神々の黄昏3
むかーし昔大昔、まだ神が人間達と同じ地で暮らしていた頃のお話です。
愛欲の女神ガーベラが誕生し、そのあまりに美しい姿に多くの神々が恋人になりたがりました。
「愛欲の女神」その名の通り、ガーベラには男心をとりこにして欲望を沸き立たせるようなそんな力がありました。しかし生まれてまもなくのガーベラは
まだ欲望を知らず、自分にそんな力があるという事もよくわかっていませんでした。
「一体どなたが恋人になるのかしらねえ」
「本当にね、ガーベラ様がお生まれになってからというもの、ダーナ様の機嫌が悪くて悪くて」
「ご自分の立場を心配なさっているのよ」
「神格もほぼ同じだものねー」
妖精達はここの所ガーベラの話題で持ちきりでした。
「あら、噂をすれば」
「まあ、しかも横にいるのはアリアス様だわ」
噂をしていた風の妖精達は皆あわてて木の陰に隠れました。草原を並んでやってくるのは愛欲の女神ガーベラと太陽の神アリアスです。
アリアスはダーナの恋人、ガーベラと一緒とは穏やかじゃありません。
（ダーナ様の雷が落ちそー）
（こわーい！」
風の妖精達は興味津々で二人の様子を眺めていました。
「ああ、本当に美しい。花も恥らう美しさとはまさにこのこと。君が生まれた偶然におおいに感謝しよう！」
光り輝く太陽の神はうっとりした表情でガーベラを見つめました。オレンジ色の髪をし、光り輝く衣を身にまとったアリアスはいわば夜の神オルガとは
正反対の神でした。
（なんだか目がチカチカするけど気のせいかしら）
アリアスの色彩があまりに鮮やかなので、まともに凝視するのは困難のようです。せっかくのアリアスの美しい顔をまじまじと見れないとは残念なことです。
「ガーベラは歌は歌うのか？」
「ええ、歌うわよ」
「なら歌ってくれないか？ほら、小鳥達もせがんでいるぞ」
二人の周りにオレンジ色の小鳥が数匹やってきました。可愛い声で鳴いています。
「アリアスのこと仲間だと思っているのかしら？」
「仲間か、それはよかったな。ははは・・・はは」
笑っていたアリアスの顔が凍りつきました。上空から一頭のペガサスが飛翔してきます。誰か乗っているようです。ペガサスが地上に降りると、そこから
一人の女神が降り立って二人の元に歩いてきました。女神はなぜか肩をいからせています。
「やあダーナ、今日も美しい」
アリアスは表情をさっと変えてその女神に笑顔を向けました。
「やあじゃないわよ。二人で何やってるんのかしら？」
ダーナの金色の眉はつりあがっています。
「何って散歩さ。こんな草原でおかしなことなどするわけないだろう」
「ご機嫌いかが？ダーナ」
ガーベラはにこにこしてダーナに挨拶しました。
するとダーナはきっとガーベラを睨みました。
「ご機嫌いかがじゃないわよ。何よその笑顔は！余裕だとでもいいたいの？！」
「え？」
ガーベラは何を怒られているのかさっぱりわかりません。普通に挨拶をしただけなのですがダーナは一体何を怒っているのでしょう。
「私に挑戦する気なのね！いいわ。絶対負けないから！」
「ガーベラはそんな事一言も言ってないぞー」
アリアスがこっそり言葉を挟んでいます。
「とにかく！一番美しい女神は私。ガーベラには負けないわ！」
ダーナは宣言するように言いました。ガーベラはただぽかんとしています。
「きなさい。アリアス！」
「うわっ」
ダーナはアリアスの腕をひっぱり、ペガサスに乗って去っていきました。
「？？？」
ガーベラは首をかしげていました。
（何がいけなかったのかしら？なんでいっつもダーナって怒っているのかしら？）
（ダーナ様ったら対抗意識燃やしすぎよー！！）
（ガーベラ様さっぱり意味わかってないじゃない）
妖精達は笑いながら木の陰から出てきました。そしてぼんやり立ち尽くしているガーベラの周りにやってきました。
「気にされなくてもいいんですよ。ダーナ様はただ怖いだけですから」
「怖い？何が怖いの？」
ガーベラは妖精達に聞きました。
「自分の地位が脅かされるのが怖いんですよ」
「ガーベラ様の美しさも恐れているんでしょうね。ガーベラ様がお生まれになるまでは、ダーナ様が一番美しい女神だといわれてきましたから」
