時に愛してくれてありがとうっていうんじゃない？」
「そ、そうかなあ」
「どちらも大事な恋人だからね。じゃあベッドで寝転んで、人間界はどういう状態かわからないけど、変われそうなら変わろうよ」
「うん」
ゆりは神殿の奥の寝室に行き、ベッドに横たわった。
「じゃあおやすみ」
「おやすみなさい」
ゆりは目を閉じた。
しばらくすると、もやっとした空間にガーベラの姿が見えた。ゆりは二人に分かれているようである。
「お帰り。楽しかった？」
ガーベラが微笑んで聞いた。
「とっても楽しかった。あのー実はまた子供ができちゃって」
黒目のゆりが遠慮がちに言った。
「え？ 本当？ ラクアの子供？ 男、女、どっち？」
ガーベラは驚いて近づいてきた。
「えーと、ラクアとラーズ、二人とからむことになって、朝になったら二人の力が混じった子供ができてました」
「ええ！」
「名前はニイニっていって、男の子ですよ。かわいいですよ」
蛇の目のゆりが付け加えた。
「えーえー想像できない！ すごい！」
ガーベラは呆気にとられた様子である。
「どっちに似てるんだろう？ 楽しみー」
ガーベラは恋人二人と絡んだことに関しては、突っ込んではこなかった。
「あのーそちらはどうでした？」
蛇の目のゆりが聞いた。
「我慢できなかったんで、ハザーク様としちゃった」
ガーベラはあっけらかんと言っていた。
「そ……そーですか……」
どちらのゆりもぼんやりしている。どう反応していいやら、悩むところだ。
「あとはいろいろ。子供達と遊ぶの楽しかったわ」
「王様は……」
「王様にはいろいろ楽器を演奏してあげたの」
「そうなの？」
それじゃさすがにガーベラだと気づいただろうけど、何もしなかったのかなあ？
以前のラクシュミのがっかりを見ているだけに、（何もできなかったとしたらちょっとかわいそうかもしれない）、と黒目のゆりは思っていた。
かといって二人が熱々の関係になられても困るのだが。
「あのーお願いがあるんですけど……」
蛇の目のゆりがおずおずと切り出した。
「なあに？」
「もし、私たちが死んで、ハザーク様が生きてて寂しがっていたら、たまにハザーク様に会いに来てくれません？」
「……いいわよ」
「ありがとう」
「それじゃ行くわ。またね」
ガーベラは明るく言って去ってしまった。
もやっとした空間に二人のゆりが残った。
「……死なない恋人かあ。いいかもね」
黒目のゆりがつぶやいた。自分たちがいなくなった後もハザークが生きているとしたら、ガーベラはハザークにとっては癒しの存在になるに違いない。
それは二人のゆりにとってはうれしいことである。
「まあ、私はおばあちゃんになるまで死ぬつもりはないけど」
「うん、あっ、ガーベラに子供はガーベラの時の子供にしといてって頼むの忘れた！」
黒目のゆりがはっとそのことに気づいた。
「クーリーフンに頼んだから大丈夫じゃない？」
「そうかなあ」
「まあ、ばれたら仕方ないって」
「えーやだー」
そこで二人の意識はふっと途切れた。
身体がまさぐられている、と目を開けたら、上にいたのはラクシュミだった。
「王様！？」
「ゆりか、よかった。もう辛抱できない」
ラクシュミはゆりの寝間着を上にたくしあげて下着をずらしていた。
「え、王様、いきなり」
「すぐにいれたい。すぐその気になってくれ！」
「えええ！？」
ラクシュミはローブを脱いで裸になっている。そして裸になるとゆりの上に乗っていた。
「え、え、どうしたの？」
「ゆり、早く」
「は、はい」
いきなりで驚いたゆりだったが、むしろこういうことはうれしいぐらいなので、下着を脱いで足を開いていた。
ラクシュミは辛抱できないという感じで、ゆりを抱いている。
