第25話
人間界蛇の国、城の周りは、日中の気温はかなり和らいできた。ロイは飛んでいるトンボを大量に捕まえてきてゆりに怒られたりしている。
ブドウが実る季節、蛇の国の人々の心は一年で一番うきうきしている。酒場での話題もお酒の話ばかりである。
へびっちは未だ帰らず、当然カーライルもあっちに行ったっきりである。ゆりの所にやってきたエルバートは、
「カーライル様は過去の世界でずっと過ごされるつもりのような気がします」
と弱気なことを言っていた。
「そんなことはないと思うよ」
蛇の目のゆりはエルバートを勇気づけようと言っていた。
「あの時代の方があの方にはあってますし……」
「そうかもしれないけど、今頃はエルのことを気にしてると思うよ」
「すいません。へびっち様の方が心配だというのにこんなことを言ってしまって。私ももっと頼りがいのある男にならないといけないなあ、と思ってるんですが……父親になるというのに
「私もカーライル様の嫌みがなつかしいよ。ハザーク様も話し相手がいないと寂しいだろうしね」
ハザークの侍女たちは今では落ち着いている。二匹の子蛇が、彼女達の心を癒やす存在になっているようだ。
その夜、ゆりはラクシュミと一緒のベッドで寝ていたのだが、夜中にお腹の中の子供がぼんやりとでてきていた。
とんとんとラクシュミの肩をたたいている。ラクシュミは目を覚ました。
「お……また出たのか。まだ怪力なのかな？」
ラクシュミはそこが気になっていた。
『トーヘビ』
「ん？」
『ヘビ』
「蛇が欲しいのか」
赤ん坊は両手らしきものを大きく広げていた。
「いっぱいほしいのか」
ぼんやりした赤ん坊はゆりの中に戻った。
「儀式をしてほしいのか。赤ん坊はなぜ儀式のことを知ってるんだろうなあ？」
ラクシュミは毎回疑問に思っている。赤ん坊には兄弟達についている蛇霊神でも見えているのだろうか。謎である。
ラクシュミは朝になり、ゆりに赤ん坊が出てきたことを話した。
「儀式の催促？ 赤ちゃんって、なんで蛇霊神のことを知ってるのかしら」
ゆりも同じように疑問に思った。
「さあな、みんなについている蛇が見えているんじゃないのか？」
「そうなの？ じゃあロイとナナミのはいっぱい見えているのかしら？」
子供達の中で蛇霊神がだんとつに多いのは、この二人だろう。過去で儀式をしたからである。最初に生れたアナスターシャは「後に産まれた方が得だよね」と言っている。
「まあ、できそうならやってやれ」
「うん。まあ、そのうちに、誰か降りてくればね」
（一体何回目の儀式なんだろう。経験豊富どころじゃないわね。ふっ）
ゆりは自分で笑っていた。
今思えば、なぜあの頃の私が過去に呼ばれたんだろう？ 今の私が過去に行っていたなら、いろいろ歴史が変わっていただろうなあ……
過去の女王に呼ばれたのはもう十五年以上も前のことである。今の方が巫女としてはすごいような気もする。
あの頃がのってた時期だったのかも？ 今過去に行っていたら、ロイとナナミはもっと弱くなってたよね。この後子蛇が生まれるとなると、へびっちはあんな風にはならなかったかな。
タイミングの問題なのかなあ？
午後ヴィラがやってきたので、ゆりはこの話題を出してみた。
ゆりはソファに並んでひっついてヴィラに気をもらっている。
「ねえ、どう考えても今の私の方がすごいと思わない？ だって、ガーベラの儀式を手伝ったりしたんだし」
「確かにそうかもしれないですね。でもあの頃の王妃もよかったですよ。今王妃がいなくなったら、ハロルド様まで探しに出てきそうな気がするなあ」
ヴィラはゆりを探しにやってきたハロルドの想像をしていた。城の中はさらに混乱していそうだ。
「……そうかなあ」
「何ヶ月も王妃がいなかったら、ハロルド様だって心配しますよ。ハロルド様に問い詰められてタジタジになっている王の姿が目に浮かびますよ」
「それは王様もかわいそう。あの頃ですでに現役の巫女では一番儀式をしていたってことなのかな」
「もし王妃が呼ばれたのがあの頃じゃなかったら、私は戦で死んでいたのかもなあ」
