第30話
「え？ 儀式？ もうか？」
「随分早いな」
ミルキダスから儀式になるかもかも知れないという話を聞いた男達は皆驚いていた。
「もしかしたら、サントス様と仲良くなりまくった王妃が、後ろめたくなって我々も呼ぶことにしたのかも？」
ヴィラは冷静にそう分析している。
「まあ、理由はなんでもいいじゃないか。後ろめたいって思うところが王妃のかわいいところだ」
ジュノーはヴィラとそう思念で話していた。
王妃なのだから臣下に気をつかうことはないのに、ゆりは男達に悪いとつい思ってしまうのだろう。
「ムサカ様はどうするんだろうな」
「そうだな。まだ黒目の王妃とは仲良くなっていないだろうから、どうするんだろう？」
ハインリヒから「儀式になるかも知れない」という話を聞いたムサカは驚いていた。
「随分早いんだな」
「本当に儀式かどうかはわかりませんが」
「わしはどうしたらいいんだろう」
ムサカは動揺しているのか、老人の時のしゃべりかたになっていた。
「ムサカ様は、まだ黒目の王妃とは何もないんですよね？」
「ああ」
「何があるかわからないので、一応部屋で待機しておいてください」
「う……わ、わかった」
ムサカはかなり緊張した様子だった。
ラクシュミから子供達に、ゆりに明日まで近づかないように、と思念が飛んでいた。
「え？ 儀式があるってことは、やっぱり子供には魔力があるのかな？」
ラギはそう思った。
「そうかもね。でも儀式になるにはかなり早いと思うけど。この前妊娠したばっかりのような気がする」
「だよね。サントス様と仲良くして、女蛇が降りてきたとか」
「そうかも」
シスとラギはそう推理し、ナナミは、「今夜の注目ポイントは、ムサカ様が儀式メンバーに加わるかどうかよ」とシスとラギに思念を送っていた。
「確かに」
「そこ注目だね」
「ドキドキするな」
「どうなるんだろう」
皆がドキドキしている中、ゆりは自分の部屋で腹ごしらえをしていた。
ちなみに、ゆりの部屋にいたジロウは、ゆりの淫の気がものすごかったので、部屋を出て行っている。
「ジロウ君に恐れられるほどすごいんだ？ うーん、女蛇は、きたのかな？ まだわからないけど。まあ儀式じゃなくてもいいか。そうだ、ムサカさんはどうしよう。うーん」
ゆりは食事の後、お風呂に入りながら考えた。ゆりの侍女達は、儀式部屋のチェックをしたり、花を飾ったりと忙しく働いている。
（子供の父親だというのなら、なんらかの形で参加してほしいけど、儀式の男達とは別枠の方がいいのかな。いつもは儀式が終わった次の日には王様と仲良くしてるけど、次の日はやっぱり王様がいいし、となると……）
「そうだ。儀式の前哨戦として、あなたムサカさんと仲良くしなさいよ」
黒目のゆりがもう一人の自分に言い出した。
（え？ 私？）
「だって、男達とまぜるのも、ムサカさんかわいそうじゃない？ みんなも緊張するだろうし。この子がムサカさんの子なら、ムサカさんもなんらかの形で参加しなきゃ、でしょ？」
（儀式って決まったわけじゃないんでしょ？ 別に無理に参加させなくても。それに私は巫女じゃないし）
「あなたムサカさんが好きなんだからいいじゃない。この国で一番強い男なんだから、女蛇がきたらムサカさんに目をつけないわけないし。あなたがムサカさんとして、男達と私が儀式をして、翌朝王様、これでいこう」
ゆりは巫女スイッチが入ったままなので、かなり強気だった。
「大丈夫、今の私すごいみたいだから、ムサカさんもすぐ興奮するって」
今のゆりに逆らうのは無駄のようである。
「男達が来る時間は二時間遅らそう。突撃せよ！」
ゆりは侍女に伝言を頼み、ムサカの部屋に向かったのだった。
（スイッチが入った私、怖い……）
蛇の目のゆりはぼそっとつぶやいていた。
こうなると蛇の目のゆりも逆らうことは不可能である。
蛇の目のゆりは思い切ってムサカの部屋をノックしたのだった。
黒目のゆりが気がついた時には、目の前は真っ暗だった。ゆりはベッドに座っている。
「あれ？」
顔に布か何かが巻かれているようだ。
「取らないでください。今の私の姿は、あなたにはちょっときついでしょうから」
