ダークファンタジア 序章
それは暑い夏の日だった。中学３年生のゆりは塾の帰り道、夜道を歩いている時に、後ろから近づいてきた車に無理やり乗せられて、人気のない場所に連れて行かれてしまったのだった。
車の中には３人の若い男がいた。
ゆりは一瞬何がおこったのかわからなかった。
自分がなぜこんな目にあったのか。
後ろの席に乗っていた男はゆりの体を強引に抱き寄せて捕らえていた。これから何がおこるのか。考えたくなかった。
考えられなかった。
恐怖の時間が過ぎる中、やがて車はある広い駐車場のような所に止まり、体は下ろされた。
口にはタオルのようなものが詰め込まれている。
やがて、服に男の手がかかり、ゆりは悲鳴をあげた。
だれか！誰か助けて！
悲鳴は口から出なかった。ただ、涙だけが流れてくる。
気持ちが悪い！いや！
そのとき、不意に男たちが倒れて地面に転がった。
え・・・一体何がおこったの？
ゆりは男たちから体を離して口からタオルを出した。
目の前に男が立っていた。その男は不思議な顔立ちをした男だった。
銀色の短い髪、大きくとがった耳、服装も、この世界の人ではない。だけど、優しそうな顔立ちをした若い男である。
男はゆりに近づいて、優しく微笑んだ。
「・・・・あなただれ？」
ゆりは座り込んだまま聞いた。
「どうして助けてくれたの？」
横を見たら、３人の男は地面に転がったままだった。全然おきてこない。
男はゆりの近くにかがんで、何かを出した。
それはブレスレットのようだった。銀色の、蛇の形をしている。
男はそれを、ゆりの左腕にはめた。
『蛇はあなたの守り神・・・どうか・・好きになって・・・』
男の声が聞こえた。聞こえたというよりも、直接脳裏に響いてきた感じだった。
「蛇？」
男はほほえんで、そのまま姿を消した。ゆりはきょろきょろと辺りを見回したが、男の姿はどこにもなかった。
ただ、蛇のブレスレットだけがゆりの左腕に残された。