いきなりすぎてびっくりだけど、でもやっぱりうれしい！
即座に反応できる私ってすごいな
ゆりは自分でも感心していた。
「王様愛してるー！」
奥までつながると、ラクシュミは腰を動かしていた。
「……これは……すごい……」
ラクシュミは普段にしては珍しくうめき、やがて繋がったまま果てていた。
「はあ……お前って女は、朝からこんなに疲れさせるとは……」
ラクシュミは体を離して言った。
「えー私は何もしてないよ」
「あ、わかった。さては、神の国で散々男と遊んだんだろ」
ラクシュミは顔を近づけてゆりに聞いていた。
「え。ええ！？ なんで？」
ラクシュミがゆりの顔の上にピンク色のものをおとした。目を閉じたが痛くはない。目を開けてそれを手に取った。丸っこくてひらべったい、花びらのようである。
「え？ ええ？」
横を見ると、シーツの上になんと大量の花びらが落ちているではないか。
な、な、な、なんじゃこりゃー！！！
花びらは右にも左にもあった。完全な花も落ちている。
「…………」
あ、これはあれだ。ガーベラの神力か何かだ。あれからだいぶたったと思ったけど、まだ気は高まったままだったのかしらん？
どうやら、神の国で高めたガーベラの気が、一緒にこちらに来ているようだということにゆりはようやく気付いた。
「これってガーベラの力っぽいな。散々遊んできたんだろ？」
「う……」
これでは言い逃れもできない。
「おい、もう一人のゆり」
ラクシュミが呼ぶと、ゆりの左目が変わった。
「王様、私も抱いて〜」
ゆりはラクシュミの肩に手を伸ばした。
「遊んでくるのはいいが、朝から私を疲れさせるんじゃない。全く」
「ごめんなさーい。でも、私もうれしい」
「今度はお前が動いてくれ」
「はーい」
ゆりは寝転んだラクシュミの上に乗っていた。
「……っく……はあ……」
「王様、気持ちいい？」
「ああ」
ゆりはラクシュミの上に乗ったまま動いている
「私も、すごく気持ちいい……」
「……お前たちは年々退化するどころか進化してるな。まったくどうなってるんだ？ ガーベラに何かされたんじゃないか？」
「え？ ガーベラ？」
「尋常じゃなく気持ちいい」
ラクシュミはつながったまま再び果てていた。子供ができないように、などと考える余裕もないらしい。
「もっとされたかったな」
「ばか。そんな余裕がない」
「王様、なんでガーベラは抱かなかったの？」
「ガーベラよりも、今のお前たちの方がすごいぞ」
「え？ そうなの？」
「今のお前たちは、まさに人間凶器といっていいぞ」
「人間凶器？ ふふふ」
たとえがおかしかった蛇の目のゆりは笑っている。
「私は真面目だぞ。どんな男でもその気にさせて寝首をかけそうだ」
「ガーベラよりすごいわけないでしょ」
「きっとガーベラは完全に神の力を抑えてるんだろうな。それがようくわかった。お前も抑える勉強をした方がいいぞ」
「やだあ。いっぱいキスしていい？」
「ああ」
やっぱりガーベラの力ってすごいんだ……ガーベラが力を抑えていたから、王様も抱かずにすんだのかな
蛇の目のゆりはこれでもかってくらいラクシュミにキスしていた。
「ゆり、どうしてくれるんだ。ずっと呼ばれてるんだが、お前から離れたくない」
ゆりは黒目のゆりに変わっていたのだが、普段にしては珍しく朝からいちゃいちゃモードである。
ラクシュミはぶつくさいいながらもかなり優しいので、ゆりにとってもうれしいことだった。
「一日くらいさぼっちゃおうよう」
「そうしたいが、ずっといるとやりすぎてげっそりしそうだ。やはり行こう」
ラクシュミは仕方なくゆりから離れていた。
「王様愛してるー」
ラクシュミは名残惜しそうに出て行った。