男の声が聞こえて来た。
「ムサカさん？」
「そうですよ。あっちの王妃とは散々したんですが、あなたともしないと。ねえ」
ムサカの手がゆりの頬をなでていた。
（そうか。ムサカさんは王族。王様よりも変化はすごいのかもしれない？）
ムサカはゆりを寝かせてゆりの足を広げて、そのまま体を密着させていた。
「この後儀式になるんですね？ 男達とここまでしてないって本当なんですか？」
黒目のゆりは突然の行為だったので、まだ頭の中が働いていなかった。
胸をなでられて、挿入された。
「ムサカさ……」
「私は長い間不能だったのに、今は興奮が収まらない。今は、あなたを男達に渡すのが辛いくらいですよ」
ムサカはわざとじらして体の奥に入らないようにしていたのでゆりの腰の方が動いていた。ムサカ自身も、王族の甘い匂いを発している。
「いじわるしないでください」
「いじわるじゃないですよ。奥に欲しいって言ってください」
「奥に欲しいです」
ムサカが一気に奥まで挿入した。
「ああ、気持ちいいです」
「私も、まさか今になってこのような快楽を知るとは」
（ムサカさんの匂いもすごい）
ムサカは途中で体勢を変えて、ゆりを上にした。
「好きに感じて動いてください」
ゆりは目隠しをされたまま、ムサカの上で動いていた。
「今後は、したくなったら私の所まで来てくださいね。約束ですよ」
「妊娠しても一杯抱いてくれるんですか？」
「もちろんですよ」
「うれしい」
ゆりは素直に喜んだ。
その後ムサカはゆりをお風呂に連れて行った。ムサカの変化は終わり、ゆりの目隠しは外されている。ムサカのいつもの顔を見ると、ゆりはなんとなくほっとしていた。
ムサカはゆりの匂いの影響か、お風呂の中でもゆりを抱っこしていた。
「この後男達に渡したくないです」
「ムサカさん……」
「先ほどの答えがまだですよ。儀式で最後までしないというのは本当なんですか？」
「はい」
「どうしてですか？」
「最初は、体の中だけは王様のものにしたかったんです。今は、全員とやりまくるってのも大変なので。彼らには、恋人達もいますし」
「そうですか」
ムサカはゆりをぎゅっと抱きしめてキスした。
「私さっきのセリフ、すごくうれしかったです。この一族って、妊娠した女性には何もしないのが普通のようなので。でも私は、妊娠してもキスしたり、かまってほしい方なので、だからうれしいです」
「好きですよ」
「私もムサカさんのことが好きですよ」
こうして前儀式は終わり、ムサカはゆりを儀式部屋に運んだのだった。
男達は時間まで儀式部屋に来ないようにと言われていたので各部屋に待機している。
ハインリヒも自分の部屋で酒を飲んでいたのだが、そこにムサカが瞬間移動で現われた。
「ムサカ様？」
「ハインリヒ、すまんが、今夜はパスしてくれ」
「え？」
ハインリヒの体は椅子にぴったりひっついたまま動かなくなった。
「ちょっムサカ様！」
ムサカはもう消えていた。
ハインリヒ以外の男達が儀式部屋にやってきた時、ゆりはご機嫌だった。
「二時間何をしていたんですか？」
ミカエルがゆりに聞いた。
「ムサカさんと仲良くしちゃったの」
「ムサカ様と？」
「赤ちゃんの父親かもしれないから、何かに参加してほしくて、儀式の前の儀式ってことで。昔は儀式の前に、王様やらハザーク様に抱かれるってことがあったから」
「そうですか。まあ王妃がご機嫌ならよかったです」
ここは嫉妬している場合ではない、というのもミカエルは分かっていたので、ムサカが拒絶しなかったことに今はほっとしていた。
「ハインリヒは腹痛でこられないらしい」
フリットが言った。
「そうか？ そりゃよかった」
とミカエル。
「こらこらよくないでしょ」
とヴィラ。
「そうそう、みんな聞いてください。私、今日、ジロウ君が魔法を使う所をみたんですよ」
ジュノーが言い出して、みんな驚いていた。
「えージロウ君、魔法が使えたの？」
とゆり。
「今日使ってましたよ。王妃がオレンジの苗を見に行ったとき。金色の矢がジロウ君の頭の上にうかんで、飛んで行ったんです」
「私は敵に矢がささっているのを見ました」
