第１６話
神の国である。
伝令神グレンは、空を飛んでいて、同じように空を飛んでいる男を見つけて近づいて行った。海側の伝令神ワイアットである。
「ワイアットじゃないですか」
「やあグレン」
ワイアットが下を指したので、二人は地上に降りた。降りたのは草原である。
「頼まれていた星の石を持ってきたんだよ。ついでに世間話に上にね」
上とは雲の上の神殿のことだ。
「ああ、星の石ですか。海に落ちた分ですね」
「そうそう。見つけたのは一〇個だけだったけど、ジェラルド様は喜んでいたよ」
「それはご苦労様でしたね」
「星の石」とは、流星が流れた時によく落ちてくる石のことである。その石には不思議な力があり、それで武器を作りたいがために、ジェラルドも方々に探索を依頼していた。人間界には風の神や妖精達が探索に出ていたのである。そして海で見つけたら持ってきて欲しいと海側にも頼んでいたのだった。普段星の石を見つけることはかなり難しいようだ。
「星の石にもいい石と悪い石があってね、武器になりそうにないのは占いの道具に使うとかでこっちでもらってる。最近占いで悪い卦が出るって言ってたよ。近いうちに何かありそうだって。それでジェラルド工房も武器が一杯だったんだね。やっぱりなって思ったよ。ところでさ、ルチアちゃんってすっごく良い子だね。うちの姫様がルチアちゃんのおかげで活動的になってね、みんな喜んでるよ」
「そうなんですか？ 姫様って、セスティナ様ですか？ ルチア様と遊んでるんですか？」
「ルチア様の方がセスティナ様を気に入ったみたいでね、セスティナ様もまんざらでもないみたいだよ。口ではブーブー言ってるけど、案外面倒見がいいのかも。ルチア様、すっかり泳ぎの達人だよ。すごい体力だよね。海の女神もびっくりだよ。それで、最近一緒に来る女性の名前を聞いてきてくれって言われてね。二人とも話さないから名前がわからなくて。マチルダさんて言うんだね。彼女の方は海には潜らないんだけど、ルチア様が海に潜っている間は砂浜にいて、うちの妖精達と戦ったりしてるよ」
「戦ってる？ そっちにも剣の達人がいたかな？」
「うちは剣じゃなくて槍とか矛とかそっちだよ。みんな喜んじゃってね」
「そうですか」
「ガーベラ様とタイプは違うけど、彼女いいよね。じゃそろそろ帰るよ」
「さようなら」
ワイアットは飛んで行った。
海側とこちら側、今まではあまり交流もなかったが、ルチアのおかげで変化が起こっている。
「良いことだな。うん」
グレンは珍しくもちょっと微笑んで空を飛んで行った。
そして海では、今日も元気にルチアは海に潜っていた。泳ぎが達者になってきた最近では、海に潜って珍しいものを探すことが楽しいようだ。海の中は陸では見られないものがたくさんある。海の連中でさえすべて把握していないくらいである。
ルチアが今日海に潜って岩場に運んでいたのは、ばかでかい貝だった。殻が波のように湾曲している貝で、貝殻は虹色のようにキラキラ輝いている。
「あなたほんとにバカ力ねえ。よくこんなの一人でもってこられるわね」
セスティナは、ルチアのバカ力にまいど感心している。貝は一メートル以上はありそうだ。男でも二人がかりでしか運べないくらい重い貝である。ルチアはその口の所に手を当てると、がっと上に引き上げた。
「ちょっと危ないわよ。貝って結構すごい力なんだからって、簡単に開けたわね。あらー」
でかい貝の中には丸い玉が入っていた。それも大きい。直径一〇センチもありそうな真珠のようであるが、光の加減で虹色に輝いて見えた。
「まあキレイ。これならお土産にしても喜ぶかもよ？」
ルチアはでかい真珠を手にとって眺めると、セスティナに渡した。
「え？ くれるの？ 私はいいわよ。今更物欲もないし、これなら持って帰ったら喜ぶ……」