「ああ、なんだかあの時の王様よりでよかったなあ」
ゆりは幸せ気分だったが、視界にピンクの花たちが入った。かなり増えている。
「ああ、もうどーしよう。これじゃ男たちに会わない方がいいかも。あ、そうだ、お土産ちゃんときたかな？」
ゆりは花をよけてシーツの上を探し、小さな白い袋を発見した。
「あった！」
どうやらお土産も無事こっちにきたようである。
神の国では、ガーベラは目覚めて横にいるクーリーフンを見た。
「子供ができたんだって？ 見た？」
「見たよ。外見は─」
「言わないで。楽しみにしてるんだから！ どこにいるの？」
ガーベラはワクワク顔で起き上がっている。
「それがねーユリアナ、イオナとサーラがニイニを取り合っちゃってさ、逃げちゃったんだよ」
「あらら。子供は神だっけ？」
「妖精だよ。まあそのうちに出てくるよ」
「そう」
そこに女の子の泣き声が聞こえてきた。
「わーんガーベラー！」
泣きながら飛んできたのはサーラである。
「あらあら……」
「いやーニイニがみつからなくてさー困ったなあ」
後ろからラーズもやってきていた。
「大丈夫よう。泣いてたら困って出てきてくれないわよ？」
「だってえ」
「にこにこしてたら出てきてくれるわよ」
ガーベラはサーラの涙を指でふいていた。
「うん」
「サーラ、ユリアナとイオナとも仲直りしようね」
クーリーフンが言った。
「うん……」
一同はラクア達と合流することになった。
一方キュリアは土の神ネルに妖精が生まれたことを話していた。ネルと一緒にいたカサンドラはその話を聞き、かなり興味をひかれていた。
「父親が二人とは、どういうことなのじゃ？ 二人がそういったのか？」
「父親が二人だってラーズ様がいってましたよ」
「どちらの力も持っているということなのだろうか？」
「私も早く会いたい」
とネル。
「サントス様はいないの？」
神殿の中にサントスはいないようだった。
「お父さんは今頃土の中かな」
「土の中？」
「あの儀式から、たまに土に入ってるの」
「えー？」
「サントスは心を落ち着かせたい時はたまに土の中に入ったりしておるよ。別に心配しなくてもいい」
カサンドラはいっていたが、キュリアはサントスがどうやって土に入っているのかが気になっていた。
「妖精は普通一つの力しか持つことはないのだが、水と虹か……虹というのは太陽の光の一種なので水と光の力を持つ妖精ということに？
妖精としての力は半分づつなのか、一つづつなのか、ああ、興味がありすぎる。だが前例がないわけでもないな」
カサンドラはふとひらめいて言っていた。
「え？ そうなんですか？」
とキュリアが聞いた。
「妖精というものは、男親と女親、この二つの力を同時に引き継ぐことも可能なのだよ。たとえばダーナとアリアスの春の女神たち、あの女神たちはアリアスの光の力の方が強いが、
ダーナの癒しの効果も持っている。だが自然に関する力については、一つしか受け継がれないことが多い。今回は親が３人ということがまず珍しいことであるし、父親の力がどのように
引き継がれるかは、謎だが……虹というものは水と光がきっかけでできるものであるからな。二つの力は関連性があるともいえるな」
カサンドラはしまいには目を閉じてつぶやきだしたので、カサンドラの思考を邪魔しないように二人はそっと離れていた。
「ねえ、ルティアナには言ったの？」
ネルが聞いた。
「まだよ」
「教えてあげましょうよ」
「うん、行こう行こう！」
二人はペガサスで火の神殿にまで移動して、ルティアナにもニイニのことを教えていた。
驚いたルティアナは神殿内にいたサラディンにすぐに知らせていた。
「お父さん、ラクア様とラーズ様の子供ができたんだって！」