「戦に女王様達がきたんだっけ。となれば、過去の応援がなかったら、あの時の戦もやばくなってたかもね」
「そうですよ。いろいろ話が変わってきますよ」
「そうねえ……ハインリヒだって戦に出られなかったしねえ」
タイミング一つが違っていたならば、話は大きく違っていたのかもしれない。
「あの頃一杯儀式をしといてよかった」
ゆりは今更ほっとしていた。
「所で王妃、王に一つ命じられたことがあるんですが」
ヴィラはゆりの肩をなでながら言った。
「え？ なに？」
「赤ちゃんが儀式の催促に出てきたそうですね。王妃をその気にさせとけって言われましたよ」
「え？」
「というわけで移動しましょうか」
ヴィラはゆりを連れて横の部屋に移動した。
「じゃあ全部脱いでください」
「う……まあいいか」
ゆりは素直に服を脱いでいる。
「ヴィラも脱いでよ」
「私は儀式になったらまずいので、王妃だけその気になって女蛇を呼んでください」
「えー」
ヴィラは服を着たままゆりの体を横たわらせた。
「ねえ、ジュノーみたいにヴィラに何か変化はないの？」
ジュノーの右腕には、うっすらと蛇の鱗が出ているだ。そのせいか気も少し強くなっているようだ。
「何もないですねえ」
ヴィラの手はゆりの胸をなでている。
「王妃の胸は相変わらず綺麗ですね。最初の頃よりも大きくなりましたね。いろんな男に可愛がられたせいかな」
「言い方がエッチ」
ゆりの気はじわじわピンクになってきている。
「ねえキスして」
「いいですよ」
ヴィラは顔を寄せた。
唇を重ねて、舌をからめるキスをしていると、ゆりはふいに昔、夜にヴィラが忍んでやってきたことを思い出した。
あの頃の私はウブだったなあ……
ゆりはヴィラの背中に腕を回した。
「好き」
「…………」
「すっごく好き」
ヴィラは近くでゆりをじっと見ている。ゆりもじーと見ていた。
「興奮させようとしてるでしょ」
「好きは好きなの」
「知ってますよ」
ヴィラは余裕の笑みを浮かべている。
「ヴィラとずっとこんな風になれてうれしいな」
「そんなかわいいことを言うなんて、何か悪いことでもしたんですか？」
ヴィラは誤解していた。
その後ゆりは散々ヴィラに愛撫されたが、女蛇は降りてこなかった。ゆりはヴィラを興奮させようとしたが、ヴィラに阻止されている。
結局、ゆりだけ興奮してヴィラは去って行った。
まあ、梅雨がくれば水蛇さんが来てくれるかもなあ……
その後ゆりはミラを相手にティータイムを楽しんだ。
「ハロルド様の枕をもらったジュリなんですけど、毎晩良い夢が見られるそうなんですよ。うらやましいです。次は私に枕をくださいね」
ミラが言っていた。
「へー、シーツはだれがもっていったんだっけ」
「シーツはクリスティーナ、かけ布団はモニクです。モニクは毎晩布団を抱きしめて寝てるみたいで、興奮してしょうがないって言ってました」
「ぶっ」
ゆりはつい吹き出していた。
窓ガラスをトントンと何かがたたいているような音が聞こえた。
「ん？ ロイかな？」
二人が窓に目を向けると、大きなガラスの向こう側に、白い大きな鳥がいるのが見えた。
「ええー？」
鳥はくちばしでガラスをつついているようだ。猛禽類の鋭い瞳をした鳥で、翼を広げるとすごく大きかった。足とくちばし、瞳以外は真っ白である。
ゆりが側にいこうとしてミラに阻止された。
「危ないですよ」
「あの子シロじゃない？」
「シロ？」
「神の国で見かけた子に似てる。それに、ほら、何かもってるし」
大きな白い鳥は足で袋か何かをつかんでいる。
「開けてあげて」
「はい、本当に大丈夫ですか？」
「大丈夫よ」
ミラが窓を開けると、白い鳥は部屋の中に入ってきて、足でつかんでいたものをソファの上に落とした。
「シロでしょ？ こんなところまで来るなんてすごいじゃない」
ゆりはシロがもってきた袋を開けたみた。中に巻き貝が一つ入っている。シロは誇らしげに胸をはってソファに立っていた。
「シロご苦労様、どうもありがとう」
ゆりがねぎらいの言葉をかけると、シロはさっさと窓から出て行き、空を飛んでいった。
「綺麗な鳥でしたねえ。あの鳥は、王妃様がガーベラ様だって知ってるんでしょうか？」