真珠から突然光がもれた。
「え！」
セスティナの体は真珠の中に吸い込まれ、驚いたルチアがセスティナを引っ張ろうとして一緒に吸い込まれてしまった。後に残ったのは、開かれた貝と、大きな真珠だけだった。
「……どういうこと？ ここはどこなの！？」
セスティナは周りをきょろきょろと見て叫び声をあげている。ドームのように周りを覆っているのは白い壁で所々キラキラしていた。しかも結構広い。
「もしかして真珠の中？ 嘘でしょ！ 魔法？ だれの魔法？」
ルチアも周りをきょろきょろ見ていたが、ルチアは声を発しないので、その分セスティナが騒いでいた。
「一体どういうことなのよ！！！ 誰かいる！」
座り込んでこちらを眺めている老人がいた。青い白髪交じりの長い髪、衣服は海の神が着るような青系の服である。
「久しぶりに他人を見た。うれしい。わしゃうれしい」
老人はさめざめと泣き出してしまった。
「あなたはだれなの？」
「わしゃもう随分前にここに閉じ込められて一人っきりだったんだよ。寂しかった。とっても」
「随分前から閉じ込められて？ あなた名前は？ 私は海の女神セスティナよ。マリナールの孫」
「わしの名前はコバルト。ある日海で真珠を採っていて、気がついたらここにいた。どうやってもここから出られんし、だれにも連絡もできん。わしも神なのだが、この中ではなぜか年をとってしまうのだ。もうだめかと思っていたよ」
「はあ……コバルト？ 聞いたことがあるわ。コバルトコバルト……」
セスティナは首をかしげている。
「しかしこっちの嬢ちゃんは、全く脅えておらんな。肝っ玉が太い子じゃな」
老人はルチアを見て言った。ルチアは周りをきょろきょろ見るだけで、脅えている様子はまるでない。
「外見も面白いのう。お前さんの娘かい？」
「違うわよ。この子はルチアよ。あなた、私のこと知ってる？」
「知らん。わしが知っているのはマリナール様の娘のエキドナ様までだな」
「じゃあここに随分長いこといるのねえ。あ、思い出した。昔行方不明になった海の神がいるって。当時はおじいさまも探しまくったんだけど見つからなくて、占いでもまるでわからなかったって。神様なのになんで年を取っちゃうの？ じゃあ私も？ 私も年を取るの？」
「ここにずっといればそうなるだろうなあ」
「そんなのいやー！」
セスティナは涙目である。ルチアは白い壁をとんとんたたいていた。
「その壁はどうやっても崩れないんじゃよ。わしもいろいろやってみたが、なにせ壁を壊す道具もないしのう」
「なんてこと」
セスティナはよろよろとへたり込んでいる。
さて、海の世界は夕方である。そろそろ帰る時刻なのでマチルダは海をキョロキョロ見たが、ルチアもセスティナもいなかった。
「あれ？ もう神殿かな？ いないですね」
マチルダと一緒にいた妖精達が二人を探しに神殿に行ったが、二人の姿はない。
「いなかったですよ。どこに行ったんだろう？」
二人はどこを捜しても見つからず、マリナールの知る所になった。
「二人がどこにもいないだと？ 全員で探せ！」
こうして海側の神や妖精たちが二人を探すことになった。
「一体どこに行ったのかしら」
マリナールの妻エヴァも心配している。
「そうだ。ババリアを呼べ」
ババリアとは、占いが得意な老女姿の神である。ババリアが急遽呼ばれて占いが始まった。占いを始めたババリアは眉をひそめている。
「どこにいるか分かったか？」
マリナールが聞いた。
「霧がかかったようにわかりませんぬ。こんなことは二度目じゃ。コバルトが行方不明になった時と同じ。あの時も何度占っても何もわからなんだ」
「コバルト？ まさか。あの二人も同じように消えてしまったというのか？」
マリナールが驚いている。
「冗談じゃないぞ。わしも海に出る」