「ラクアとラーズの間に？ ラクアとラーズ？ どっちも男だが？」
「もちろんガーベラお母さんが生んだんですよ」
キュリアがつけくわえると、
「ラクアとラーズにガーベラ？？」
真面目なサラディンはさっぱり想像できていなかった。
人間界では、水で身体を洗ってさっぱりしたゆりは、食堂に子供たちを集めていた。子供達はもうすでに食事は終わって去った後で、再びゆりに呼ばれてやってきた。
「みて、かわいいでしょ。神の国で海に連れて行ってもらってね、いろいろ拾ってきたの！」
ゆりはテーブルの上に拾ってきた貝殻を並べていた。大きいのやら小さいのやら、巻いたのやら、いろいろある。
「かわいいー！」
ナナミが一番に反応して貝殻を眺めていた。ラギとシスはゆりの顔をのぞきこんでいる。
「なに？」
「あれ？ お母さんかな？」
ラギは首をかしげている。
「誰に見えるの？」
「でもなんか変だね。きらきらしてるし」
とシス。
「海ってどんなの広い？」
アナスターシャが聞いた。
「すごく広いわよ。青くて、水はしょっぱくて、いろんな生き物が住んでるの。イルカがかわいかったわ」
「イルカ？」
子供達は海を見たこともないので、海の生き物についての知識はあまりない。
「でっかい魚で、つるんとしてて、かわいい顔してるの。後で絵にかいてあげる」
「まーだっこ」
ミシェイラが近づいてきて、ゆりはミシェイラをだっこした。
「まーいいにおいね！」
「そう？」
「なんか落ちてるよ？」
ロイはゆりの後ろを気にしていた。スカートの中からひらひらと花が落ちてきている。
「これは気にしないで」
「また魔法？」
「花は気にしなくていいから」
「ミーもひろう！」
ミシェイラはあわててゆりの腕から降りていた。
「私も！」
女の子たちとロイは再び花を拾い合っている。
「花じゃなくて貝殻をみてよー、ちょっと！ やめなさい！」
ロイはゆりのスカートをばさばさ振るっていた。
─やっぱりお母さんだ、てっきり、ガーベラ様とお父さんが仲良くしてて、お父さんの支度が遅れたのかと思ったよ
─だね。母様と仲良くしてて遅れたのかな？
─楽しかったなあ。ガーベラ様、また来てくださるかなあ……
─来てくださるといいねえ……
シスとラギはガーベラのことを思ってふんわりした気分になり、ゆりは他の子供達にスカートを引っ張られてぎゃーぎゃー言っていた。
子供達はゆりが期待したほど貝殻に興味を示さなかった。伝言貝くらいにならないとインパクトはないようである。
「この後はレーヌと部屋にこもろう」
ゆりはそう決心して自分の部屋に戻ったが、すでにイシュタールがゆりの部屋にいてゆりを待っていた。
「王妃」
「わっびっくりした！ イシュタール、おはよう」
「あ、王妃、戻ったんですね。心配してたんですよ」
イシュタールは嬉しそうな顔をした。
「いないのばれてた？ 他の人にはばれなかった？」
「一部にはばれてましたよ。それより、なんだか王妃が輝いて見えるんですが……久しぶりに会えてうれしいからでしょうか？」
「え……」
それはガーベラの神力のせいともいえず、ゆりは笑ってごまかしていた。イシュタールはふらふらとゆりの側によってきている。
「今回はどうして変わっていたんですか？」
「今回はね、ガーベラに海に行かないかって言われて、変わって海に行ってたのよ。何も怖いことなかったわよ。楽しかった」
「そうなんですか？ よかった」
部屋にいた侍女がレーヌを連れて部屋の外に出ようと扉をあけて、「あら」と言っていた。ゆりが顔を向けると、ヴィラの顔がみえた。
「王妃……なんか下に落ちてますよ？」
イシュタールが下を見ている。
「え？」
ゆりはピンクの花びらを足でふんずけていた。