「そういった男の神達が今ではガーベラ様に目を向けてますから、それでしゃくに障っているんですよ」
「はあ・・・」
「おきになさらずに」
「ガーベラ様は好きにされればいいのですよ」
妖精達はそういって去って行きました。
「あ・・・・」
（うーん・・・・よくわかんない。私が美しいからダーナが怒ってるってこと？男の神とは仲良くなれてもなかなか女神とは仲良くなれないなあ・・・）
空の神殿では、ヒルデリアもガーベラにはそっけない態度をとっていました。いつも忙しいといってろくに話もしてくれません。妖精達は皆親切ですが、
女神達とはなかなか仲良くなれません。近づいていっても挨拶をして、ささっと逃げるように去って行ってしまうのです。
その理由はガーベラにはさっぱりわかりませんでした。
「ぐす・・・」
なんだか悲しくなって涙が出てきました。
「ぐすんぐすん・・・」
しばらく歩いたガーベラは農園の近くの大きな切り株に座っていました。
「どうしたんだ？」
声がして顔をあげると、紫の髪のジンラが立っていました。
「こんにちは・・・」
「何かあったのか？」
「なんでも・・・」
ガーベラは涙をぬぐいました。ジンラはガーベラの横に腰を下ろしました。
そしてガーベラの頭をよしよしとなでました。
「私女神と仲良くなれないの」
「女神？」
「誰かと仲良くなって一緒に歌歌ったりしたいの。でもね、みんな私が行くとどっかいっちゃうの。ダーナもなぜだか怒ってるし」
「そうなのか？」
「どうしてなの？皆私嫌いなの？」
「まさかそんなことはないだろう」
しょんぼりしたガーベラを眺めていたジンラは、「あ、そうだ」と声をあげました。
「いい女神がいるぞ。彼女ならガーベラと仲良くしてくれるだろう」
「本当？」
「ああ、おいで」
ジンラは口笛を吹いて白馬を呼び、ガーベラと一緒に馬にのって行きました。そしてある神殿の前まできて馬を下りました。
「カサンドラいるか？」
ジンラが神殿の入り口で呼ぶと、「ここじゃ」とどこかから声が聞こえました。そして一人の女神が廊下に出てきました。
茶色の髪をまとめて後ろに結い上げた、知的風貌の女神でした。
知恵の女神カサンドラです。
「ん？」
カサンドラはなぜ二人が一緒に？というような目でガーベラとジンラを交互に見ています。
「カサンドラ、ガーベラと仲良くなって一緒に歌でも歌ってやってくれないか？」
「え？歌？」
「それではな」
ジンラはガーベラの背中を軽くたたいて神殿を出て行ってしまいました。残されたカサンドラとガーベラはしばらく見詰め合っていました。
ガーベラはここに連れてこられてびっくりしていましたし、カサンドラの方も突然の事にすぐ反応できなかったようです。
「・・・まあ、とりあえず中においで」
「はい」
ガーベラは部屋の中に通されました。壁には綺麗な織物がいくつか飾られていました。
「綺麗。空の神殿にもあるわね」
「ああ、私が織ったものじゃ。私は織物が好きで、歌は苦手なのじゃが・・・」
「素敵・・・」
織物には森の中の小鹿や白馬、空を飛翔するペガサスもありました。
「それでどうしたのじゃ？何かあったのか？」
カサンドラは優しく聞きました。ジンラがここにガーベラを連れてきた以上、言葉通りに一緒に歌を歌わせることが目的ではないような気がしたのです。
「えーと・・・」
他の女神のように話をしてもそっけない返事を返されるのではないか、とガーベラは思いました。
「あのう・・・別に何でも・・・」
「何でもいいから言ってごらん」
「・・・実は・・・他の女神と仲良くなれなくて・・・」
ガーベラは遠慮がちに話しだしました。なぜか他の女神に近づいていくと相手が逃げてしまうこと、ダーナやヒルデリアが自分に対して嫌な感情があることを。
黙って聞いていたカサンドラは最後には苦笑していました。
「それでジンラがここに連れてきたのか。なるほど」
「え？」
「私は男嫌いでね。恋人の神はいない。だからガーベラに恋人を取られる心配もないというわけだ」
「？」
「つまりー」
「カサンドラいますかー？」