「さあ、だれだろう。ハロルドかな？」
ゆりは巻き貝を耳にあてた。
『話があるんだ。今晩、一人で部屋にいてほしい』
優しい男の声だった。ハロルドではない。ラーズの声である。
「ええ？」
ゆりはもう一度巻き貝を耳にあてた。
「ラーズが話があるって、話ってなんだろう？」
「ええー聞かせてください！」
ミラが巻き貝を耳にあてると、ハープの音色が聞こえてきた。
「素敵な音楽が聞こえてきますー」
「ええー？ ほんと？」
ゆりが巻き貝を耳にあてると、やはりラーズの声が聞こえた。
「ラーズ様からの伝言なんですか。ステキ。私ラーズ様の枕でもいいですから」
ミラは浮かれている。
「ええーでも、話があるって、何の話だろう」
「素敵な話に決まってますよ♪」
「違うかもしれないじゃない。もう会えないとか、そっちだったらどうしよう」
ゆりはなんだか怖くなってきた。
「そんなわけないですよー」
「そうかなあ」
夜にわざわざ来るなんて……よっぽど重要な話じゃないのかしら？
『もう人間の君には会いに来ない』
これなら今晩来る意味がないし……
『ガーベラになってももう愛し合わない』
これかも？！
『そんなのいや！』
と心の中で声が聞こえた。
―もしそうだったら、泣くのよ。泣いて訴えましょう！ あんなに愛してくれたのにひどい！ とか言って
もう一人のゆりは興奮しているようだ。
「なんだろうねえ？」
いろいろ妄想している間に夜になった。
今晩は月も星も綺麗である。ゆりは寝間着ではなく、普段着を着て部屋の中をうろついていた。
すると、夜十時くらいにラーズがやってきたのだった。
「こんばんは、お嬢さん」
「こ、こんばんは。は、話って何？」
ゆりはラーズを見るなり聞いていた。部屋の中はろうそくの明かりがついているが、ラーズの周りは輝いている。夜にはあまり似つかわしくない、鮮やかな色彩である。
「話？ ああ、君と仲良くなるためにもっと話をしようと思って」
「ええー何かやな話だったらどうしようと思ってたじゃない。びっくりさせないでー」
「ごめんね。仲良くしようなんて言ったら、逃げられるかもしれないと思ってさ」
ラーズはゆりの側によってきてゆりの頬をなでなでした。
「ラーズってばひどい」
「なんだと思ったの？」
「もう会えないって言われたらどうしようと思ったの」
「なんでさ」
ゆりはラーズに抱きついた。ラーズは今日もいい匂いがした。
「今日シロが来たからびっくりしたわ」
「ああ、すごいだろ。シロは賢いんだよなあ。ジャックは全然役に立たないけど、シロはすごい。あの子に渡してって言ったらちゃんと渡したもんな」
「ラーズはどこにいたの？」
「実は近くにいたんだ。だけど、伝言の方がドキドキするだろ？」
「えー」
ラーズがゆりの体をぎゅっと抱きしめていた。
悪い話じゃなくてよかったけど、これはやばい展開じゃないのだろうか……
ゆりの心はかなりドキドキしている。
ラーズの匂いをかいでるだけでクラクラしてきたー！
「君っておもしろいねえ、ピンクのハートがでてるよ」
「ええ？」
「ふわふわって。ここらに」
ラーズがゆりの肩あたりに円を描いている。
「嘘、ほんと？ やだ！」
「かわいいよ。わかりやすく発情してくれて」
「発情って……言ったでしょ。私は、ガーベラでしか、あなたとはその……」
とかいいながらゆりの手はラーズの背中に腕をまわしているし、体も密着させている。
あれ？ なんだかおかしい？？
「うーん？ あれ？ 誰か取り憑いてるかも？」
ラーズはゆりの目をのぞきこんで言った。
「ええ！？」
「蛇だ。蛇に取り憑かれてるよ？」
嘘じゃー！！！
ゆりは心の中で絶叫していた。
「素敵なお方、私は怪しい者じゃありません。もう王妃様とは長ーい付き合いです。時々こうしてやってきて、男と睦び合ってるんですよ」
ゆりがうっとりした瞳でいいだした。
「え？ そうなの？」
ラーズは目をぱちくりさせている。
「そ・う・な・の♪ だから今夜はあなたとむつびあい……ちょっとまった！」
ゆりは強い精神力でラーズから体を離していた。