海の神の長マリナールならば、大体他の神々がどこにいるかわかるのだが、マリナールにもセスティナの行方は分からなかった。
そして真珠の中では、ルチアが白い壁を殴ったりもしていたが、ルチアのバカ力でも壁はまったく崩れなかった。
「ところで、ここは一体なんなのかしら？ どうしてこんな場所があるの？」
セスティナがコバルトに聞いた。
「さーわしにもわからん。ただ、海にはマリナール様にも支配できない場所があるらしい」
「えー……ルチア、大丈夫？」
ルチアは口を半開きにして、キーキー声を発していた。
「何？ 何？」
ルチアが発しているのは声ではない。
「ん？ もしかしたら超音波かのう？」
コバルトが気がついた。
「超音波？」
「イルカが気がつくかもしれん」
「イルカが？ みんな気がついて、私はここよ！」
セスティナは白い壁に向かって叫んでいた。
ルチアのＳＯＳを受け取ったのか、そこからかなり離れた場所にあるラーズの神殿にいた色鮮やかなコウモリ達が、せわしなく動き出した。
「ルチア帰ってきたのか？ じゃあな」
神殿にいたラーズが言ったが、コウモリ達は神殿の中で飛び交っている。
「？？」
「どうしたの？ おなかすいた？」
サーラが聞いた。
コウモリ達は神殿の中で交差して飛び交っている。
「なんか変かも？ あっちのガーベラだったら、『コウモリが何か訴えてる！』とか言うかもなあ。何か訴えてる？」
青いコウモリがラーズの背中にどんと体当たりしていた。
「そうみたいだな。ちょっと出てくる」
「ばいばい」
ラーズはコウモリ達の後をついて行った。コウモリ達がたどりついたのは意外にも水の神殿だった。
「ルチアー？」
神殿の中にラクアと子供達がいた。
「どうしたの？ おっと」
コウモリ達はラクアの神殿の中で飛びまくっている。
「ルチア知らない？」
「今日は見てないよ」
とラクア。
「今日も海に行ったのかな」
「さあ、そうかもね」
「ちょっと私とコウモリ達を海に連れて行ってくれない？」
「え？ コウモリ達も？」
「みんな海に行くよ。集まれ」
ラーズが声をかけると、コウモリ達はラーズの胸元に入り込んだ。
「やっぱり海に行きたいようだ。賢いコウモリだな。ラクア、すぐ頼むよ」
「わけがわからないけど、まあいいや。行こう」
ラクアはラーズとコウモリ達を連れて海に移動した。海につくやいなや、コウモリ達は一直線に飛んで行った。
「私も行く」
ラーズはこうもり達について行った。海岸には、妖精達がわんさかいた。
「一体どうしたんだ？」
「ラクア様だ！ 実は、セスティナ様とルチア様が行方不明なんです」
妖精が答えた。
「ええー！ 行方不明って……嘘だろ」
「ずっと探しているんですよ」
海岸にはマチルダが座っていた。
「彼女は一緒じゃなかったの？」
「こちらではいつも別行動なんです。彼女、ルチア様が戻ってくるのを待ってるんですよ」
「そうなんだ」
ラーズとこうもり達が戻ってきた。
「これだ」
ラーズは手に大きな真珠を持っていた。
「コウモリ達によれば、ルチアはこの中らしいぞ」
「えー！！」
「えー！！！」
海岸にいた一同が驚いた。
海の神殿にて、マリナール達は大きな真珠を眺めた。
「この中に二人が？」
「コウモリによればですが、コウモリ達はルチアと一緒に産まれた生き物ですから、通じているものがあるのかもしれないですよ」
ラクアが説明した。
「うーむ……どうしてこんなことになったのかわけがわからんが……確かにこの真珠からは普通ではない何かを感じる。壊してみるか」
周りににいた者達がぎょっとした顔付きになった。
「壊しても、二人は大丈夫かな」
ラーズがラクアに聞いた。
「さあ、だけどどうしてこの中に閉じ込められたんだろう？」
とラクア。皆そこがさっぱりわからない。
「神器を持ってくる」