その時声と共に一人の男の神が部屋に入ってきました。その神は茶色い肌に茶色い癖毛でまだ少年のような背格好でした。
「あ！・・・・」
その神は中にいたガーベラに目を留めると、そのまま硬直して動かなくなりました。
「あのー・・・どうしたの？」
ガーベラはおずおずと聞きました。その神は石になってしまったように動きません。
「ほっておいていい。つまり問題はガーベラの魅力がありすぎるという事なのだろうなあ、男の神がみーんな心惹かれるので女の神は面白くないのじゃ。
だからつい冷たくしてしまったのだろう」
「はあ・・・では私はどうしたらいいんでしょう？」
「とりあえず、近づかない方がいい男の神を教えてあげよう。神格の高い女神の相手を奪うと後が面倒だからな。それから・・・」
カサンドラはいろいろガーベラに助言を与えました。ガーベラは真剣な眼差しで聞いています。女神達と仲良くなるには、その女神達の恋人達とは
距離を置いたほうがよいようです。
「まあとりあえずはこんな所かな」
「どうもありがとう。とても参考になりました」
「そうか、よかった」
「また来てもいい？」
「ああ、いいとも」
「今度一緒に歌歌ってくれる？！」
ガーベラは目を輝かせて聞きました。どうやらカサンドラとは仲良くなれそうです。
「歌はちょっと・・・まだ楽器の方が・・・」
「ありがとう。またきますね。それじゃ」
ガーベラは明るい声で部屋を出て行きました。
「・・・サントス、いつまで固まっておるのか・・・」
ガーベラが行った後もサントスは石像のようになったままだったので、さすがにカサンドラも呆れました。
「ああ、びっくりした。なんて美しいんだろう・・・」
サントスはようやく動いて両手を組み、恍惚の表情を浮かべていました。
「見つめられるだけでもううっとり」
「恋人になりたいなら早く声を上げた方がいいぞ」
「とんでもない。私は離れた所からこっそり見るだけで十分です。ガーベラの歌、聴いてみたい！今度一緒に歌う時は呼んでください。絶対ですよ！」
サントスは目を輝かせてカサンドラに詰め寄りました。
「私は歌わんぞ」
「あなたの歌は聴きたくないです。でもこの際ガーベラが一緒にというのなら歌ってください。ガーベラの歌だけ聴きますから」
サントスは何気に失礼な言葉を口走っていました。この頃はまだ二人は同じ神殿には住んでいませんでした。
この頃のサントスは大人にはなりきれていない少年のような外見で、カサンドラは一緒にいてもまるで危機感を感じませんでした。
そういうところがよかったようです。
「ああ、なんだか最近世界が色鮮やかになったようだ！」
サントスはスキップするかのごとく軽やかに部屋を出て行きました。カサンドラの顔はかなり引きつっていましたがおかまいなしです。
（魅力がありすぎるというのも問題か。まあしばらくすれば、ガーベラもいろいろな事がわかってくるのだろう・・・それにしても、失礼な男じゃ。
私の歌はそんなにひどいというのか？）
「あ〜♪」
カサンドラはためしに声を出しました。すると妖精がやってきました。
｢うなり声が聞こえましたが？」
「・・・なんでもない」
やはり歌はやめておこう、そうカサンドラは心に誓いました。
ガーベラは日が暮れない内に空の神殿に戻り、カサンドラに言われた事を忘れないように復唱していました。女神達とうまくやっていくためには、
いろいろと気を配らねばならないようです。
（その内ダーナとも仲良くなれるのかなあ？そのためにはアリアスとあんまり二人きりにならない方がいいみたいね）
カサンドラはアシュランにも気をつけるように、とガーベラに忠告していました。アシュランに手を出されでもしたらヒルデリアとの仲が最悪になってしまうと。
（気をつけよう）
ガーベラは自分の腰帯に目を留めました。これには男を惹き付ける効果があるようだと最初ヒルデリアに説明されました。
（もしかしてこれしない方がいいのかもなあ・・・でも女神なんだし魅力がある方がいいのかな？どうなんだろうなあ・・・・）
腰帯をはずして眺めていると、「ガーベラ」と男の声が聞こえました。扉の所に立っていたのはハロルドでした。
「なあに？」
「ガーベラ、私はお前が好きだ。だから私のものにしたいんだ」