「王妃、戻ってきたんですか？」
ヴィラが部屋に入ってきた。
「私はずっといたわよ？」
「ガーベラと変わってたでしょ」
「みんな知ってるの？」
「一部ですよ」
「一部ってどこまでが一部？」
ゆりは二人の顔を見回した。イシュタールはすっかりゆりに寄り添っているし、ヴィラは怪訝な表情だった。
「なんかすごい匂いがするんですが……わかった。神の国で散々遊んできたんでしょう」
ヴィラはずばり指摘していた。
「え？ 何を言ってるの？ 私は海でイルカとたわむれてただけよ？ 見て、海岸で貝殻を拾ってきたの」
ゆりは白い袋を見せた。
「嘘です」
「本当だってば」
「遊んでもいいですから、こっちでも我々と遊んでください」
「今日はだめよ。今日は、ちょっとイシュタール、温度あがってない？」
後ろにひっついているイシュタールがだんだん熱くなってきている。
「すいません。我慢できなくて……」
「私も我慢できないんで向こうに行きましょう」
「えー」
ゆりは貝殻をもったまま移動させられていた。
「ちょっと、もー貝殻を見てよ」
「後で見ますよ。後で」
「今みなさいって」
「王妃！」
イシュタールがすぐにゆりを抱きしめていた。
「あつい、あついって！」
「すいません……」
ヴィラはゆりのスカートからひらひらと花びらが落ちるのを見た。
「王妃ってば、そんなにしたいならこっちで好きなだけすればいいのに」
「違うの、今回はイ……ル……カと……」
イシュタールがゆりに口づけてきていたのでゆりの言葉はとぎれとぎれになっていた。
「わかった。ガーベラが入ってた影響よ。そうに違いないわ」
ゆりはイシュタールから顔を離して言いきった。
「脱がしていいですか？」
イシュタールはさっぱりゆりの言葉を聞いていないようだ。
「わかりました。そういうことでいいですから、脱いでくださいね」
とヴィラ、
「えーなんで二人とも変になってるの？」
どうも二人の目の色が違うようだ。すっかり興奮モードに入っている。
「キンキラしてる王妃のせいですよ」
「愛してます。王妃、これじゃ仕事にいけません……」
「…………」
イシュタールの興奮が服の上からでも伝わってきた。
「うう、わ、わかったわよ。でもその代わり、今日の私のことについてはみんなには秘密にしておいて。この後部屋にこもるから」
「無理です」
ヴィラが言った。
「なんで無理よ」
「今の綺麗な王妃を二人だけで内緒なんて無理ですし、みんな王妃のこと気にしてるから、部屋にきますよ。いっそのこと儀式ってことにしてみんな呼んじゃったら？」
「はあ？ 子供もいないし誰も降りてないし、儀式は変でしょ？」
「いいじゃないですか。その方が仕事を抜けやすいんですから」
「えー」
「王妃、もう限界が……」
イシュタールはせつなげに言った。
「ああ、イシュタール、脱いでいいよ」
イシュタールは服を脱いだ。下半身はすでに興奮しまくっている状態である。
ゆりは服を脱ぎ、下着姿のまま、イシュタールと抱き合った。
「王妃……」
ゆりは手でイシュタールの下半身に触れて、優しくさすった。
「はあ……」
イシュタールはすぐに達してしまったものの、萎える様子もない。
「体が、興奮してしょうがないです」
イシュタールはゆりに口づけて、ゆりの体をまさぐっている。
ヴィラが後ろからゆりのショーツを下にずらしていた。
「ねえ、全員呼ぶのはさすがにきついわよ。とりあえず、今は二人だけでね」
「いいですよ」
ゆりはイシュタールにキスされながら、後ろからヴィラに体をまさぐられていた。
二回達するとさすがにイシュタールの身体は落ち着いていたが、興奮はまだ覚めないようだ。
ヴィラの指がゆりの下半身をまさぐっていた。