マリナールは場を離れた。
皆不安そう表情である。
「ルチアちゃんを巻き込んでしまってすいません」
セスティナの弟、レヴァーンが申し訳なさそうに言っていた。
「いや、ルチアは喜んでここに来ていたからね。しかし不思議なこともあるもんだな」
とラーズ。
今コウモリ達はラクアとラーズの服にひっついている。マリナールが三つ叉の矛を手に戻ってきた。
「皆離れて」
一同が祈る中、マリナールは床においた真珠に矛を突き立てた。真珠は真っ二つになり、そこから光が漏れて、なんと３人の神が出現したのだった。
「ルチア！」
ラーズが叫んだ。
「姉さん！」
「セスティナ！ よかった！」
レヴァーンとエキドナも喜びの声をあげている。
セスティナは周りを見て、泣きながら「よかったー！」と喜んでいた。
「本当によかったあ」
そして一同の視線は、三人目に向いていた。
「お前は？」
「マリナール様！ 会いたかったですー！」
コバルトはマリナールに抱きついていた。
「一体お前はだれだ」
「コバルトですよ」
「コバルトだと！？？」
「ええー！！」
「コバルト、昔行方不明になった神だ。一体今までどうしていたんだ！？」
マリナールは驚きまくっている。
「真珠の中にいたんですよ。ありがとう。ありがとう。誰が助けてくれたのかわからないが、外に出られてうれしい。うれしい」
コバルトはマリナールの手を握り、泣きながらうれしそうに振っていた。
「コバルト、一体どうして老人姿に」
「わかりませんが、真珠の中でじょじょに年を取ってしまいまして……」
といっていたコバルトの姿が変わっていた。じょじょに若くなっている。
「おお！」
「うおーやったあ！ 若さを取り戻してきた！」
コバルトはしわしわだった手からしわがなくなってきているのに気がついた。コバルトは全体的に若返り、目尻が下がった、ちょっと軽薄そうな青年に変わっていた。
「やった、やった、やったー！」
「コバルト、女達ののろいでどうにかされたかと思っていたわ」
エヴァが言った。
「実は私もそう思っていました。当時３人の女性と付き合ってて、それがばれたところだったので。でもこれで心を入れ替えました。セスティナちゃん、これも縁だ。結婚しよう！」
コバルトは笑顔でセスティナを見た。
「いや」
セスティナはすぐ断っていた。
「えー！」
「あなた頼りになりそうにないし、ルチアが男だったらなあ。絶対結婚したいわ」
セスティナは心底そう思っていた。
「ところで、どうして真珠に吸い込まれたんですか？」
ラクアがマリナールに聞いた。
「さあ、海はわしにも把握しきれないことがあるんでな。今回のことはよかった。まさかコバルトまで帰ってくるとは。ルチア、ありがとう。ルチアが一緒でよかった」
マリナールはルチアに心底感謝していた。ルチアは割れた真珠を拾い、マリナールに何か訴えていた。
「なんだ？ それが欲しいのか？」
ルチアはうなずいている。
「いいぞ。好きにすればいい。これに懲りず、また遊びに来ておくれ」
ルチアはうなずいた。
「そうだ。マチルダが海岸で待ってるんだ。迎えに行こう」
とラクア。
こうして一同は無事、ラクアの神殿に移動したのだった。
「いやー不思議な事件だったなあ。コウモリ達、がんばったな」
ラーズがコウモリ達をねぎらうように言うと、コウモリ達はうれしそうにもう日が暮れた空を飛んでいた。
「それ一体どうするんだい？」
ラクアがルチアに聞いた。ルチアは割れた真珠を大事そうに抱えている。と思ったら、ルチアはそれをラクアの神殿の外の湖にぽいとほっていた。
「あ」
ジャボンと音がして真珠は湖に沈んだ。
ぶくぶくと湖の底から泡があがってきた。
「？」
みなが湖をちょっとのぞき込もうとしたとき、にょろっと手足のようなものが出て来て、頭のようなものもざばっとでてきた。