『ちょっと、あなた女蛇でしょ？ なんで今来てるの！？ やめてよ！』
ゆりは心の中で女蛇に抗議をしている。
―ちょっと、この方はだれなの？ 背中にでっかい翼があるわよ！ 鳥の男とも見えないし……なんて不思議でいい男かしら
『この方は神様よ。ラーズ様だから儀式は関係ないの』
―神様！？ ステキだわ。私、一度神様とやりたかったの
『はあ！？』
―神様と儀式なんてすごいじゃない。歴史に残るわよ
『別に残りたくないわよ！』
ゆりはラーズに背を向けてぶつぶつ言っている。
ラーズは後ろからゆりを抱きしめた。
「大丈夫？」
「大丈夫ですわ。素敵なお方、お願い。協力してくださいな。あなたが愛してくだされば、私は儀式ができるの。儀式をしたら、赤ちゃんの力があがるんです」
「儀式？ なんだかよくわからないけど、ガーベラみたいだね。いいよ。しよう」
ラーズはあっさり言っていたので、ゆりの方は絶叫していた。
「ぎゃー！ やめて！ いいの！ しなくていいの！」
「どうして？」
「その儀式をしたら、ほら、そうだ、ふらっふらになるの。ラーズの魂がぬかれちゃうから、やめたほうがいいの」
「魂が抜かれる？」
「嘘嘘。精力がなくなるだけよ。違う！ 違わない！」
「とりあえず、その蛇ちゃんは悪い蛇ちゃんじゃないんだ？」
「蛇ちゃんだなんて♪」
ゆりはラーズの腕に自分の腕をからめている。
『ちょっと！ 儀式では男が一杯いるんでしょ？』
―神様なら特別一人でいいわよ。だって、私神様とこうするの初めてだもん。しかもすごくステキな人だし、こっちを好いてるし
「ラーズ、今日は会えてうれしかった。また今度、ガーベラの時にお話しましょ」
ゆりはラーズを帰そうとしていたが、ゆりの手はラーズの胸をなでまわしたり頬はラーズの腕にすりすりしている。
「なんだか面白いねえ。面白いから君を観察しよう」
ラーズはベッドに座っていた。するとゆりはすぐにラーズの膝に横座りになり、ラーズに抱きついている。
「ラーズ、今の私は正気じゃないのー」
「じゃあなんなんだい？」
「女蛇が勝手に……」
「蛇ちゃんがいなかったら、君は私にこうしたくないの？」
「したいよ。したいに決まってるでしょ！」
ゆりは即答しながらも、かなり困った様子である。
『ラーズと儀式なんて無理でしょ！ それに男達を裏切ることになっちゃうじゃない』
―あなたは誤解してるんじゃない？ 儀式ってのは本来、巫女が興奮しまくればいいの。儀式は赤ちゃんのためのもので、男のためじゃないわよ
女蛇にあっさり言われてしまった。
『でも……今後みんなときまずくなったらどうするのよ！』
―蛇が入ればみんな喜ぶわよ
『えー……』
ラーズの手がスカートの中に入って太ももを触っていたので、ゆりの足が動いていた。
「君の肌は柔らかくて気持ちいいね」
「あの、神様に協力してもらうなんて悪いから、やっぱり……帰ってもらったほうが……」
「本当に帰ってもいいの？」
「やだ」
「いつも人間の男と儀式とやらをしてるの？」
ラーズはゆりの耳元で聞いた。
「うん」
「恋人は何人いるの？」
「え……内緒」
「私は何人目の恋人になるのかな？」
「え、えー」
「私のこと好き？」
「うん」
ゆりは大きくうなずいていた。
「やばい……あのね、ラーズ、私恋人達とは、最後までしてないの。いろいろ事情があって、ハロルドにも妊娠中はできないのーって言ったくらいだし、だからラーズと最後まで
するわけにはいかないの。ざ、ざ、残念だけど、いろいろ複雑なの」
ゆりは真っ赤な顔で説明している。
「じゃあ儀式って何をするの？」
「触り合うの」
「ふーん？」
ラーズはおかしそうに笑い顔だ。
「だから、儀式なんてラーズにとってはつまらないから……」
といいつつゆりはラーズの膝から降りる気配はない。
「君は面白いなあ、ハートは出まくってるけど」
「えー嘘！」
「最後までしなくてもいいよ。それまでの過程を楽しむのも面白い」
「でも神様にそんなことをさせるわけには……」
「恋人だろう？ 遠慮しなくていいんだよ」
「ラーズ……」