「もうヌルヌルですよ？」
「だって……」
「太ももでしていいですか？」
「うん」
ヴィラはゆりの後ろから体を寄せて、太ももの間に自らの体をさしいれていた。
「気持ちいいですよ。王妃……」
二人の男の興奮で、ゆりもかなりの興奮状態になり、その後はベッドの上でキスし合ったり愛撫しあった。
イシュタールはかなり体が熱くなっていたが、なんとか布団を燃やさずにすんでいるようだ。
ゆりの左目が変わっていた。
「王妃、会いたかったですよ」
イシュタールはせつなげに言っていた。
「私もよ。王様が、人間凶器って私たちのこと言ってたけど、あってるかも？」
ゆりは男二人の様子にそう思っていた。
「まさに凶器ですよ。外を歩いたら危ないですよ？」
とヴィラ。
「ヴィラがこんなに興奮するなんて、喜ばしいわね」
「神の国で遊んだんでしょ？」
「遊んでないの。真剣に愛し合ったの」
「王妃、サラディン様とも愛し合ってくださいね」
イシュタールはゆりの足にひっついたまま言っていた。
「イシュタールったら、今日は仕事じゃなかったの？」
「朝は休んでしまいました。あんなに興奮したんじゃ無理ですよ」
「ふふふ」
「ハインリヒ殿が混じりたがってますが」
ヴィラが言った。
「え？ そうなの？」
「私は落ち着いたんで変わりますね。王妃」
イシュタールはようやくゆりから離れて、服を着ていた。
「体をふきましょう」
ヴィラはタオルでゆりの体を拭いている。
「ねえ、ガーベラと何もしてないの？」
「いっぱいキスしていただきましたよ。ミカエル殿とフリット殿は知らずにちょっと仲良くしたみたいですけど」
「そうなの。イシュタールは？」
「私はガーベラ様とは無理です。それでは、王妃これで」
イシュタールは興奮がちょっと冷めた表情で去って行った。
ハインリヒが瞬間移動で飛んできた。ハインリヒはゆりを見るなり、
「ああ、王妃……なんていやらしくて素敵な人なんだ……」
といっていた。
「いやらしいは余計でしょ」
蛇の目のゆりが言うとハインリヒは、
「だって、気はピンクだし、すごくムラムラするにおいだし、まるで食虫植物みたいですよ？」
と言い出した。
「食中植物？」
「一度ひっかかかったら抜け出せない罠みたいな」
ヴィラはぷっと笑っている。
「もっと素敵な名称がいいんだけど……」
「アリジゴクとかどうですか？ 罠っぽくて素敵な名称ですが」
「いや、いい。どっちも最後には死ぬじゃない」
「王妃〜」
ハインリヒはベッドに上がってゆりの胸をなでていた。
「今日の胸もかわいい。なんか布団が熱いですが」
「イシュタールがいたせいよ」
「そういえば、せっかくなんで貝殻を見せてもらおう」
興奮がちょっと冷めたヴィラは、シーツの上にあった貝殻の袋から貝殻を手に出していた。
ピンクや青、緑の貝殻まである。
「へーかわいいな。小さいのでいいんで一個もらってもいいですか？」
ヴィラはゆりを見たが、ゆりはすっかりハインリヒに抱きしめられてキスし合っていたんで聞こえてなさそうだった。
それから一時間ほど後、黒目のゆりははっと目を開けて、自分の周りを見て驚いていた。左右に裸でいたのはハインリヒとジュノーである。
ひょえー！ いつの間にか男が変わってるー！
「王妃、ヴィラが貝殻一個もらっていきましたよ」
ジュノーがゆりに言った。
「貝殻？ ああそうなの？」
ゆりは男が変わっていたのでかなりどぎまぎしていたが、平静を装っていた。
「私ももらってもいいです？」
「いいよー」
「私もください」
ハインリヒがゆりの頬にちゅっとキスしていて言った。
「いいよ。ねえ、どっちかお風呂に連れて行ってくれない？」
「いいですよ」