「うわー！」
ラクアとラーズは驚いて後ろに下がっている。二人の身長を遙かに凌駕する真っ白い生き物が湖から姿を現したのだった。
「イカか？」
ラーズが言った。それもかなりでかいイカである。
「顔はイカっぽいかなあ、足何本？」
にょろにょろした足は巨大で、数えるのはちょっと難しい。とにかくでかい生き物だった。頭にはイカの耳のような三角形のものがついていてひらひら動いている。ルチアはうれしそうに手をたたいている。そして身振りで何か言っていた。
「ここにおいといてくれって」
ラーズが通訳した。
「ぜえっったいにダメ！ 海じゃなきゃだめだよ。どうやって連れて行こう。触るのがいやだ」
騒ぎを聞きつけて、ラクアの娘達が神殿からでてきた。
「わあ、かっこいい！」
「すごい」
などと言っている。
「どこもかっこよくないよ！」
とラクア。
その生き物は巨大な足の一本から何かを陸地に落としていた。他の足でもそれを落としている。
「なんだ？」
ラーズがそれを拾い上げた。
「なんだろう？」
それは長方形の白い板のような物質だった。
「硬いし重いな」
「何？」
「さあ、硬い板みたいな」
その板は、全部で五枚あった。
「へー、ジェラルドに渡したら加工してくれるかもね」
「結局これってなんなんだ？ 神獣なのか？」
ラーズが聞いた。生き物の体はわずかに輝いているようである。
「さー神獣なのかなあ」
ルチアはその生き物の足を一本握っていた。握手しているようにも見える。
「とりあえず連れて行くよ」
「ばいばい」
「海で元気でな」
みんなに手を振られて、大きな生き物はラクアと姿を消した。海側の神に聞いてみると、確かに聖なる生き物のように見えるようだ。
「聖なるイカじゃな。コバルトの神気を吸収して、そんな生き物が生まれたのかもしれんな」
マリナールはそう分析した。
ルチアはそんなことがあった次の日も懲りずにマチルダを連れて海に行っていた。
「昨日の今日でよくくるわねえ」
セスティナは昨日のショックを引きずっていたが、ルチアはまるで何もなかったかのようである。なんという図太い精神力であろうか。
そしてすっかり真珠恐怖症になったコバルトは、懲りずにセスティナにプロポーズしていた。速攻で断られていたが。
「久々に帰ってくれば、自分の部屋はないし、女性に冷たい仕打ちはされるし、散々だ」
コバルトの部屋はすっかりなくなっていたが、何千年もいなかったのだから仕方のない話である。
「新しく部屋をもらったんだからいいじゃない」
とセスティナ。
「いつでも夜来てください」
「行かないわよ」
「逆に招いてくれます？」
「招くわけないでしょ！」
ルチアがセスティナの手を引っ張ったので、二人は海に行った。すると海の中で近づいてきた巨大な白い生き物がいた。昨晩生まれた巨大なイカである。
セスティナはびびっていたが、ルチアは巨大イカと握手し、巨大イカは去って行った。どうやら挨拶に来ただけのようだ。
「海の神の私でさえ怖いというのに。あなたってほんと動じないわね。男だったらよかったのにねえ」
セスティナは残念そうに言ったのだった。
その後も、ルチアが海に行くと、巨大なイカは挨拶に来るようになった。
ジェラルド工房では、巨大イカの贈り物の白い板で何を作ろうかとジェラルドが思案中だった。
不思議な材質であるが、白い表面はつるつるしていて美しい。見る角度によっては虹色に輝いて見える。剣で切りつけてみると、なんと傷一つしない。
「すごい。なんて頑丈なんだろう。そうだ。これに取っ手をつけて盾を作ろう」
ジェラルドはさっそく工房の妖精達に指示を出したのだった。
つづく
一三部
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