ハロルドはずかずか歩いてきながら言いました。
「あなたっていっつも急ね」
ガーベラは腰帯を自分の腰にはめ直しました。
「私を恋人にしろ」
「いやよ」
「なぜだ」
ハロルドの眉はすでにつりあがっています。
「そんな事命令されるのはいやなの。出て行って！」
「・・・・」
「出て言ってったら！」
ガーベラはハロルドの体を押し出しました。ハロルドは何か言いたげでしたが、素直に去っていきました。
「全くもう・・・」
（カサンドラはハロルドも恋人がいるって言ってたけど・・・あんな怖い人恋人にするのはいやよ）
所がその夜のこと、眠っているガーベラの部屋に忍び込んでくる者がいました。
「！」
すばやく口がふさがれてガーベラは声が出ませんでした。
上に男が乗っています。
（だれ！？）
「ガーベラ、私はお前が好きなんだ。だから欲しい」
（その声はハロルド！）
男の体の重みにガーベラは恐怖を感じました。ハロルドは片手でガーベラの口をふさぎつつ、もう片方の手で衣服をたぐりあげています。
「うー！！！」
ガーベラは両手両足を動かしてもがきました。
その手がハロルドの腕を思いっきりひっかいています。
「いててておとなしくしろ。乱暴にはしたくないんだ」
（すでに乱暴じゃない！どいてー！！！）
ハロルドの力にはガーベラは全く歯が立ちませんでした。
（最初がこんなのなんていやー！！！）
もがけばもがくほどハロルドは男の力で押さえ込んできます。
「好きなんだ。ガーベラ。一目見た時から」
ハロルドの手が太ももを開こうとしていました。
（足に触るなー！！！だめだ。こうなったら）
ガーベラは抵抗をやめました。
「ああ、わかってくれたんだな。ガーベラ」
ハロルドの言葉にガーベラはうなずきました。
「私のものになってくれ。悪いようにはしない。ずっとお前だけでもいいから」
ハロルドはガーベラの口から手を離して唇を寄せました。ガーベラがすっかり抵抗をやめていたので、ハロルドの力が弱まりました。
「うれしいぞ。ガーベラ」
「優しくしてね」
「ああ」
ハロルドはすっかり気をよくしてガーベラの胸をまさぐっています。
「あ、アシュラン！」
ガーベラははっと声をあげました。
「ん？」
ハロルドが後ろを向いた時、ガーベラは力の限り体を上にずらし、ハロルドの体に蹴りをくわえました。
「うっ・・・・」
その蹴りは見事股間に命中しました。ハロルドは半分裸のようなものだったので、衝撃も大きかったでしょう。
ガーベラはハロルドの体の下から逃げ出して部屋から出て行きました。
「待て！ううう」
ハロルドはうめきつつ声を出しています。ガーベラは誰かに助けを求めることも考えましたが、ことを大きくするのもいやでした。
（あーどうしよう。誰か雲から降ろしてー！！）
神殿の外に出てもあたりは真っ暗で誰もいません。
（だれかーだれかー）
神殿の周りをうろうろしていたら空にオルガが飛んでいるのを見えました。
「オルガー！」
ガーベラは両手を降って叫びました。それに気づいたオルガは近づいてきました。
「どっか連れて行って！」
「いいが・・・どうしたんだ？」
「ガーベラ待て！」
男の声が聞こえました。ハロルドです。ハロルドは怒りの表情で二人に近づいてきます。
事情を察したオルガはガーベラを抱いて空に浮かびました。
「べーだ。ハロルドなんてだいっきらい！」
ガーベラは力を込めて言いました。
「ガーベラ！覚えてろ！」
「忘れた」
ガーベラは雲の上で悔しがるハロルドに思いっきり舌を出していました。
「はははは」
オルガは笑っていました。
「笑い事じゃないのよ。もう少しでやられちゃう所だったんだから」
「そうなのか。困った男だな全く・・・それでどこに連れていけばいいんだ？」
「どこでも。あ、そうだ、あなたの神殿に行ってみたいな」
「いいが何もないぞ」
「それでもいい」
ガーベラはオルガの神殿に連れていってもらいました。オルガの神殿は外壁も黒っぽく、神殿の中には暗めの布があちこちにかかっていました。
テーブルや椅子などはあるものの、部屋の中に飾り物のようなものはなく、必要な物以外は置いていないようでした。