ジュノーが答えた。二人とも、いろいろした後のけだるげな感じである。
あっちの私が出てたのか。二人とも、私が変わってもまったくなんとも思わないのがすごいな……
ゆりは今更ながらにこんなことを思った。
「王妃、今日は廊下をウロチョロしない方がいいですよ」
ハインリヒが言っていた。
「部屋にこもってるつもりだったんだけど……」
ゆりは服を持ってジュノーにお風呂に連れて行ってもらったのだった。
ゆりは午後部屋にこもり、ラギとシスに海の神の話を聞かせた。ようやく二人とも興味を持って聞いている。
「何が一番面白かった？」
シスに聞かれたゆりは、
「ホタテ！」
と答えていた。
「生のホタテがおいしいのなんの……最高だったわ」
「ホタテ？ なんだろう？」
「さあ？」
二人は首をかしげていた。
「やっぱり海の食べ物っていいなあ」
「どうして花がひらひら落ちてるの？」
ラギはそこを知りたがった。今は花は時々落ちる程度である。
「さあ、ガーベラになった影響かな。ところで、ガーベラがいるって気づいたのはあなたたちだけなの？ アナスターシャやナナミは？」
「姉様に言ったらみんなにべらべら話しそうだから言ってないよ」
シスが言った。
「そう」
ミシェイラが部屋に入ってきた。
「マーみんなで踊ろう！」
「踊り？」
「くるくる回るの！」
「僕らが教えてあげるよ」
４人で輪になり、ゆりは子供たちの真似をして踊ってみた。
「うたって！」
とミシェイラが言うので、ゆりが適当な歌を歌うと、
「まー今日はへたですね」
と言われてしまった。シスもラギも苦笑いしている。
ガーベラは本当に子供たちと遊んでくれたんだ。素敵な女神様だよねー
ゆりはそう再認識しつつ、よくわからない踊りを踊っていたのだった。
神の国では、ユリアナ、イオナ、サーラの３人は仲直りしたものの、ガーベラもニイニの姿を見ることができなかった。
夜になり、神殿で一人で眠り、次の日の朝目覚めたガーベラは横を見て、ハロルドが立っているのに気付いた。
「びっくりしたー、いつ来たの？」
「さっきだ」
「おはよー」
ガーベラは体を起こしていた。
「妖精を生んだらしいな」
ハロルドは立ったまま聞いた。表情はにこやかとはいいにくい。
「妖精？ そうよ。話を聞いたの？」
「ああ、昨日聞いた。なんかけったいな妖精を生んだらしいじゃないか。どんな妖精なんだ？」
「けったいな妖精じゃないわよ。かわいいわよ」
ガーベラは微笑んで言った。
「どうかわいいんだ？」
「見ればわかるわよ」
「髪の色は？」
「見てのお楽しみ」
「どのくらいの大きさなんだ？」
「それも見てのお楽しみよ」
「お前、まだ見てないんじゃないだろうな」
ハロルドはどうも何か怪しんでいるようである。
「ちゃんと見てるに決まってるでしょ？ 何を怪しんでるわけ？」
「お前、海に行ってないだろ」
「行ったわよ」
「ラクアに聞いたら、随分はしゃいでたそうじゃないか。お前じゃないだろ」
ハロルドは仏頂面のままである。
「ラクアに会ったの？ ニイニは見つかった？」
「さっき行ったら、妖精はダーナの神殿にいたから迎えにいくと言ってた。アシュランが珍しい妖精を見たがってたぞ」
「そう、私もあいにいこうっと」
「妖精を生んだのあっちの時だろ」
「あのね、ガーベラにあっちもこっちもないの」
「でもあっちだろ」
「ハロルドったら、ふふっ」
ガーベラは微笑んでハロルドの頬をなでていた。
「着替えようっと」
そしてさっと行こうとしている。
「ごまかすな。全く、何考えてるんだ」
ハロルドは腕を組んでぶつぶつ言っていたのだった。
つづく
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