もうだめだ……この先を望む自分がいるー女蛇さんひどいよー昼間こないで今くるなんて！
ラーズの手がゆりの体を服の上からまさぐっている。
「直接触りたいな。脱いでくれる？」
「うん……」
ゆりはブラウスのボタンに手をかけた。
やばい。理性がどこかに行ったらどうしよう。これはみんなにばれたらやばいパターンでは？
蛇がこなければばれないかも？ でも、蛇がこなかったらこうする理由がないし、赤ちゃんに蛇をあげたいし……
胸はドキドキしまくるは、でもう大変である。
「もーどうしよう。本当に最後までするのはまずいの」
「しないしない。君が入れてっていわなきゃ入れないよ」
「あうー……」
「ハートはすごく迫ってきてるけどなあ。下も脱いでね」
「うん……」
ゆりはすっかり裸になったが恥ずかしげに足をもぞもぞさせている。
ラーズはゆりの体をベッドの上に横たえた。
「あの、あまり体をみないで」
「かわいいよ。興奮したところを見せて」
ラーズの手がゆりの肌に触れた。腰に触れて、なでながら下に下りている。
「あ……ラーズ……」
ラーズの指がゆりの下半身をまさぐり、やがて体の中に入ってきた。
「んー……」
ラーズはゆりの口を口で塞いでいる。
やがてゆりの腰がびくんとはねあがっていた。
「少し触っただけで感じちゃったんだ？ なんだか匂いが変わってきたね。ガーベラの匂いに似てるな」
「恥ずかしい」
「儀式ってこんなのでいいの？」
「ラーズも脱いで。わたしだけなんていや」
ゆりが熱を帯びた瞳でいいだした。
「興奮したら責任を取ってくれるの？」
「うん」
「本当に？」
ラーズは面白そうに服を脱いでいる。
「好き」
ゆりは裸になったラーズに抱きついた。
ラーズはゆりの体を抱きしめて返している。
「お……すごいな……興奮してきた……」
ラーズの下半身に変化が現れていた。
「実はガーベラ以外の女に欲情するのは久しぶりなんだよ」
「うれしい。ラーズ、座って」
「ん？ うん」
ラーズが座ると、ゆりは身をかがめて、ラーズの下半身に触れ、顔を寄せた。
ゆりが口での奉仕を始めたので、ラーズはちょっと驚いた様子である。
「君は恥ずかしがりやのくせに大胆で、本当によくわからない人だね」
ラーズはゆりの肌のところどころに鱗の模様が出ているのに気づいた。
「気持ちいいな。もう出そうだ……」
ゆりは口を離した。ラーズはゆりの胸に放っていた。
「君にはもう参ったよ。もっと興奮して」
ラーズはゆりを抱きしめた。
ゆりは興奮するほどに強い匂いを発している、互いに愛撫し合いながら、ゆりは３度目の興奮で謎の言葉を吐いた。
部屋の中にぬっと大きな蛇が現れたのでラーズは驚いている。
薄い紫色の蛇である。ラーズがその蛇に触れた。
すると蛇の色が変わっていた。一色だった蛇が赤や青、鮮やかな色が混じった蛇に変わっている。その蛇はゆりのお腹に吸い込まれて消えてしまった。
「大丈夫かい？」
「トーありがと」
「ん？」
「赤ちゃんも喜んでるみたい」
「そうかい？」
『次はジンラ様おねがーい』
という声が聞こえてきた。
そんな無茶な……きっと酒好き蛇様ね……
ゆりの肌から鱗の模様が消えていた。ゆりの気が普通の気に戻っていた。
「ありがとう。優しいラーズが大好き」
「次にあっちに来たら、真っ先に私のところに来てよ。約束だよ」
「うん」
ラーズはゆりの頬にキスした。ゆりはそれっきり目を閉じて、意識をなくしてしまった。
「これを最後までせずにすんでるの？ この子の恋人達は大変だなあ……」
ラーズはゆりの肌に布団をかけて、服を着て去って行った。
明くる朝、ゆりは（すごく濃厚な夢をみたなあ）と思いながら目を覚ました。
「ん？ んん？」
ゆりは自分の髪を見て口を開けていた。髪がものすごく伸びている。
「え？ やっぱりラーズとしちゃったの！？ どうしよう！」
ラーズとの儀式が成立したことも驚いたが、（男達にばれたらどうしよう、それよりハロルドにばれたらやばい！）とあわてたゆりだった。
つづく
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