「暗いねー」
「ああ、何もないだろ？」
「うん。でもいい。ねえオルガ、口付けして」
「口付け？」
「さっきハロルドにされちゃったんだもん。だから」
「私を恋人にするか？」
「うん？うーん、口付けしたら恋人？」
ガーベラは無邪気に聞きました。
「まあたいていはそうだろう」
「なら恋人でいい」
オルガはガーベラを抱きしめました。
「オルガって妻とか恋人とかいないよね？」
「ああいないぞ」
「よかった」
オルガは顔を寄せてガーベラと口付けをしました。
「あ、なんだか気持ちいい感じ。もっと」
「ああ」
ハロルドとの口付けとは違い、ガーベラは心の中にもやもやっとしたものが浮かんでくるのを感じました。
それはオルガも感じたようです。オルガはガーベラの髪をいとおしげになでました。
「ガーベラはいいにおいだなあ・・・」
「本当？」
「ああ。とってもいい匂いだ・・・」
（なんだか・・・もっとしてほしいかも・・・）
オルガに抱きしめられていると、もっともっとオルガのことが知りたいような気がしてきました。
「抱きたくなってきたなあ・・・嫌か？」
「嫌じゃないよ」
「そうか。ならもっと仲良くなろう」
「うん」
二人は寝室に移動し、ガーベラは初めて男に身を任せました。
（うーん、これは・・・・さすがに愛欲の女神・・・）
ガーベラを抱いたオルガはあまりの心地よさに感動を覚えていました。滑々した肌、豊かに膨らんだ胸、花びらのような唇、肌の匂い、
全てがオルガの欲情をそそり、一つになると離れがたいような気さえ起きるほどでした。
「ガーベラ、お前は素晴らしい」
「気持ちいい」
ガーベラも生まれて初めて快楽を感じていました。
（これが愛なのね・・・オルガが好きでたまらない・・・もっと引っ付きたい）
「ガーベラ・・・」
「オルガ・・・愛してる・・・」
その夜は何度も愛を交し合い、気づくと朝になっていました。
（ああ、びっくりした。こんなに女と交わったのは初めてだ・・・）
オルガは自分の体力に驚いていました。
（しかしびっくりした。女の体にこんなに我を忘れてしまうとは・・・・）
ガーベラはというとうっとりした顔でオルガに寄り添っています。オルガはそんなガーベラが愛しくてたまりませんでした。
「愛しているガーベラ」
「私も、ねえ、今夜もしましょ♪」
「え？今夜？」
「うん。今夜」
ガーベラはすっかり性に目覚めてしまいました。もっともっと交わりたくて仕方ないようです。
オルガの口元はちょっと引きつっていました。
「ガーベラ、お前は素晴らしいし愛してもいるが、今晩は無理だぞ。さっきまでしてた所だし」
「そうなの？じゃあ明日の夜ね」
「ああ」
こうして二人は恋人になりました。性に目覚めたガーベラは以前よりも美しく、男心を惑わすようになりました。
他の神達はオルガをうらやましがりました。後日ハロルドに出会ったオルガが「ありがとう」と礼を言った時には、ハロルドは地団駄を踏んで悔しがりました。
二人はハロルドのおかげで仲良くなったようなものですから。
空の神殿で寝泊りする事が嫌になったガーベラは、自分の神殿ができるまでカサンドラの神殿においてもらうようになりました。
そして日が暮れるころ、オルガの神殿に行くようになりました。
「ねえ、オルガ、今日はいいでしょ？ね」
「ああ・・・」
「オルガ大好き！」
（困ったもんだ。ガーベラは底なしだな・・・それも愛欲の女神だからか？）
オルガは夜空を飛びまわるのが仕事といえば仕事のようなものです。神殿にこもってガーベラの相手ばかりもしれいられません。
しかもガーベラの性欲はとどまる所を知りません。男の愛を受ければ受けるほどガーベラは美しくなる女神なのですから、オルガにせがむのも
女神としての本能のようなものです。仕方のない事です。
「うーん、困ったもんだなー・・・」
誰にも相談できないオルガは一人で愚痴ていたのですが、ガーベラの可愛い顔を見ると、まんざらそれが嫌でもなく、
つい愛しさが募り仲良くしてしまうのでした。
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