ミルキダスが言った。
「すごいな。ジロウ君は前から魔法が使えたのかな？」
ヴィラが首をかしげている。
「あ、もしかしたら、最近使えるようになったのかも、そうそう、重要な話があるの。１の月あたり、寒波がくるかもってサントス様が言ってたわ」
「商人が言ってました。やはり来るんですね」
フリットが言った。
「いろいろ準備しなきゃな」
とミカエル。
「というわけで、今夜は熱々にもりあがりましょう」
ゆりが宣言した。
「女蛇はいるんですか？」
「ヴィラが聞いた。
「実はひそかにいるっぽい。多分蛇が近くにいないんじゃないかな。あまり表に出てこないから。今夜は淫らにからまりまくりましょ。ふふっ」
ゆりは男達と愛撫しあった。
「カーライル様はどうするんだろう？」
ヴィラがカールに聞いた。
「女蛇は知り合いなので、儀式に参加はしづらいそうで、今夜はエルバートさんのところにいますよ」
カールが小声でぼそぼそ言った。
「そうなんだ」
（ああ、さっきみたいにからまりたい。あの人素敵だったなあ。あの変化した姿ったらもうしびれる！）
ゆりの脳裏に声が聞こえてきた。
黒目のゆりはムサカの変化姿は知らなかった。
女蛇が来たのはムサカとからまっている時のようである。ゆりはなんとなく、お兄ちゃん蛇がいる女蛇かな、と思っていた。
「王妃の匂いをかぐだけで体が反応するんだから、王妃は本当にすごいですよ」
ヴィラが言った。
「本当に、こんなに長年興奮することができてるんですから、すごいです」
ジュノーの言葉に、「じいさんみたいなこと言うな」とミカエルが言った。
「真面目な話、我らにすればすごいですよ」
「私も、王妃と出会わなかったら、こんなには興奮できなかったでしょう」
とシャナーン。
「あ……ああ……王妃……」
ゆりは今ミルキダスに奉仕していたので、ミルキダスがあえぎ声を出している。
「王妃、愛してます」
「愛してます」
「愛しまくってます」
「こらこら」
ゆりの霊体が出まくっているのか、順番に男達を回っているのか、ゆりは見たいような見るのが怖いような気持ちになった。
「王妃の霊体ちゃーん」
ミカエルはこんなことを言っている。
「私もみんなのことが好きだよ。儀式になったらよろしくね」
「もちろんですよ」
「楽しみですよ」
結局儀式というわけにはいかなかったが、ゆりは男達とほんわかとした雰囲気で仲良くしあった。
ゆりの体の側に、青い花が出現していた。
「あれ？」
花はばらばらと現われて、ゆりの体の周りのシーツの上に出現していた。男達が触ってみようとしたが、花には触れなかった。
「花が見えるんだが」
「私にも見える」
ゆりは（男ガーベラ様のサービス？）と思っていた。
「これはきっと、私とみんなの愛の結晶」
「ええ！？」
ミカエルは花をすくおうとしたが、やはり無理だった。
「みんなだっこしよう」
ゆりは男達と順番に抱っこしあった。
「このお花、王妃にぴったりですね。王妃にはピンクも似合いますが、青の方が似合うかも」
シャナーンが言った。
「満足したら眠くなってきた。みんな、今日はありがとうね」
ゆりは目を閉じて本当に寝てしまった。
「ところで、ハインリヒはムサカ様に嫉妬されて今日はパスしろと言われたらしい」
フリットが男達に言って、男達は驚いていた。
「ムサカ様、嫉妬するほど王妃を好きになったのですね。よかった」
シャナーンは喜んでいる。カールの顔は青くなっている。
「私は大丈夫かな」
「ハインリヒ殿は、王妃に子蛇を産んでもらったりしてるからじゃないかな？ カール君は大丈夫だろう」
ヴィラが言った。
「そ、そうですかね」
「王妃の体を運びますね」
ミルキダスがタオルにくるんだゆりを抱っこして、フリットも手伝いに行った。
こうして、男達との夜は終わった。
翌朝、椅子に座ったまま寝ていたハインリヒは、目を覚ましていた。体はまだ止められたままである。
「ムサカ様、朝になりましたよ。もうかんべんしてくださーい」
ハインリヒは叫んでいたのだった。
つづく
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